独学で税理士試験合格は可能なのか?独学で合格を目指す勉強法とポイント
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平均合格率12~14%の難関資格である税理士試験に、独学で臨んで合格することは可能ではあるものの、きわめて高いハードルと言えるでしょう。
特に会社勤めをしながら独学で税理士試験に合格したいのであれば、情報収集を行って合格までの戦略を練り、高いモチベーションを持ち続ける姿勢が求められます。
今回は独学で税理士試験合格を目指している方に向けて、受験科目の選択や教材の選び方、さらには会計事務所や税理士法人で働きながら税理士試験合格を目指す方法などを伝授します。
独学で税理士試験に合格することは可能なのか?
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税理士試験の概要と難易度
税理士試験は例年8月に実施され、新型コロナの影響が懸念された令和3年度(第71回)税理士試験も、例年通り8月17日(火)~19日(木)の日程で実施される予定です。合格発表は、令和3年12月17日(金)とされています。
全体の合格率は過去3年で15~20%前後を推移しており、合格には5年前後かかるのが一般的といわれる、非常に難易度の高い資格です。会計学2科目(必須)と税法3科目(選択必須・選択)の合計5科目の合格が必要ですが、一度にすべて受験する必要はありません。
各科目とも合格基準点は満点の6割ですが、6割とれば合格ということではありません。合格ラインは試験内容や正解率などをふまえて毎回決められ、合格ライン以上の得点上位者から合格となります。
科目別の合格率はまれに18~20%を超える場合もありますが、おおむね12~14%程度です。つまり、上位12~14%に入らないと科目合格できないということです。受験者数 合格者数 合格率 令和元2年度 26,673人 5,402人 20.3% 令和元年度 29,779人 5,388人 18.1% 平成30年度 30,850人 4,716人 15.3% 受験資格はあるの?
税理士試験は、学識、資格、職歴のいずれかの条件を満たしていれば受験することができます。海外の大学を卒業した場合などは、国税審議会の個別認定によって受験資格が認められます。
<学識による受験資格>
・大学、短大または高等専門学校を卒業し、法律学または経済学を1科目以上履修
・大学3年次以上で、法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上を取得法律学 法学、法律概論、憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法など 経済学 マクロ経済学、ミクロ経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、
国際経済論、金融論、貿易論、会計学、商品学、農業経済、工業経済など・修業年限が2年以上、課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上の専修学校の専門課程を修了し、法律学又は経済学を1科目以上履修
・司法試験合格者
・平成18年度以降に公認会計士試験の短答式試験に合格した者<資格による受験資格>
・日商簿記検定1級合格者
・昭和58年度以降の全経簿記検定上級合格者<職歴による受験資格>
以下の事務または業務に通算2年以上従事していたこと。
・法人または事業を行う個人の会計に関する事務(複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成業務など)
・銀行、信託会社、保険会社などにおいて、資金の貸付け・運用に関する事務
・税理士・弁護士・公認会計士などの業務の補助事務合格に必要な科目数は?
会計学2科目、税法9科目のうち3科目(選択必須1科目、選択2科目)の合計5科目の合格が必要です。
消費税法と酒税法、住民税と事業税を一緒に受けることはできません。分野 科目 会計学 簿記論、財務諸表論 必須 税法 所得税法、法人税法 選択必須
いずれか1科目相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税 選択
いずれか2科目必要な勉強時間は?
科目別に必要といわれる勉強時間から、合格までに必要な時間を考えてみます。
必要とされる勉強時間が少ない選択科目を選んだ場合でも、1800~1950時間の勉強時間が必要になります。
平日2時間、土日6時間ずつ勉強できたとしても週22時間、1年(52週)で1144時間ですから2年近くかかることになります。
より難易度の高い相続税法、消費税法などを選択する場合はさらに多くの時間が必要になると考えられます。<合格までに必要な勉強時間の例>
【必須】 簿記論 450~500時間
【必須】 財務諸表論 450~500時間
【選択必須】 法人税法 600時間
【選択】 国税徴収法 150時間
【選択】 酒税法 150~200時間
合計 1800~1950時間<科目別 勉強時間の目安>
必須 簿記論 450~500時間 財務諸表論 450~500時間 選択必須 所得税法 600~700時間 法人税法 600時間 選択 相続税法 450~500時間 消費税法 450~500時間 酒税法 150~200時間 国税徴収法 150時間 住民税法 200時間 事業税法 200~250時間 固定資産税法 250時間 <ココまでのまとめ>
・全体の合格率は15~20%前後。合格するまでに5年前後かかる難関資格。
・学識、資格、職歴のいずれかの条件を満たしていれば受験できる。
・会計学2科目、税法9科目のうち3科目の合計5科目の合格が必要。
・難易度が高くない選択科目でも、必要な勉強時間を消化するのに2年近くかかる。
独学で合格するために重要な事
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やる気、モチベーションの維持、管理
独学で合格するために重要なのがやる気、モチベーションの維持です。
税理士試験に合格するのに数年かかるのはごく普通のことですが、その間、モチベーションを維持し続けるのは容易なことではありません。
仕事との両立や勉強時間の確保、長期的な視点での計画、スケジュール管理など、乗り越えるべき課題は多いです。
税理士という仕事に対するモチベーションがないと難しいでしょう。
高いモチベーションを維持するために、会計事務所や税理士法人の「税理士補助」として働きながら、税理士試験をめざすという方法があります。
税理士補助は、税理士の業務に補助という形で携わることができ、税理士の仕事のやりがいや面白さを体感しながら、仕事を通して、税務の知識や経験を積むことができます。
モチベーションの維持につながるだけでなく、資格取得支援制度が用意されている事務所もあります。受験科目の選択
税理士試験は、どの科目をどのタイミングで受験するかを自分で選択することができます。
科目によって難易度や合格ラインが異なり、比較的難易度が高くないといわれる科目もあります。
難易度が高くないといっても誰もが合格できるということではなく、ほかの科目と比較すると学習に要する時間が短くて済むという意味合いであり、簡単に合格できるものではありません。
税理士試験のための学校では科目選択のノウハウや情報提供がありますが、独学の場合は自分で情報収集して考えなければなりません。
勉強の効率を重視する場合は難易度(必要とされる学習時間の長さ)や教材の豊富さを、モチベーションの維持には分野への興味や将来の目標を重視するとよいでしょう。
どちらかに偏らず、将来の目標やモチベーションと効率をバランスよく考えることも大切です。・自分自身の得意・不得意
・その分野に興味がある、将来のキャリアに必要な科目である
・難易度(必要とされる学習時間の長さ)
・独学に必要な教材が豊富にある<ココまでのまとめ>
・税理士試験合格をめざすための転職もあり。
・科目により難易度(必要な勉強時間の長さ)に差異がある。
独学は教材選びが重要
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教材選びのポイント
独学では、自分にあった教材(参考書)を探し出すことが重要です。
必須科目である会計学は2科目とも教材として使えるテキストが豊富に揃っていますが、簿記などの基礎知識がない場合は、簿記2級のテキストから入るとわかりやすいです。
また、頻繁に法改正がある税法は、書籍が税制改正に対応できていない場合もあります。試験対策の書籍とインターネットや経済誌などを併用して、最新の情報をチェックするとよいでしょう。
選択科目や選択必須科目は教材の種類が乏しい傾向があり、市販ではよい教材が見つからない可能性もあります。
税理士試験の予備校でテキストだけの販売もしていますので、探してみるのもよいでしょう。
テキスト購入者の質問に対応してくれる場合がありますので、独学のサポートにもなります。
参考書だけでなく、過去の問題を集めた問題集(いわゆる過去問)で試験の形式に慣れておくことも大切です。<ココまでのまとめ>
・教材の種類が少ない科目や法改正などの最新情報が反映されていないことも。
・税理士試験の予備校でテキストの販売を行っている。
まとめ
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独学で税理士試験に合格するのは容易にできることではありません。
知識を身につける学習能力に加えて、自己管理や情報収集、継続する力が重要です。
合格を最優先に考えるなら、自分に何が足りないかを考えながら柔軟に対応することをおすすめいたします。
社会人として働きながら合格をめざす場合は、仕事との両立というハードルもあります。
マイナビ税理士に、税理士合格をめざすのに最適な働き方を実現するお手伝いをさせてください。
お悩みのご相談だけでもお待ちしております。

監修
マイナビ税理士編集部
マイナビ税理士は、税理士・税理士科目合格者の方の転職サポートを行なう転職エージェント。業界専門のキャリアアドバイザーが最適なキャリアプランをご提案いたします。Webサイト・SNSでは、税理士・税理士科目合格者の転職に役立つ記情報を発信しています。
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