日商簿記合格から税理士試験に挑戦する際の注意点とポイントは?
日商簿記検定に合格し、次の目標として税理士試験を目指そうとする方の中には、「簿記2級に合格したが、税理士試験を目指すにあたっては簿記1級を取得してからのほうがよい?それとも今の段階で税理士試験を目指しても大丈夫?」という疑問をお持ちの方や、「簿記3級に合格した後の次のステップとして税理士試験の受験を考えているが、勉強についていけるだろうか?まずは簿記2級に合格したほうがよいのだろうか?」という不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、日商簿記1級、2級、3級を合格した後で税理士試験に挑戦する場合のポイントや注意点などについて、日商簿記試験と税理士試験の共通点にも触れながら紹介します。
監修
マイナビ税理士編集部
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目次
税理士試験の概要
税理士試験を目指す方に向けて、まずは試験の概要、出題範囲、受験資格、合格するために必要な勉強時間について簡単に紹介します。
税理士試験の概要
税理士試験は、「税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」とした試験です(税理士法6条)。税理士試験は税理士法で「毎年一回以上行う」と規定されており(税理士法12条2項)、毎年8月に3日間かけて実施されます。
税理士試験の試験科目には、「会計学に属する科目」と「税法に属する科目」があります。会計学に属する科目は簿記論及び財務諸表論の2科目、税法に属する科目は全部で9科目です。そして、会計学に属する科目の2科目と、税法に属する科目から3科目の計5科目に合格することで、税理士試験に合格できます。
税法に属する科目の選択は人ぞれぞれですが、法人税法と所得税法は選択必須科目であり、どちらかに合格する必要があります。企業を顧客とする税理士に役立つ組み合わせは「法人税法・所得税法・消費税法」、独立開業を目指す方であれば「法人税法・相続税法・消費税法」が実務に役立つ選択といえます。
税理士試験は科目合格制を採用しており、受験者は一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験することも可能です。2年から3年で5科目合格する人もいますが、多くの人は1年に1科目か2科目を受験し、4年から8年ほどの時間をかけて合格科目を積み上げていきます。
税理士試験の出題範囲と会計科目の出題実績
税理士試験のうち、会計学に属する科目の出題範囲はそれぞれ次のとおりです。
科目 | 出題範囲 |
---|---|
簿記論 | 複式簿記の原理、その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。 |
財務諸表論 | 会計原理、企業会計原則、企業会計の諸基準、会社法中計算等に関する規定、会社計算規則(ただし、特定の事業を行う会社についての特例を除く。)、財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則、連結財務諸表の用語・様式及び作成方法に関する規則 |
上記の説明だと抽象的であるため、令和5年度(第73回)の簿記論及び財務諸表論の出題内容を、国税庁が公表している「税理士試験出題のポイント」を参考に概括します。
簿記論の出題内容は次のとおりでした。
問 | 出題内容 |
---|---|
1 | ・特殊仕訳帳(当座預金出納帳、仕入帳、売上帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳)を用いた記帳を行い、決算整理前の残高試算表を導出する ・自社で開発した場合のソフトウェアの取得原価の会計処理につき、未償却残高とソフトウェア仮勘定の計算や、仕様変更による破棄とソフトウェア完成による振替にかかる会計処理を回答する |
2 | 外貨建取引の換算、外貨建金銭債権債務の期末換算及び為替予約(独立処理)の会計処理を回答する |
3 | 決算整理前残高試算表から、決算整理事項等に基づき決算整理後残高試算表を作成する。決算整理事項には、未着品販売、圧縮記帳、税効果会計、退職給付引当金及びインセンティブ報酬等が含まれる |
また、財務諸表論の出題内容は次のとおりでした。
問 | 出題内容 |
---|---|
1(理論) | ・財務諸表の構成要素の基本となる用語に関する質問に回答する ・減損会計に関する質問に回答する |
2(理論) | ・自己株式と新株予約権に関する質問に回答する ・会計上の見積りの変更の処理に関する質問に回答する |
3(計算) | 与えられた資料を会計基準に当てはめて処理し、貸借対照表及び損益計算書を適切に作成する。資料に記載された個別論点には、株式交換、賞与、剰余金の処分及び配当、税効果会計などがある |
簿記論と財務諸表論は、いずれも簿記1級の出題範囲と多くの部分で重複しているため、簿記1級に合格している方であれば知らない論点は少ないはずです。一方、簿記2級に合格した状態の方にとっては、知らない論点もいくつかあるでしょう。
税理士試験の受験資格
税理士試験には受験資格があります(税理士法5条)。従来は、5科目すべてに受験資格要件がありましたが、税理士法の改正によって2023年4月1日以降に行われる試験については会計学に属する科目から受験資格要件が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。一方、税法に属する科目では受験資格要件が維持されています。受験資格を認められる主な方法は次のとおりです。
・日商簿記1級に合格する
・全経簿記上級に合格する
・大学3年生以上で62単位以上を取得する(社会科学に属する科目を1科目は履修する必要あり)
・大学卒業生で社会科学に属する科目を1科目は履修していた
大学2年生以下で税法に属する科目を受験しようとする場合は、原則として日商簿記1級か全経簿記上級に合格する必要があります。日商簿記の方が全経簿記よりも受験者数が多く、市販の教材も充実しているため、特にこだわりがなければ日商簿記1級の取得を目指すとよいでしょう。
税理士試験に合格するための勉強時間
選択する税法科目にもよりますが、税理士試験に5科目合格するために必要な勉強時間は、おおむね2,000から5,000時間程度だと考えられます。2,000時間はかなり要領よく勉強し、かつ一度も不合格になることなく科目合格を積み上げていった場合の目安であり、一般的には合格までに3,000時間から5,000時間の勉強時間を費やす必要があると考えておくとよいでしょう。
また、会計学に属する科目に合格するための勉強時間は、簿記2級合格レベルの知識を前提とすると、簿記論・財務諸表論それぞれでおおよそ400時間から600時間が目安です。2つの科目は親和性があるので、2科目を同時学習する場合は1科目ずつ学習するよりも合計の勉強時間が少なくて済みます。なお、簿記1級レベルの知識をすでに身に着けている場合は、記載した時間の半分から3分の2の勉強時間で済むでしょう。
日商簿記検定の各級数から税理士試験に挑戦する際の注意点とポイント
このセクションでは、日商簿記検定の1級、2級、3級から税理士試験に挑戦する際の注意点とポイントをご紹介します。
簿記1級から税理士試験
簿記1級の試験範囲と税理士試験の簿記論および財務諸表論の試験範囲は、多くの部分で共通しています。そのため、簿記1級に合格していれば、税理士試験の会計学に属する科目の勉強にスムーズに入っていくことができるでしょう。また、簿記1級に合格することで、税理士試験の税法に属する科目の受験資格を得ることが可能です。これは、簿記論・財務諸表論と並行して税法科目の受験にもチャレンジしようと考えている方にとって、おすすめのルートといえます。
簿記1級の概要や簿記1級と税理士試験との関連性について詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご参照ください。
簿記2級から税理士試験
税法に属する科目の受験資格を有している方であれば、簿記1級を取得せず、簿記2級合格から直接税理士試験の勉強を開始するのもよくあるルートです。簿記1級を取得してから税理士試験の簿記論・財務諸表論の勉強を始めるルートのほうが、税理士試験の勉強時間は短く済みます。しかし、その分だけ簿記1級の勉強に時間を取る必要が生じるため、ご自身の受験計画に沿ってどちらがよいかを選択するとよいでしょう。
なお、予備校の授業や市販の教材は、受講者や読者が簿記2級レベルの知識を有していることを前提としていることが多く見られます。そのため、簿記2級レベルの知識があれば、授業や教材の内容を理解することは可能です。「簿記2級には合格したが知識があいまいな論点がいくつかある」という方は、簿記2級のテキストを読み返してから税理士試験の勉強を始めることをおすすめします。
簿記3級から税理士試験
簿記2級のセクションで解説したとおり、予備校や市販の教材は受講者や読者が簿記2級レベルの知識を有していることを前提にカリキュラムが組まれています。そのため、簿記2級レベルの知識がないと、授業や教材についていけなくなってしまう恐れがあるでしょう。まずは簿記2級の勉強をして、簿記2級に合格してから税理士試験に挑戦するのがおすすめです。
まとめ
日商簿記に合格した後で税理士試験に挑戦する場合のポイントや、注意点などについて紹介しました。簿記1級と税理士試験の会計学に属する科目とには、高い関連性があります。そのため、簿記1級に合格してから税理士試験の勉強を始めるとスムーズでしょう。しかし、簿記2級に合格した次のステップとして、税理士試験を選択することもよく見られるケースです。簿記3級からの税理士試験はハードルが高いため、まずは簿記2級の合格に専念することをおすすめします。
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