税理士になるのに高い偏差値は必要?税理士試験と税理士の仕事から考える

税理士になるのに高い偏差値は必要?税理士試験と税理士の仕事から考える

SNSでは時々「税理士の偏差値」が話題になります。確かに税理士試験は難関の国家試験です。また、税理士の仕事も3つの独占業務があり、専門知識が必要とされます。しかし、偏差値が高くないと税理士になれないものなのでしょうか。今回は「税理士に高い偏差値は必要か」を税理士試験と税理士の仕事の両方から考えてみます。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

目次

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税理士になるプロセスから偏差値の必要性を考える

そもそも税理士になるためには何が必要なのでしょうか。税理士に高い偏差値が必要かどうかを考える前に、確認しましょう。税理士に登録するための主なプロセスは現在、次のようになっています。

1.税理士試験の合格+実務経験2年以上

1つ目は、税理士試験に合格し、かつ会計事務所などで租税や会計に関する業務に2年以上従事することです。税理士試験の合格は、会計科目・税法科目のうち5科目に合格することが条件となっています(詳細は後述)。

税理士試験の合格と2年以上の実務経験が税理士として登録するための基本的な条件です。ただ、試験合格や実務経験が免除されたりすることもあります。次の項目以降に該当する場合です。

2.税理士試験の科目一部合格+大学院で科目免除+実務経験2年以上

2つ目は、税理士試験の科目の一部だけに合格し、他の科目は大学院で会計や税法に関する研究をして論文を書いて国税審議会に認められ、試験合格を免除してもらう方法です。この場合は通常の税理士試験と同じく、2年以上の実務経験が求められます。

3.公認会計士・弁護士

3つ目は、公認会計士か弁護士の資格を取った上で登録する方法です。この場合、実務経験は問われません。

4.税務署で経験を積む

税務署に一定期間以上勤務したケースも、税理士資格が付与されます。ただし、勤務期間によって、税理士試験の科目合格が求められることがあります。

5.その他

このほか、大学などで会計や税法に関連する科目を教えていたりすると、税理士試験に合格しなくても税理士資格が付与されることがあります。

ここまでのまとめ

税理士になるには、基本的に税理士試験の合格と2年以上の実務経験が必要となります。しかし、それ以外の方法でも税理士になることは可能です。ただ、これまで民間企業で働いてきた人ならば、上記の1か2で税理士を目指すのが現実的だと言えます。ただし、この時点で高い偏差値は問われていません。

税理士試験から偏差値の必要性を考える

税理士になるには、基本的に税理士試験の合格が必要となります。税理士試験に高い偏差値が問われそうな気がしますが、本当にそうなのでしょうか。ここで税理士試験のしくみを確認していきましょう。

受験資格

2022年度まで、学識要件が「法律学か経済学に属する科目」の履修などが求められ、かなり高いハードルとなっていました。しかし2023年度以降、受験資格は緩和されました。次の通りです。

会計科目

会計科目である簿記論・財務諸表論については現在、受験資格が一切ありません。そのため、小・中学生でも受験できます。

税法科目

法人税法や所得税法など、いわゆる税法科目については受験資格が問われます。要件は、次のようになっています。

学識要件 資格要件 職歴要件
大学・短大・高専卒業者 大学3年次以上で62単位取得者 一定の専修学校の専門課程履修者 司法試験合格者 公認会計士短答式試験合格者 日商簿記1級または全経簿記上級の合格者 2年以上の一定の会計・法律事務経験者
社会科学に属する科目の履修
参照:税理士試験が受験しやすくなりました!!|日本税理士会連合会
上記を元に筆者作成

学識要件の「社会科学に属する科目」は非常に幅広く、法律学や経済学にとどまらず、政治学や心理学、教育学なども含まれます。上記を元に筆者作成

試験合格の要件

税理士試験の合格とは「会計科目・税法科目のうち5科目合格」を言います。科目の内容や必修・選択必修などについては次のようになっています。なお、一度合格した科目は永久に有効です。10年経ったからと言って再度受験し直す必要はありません。

会計科目

会計科目である簿記論・財務諸表論はいずれも必ず合格しなければなりません。

税法科目

税法科目は法人税法か所得税法のどちらか一方は最低限合格しなくてはなりません。それ以外は自由選択となっていますが、消費税法と酒税法、住民税と固定資産税はどちらか一方を選択したらどちらか一方は受けることができません。まとめると、次のようになります。

法人税法 選択必修科目 1科目以上の合格が必要
所得税法
相続税法 選択科目 この中から2科目(法人税法・所得税法の両方に合格したなら1科目)の合格が必要
消費税法 選択科目
※どちらか1つだけ受験できる
酒税法
国税徴収法 選択科目
住民税 選択科目
※どちらか1つだけ受験できる
事業税
固定資産税 選択科目

合格率

税理士試験の合格率は、次のようになっています。

受験者数
(人)
一部科目合格 5科目合格
合格者数
(人)
合格率 合格者数
(人)
合格率
2024年度
(令和6年度)
34,757 5,184 14.9% 578 1.7%
2023年度
(令和5年度)
32,893 6,525 19.8% 600 1.8%
2022年度
(令和4年度)
28,853 5,006 17.4% 620 2.1%
2021年度
(令和3年度)
27,299 4,554 16.7% 585 2.1%
2020年度
(令和2年度)
26,673 4,754 17.8% 648 2.4%
2019年度
(令和元年度)
29,779 4,639 15.6% 749 2.5%

参照:税理士試験「過去の試験結果等」|国税庁
上記を元に筆者作成

5科目全体の合格率は低いものの、1科目あたりの合格率は、年によって20%近いものもあります。ただ、これだけでは高い偏差値が必要とは言い切れません。

合格者の学歴

合格者の学歴はどうなっているでしょうか。2024年度(令和6年度)の試験結果で見てみましょう。

2505_855_1.jpg

参照:令和6年度(第74回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)|国税庁
上記から学歴別のみ抜粋

大卒・大学在学中が多いものの、それ以外も少なくありません。高校・旧中卒の合格率は大学卒の合格率よりも高くなっています。

ここまでのまとめ

税理士試験は確かに難関の国家試験ではありますが、受験資格や学歴別の合格結果を見ると、決して高い偏差値を要求されるものではありません。「合格科目が永久に有効である」ことなどを考えると、要領の良さより粘り強さが求められる試験だと言えます。

税理士の仕事から偏差値の必要性を考える

税理士の仕事という点から、偏差値の必要性を考えてみましょう。まず、税理士の独占業務として、次の3つが税理士法第2条第1項で定められています。

  • 税務代理...税務調査の立ち会い、意見陳述など
  • 税務書類の作成...税務申告書や申請書、届出書の作成など
  • 税務相談...納税者からの個別に税金に関する相談を受けること

これらが税理士の主要業務となりますが、これに付随して次のような業務も行っています。

  • 記帳代行
  • 月次試算表の作成
  • 納税額・資金繰り予測
  • ITツールを使った顧問先の業務効率化
  • セミナー講師、執筆など

こういった業務を行うにあたり、税制や税務・会計ソフトの研究などは必要です。しかし高い偏差値を要求されるものではありません。

税理士に偏差値は関係ない3つの理由

上記以外の点でも、税理士である筆者は「税理士に偏差値は関係ない」と感じます。理由は次の3つです。

1.高卒で活躍している税理士は少なくない

税理士試験結果で高卒・旧中卒の合格率が比較的高いことが分かりました。実際、高卒で活躍している税理士は少なくありません。「日商簿記1級に合格して税理士試験に挑んだ」「税務署勤務が長かった」など、経歴はさまざまですが、税務・会計の現場で培った経験と知見を活かして日々、顧問先に貢献しています。

また、高卒の税理士でも、専門書を多数執筆したり、税務研修の講師を務めたりする人もいます。

2.税理士試験の合格に必要なのは「粘り強さ」

税理士試験の1科目あたりの合格率はおおよそ15~20%程度ですが、5科目通じての合格率は数%となります。これは、税理士試験が長丁場になりやすく、途中で諦めてしまうケースが多いことを示しています。また、一度合格した科目は永久に有効です。このことから、税理士試験には要領のよさよりも粘り強さが必要だと言えます。

3.税理士の仕事で必要なのは問題解決能力

税理士の顧問先の中心は、中小企業あるいは一般の方です。彼らが税務申告や納税で困ったりすることなく、また、救済策があるならそれを活用したりして、適正に納税申告を行えるようにするのが税理士の役目です。

見方を変えると、目の前の現場で起きていることを一つ一つ解決していく能力が求められると言えます。この能力を磨くのに高い偏差値は不要です。日々、自己研鑽して経験を積んでいくしかありません。

おわりに

税理士試験自体が難関試験であるため「税理士になるには高い偏差値が必要なのではないか?」と思う人もいるかもしれません。しかし実際の税理士試験も税理士の仕事も、地道な努力の積み重ねが必要なだけで、決して高い偏差値を要するものではありません。

「コツコツと努力するのが好き」「粘り強さなら誰にも負けない」「困っている人の役に立ちたい」と思い、税理士業に興味があるのなら、ぜひ第一歩を踏み出していただければと思います。

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