税理士試験の難易度・合格率を調査! 合格しやすい人とは?
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税理士試験には選択科目があり、科目によって勉強する内容や必要といわれる時間にもかなりの違いがあります。学習の質と量が問われるという税理士試験では、限られた時間を効率よく使うことが合格の秘訣です。これから税理士試験を考えている方、科目の選択でお悩みの方に、税理士試験を難易度や合格率からご紹介いたします。
税理士とは? 取得方法や試験概要について
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税理士資格とは
税理士資格は、税務や会計業務を行う税理士を認定する国家資格です。税理士は、税務署などへの申告・申請を行う税務代理、税務書類の作成、税務相談などの独占業務を行うことが認められています。
税理士資格の取得
税理士資格を取得できるのは税理士試験合格者、もしくは資格、学位取得、職歴などによる試験免除者です。しかし、税理士試験に合格もしくは試験を免除されただけでは、税理士を名乗ることはできません。税理士として活動するためには税理士会への登録が必要です。税理士法により、通算2年以上の実務経験が登録要件と定められています。試験合格前の実務経験もこれに含まれます。
税理士試験の概要
税理士試験は、税理士になるために必要な学識およびその応用能力を有するかを判定する試験で、毎年8月に実施されます。学識、資格、職歴といった受験資格を満たした人が受験できます。
税理士試験は、会計学に属する科目の2科目(必須)と税法に属する科目のうち3科目(選択必須・選択)の合計5科目の合格をもって、合格となります。各科目とも合格基準点は満点の6割で、合格科目は生涯有効です。一度にすべて合格する必要はなく計画的に受験できる点から、働きながらでも挑戦しやすい資格といわれています。
分野 種類 科目名 会計学 必須 簿記論、財務諸表論 税法 選択必須 法人税法、所得税法のいずれか1科目を選択 選択 相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税のいずれか2科目を選択 受験者数・合格者数の推移
少子化の影響もあり、税理士試験の受験者数は年々減少しておりますが、令和元年度にはついに3万人を割りこむ結果となりました。受験者数の減少に比例して合格者数も減少していますが、合格率は15~20%の間で推移しています。合格率の推移をみるかぎりでは、受験者数の減少と合格率の間に相関関係はないようです。
受験者数 合格者数 合格率 令和元年度 29,779人 5,388人 18.1% 平成30年度 30,850人 4,716人 15.3% 平成29年度 32,974人 6,634人 20.1% 平成28年度 35,589人 5,538人 15.5% 平成27年度 38,175人 6,902人 18.0% <ココまでのまとめ>
・税理士試験は科目ごとに受験することができる。
・受験者数は減少しているが合格率とは比例していない。
税理士試験の難易度
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税理士試験の勉強時間から見る難易度
一般に、税理士試験に合格するために必要な勉強時間は、3000時間前後といわれています。
科目別では150時間から450~500時間の差があります。もちろん、税務に関する知識や実務経験などによっても変わってきますので、学習計画を立てる際の参考程度にご覧ください。
●科目別の勉強時間(目安)
科目名 種類 時間(目安) 出題内容の比率 簿記論 必須 450~500時間 理論0%:計算100% 財務諸表論 必須 450~500時間 理論50%:計算50% 所得税法 選択必須 600~700時間 理論50%:計算50% 法人税法 選択必須 600時間 理論50%:計算50% 相続税法 選択 450~500時間 理論50%:計算50% 消費税法 選択 450~500時間 理論50%:計算50% 酒税法 選択 150~200時間 理論40%:計算60% 国税徴収法 選択 150時間 理論100%:計算0% 住民税法 選択 200時間 理論50%:計算50% 事業税法 選択 200~250時間 理論30%:計算70% 固定資産税法 選択 250時間 理論50%:計算50% 税理士試験の合格率から見る難易度
科目別合格率で選択科目を比較すると、酒税法、住民税法、固定資産税法がおおむね上位に入っていますが、令和元年度だけをみると事業税法の合格率が高くなっています。出題内容や受験者によって合格基準が変動する場合があり、合格率が高い=難易度が低いということではないようです。
科目名 種類 平成29年度 平成30年度 令和元年度 簿記論 必須 14.2% 14.8% 17.4% 財務諸表論 必須 26.6% 13.4% 18.9% 所得税法 選択必須 13.0% 12.3% 14.7% 法人税法 選択必須 12.1% 11.6% 12.8% 相続税法 選択 12.1% 11.8% 11.7% 消費税法 選択 13.3% 10.6% 11.9% 酒税法 選択 12.2% 12.8% 12.4% 国税徴収法 選択 11.6% 10.7% 12.7% 住民税法 選択 14.3% 13.5% 19.0% 事業税法 選択 11.9% 11.0% 14.8% 固定資産税法 選択 13.3% 14.9% 13.7% 税理士試験の年齢別合格率から見る難易度
年齢層別でみると、合格率がもっとも高いのは25歳以下と26~30歳、すなわち20代の受験者です。時間が自由になりやすい、試験勉強のブランクが短いなど理由はいろいろ考えられますが、若いうちに受験する方が有利であるといえるでしょう。しかし、41歳以上でも、少なくとも10%以上の合格者は出ていますので、取り組み方しだいで合格できる可能性は十分にあります。
●年齢別合格率 ※( )内は受験者数
年齢 平成29年度 平成30年度 令和元年度 25歳以下 34.0%(3,960人) 27.0%(3,657人) 32.7%(3,706人) 26~30歳 24.5%(5,626人) 18.1%(4,900人) 23.0%(4,398人) 31~35歳 21.6%(6,270人) 16.8%(5,716人) 19.7%(5,360人) 36~40歳 18.2%(5,798人) 14.3%(5,268人) 16.2%(4,997人) 41歳以上 13.3%(11,320人) 10.0%(11,309人) 11.5%(11,318人) <ココまでのまとめ>
・必要とされる勉強時間から難易度を想定することができる。
・難易度が高い科目の合格率が常に低いとは限らない。
効率よく試験合格するためのポイント
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勉強しやすい環境選び
税理士試験は科目合格制度により、社会人として働きながらでも挑戦しやすいといわれていますが、それでも仕事と勉強の両立は容易なことではありません。税理士試験の受験を支援する制度を設けている会計事務所や税理士法人も増えています。科目合格者は優遇されることもあります。合格をめざして、税理士試験の準備のために勉強しやすい環境に転職するのも有効な方法です。
戦略的な科目選択、勉強方法
科目ごとの合格率を比較すると、比較的合格しやすい科目があるのがわかります。税理試験合格後の目標や興味がある科目が見つかっていない場合は、合格しやすい科目を選ぶのも戦略としては有効です。科目によって理論問題と計算問題の比率が異なりますので、得意なほうを選ぶという方法もよいでしょう。一方、勉強を続けるモチベーションを維持しやすいのは、将来のキャリアなどの目的意識や興味がもてる科目です。科目別合格率だけをみて選択することはあまりおすすめできません。
合格しやすいタイプとは
仕事に向き不向きがあるように資格取得にも適性があります。合格しやすいタイプの特長を真似して取り入れてみることが良い結果につながる可能性はあります。
・学習計画を着実に実行し、必要に応じて修正できる。
試験範囲が広く、各科目の難易度も高い税理士試験に合格するには効率的な学習計画をたて、自己管理する能力が必要です。
①学習期間を効率よく使う学習計画を作成する。
②学習計画のタスクを着実にこなす。
③達成できなかった部分をふまえ、定期的に計画を修正する。
④修正した計画に沿って遅れをカバーする。・無駄に迷わない。
模擬試験の結果や勉強の進み具合に一喜一憂したり、うわさやクチコミに振り回されて迷っていたりすると、勉強の効率は下がります。たとえば、科目別合格率を参考に選択することは考えられますが、前年度までの科目別合格率が高くても、自分がその科目で合格点をとれる保証はどこにもないのです。計画の見直しは必要ですが、他者の情報を基準にするのではなく、自分自身の状況をふまえた検討を行いましょう。
<ココまでのまとめ>
・税理士試験の準備のために勉強しやすい環境に転職するのも有効。
・データに振り回されるより、興味や目的意識をもてる科目がモチベーションを維持しやすい。
まとめ
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税理士試験に合格し、税理士会に登録したら、そこから税理士としてのキャリアが始まります。マイナビ税理士では、試験合格後に転職を考えている皆さまに向けて、個別の無料キャリア相談を行っています。すぐに転職したいという意思がなくても、合格後の進路に関するお悩みをご相談いただくだけでも大丈夫です。勉強時間の確保にお悩みの場合は、税理士試験へのサポート体制が充実した税理士事務所への転職という選択肢もあります。もちろんご相談費用はいっさいかかりません。まずはお気軽にお申し込みください。

監修
マイナビ税理士編集部
マイナビ税理士は、税理士・税理士科目合格者の方の転職サポートを行なう転職エージェント。業界専門のキャリアアドバイザーが最適なキャリアプランをご提案いたします。Webサイト・SNSでは、税理士・税理士科目合格者の転職に役立つ記情報を発信しています。
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