税理士になるために必要な「実務経験」とは
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税理士になるには、税理士試験に合格するだけでなく、2年以上の実務経験を積んだ上で、税理士名簿に登録される必要があります。
そこで、税理士登録をするために必須となる実務経験の具体的な内容についてご紹介します。
税理士になるために必要な手順
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税理士になるために必要な実務経験とは、税理士法第三条に定められた規定で、租税または会計に関する事務に従事した期間が通算して2年以上あることとなっています。これは、弁護士資格や公認会計士資格で税理士になった人を除いて、必須の要件となっています。
この実務経験について詳しく述べる前に、まず簡単に税理士登録までの流れをご紹介しましょう。税理士試験の受験
税理士になるためには、大きく分けて3つの方法があります。
(1)税理士試験に合格、および2年以上の実務経験(租税または会計に関する事務)を積む
(2)国税従事者として税務署に一定期間以上勤務し、税理士試験に合格する(特定科目の免除あり)
(3)公認会計士または弁護士の資格を取得する
公認会計士や弁護士の資格があれば、税理士として仕事をすることができます。
しかし、この中で最も一般的な方法が、2年以上の実務経験を積み、税理士試験を受験する方法です。税理士試験の日程や受験資格については、以下のとおりです。
<税理士試験の日程>
年に1回開催(例年8月上旬の平日3日間)
<受験資格>
以下のどれか1つの要件を満たせば受験資格を有する
・学識による受験資格
大学・短大・専修学校を卒業し、法律学または経済学を1科目以上履修した者、大学3年次以上で法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者、司法試験合格者、公認会計士試験の短答式試験合格者など
・資格による受験資格
日商簿記検定1級合格者、全経簿記検定上級合格者など
・職歴による受験資格
会計事務や資金の貸付け・運用に関する事務、税理士・弁護士・公認会計士等の補助事務の業務に従事した期間が2年以上
<試験科目>
全11科目(必須科目、選択必須科目、選択科目に分かれる)
<合格基準>
全11科目中、会計科目2科目、税法科目3科目の計5科目に合格する(ただし、1回の受験で5科目すべてに合格する必要はなく、複数回に分けて不足している科目に合格しても良い)
<免除制度>
修士または博士の学位を授与された者は試験の一部が免除される
一定期間国税従事者であった者は一部科目を免除される
<合格発表>
例年12月中旬
<おもな提出書類>
受験申込書、受験票、受験資格を有することを証する書面、学識等による一部科目の試験免除の申請等に必要な書類(該当する者のみ)税理士登録
税理士試験に合格した後は、税理士名簿への登録を行う必要があります。税理士名簿とは、日本税理士連合会に備えてある名簿のことで、税理士登録申請書に必要事項を記入し、さらに一定の必要書類をそろえて、税理士事務所の所在区域の税理士会に提出する必要があります。
必要書類の内容については細かい規定が設けられており、実務経験を証する「在職証明書」も提出しなければなりませんので、必ず日本税理士連合会のウェブサイトを確認するようにしてください。なお、必要書類の提出の際には、登録手数料(50,000円)、登録免許税領収証書(60,000円)の納付が必要です。
その後、税理士登録申請書を受理した税理士会により、面接や必要な調査が行われます。その結果、登録適当と認められれば、税理士名簿に登録され、同時に官報に公告されます。登録者には、通知とともに税理士会経由で税理士証票が交付されます。税理士登録に必要な実務経験について
さて、税理士登録にあたっては、実務経験のあることが求められています。租税または会計に関する事務のうち、所定の業務に従事した経験が通算2年以上必要となります。
では、その実務経験とは具体的にどのようなものなのでしょうか?具体的には、次のような業務に従事経験があれば、実務経験にカウントされます。
・税務官公署での事務や、その他の官公署や会社などでの税務事務
・貸借対照表勘定と損益勘定を利用し、会計についての計算などを行う会計事務
・仕訳帳等から各勘定への転記事務
・元帳を整理し、日計表または月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
・決算手続に関する事務
・財務諸表の作成に関する事務
・帳簿組織を立案し、原始記録(売上伝票やレジペーパーなど)と帳簿記入の事項を照合点検する事務
会計事務所などの経理実務に携わっていても、簿記会計の知識がなくてもできるような単純な事務や、電卓を使用して行う単純な入出力の事務では、実務経験にはカウントされません。また、原則として通常の勤務時間内における勤務時間のみがカウントされ、時間外勤務(残業時間)は含まれません。
実際の税理士登録にあたって、実務経験に該当するか否かの判断は、登録申請書および在職証明書を提出した後、税理士会が調査(面接等)を行い、個別に判断します。また、これらの実務を行っていた期間が受験をする前であっても、実務経験にカウントすることができます。在籍証明書を取得する際の注意点
税理士登録の際に提出する在職証明書には、実務経験を積んだ事業所の所属長の捺印が必要です。なお、在職証明書を発行してもらうのに際しては、注意が必要です。例えば、もしA会計事務所で1年、B会計事務所で1年勤務した場合は、A社とB社の両方からそれぞれ在職証明書を取得する必要があります。
ほかにも、在職証明書の取得に関して注意したい点をご紹介します。
・一般事業会社で実務経験を積んだ場合
一般事業会社の経理部門でも、実務経験を積むことは可能です。ただしその場合、在籍証明書と併せて「職務概要説明書」の提出が必要になります。
税理士登録の手引書によると、職務概要説明書は会計業務と他の業務を兼任している、またはほかの会社に並行して勤務しているといった場合に、実務経験の期間を判断するために提出を求めるものとされています。一般事業会社の場合、税理士事務所と異なり、会計や経理業務を担当していても、その他の業務も兼任していることが多いため、業務内容を確認するために必要となります。また、職務概要説明書とともに、所属した企業の組織図の提出も求められます。
・非正規雇用で実務経験を積んだ場合
パートやアルバイトで実務経験を積んだ場合には、在籍証明書と併せて、勤務時間数の積み上げ計算書類の提出が必要になります。また、無報酬で従事した時間がある場合には、基本的に実務としてカウントされません。在籍証明書がもらえない場合がある?
会計事務所での実務経験がありながら、在籍証明書を取得する際に苦労する場合があります。税理士登録の登録区分には、税理士法人で働いている「社員税理士」、税理士事務所で働く「所属税理士」、独立して事務所を構えている「開業税理士」の3つがあります。この中で、在籍証明書の発行に際し、トラブルになることが多いのは開業税理士の事務所で働いている場合です。
開業税理士の中には、自分の経営する事務所に所属しているスタッフが税理士として独立開業することになれば、ライバルの会計事務所が増えるので、在籍証明書を発行してくれない人もいます。このような場合、追加の書類を提出することで同勤者から証明書を発行してもうら方法があります。困ったときは登録先となる税理士会に相談してみましょう。
転職に有利な実務経験
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税理士登録をする場合、実務経験の書類を整える煩雑さから考えると、会計事務所に勤務することが最もスムーズだといえます。 しかし、その後の転職のために、どんな実務経験を積んでおくのが良いのでしょうか?ケース別にご紹介します。
会計事務所でアルバイトをしていた場合
会計事務所でのアルバイト経験は、資格取得後に役立つノウハウなどを吸収しやすいというメリットがあります。転職の際にアピールポイントとしたい場合には、会計事務所を転々とすると、その都度、駆け出しからのスタートとなってしまい、キャリアがなかなか積み上がらないため、できるだけ長く働ける事務所を選ぶことがポイントとなります。
クライアント数が多く、単なる決算業務や申告代行だけでなく経営アドバイザリーなど、サービス提供の範囲が広い事務所を選べば、身に付けられるスキルや経験も増え、転職の際に有利に働きます。一般事業会社で経理をしていた場合
一般事業会社で経理部門に在籍していた場合には、企業の属性、会計基準、経験した仕事内容、役職などによって、その評価が変わってきます。また、一般事業会社にいたとしても、「会計にまつわる仕事に従事していたとは限らない」とみなされる場合もあるため、転職に際してはきちんと税理士として役立つ実務経験があることを、書類や面接などでしっかりアピールする必要があります。
実務経験の内容について事前にしっかりと調べておくことが大切!
税理士登録に必要な実務経験が認められるか否かについては、細かい規定があります。そのため、事前にしっかり調べておかないと、自分では実務経験を積んでいるつもりでも、実はカウントされない働き方だったりする場合がありますので注意が必要です。
また、現職だけではなく、前職での在籍証明などを発行してもらう必要が出てくる場合もあります。退職の際には立つ鳥跡を濁さず、いつでも笑顔で職場を再訪できるように円満退職することをおすすめします。
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