【2025年度(令和7年度)税制改正】所得控除の所得要件が「48万円以下→58万円以下」に...影響する所得控除と注意点を解説

2025年度(令和7年度)税制改正では、所得控除の所得要件も変わりました。国税庁のパンフレットにも記載がありますが、条文に則った形での解説です。人によっては影響を受ける所得控除を見落とすかもしれません。今回は、税制改正で所得控除の所得要件が条文上、どう変わったのかを確認した後、どの所得控除に影響するのかを具体的に見ていき、最後にリスクを確認します。
目次
なぜ所得控除の要件が変わったのか
今回の税制改正では、基礎控除が48万円から58万円に引きあがったことで、所得控除の所得要件も変更となりました。なぜ基礎控除の引き上げが理由なのでしょうか。それは基礎控除が戦後、生存権に由来しているとされたからです。
生存権とは、次の内容を言います。
〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
参照:日本国憲法|衆議院
基礎控除を含めた所得控除は「所得税の課税対象から最低生活費を除く方法」とされています。ここで言う「最低生活費」とは上記の「最低限度の生活」を維持するために必要な部分を言います。そして基礎控除は現在、よほどの高額所得者でない限り、すべての人に適用されます。
また、基礎控除が適用されて課税標準額がゼロになる方は扶養の対象になる方です。配偶者控除の同一生計配偶者、扶養控除の扶養親族がこれに当たります。扶養されないと生きていけないレベルの所得しかないからこそ、所得者が扶養しているのです。また、扶養には生活費や教育費などのお金がかかります。扶養する所得者本人の担税力がそれだけ下がるため、配偶者控除や扶養控除と言った形で所得控除を受けられるのです。
「基礎控除が引き上げとなる」ということは、扶養される側の最低生活費の上限も変わることを意味します。ゆえに「基礎控除が変わる→扶養される側の所得上限が変わる」わけです。
参照:所得控除の今日的意義―人的控除のあり方を中心として―(田中康男)|税大論叢
2025年度(令和7年度)税制改正で所得要件が「48万円以下→58万円以下」となったもの
所得税法で、所得要件が引き上げとなったものを確認しましょう。
同一生計配偶者
同一生計配偶者の要件の1つである合計所得金額の要件は、これまで「48万円以下」でした。2025年分の所得税から「58万円以下」となります(所法2①三十三)。
扶養親族
扶養親族の要件の1つも、これまでは「合計所得金額48万円以下」でした。2025年分の所得税から「合計所得金額58万円以下」となります(所法2①三十四)。
ひとり親控除
ひとり親控除の対象となる「ひとり親」要件の1つは「生計を一にする子の総所得金額等が48万円以下」です。これが2025年分の所得税から「総所得金額等58万円以下」となります(所法2①三十一イ、所令11の2②)。
雑損控除
雑損控除の対象となる資産の要件の一つに「居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で総所得金額等が48万円以下であるものの有する資産」となっています。この総所得金額等の要件が、2025年分の所得税から「58万円以下」となるのです(所法72①、所令205①)。
勤労学生控除
勤労学生控除の対象となる勤労学生の要件の一つは「合計所得金額が75万円以下であり、かつ、合計所得金額のうち給与所得等以外の所得に係る部分の金額が10万円以下」です。この「合計所得金額が75万円以下」が「合計所得金額が85万円以下」となります(所法2①三十二)。
所得要件「48万円以下→58万円以下」が影響する所得控除
基礎控除の改正が影響するもののうち、特に影響が大きいのが「同一生計配偶者」「扶養親族」です。この2つの定義における所得要件の変更は、次の所得控除に影響します。
配偶者控除
配偶者控除の要件の一つは「居住者が控除対象配偶者を有する場合」です(所法83)。この控除対象配偶者の定義は次のようになっています。
控除対象配偶者 同一生計配偶者のうち、合計所得金額が千万円以下である居住者の配偶者をいう。
結果、配偶者控除における配偶者の合計所得金額が「48万円以下」から「58万円以下」となります。
配偶者特別控除
配偶者特別控除の条文の一部は次のようになっています。
居住者が生計を一にする配偶者(第二条第一項第三十三号(定義)に規定する青色事業専従者等を除くものとし、合計所得金額が百三十三万円以下であるものに限る。)で控除対象配偶者に該当しないもの(合計所得金額が千万円以下である当該居住者の配偶者に限る。)を有する場合には
控除対象配偶者の定義には同一生計配偶者が含まれます。そのため、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額の下限は「48万円以下」から「58万円以下」となるのです。
扶養控除
扶養控除の条文の一部は次のようになっています。
居住者が控除対象扶養親族を有する場合には
この控除対象扶養親族の定義の一部は次のようになっています。
控除対象扶養親族 扶養親族のうち、次に掲げる者の区分に応じそれぞれ次に定める者をいう。
扶養親族の所得要件が改正されたのは、すでに確認した通りです。つまり、扶養控除の対象となる親族の合計所得金額の要件は「48万円以下」から「58万円以下」と変わるわけです。
障害者控除
2 居住者の同一生計配偶者又は扶養親族が障害者である場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その障害者一人につき二十七万円(その者が特別障害者である場合には、四十万円)を控除する。
3 居住者の同一生計配偶者又は扶養親族が特別障害者で、かつ、その居住者又はその居住者の配偶者若しくはその居住者と生計を一にするその他の親族のいずれかとの同居を常況としている者である場合には、前項の規定にかかわらず、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その特別障害者一人につき七十五万円を控除する。
同一生計配偶者・扶養親族の所得要件が変更されたのは、すでに確認した通りです。結果、障害者控除において、配偶者と親族の合計所得金額も「48万円以下」から「58万円以下」となります。
寡婦控除
寡婦控除(所法80)の「寡婦」は次のように定められています。
三十 寡婦 次に掲げる者でひとり親に該当しないものをいう。
イ 夫と離婚した後婚姻をしていない者のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(1) 扶養親族を有すること。
扶養親族の所得要件が、今回の税制改正で変更されています。そのため、離婚した寡婦が扶養する親族(子以外)の合計所得金額の要件は「48万円以下」から「58万円以下」となりました。
注意点:所得控除を見落とした場合のリスク
所得控除の所得要件の改正は2025年分の年末調整と確定申告から反映されます。改正所得税法は2025年12月1日から施行されるのです。なお、所得要件の引き上げは個人住民税にも反映されます。改正が反映された地方税法は2026年1月1日から施行されます。もし改正を見落とすと、次のような事態になる可能性があります。
- 受けられるはずの控除を受けられない
- 扶養是正の指摘
- 年末調整のやり直しや更正の請求などの手間が増える
「どの所得控除が改正となるのか」「なぜ所得要件が変わるのか」を今から押さえておくと安心です。
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