税理士とUSCPA - 試験内容の違いやダブルライセンスのメリットをご紹介

税理士とUSCPA - 試験内容の違いやダブルライセンスのメリットをご紹介

税理士として活躍する中で、さらなるスキルアップやキャリアの幅を広げる方法として注目されているのが「USCPA(米国公認会計士)」の取得です。本記事では、税理士試験とUSCPA試験の違いを受験資格・試験科目・合格率などの観点から比較し、ダブルライセンスを取得するメリットや留意点についても詳しく解説します。

内山 智絵

内山 智絵

公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナー

大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した後、出産・育児をきっかけに退職。2021年春に個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。

目次

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税理士試験とUSCPA試験の比較

まずはUSCPA試験の受験資格や試験科目といった概要を、税理士試験と比較しながら解説します。

受験資格

最初に、それぞれの試験の受験資格を見ていきましょう。税理士試験は「会計学に属する科目」と「税法に属する科目」に大別されますが、このうち会計学に属する科目(具体的には簿記論と財務諸表論)には受験資格がなく、誰でも受験することが可能です。一方、税法に属する科目は受験資格があり、主な内容は次のとおりです。

種類 具体的な資格
学識による受験資格 ・大学、短大、高等専門学校を卒業し、または一定の専修学校の専門課程を修了し、かつ社会科学に属する科目を1科目以上履修したこと
・大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得したこと
・司法試験に合格したこと
・公認会計士試験の短答式試験に合格したこと
資格による受験資格 日商簿記1級または全経簿記1級に合格したこと
職歴による受験資格 次のいずれかに2年以上従事したこと
・法人または個人事業主が営む事業の会計に関する事務
・銀行、信託会社、保険会社等における資金の貸付け・運用に関する事務
・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務
参照:税理士試験|国税庁ホームページ

税理士試験の受験資格は日本全国共通ですが、USCPA試験の場合は州によって受験資格が異なります。たとえば、日本からの受験者が比較的多いアラスカ州とワシントン州の受験資格は次のとおりです。なお、ここではUSCPA試験の管理運営を行っている、NASBA(National Association of State Boards of Accountancy)のホームページから抜粋して紹介しています。

受験資格
アラスカ州 ・大学で学士号またはそれに相当する学位を取得したこと、あるいは卒業までの残りの単位が18単位(semester hours)以下であること
・会計学の分野で15単位を取得すること
ワシントン州 ・少なくとも120単位を取得すること
・学士号またはこれより上の学位を取得すること
・会計学で24単位を取得し、このうち少なくとも15単位は上級または大学院レベル(upper level or graduate level)であること
・経営学(business administration)で24単位を取得すること
参照:
CPA Exam|NASBAホームページ(アラスカ)
CPA Exam|NASBAホームページ(ワシントン)

試験科目

次に、それぞれの試験の試験科目につき、必須科目と選択科目の違いを含めて紹介します。
税理士試験の試験科目は全11科目あり、このうち必須科目は会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目です。選択科目は税法に属する科目の9科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)のうち3科目で、このうち所得税法または法人税法のいずれか1科目は必ず合格する必要があります。

参照:税理士試験の概要|国税庁ホームページ

AICPA(American Institute of Certified Public Accountants、米国公認会計士協会)によると、USCPAの試験科目は必須科目のCore sectionsと選択科目のDiscipline sectionsに分かれています。Core sectionsとDiscipline sectionsの内容は、それぞれ次のとおりです。

分類 科目
Core sections ・Auditing and Attestation (AUD)
・Financial Accounting and Reporting (FAR)
・Taxation and Regulation (REG)
Discipline sections 次のうちいずれか1科目を選択する。
・Business Analysis and Reporting (BAR)
・Information Systems and Control (ISC)
・Tax Compliance and Planning (TCP)
参照:CPA Exam Overview|AICPAホームページ

試験の合格率

次に、それぞれの試験について直近の合格率を紹介しましょう。なお、税理士試験とUSCPA試験はともに科目合格制であるため、科目合格率を示します。

令和6年度(第74回)税理士試験の合格率は次のとおりです。全科目合計の受験者数のうち合格者数が占める割合は13.5%と、前年度の割合(18.8%)よりも5.3%下落しました。

科目 合格率
簿記論 17.4%
財務諸表論 8.0%
所得税法 12.6%
法人税法 16.4%
相続税法 18.7%
消費税法 10.3%
酒税法 12.1%
国税徴収法 13.0%
住民税 18.2%
事業税 13.7%
固定資産税 18.0%
参照:令和6年度(第74回)税理士試験結果表(科目別)|国税庁ホームページ

一方、USCPA試験の合格率は次のとおりです(2024年分の累積)。各科目の合格率合計を単純平均した合格率は約53.0%と、税理士試験の科目合格率の約4倍でした。そのため、合格率の観点から見ると、税理士試験よりUSCPAの方が合格しやすいと言えるでしょう。

科目 合格率
AUD(Auditing and Attestation) 45.79%
FAR(Financial Accounting and Reporting) 39.59%
REG(Taxation and Regulation) 62.61%
BAR(Business Analysis and Reporting) 38.08%
ISC(Information Systems and Control) 58.00%
TCP(Tax Compliance and Planning) 73.91%
参照:Learn more about CPA Exam scoring and pass rates|AICPAホームページ

試験会場およびスケジュール

税理士試験は年1回以上行うことが法定されており(税理士法12条2項)、毎年8月に国内複数箇所で実施されます。令和6年度の税理士試験は、北海道から沖縄までの12都道府県15会場で実施されました。

参照:令和6年度(第74回)税理士試験試験場一覧|国税庁ホームページ

USCPA試験は、多くの州で米国外の地域でも受験することが可能です。日本では、東京と大阪の2箇所で受験することができます(州によっては日本での受験ができない場合もあります)。試験は税理士試験のような年1回の集合型試験ではなく、テストセンターで行う個別参加型試験です。試験は随時実施されていますが、選択科目(BAR、ISC、TCP)については、受験可能な月が決まっているので注意しましょう。

参照:CPA Exam - International Administration|NASBAホームページ

科目合格の有効期間

税理士試験の科目合格に有効期限はなく、現行法の下において科目合格は一生有効です。一方、USCPA試験の科目合格の有効期限は州によって異なりますが、一般的には30か月の有効期限が設定されています。有効期限が切れると科目合格も無効となってしまうため、計画的に科目合格を積み重ねていくことが重要です。

参照:CPA Exam credit extension: Deadline in June 2025|AICPAホームページ

税理士とUSCPA ダブルライセンス取得のメリット

ここでは、税理士とUSCPA のダブルライセンスを取得するメリットを解説します。

キャリアアップのきっかけになる

ダブルライセンスのメリットの1つ目は、キャリアアップのきっかけになる点です。特に、これまで国内業務がほとんどだった税理士にとっては、USCPA試験の学習・受験を通じて米国の会計制度や税法等を習得することで、英語を使った国際的な業務に関与する能力を身につけることができます。業務の幅が国内のみから世界に広がることにより、キャリアアップが期待できるでしょう。

年収が上がる可能性がある

もう1つのメリットは、年収が上がる可能性がある点です。USCPAのライセンスを取得したことを勤務先から評価されたり、国内業務に比べると比較的高単価な傾向にある国際的業務を受注できたりすることで、給与や事業収入の増加につながることがあります。AICPAが運営するサイトではUSCPA取得者の想定年収を公表しているので、ご興味があれば参考にご覧ください。

参照:A snapshot of CPA salaries by industry|ThisWaytoCPA.com

税理士とUSCPA ダブルライセンス取得を目指す際の留意点

税理士とUSCPAの ダブルライセンス取得を目指す際に、留意しておきたい点を解説します。

USCPAの学習に時間が取られる

まず留意したいのが、USCPAの学習に時間が取られる点です。税理士試験ほどではないとはいえ、USCPAに合格するためには、ある程度まとまった時間が必要になります。さらに、税理士試験と違ってUSCPA試験には科目合格の有効期限があるため、税理士業務と並行して学習時間を確保できるか事前に検討し、学習計画を組んで取り組むことが大切です。

USCPAの学習や受験に費用がかかる

また、USCPAの学習や受験に、費用がかかる点も注意してください。合格までの間には、一般的に資格予備校の受講料や各科目の受験料、受験地(東京または大阪)までの交通費や宿泊費が必要です。場合によっては、税理士試験より費用がかかることもあるでしょう。こうした費用を捻出できるのか、事前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

税理士試験とUSCPA試験の違いを受験資格・試験科目・合格率などの観点から比較した上で、ダブルライセンスを取得するメリットや留意点をご紹介しました。税理士とUSCPAのダブルライセンスを取得することにより、専門性の向上だけでなく国際業務への対応力も高まり、収入アップが期待できます。一方で、時間や費用といった負担もあるため、自身のライフスタイルやキャリアプランと照らし合わせて慎重に検討することが大切です。

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