【税理士法】使用人等の監督義務とは?注意すべき行為について解説

税理士の使用人等の監督義務に最近、厳しい目を向けられるようになりました。コロナ禍を機にリモートワークが増加、これに合わせるかのように税理士法も改正されたことが影響していると思われます。使用人等の監督義務とは何か。そして、違反だとされるケースは何か。有資格者、税理士受験生、会計事務所スタッフ向けに注意点も含めて解説します。
目次
税理士の使用人等の監督義務とは?
開業税理士や税理士法人が他の税理士やスタッフに指示を出し、業務を行わせる場合、使用人等の監督義務責任が発生します。根拠となる規定は以下の通りです。
(使用人等に対する監督義務)
第41条の2 税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督しなければならない。
以下、それぞれ解説します。
なぜ使用人等の監督が必要か
使用人等とは通常、個人の税理士事務所や税理士法人の所属税理士や税理士ではないスタッフなどを指します。彼らは税理士とともに仕事をし、税理士業務の補助を行うわけです。当然、顧問先とも頻繁に接触します。
このような状況が日常的となると、税理士の独占業務とそれ以外との境界線があいまいになりがちです。放っておくと、税理士ではないスタッフが税務相談に応じたり、申告書などを作成したりする可能性があります。つまり、意図的でなくても税理士法違反行為になるおそれがあるわけです。
このような事態を防ぐべく、税理士法第41条の2では使用者である開業税理士や税理士法人および社員税理士に使用人としての監督義務責任を規定しています。
監督義務の内容
監督義務の内容はおおよそ、次の通りです。
使用人等の報告・連絡・相談の遵守
税理士事務所では、スタッフなどが直接顧問先とかかわることが日常的です。そのため、対面や電話、メールなどで報告・連絡を適宜受け、必要に応じて指示などを行う必要があります。また業務日報などでその日にあったことを使用人等に報告させること、服務規定や就業規則などでルールを明確化するなどが必要です。
使用人等の守秘義務
使用人等であるスタッフが顧問先と日常的に接触するということは、当然顧問先の秘密も知ることとなります。つまり使用人等も使用者である税理士と同じく、守秘義務を負います。これは在職中のみならず退職後も同じです。これも使用人が管理しなくてはなりません。
使用人等への研修
税理士には税理士法第39条の2により研修の受講が義務付けられています。これは使用人等となっている所属税理士についても同じです。ただ、税理士ではないスタッフについては研修受講義務はありません。しかし税理士事務所などにおける業務には高い専門性が求められます。また、教育をしなければ脱税ほう助などを誘発するおそれがあります。
そこで使用者である税理士などは、適切な指導・監督を図るべく、使用人等に対する研修を行う環境を整えることが必要だとされています。
使用人等の在宅勤務における監督義務
税理士法改正前は、事務所の判定要素の1つとして「使用人の有無」がありました。つまり使用人等の在宅勤務やサテライトワークが許されていなかったのです。
しかし2022年度(令和4年度)税制改正で税理士法が改正された際、事務所の判定要素から「使用人の有無」がなくなりました。現在、使用人等のリモートワークなどが可能となっています。ただし、使用人等の監督義務の遵守は必要です。これについては税理士法通達で次のように示されています。
参照:法令解釈通達(第1章総則第2条《税理士業務》関係)|国税庁
「使用人等」「使用者」とは何か
気になるのが「使用人等」「使用者」の範囲です。一般に「会計事務所のスタッフ」だけを指す、と思われがちです。しかし実際は、より広範囲となります。また、使用者も、私たちが考えるよりやや広範です。
使用人等の範囲
税理士法第41条の2に規定する使用人等とは、税理士と雇用関係にある使用人だけではありません。雇用関係のない者であっても、税理士業務に関して税理士の支配、監督権や指揮命令権の及ぶ者すべてが対象となります。当然、家族従業員も含まれます。
ただ、一口に使用人等といっても「どこまで税理士業務を行えるか」の違いがあります。税理士法第2条第1項に定める税理士の独占業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を行えるかで次のように分かれます。
税理士登録のある者
- 所属税理士
所属税理士とは、他の開業税理士あるいは税理士法人の補助者として雇用された上で、業務に従事する税理士を言います。このため、税務調査の立ち合いで自らの税理士証票を提示したり、税務書類を作成して署名したり、税務相談に応じたりすることはできるのですが、すべて「使用者税理士等(雇用主)の補助者として」の行為となります。
ただし、税理士法第30条に定める税務代理権限証書の提出はできません。事案を受任できる主体ではないからです。主体はあくまでも使用人税理士等となります。
なお、所属税理士であっても自らが主体となって直接依頼主から受任することも可能です。ただ、この場合、その都度、あらかじめ、雇用主である税理士や税理士法人から書面で承諾を得る必要があります。
税理士登録のない者
- 事務職員(正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトなど)
- 家族従事者
事務職員であれ家族従事者であれ、雇用契約かどうかを問いません。あくまで使用人である税理士等の指揮命令等が及び、監督権などが及ぶものすべてが対象となります。彼らは非税理士であるため、税理士の独占業務が一切できません。そのため、行える業務は、税理士の行う業務でも個別判断を必要としない事務作業や税理士法第2条第2項の付随業務など補助的なものにとどまります。具体的には、財務書類の作成、会計業簿の記帳などです。
使用者の範囲
「使用人等」がいるなら、当然、指揮命令を行う「使用者」もいます。ここでいう使用者とは次を指します。
開業税理士
開業税理士は、自分の税理士事務所の代表などとして使用人等を監督する義務を負います。
税理士法人(社員税理士)
税理士法人においては法人格だけでなく、税理士法人の構成員である社員税理士も全員、使用人等を管理監督する義務を負います。なぜなら社員税理士は全員、税理士法人の業務を執行する権利を有し、義務を負うからです。
懲戒処分
使用人等の監督義務責任を果たさず、税理士法第41条の2違反となった場合、原則「戒告又は1年以内の税理士業務の停止」となります。ただし、状況によって、次のように扱いが変わります。
使用者が使用人等の不正行為を認識していた場合
使用者である税理士などが使用人等の不正行為を認識していた場合、使用人等の不正行為は使用者が行ったものとされます。
使用者が使用人等の不正行為を認識していなかった場合
使用者である税理士などが使用人等の不正行為を認識していなかった場合、内部規律や内部管理体制に不備があるなどで使用者に相当の責任があると認められる場合、使用者が過失で不正行為をしたと扱われます。また、使用者の監督が適切でなかった場合でも懲戒処分の対象となります。
使用人等である所属税理士・スタッフなどが税理士法違反にしないためには
以上は使用者である税理士や税理士法人・社員税理士に課された監督義務ですが、使用人等であるスタッフや所属税理士も違反しないように注意しなくてはなりません。何かあったら自分で安易に判断して返答せず、所長に報告・相談する、書面に残す、連絡を密に行うなどが必要です。NOを顧問先に言う勇気も必要なこともあるでしょう。
気持ちよく仕事をするためにも、報告・連絡・相談は必ず行うようにしましょう。
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