国際税務とは?仕事内容や求められるスキル・資格を解説

国際税務とは?仕事内容や求められるスキル・資格を解説

国際税務とは、個人や法人が国際取引をする際の税務面での取り扱いに関する税務のことです。二重課税の回避やタックスヘイブン対策、移転価格税制など、国際ビジネスに不可欠な領域で、国際税務専門家はその知識と経験を活かして企業のグローバル展開を支えます。

こうした国際税務の必要性は、経済のグローバル化に伴いますます高まっています。しかし、実際にどのような仕事内容になるのか、年収はどうなっているのかはあまり知られていません。そこで、この記事では、国際税務の基本からその仕事内容、必要なスキルや資格まで詳しく解説します。国際税務の世界に足を踏み入れ、グローバルなビジネスの舞台で活躍するための第一歩を踏み出す参考にしてください。

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目次

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国際税務とは

国際税務とは、個人や法人が国際取引をする際の税務面での取り扱いに関する税務のことです。主に、企業が異なる国でビジネスを行う場合、国際税務では以下の規定に準じなければなりません。

  • 外国税額控除
  • 消費税の課税有無
  • 恒久的施設の有無
  • 移転価格税制
  • タックスヘイブン対策税制

それぞれの規定は、企業が国際的なビジネスを行う際、二重課税を回避するための役割を担うものです。昨今、グローバル展開する企業が増え続けることを受けて、その必要性も高まっています。

参照:海外展開―成功と失敗の要因を探る|中小企業庁

国際税務局とは

国際税務局という特定の組織は存在せず、税務当局といった言葉から発展したものだと思われます。日本において、あえて挙げるなら国税庁がこれに該当します。国税庁は、日本の税制や税収を担当する政府機関であり、国際的な税務に関する協力や調整も行っているところです。

例えば、外国との租税条約の締結や改正、外国からの情報提供要請への対応、外国人や外国法人の課税に関する指針や通達の発行などを行っています。また、国税庁は、OECDやG20などの国際フォーラムに参加し、グローバルな税務問題に対する取り組みにも貢献しています。

国際税務の必要性

国際税務の必要性は、経済のグローバル化に伴い高まっています。個人や法人が海外に進出(または海外から日本に進出)する際の所得課税や消費課税、そして資産課税さらに国際間の納税者情報の交換などを適切に行う必要があるためです。

例えば、「二重課税」は、同じ所得に対して2つの国で課税される状況を指します。単純に、利益に対して2倍の課税がかかれば、当然のように企業や個人の資産は減ってしまいます。この二重課税を防ぐために必要なのが、国際税務というわけです。

加えて、国際税務の領域では、課税逃れを人為的に引き起こし、不正に利益を手元に残すという問題も必要性を高めている要因です。こうした問題を解決するため、OECD(経済協力開発機構)では、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトと呼ばれる施策が実施されています。当該プロジェクトでは、各国の税制や国際課税ルールにおけるズレを利用し課税から逃れる問題に対して、公平な課税環境の構築を進められています。こうした背景を考えると、国際税務はこれまでも、そしてこれからもその必要性は高まる見込みです。

参照:BEPSプロジェクト|国税庁

国際税務が活躍するケースの例

実際に、国際税務が活躍するケースの例は、以下が挙げられます。

  • クロスボーダーM&A
  • 海外の関係会社とグループ内取引
  • 海外子会社などへの従業員の派遣

まずは、どのような税務と向き合うことになるのかの例をぜひ参考にしてください。

クロスボーダーM&A

国際税務が活躍するケースの代表例は、クロスボーダーM&Aです。クロスボーダーM&Aとは、外国企業との間で行われる国際間におけるM&A取引のことです。国内企業による海外企業の買収はIn-out取引、海外企業による国内企業の買収はOut-in取引とも呼ばれます。こうしたクロスボーダーM&Aでは、買収対象企業の所在国や買収方法によって、税務上の影響が大きく異なることから、国際税務が不可欠です。

例えば、買収者が日本法人か外国法人かによって、以下が異なります。

  • 所得税・消費税の課税対象および納税義務
  • 海外子会社の利益・配当金の課税方法
  • 節税対策

ほかにも、税率や優遇税制に目を向けると、タックスヘイブン対策税制に該当する諸国が多く存在します。結果、日本側で同税制への対応が必要かを検討する必要も出てくるでしょう。クロスボーダーM&Aでは、例のほかにも多くの税務課題が発生するため、国際税務の専門家が必要とされます。

海外の関係会社とグループ内取引

2つ目の国際税務が活躍するケースは、海外の関係会社とグループ内取引です。関係会社とは、自社の事業活動をしていくなかで、密接に関係する会社の総称のことです。関係会社間取引では、第三者との取引とは異なり、原則にそぐわない経理・税務処理が行われやすくなります。関係会であっても別会社と扱われることから、税務調査で指摘される可能性があるためです。

例えば、海外の関係会社とグループ内取引を行う場合は、移転価格税制に注意しなければなりません。移転価格税制とは、グループ内取引で適正な価格を設定しているかどうかをチェックするための税制のことです。ここで取り上げている適正な価格とは、第三者間取引で決まる市場価格(アームズレングス価格)を指します。

適正な価格は、グループ内取引で市場価格よりも低い価格を設定することで、利益を低課税地域に移動させた節税を防ぐために導入されました。移転価格税制では、海外の関係会社とのグループ内取引であっても、この価格に基づいた内容や方法を詳細に記載した文書(移転価格文書)を作成し、提出する義務があります。このように、海外の関係会社とグループ内取引を行う場合は、移転価格税制に適合するために国際税務の知識が必要です。

海外子会社などへの従業員の派遣

最後に海外子会社やグループ企業への従業員の派遣も、国際税務が活躍するケースです。海外派遣とは、日本から自社の従業員を海外の現地法人や支店などに長期間派遣することを指し、転勤や出向は「海外派遣」に該当します。グローバル展開した企業においては、その社員を海外子会社へ出向させて現地子会社のもとで技術指導・営業支援等を行うケースがよくあるものです。

この海外派遣では、派遣先の国や派遣期間によって、従業員の所得税や社会保険の支払い方法が変わります。例えば、派遣先の国と日本が租税条約を結んでいる場合、派遣期間が一定期間以下であれば、従業員の所得税を日本で納めることができます。しかし、派遣期間が一定期間を超えると、従業員の所得税は派遣先の国で納めなければなりません。

また、社会保険についても、派遣先の国と日本が社会保障協定を結んでいる場合、日本の社会保険に加入したままであれば、派遣先の国の社会保険に加入する必要はないと判断されます。しかし、社会保障協定がない場合や協定の条件を満たさない場合は、派遣先の国の社会保険に加入する必要があります。このように、海外派遣では従業員の税金や社会保険の支払いに関する複雑な手続きが必要になるため、国際税務の専門家のサポートが望ましいケースといえるでしょう。

国際税務の仕事内容

では、具体的にどのような仕事内容となるのでしょうか。ここからは、国際税務で担う主な仕事内容を以下に分けて紹介します。

  • 税務顧問
  • 移転価格税制
  • 海外資産および外国人投資家等の所得税申告

税務顧問

国際税務の主な仕事内容となるのが、税務顧問です。税務顧問は、税理士と継続した税務サービスを契約することで、具体的な内容には以下が挙げられます。

  • 税務代理:法人や個人事業主から依頼を受け、税務に関する手続きを税理士が行う
  • 税務書類の作成:税務署などに提出する国税、地方税を申告する書類を作成する
  • 税務相談:支払う所得税や法人税、住民税や消費税などの具体的な金額をアドバイスする
  • 経営相談:税金だけでなく経営に関する相談にも対応する

税務顧問の魅力は、クライアントと長期的な信頼関係を築き、様々な課題に対応できることです。また、最新の税制や法令に精通し、専門的な知識と技術を活かせることもやりがいにつながります。

移転価格税制

国際税務の仕事内容には、移転価格税制への対応も含まれます。移転価格税制は、グループ内の取引価格が独立の第三者間で適用される価格であることを求める税制です。低課税地域に移動させて節税するといった税制のズレを防ぐために独立企業間価格による取引を行うことを義務付けるものです。移転価格税制に関する仕事内容には、以下が挙げられます。

  • グループ内取引の分析や評価
  • 移転価格文書の作成や提出
  • 移転価格調査への対応

ここで取り上げた移転価格調査とは、国内外の税務当局がグループ内取引の適正性を検査することです。もし、意図的に低課税地域へ移動させていたという場合には、追徴課税や罰則が科されます。こうした移転価格税制に対応する国際税務の仕事では、グローバルな視点でビジネスを理解し、国際的なルールや基準に沿って最適な解決策を提案する力が身につきます。また、多国籍企業や海外拠点と連携し、異文化や異言語に対応できることも醍醐味です。

海外資産および外国人投資家等の所得税申告

日本の所得税は、基本的に「全世界所得課税」に該当します。そのため、例えば日本に住んでいてもアメリカの不動産を保有および収入があれば、日本で税金の申告が必要です。また、海外投資(オフショア投資)で利益が確定した場合も確定申告をして納税しなければなりません。海外資産および外国人投資家等の所得税申告で担う仕事には、以下が挙げられるでしょう。

  • 海外の税制や条約の理解
  • 海外からの収入や支出の計算
  • 申告書類の作成や提出

加えて、国際税務において、海外からの収入や支出は、為替レートや源泉徴収税などの影響を受けるため、正確な把握が不可欠です。こうした所得税申告への対応は、海外に関する知識や経験を活かし、クライアントの資産形成や節税に貢献できるやりがいを感じられます。また、海外との連携や交流を通じて、国際感覚やコミュニケーション能力を高めることもできます。

参照:国際課税のあり方と今後の課題について-最近の国際課税に関する諸問題(国際的租税回避等)を踏まえた我が国の国際課税の基本的な考え方の検証-|国税庁

【求人から見る】国際税務の年収目安

国際税務の年収目安は、約350〜1,200万円です。具体的に、マイナビ税理士が保有する国際税務に関連する仕事の例と年収は、以下のとおりです。あくまで目安であり、実際の年収は個々の条件によって変わります。

仕事の例 年収
税務業務構築・改善/DX推進コンサルタント 400万円~1000万円
税務スタッフ|税務業務 350万円~600万円
グローバルモビリティ(海外勤務者)アドバイザリー 600万円~1200万円
税務スタッフ|独立系大手税理士法人!中小税務~相続・資産税 (未経験可) 370万円~800万円
税務コンサルタント 435万円~720万円

※2024年2月時点

国際税務の仕事は、高度な専門性とグローバルな視野が求められるため、年収も高い傾向にあります。また、海外で働く場合や、英語などの語学力を有する場合も年収は上がる傾向にあります。ただし、年収は仕事の内容や経験年数、所属する組織や地域などによって大きく異なることに留意してください。

もし、国際税務の仕事に興味がある方は、まずは自分のスキルやキャリアプランを見直し、国際税務の仕事に向いているかどうかを判断すると良いでしょう。マイナビ税理士では、キャリアアドバイザーに仕事内容からキャリアプランまで気になることを聞くことができます。まずは、お気軽にご相談ください。

国際税務で知っておきたい基本知識

ここからは、国際税務を目指すにあたって知っておきたい基礎知識を以下に分けて解説します。

  • 租税条約
  • 外国税額控除
  • タックスヘイブン対策税制
  • 移転価格税制
  • 国外関連者寄附金
  • 源泉所得税
  • 過少資本税制

租税条約

租税条約は、国際的な二重課税を防ぎ、租税回避を制限するための国際条約です。日本はOECDモデル租税条約を採用し、非居住者の所得税や復興特別所得税の軽減・免除を規定しています。OECDモデルを簡単に説明すると、二国間において租税条約の締結や、既存の租税条約を改定する際の見本となるものです。二重課税を防止する目的で設けられており、各国の税制に対する調整役を果たしています。

そして、国際取引における租税条約の適用は、税務署への届出書提出を必要とします。そのため、税理士が適切に条約に即しているかを判断し、必要書類を作成する必要があるものです。国際ビジネスにおいて重要な役割を果たすことから、租税条約は国際税務として働く際に触れる機会が多く、ぜひ覚えておきたい知識です。

参照:我が国の租税条約等の一覧|財務省

外国税額控除

次に、外国税額控除は、日本の居住者が外国で支払った所得税を日本の所得税から控除できる制度です。二重課税の調整を目的とし、所得税額から外国で納付した税額を差し引くことが可能です。また、控除限度額は特定の算式に基づき計算され、繰越控除の制度もあります。

外国税額控除は、先ほども触れた二重課税を防ぐために利用する制度の1つです。日本では、国内外のビジネスで得られた利益に対して、税金が発生する「全世界所得課税方式」を採用しています。ただし、海外で得た利益においてはその国の税制でも納税する必要があります。つまり、日本と海外の両方で納税する、いわゆる二重課税となるわけです。この二重課税の状態を解消するため、外国税額控除で差し引きます。

このように、海外で取引を行っている日本の企業では、こうした外国税額控除を取り扱うケースが多くあります。国際税務に携わることになれば、外国税額控除をよく目にすることになるでしょう。

参照:No.1240 居住者に係る外国税額控除|国税庁

タックスヘイブン対策税制

タックスヘイブン対策税制は、租税負担が低い国に設立された関連会社を通じた租税回避行為を規制する制度です。租税負担割合が30%未満の外国関係会社が対象となり、国際税務はこれらの会社の税務リスクを理解して適切な税務戦略を策定する必要があります。このタックスヘイブン対策税制に対して、国際税務の専門家は以下のような役割を果たします。

  • リスク評価と管理:適用可能性や影響を評価し、リスクを管理
  • 税務申告の支援:タックスヘイブン対策税制に関連する税務申告書の作成を支援
  • 税務調査への対応:将来の税務調査に備え、経済活動基準を充足していることを説明するために必要な文書を作成
  • 業務改善と自動化:税務申告業務を正確かつ効率的に実行できるような業務の見直し

それぞれの役割は、企業がタックスヘイブン対策税制に対し、適切に税務リスクを管理する際に役立つものです。実際の税務では、こうした税制に対応するために必要な支援を、実務として担うことになります。

移転価格税制

移転価格税制は、国境を越える関連会社間取引における取引価格を市場価格に基づかせるための制度です。この制度は、税率の低い国への所得移転を防ぎ、国際税務における適正な課税を確保します。基本的な方法として「独立価格比準法」、「再販売価格基準法」、「原価基準法」があり、それぞれに対して理解および適用が求められます。

国際税務の仕事においては、関連会社間取引の移転価格を市場価格に合わせ、適正な税負担を確保する役割を担うものです。そのため、移転価格文書の作成や更新を行い、税務当局の監査に備えます。場合によっては、税務業務オペレーションの構築と税務人員の育成に携わることもあるでしょう。

国外関連者寄附金

国外関連者寄附金は、国外の関連者への寄附に関する規程です。日本の法人税法では、国外関連者への寄附金は全額損金不算入とされており、これが国際税務計画に影響を与えます。国際税務の専門家は、通常の寄附金と区別し、税務上の影響を正確に理解する必要があります。

例えば、国外関連者に対する寄附金は、その全額において損金不算入として取り扱うものです。しかし、移転価格税制が適用されると予期しない金額の税金が課されることもあります。こうしたケースにおいて、その税務上の取り扱いを確認し、適切な申告を行います。このように、国際税務は国外関連者寄付金においても、税務上の影響を評価し、クライアントにアドバイスを提供する重要な役割を担うものです。

源泉所得税

源泉所得税は、給与や報酬などの所得から源泉徴収して納める税金です。国際取引では、外国法人への支払いに対する源泉徴収の要件や税率が重要となります。国際税務では、源泉所得税に対しても適切な対応を取る必要があります。

そのため、国際税務の仕事では、国際取引における源泉所得税の適用を管理し、適切な源泉徴収が行われているかを確認します。この場合、ここまでに触れた「OECDモデル租税条約」や「外国税額控除」などの知識が必要となるでしょう。また、国際的な支払いに対する源泉税の税率や適用条件を把握し、税務申告における正確な処理もサポートします。外国からの収益に対して源泉所得税が適用されることもあり、二重課税を防ぐためにも同様の知識が必要です。

参照:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
参照:No.2883 恒久的施設(PE)(令和元年分以後)|国税庁

過少資本税制

過少資本税制は、内国法人が海外の関連会社からの過度な資金提供による租税回避を防ぐための制度です。資金提供の出資と貸付けの比率が一定割合を超える場合、その超える部分の支払利子の損金算入が認められません。国際税務の専門家は、この制度の適用基準を理解し、国際的な資金調達構造の管理が求められます。

具体的には、内国法人が海外関連会社からの資金提供に関する過少資本税制の適用基準を確認し、支払利子の損金算入可能額を計算します。結果、必要に応じて資本構造の調整や財務戦略の見直しを提案し、租税回避のリスクを管理するなどです。また、内国法人の総負債残高が自己資本の3倍以下である場合に適用される、いわゆるセーフハーバールールにも精通している必要があるでしょう。

国際税務に求められるスキル・経験

国際税務の専門家になるためには、以下のようなスキルや経験が求められます。

  • 英語を含む語学力
  • コンサルティングの経験
  • 現地の税制に関する知識

英語を含む語学力

国際税務の仕事では、海外のクライアントやパートナーとのコミュニケーションが欠かせません。そのため、英語を含む語学力は必須です。加えて、英語だけでなく、他の言語も話せるとより幅広いビジネスチャンスが広がります。

例として、英語では税務に関する専門用語や文書を読んだり書いたりする能力が必要です。また、プレゼンテーションやミーティングにおいて、日常会話レベルで自分の意見や提案を伝えることが求められます。こうした語学力を身につけるためには、海外での留学や研修、オンラインでの学習など、様々な方法があります。自分に合った方法で、積極的に学ぶことが大切です。

コンサルティングの経験

また、国際税務の仕事では、前職・現職で培ったコンサルティングの経験があれば非常に有用です。コンサルティングの経験においては、問題解決能力や提案力、プレゼンテーション力などのスキルが、国際税務の業務遂行に役立つためです。

具体的には、クライアントのビジネスや目標に合わせて、最適な税務戦略を提案することが求められます。コンサルティングによるクライアントとの信頼関係の構築や、課題の解決による円滑なコミュニケーションの実現などです。

このように、国際税務で求められるコンサルティングの経験を積むためには、税務会計事務所やコンサルティングファームなどで働くことが一般的です。加えて、他の業界や職種でもコンサルティングに関する仕事は多くあります。自分の興味や適性に合わせて、キャリアを構築していきましょう。

現地の税制に関する知識

国際税務はその名前のとおり、自国だけでなく、海外の税制に関する知識も必要です。各国の税率や納税義務、優遇措置などを把握することで、クライアントに最適な税務戦略を提案できるためです。また、海外の税制は、自国とは異なる法律や規則があり、日本と同様に変更されることもあります。そのため、常に最新の情報をキャッチアップすることが求められます。

現地の税制に関する知識を得るためには、専門書やWebサイトなどでの学習が挙げられます。可能であれば、実際に現地で働くことも効果的です。現地で働くことで、現地の税務実務や文化を身近に感じることができ、きっかけ次第で専門家と交流することもできます。海外赴任や出張などの機会を、積極的に利用してみましょう。

国際税務を目指す際に便利な資格

国際税務の専門家になるためには、以下のような資格が有効です。

  • 税理士
  • TOEIC
  • EA(米国税理士)
  • USCPA(米国公認会計士)

税理士

国際税務を目指す際には、税理士の資格が有効です。税理士は主に、日本の税法に関する専門家で、個人や法人の税務申告や相談を行うことができます。加えて、税法の中では国際税務に関する知識も必要とされます。

例えば、外国人の日本での所得や資産に対する課税や、日本人の海外での所得や資産に対する課税などです。ほかにも、国際税務に関する条約や協定も理解しておく必要があります。このように税理士は、国際税務の専門家として活躍するために欠かせない資格です。

TOEIC

国際税務の専門家になるためには、英語は必須のスキルです。TOEICは、その英語におけるビジネスコミュニケーション能力を測るテストと考えて、高得点を取得してアピールしておきたい資格です。TOEICは、世界中で広く認知されており、英語圏の企業や機関との取引や交渉に必要な英語力を証明できます。

実際の業務では、英語で国際的な税法や規則を読み解いたり、英語でクライアントやパートナーとコミュニケーションを取ったりすることが求められます。よりスムーズに会話ができるレベルと判断される700点以上を取得しておくと良いでしょう。

EA(米国税理士)

米国税理士(EA:Enrolled Agent)とは、米国の税法に関する専門家のことです。日本における税理士資格として考えるとわかりやすいでしょう。

  • 連邦個人所得税法および連邦贈与税法・相続税法
  • 事業関連の連邦税法
  • 税務代理業務および諸手続き

上記の内容について、米国連邦所得税法全般に関する知識を問うテストです。受験資格は18歳以上で、学歴や職歴などに関係なく受験できます。EAの資格を取得すると、個人や法人の米国連邦所得税の申告や相談を行うことができる知識・技術を証明できます。そのため、米国の税法に精通した国際税務の専門家として活躍するために有用な資格です。

USCPA(米国公認会計士)

USCPA(Certified Public Accountant)は、米国の会計・監査・財務に関する専門家です。USCPAを取得するとは、米国内外の個人や法人の会計・監査・財務に関するサービスを提供できる知識・スキルを証明できます。USCPA試験は、会計および報告、監査および証明、法規制、ビジネス環境と概念の4つで構成されており、国際税制に必要な知識も含まれます。また、USCPA試験は英語で受験することになるため、日本語の参考書や問題集を活用しつつも、一定の英語力が求められるでしょう。

なお、国際税務においては、米国会計基準(US GAAP)や米国監査基準(US GAAS)などに精通しており、米国企業や子会社と関わる場合に役立ちます。そのため、税理士資格の取得後など、今後のキャリアアップを考える際には、ぜひ取得しておきたい資格の1つです。

国際税務の経験を積める企業・事業所の例

国際税務の経験を積める企業・事業所の例として、主にBig4・大手会計事務所が挙げられます。それぞれの事業所では、海外企業やグローバル展開している国内企業の税務サービスを提供しており、国際税務の知識やスキルが必要とされるためです。こうした企業や事業所で国際税務の経験を積むことで、海外進出やM&Aなどのビジネスチャンスに対応できるだけでなく、国際的な視野やコミュニケーション能力も身につけることができます。

昨今では、国内企業におけるグローバル化も見受けられる時代です。そのため、国際税務の専門家は、国内外の企業から高い需要があり、その専門性の高さから高い報酬も期待できます。ただし、就職や転職に失敗しないためには、自分のキャリアプランやライフスタイルに合わせて、適切な企業・事業所を選ぶことが大切です。

国際税務の希少価値は?将来性はあるのか

外務省のデータから海外進出日系企業が増えていることを踏まえると、国際税務は希少価値が高く、将来性のある分野と言えます。

まず、国際税務の専門知識は非常に希少で、専門家の数は通常の税理士と比較しても少なくなりやすいです。なぜなら、国際税務は、単一国の税法だけでなく、複数の国の税制、国際的な税務規制、二国間または多国間の税務条約など、広範な知識を要求されるためです。また、グローバルなビジネス環境は常に変化しています。そのため、国際税務の専門家はこれらの変化に迅速に適応し、最新の法規制や政策の動向を把握し続ける必要があります。

次に、国際税務の将来性については、グローバル化の進展に伴い、その重要性もさらに高まる見込みです。多国籍企業や国境を越えて事業を展開する企業が増加している現在、企業は複雑な国際税務の問題に直面しやすくなります。例えば、移転価格、税務リスク管理、国際的な税務コンプライアンス、税務計画などが挙げられます。こうした問題に効果的に対応するためにも、高度な専門知識と経験を持つ国際税務の専門家が不可欠です。

さらに、国際税務の分野は、デジタル経済の成長、国際的な税制改革、税逃れ防止策の強化など、継続的な変化と進化に直面していることも現状の1つです。特に、デジタル化やEコマースの台頭により、税務の国際的な枠組みが再構築されており、変化に適応するための専門知識はさらに重要性を増すと考えられます。

このように、国際税務の希少価値は非常に高く、その需要は今後も増加すると予測されます。そのため、国際税務の分野でのキャリアは非常に有望であり、将来性のある分野と言えるでしょう。国際税務の分野におけるキャリア形成に興味を持っている方は、マイナビ税理士のキャリアアドバイザーに相談してください。あなたのキャリア目標や興味に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。

参照:海外進出日系企業拠点数調査|外務省

まとめ

国際税務の専門家は、企業や個人の国際的な税務に関する課題を解決するために必要な知識やスキルを持っています。国際税務の仕事では、国内外の税制に関する知識、語学力、コンサルティングの経験などが求められます。また、国際税務の専門家になるためには、税理士やTOEICなどの資格を取得することが有効です。加えて、国際税務の経験を積むためには、Big4・大手会計事務所などで働くことが一般的です。

国際税務の専門家は、希少価値が高く将来性のある分野です。企業のグローバル化が進む中で、国際税務の重要性はますます高まっています。国際税務の専門家として活躍することで、高い報酬とともに国内外のビジネスチャンスを広げることができるでしょう。マイナビ税理士では、国際税務の分野でのキャリア形成をサポートするために、幅広い情報やサービスを提供しています。国際税務の分野に興味のある方は、ぜひキャリアアドバイザーへご相談ください。

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