税理士の仕事内容とは?税務業務についての解説
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税務の専門家である「税理士」の仕事は、法律によって定められている「3つの独占業務」である「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」に加えて、コンサルティングやアドバイザリー業務、会計参与、記帳代行、行政や司法の支援など多岐にわたり、所属先や得意とする専門分野によっても、仕事内容やワークスタイルが変わってきます。
税理士の独占業務や業務の流れを把握して、「税理士としてどのような働き方がしたいのか」をイメージしておきましょう
税理士の役割
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税理士の役割とは
税理士法の第一条で「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と定められています。
税理士には、クライアントの不正な行為を知った場合に速やかに是正するよう助言する義務があり、脱税などの違法行為の相談に応じたり、協力したりすることはできません。
税理士には業務上で知りえた秘密に対する守秘義務がありますが、税理士の使用者である従業員にも適用され、税理士には従業員に対する監督義務があります。それによって、クライアントは安心して相談や依頼ができるようになっています。
納税義務者を支援して納税義務を適正に実現し、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に貢献することが税理士の役割です。
税理士制度
税理士制度は1951年(昭和26)に税理士法によって定められた制度です。税理士となるには、税理士試験合格後に日本税理士会連合会の税理士名簿に登録しなければなりません。
試験合格者のほかに、税理士法に定める一定の要件に該当する者が税理士試験を免除され、税理士名簿に登録することができます。
また、税理士が税理士法人を設立した場合には、日本税理士会連合会に届け出る必要があります。
●試験免除の概要
対象者 免除内容 資格による試験免除 弁護士、公認会計士(一部研修が必要) 全科目 学位取得による科目免除 2002年(平成14)3月までに大学院に進学し、商学の学位(修士または博士)を持つ者、2002年(平成14)4月以降に大学院に進学し、会計系あるいは税法系の修士論文または博士論文を執筆し学位を得た者 一部科目 国税従事による科目免除 10年または15年以上税務署に勤務した国税従事者、23年または28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者 <ココまでのまとめ>
・税理士は納税義務者を支援し、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に貢献する。
・税理士になるには試験合格と日本税理士会連合会の税理士名簿への登録が必要。
・一定の要件を満たすと試験の一部もしくは全科目が免除される。
税理士の主な仕事内容
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税理士には3つの独占業務があり、税理士の主な仕事となります。独占業務以外に、記帳代行や給与計算、コンサルティングなどの税務に付随する業務や親和性が高い業務を行っている場合が多いです。
また、クライアントに付加価値を提供するために、保険代理店業務など、税務とは直接的な関係性がない業務を積極的に取り入れる税理士もいます。
税務代理
クライアントに代理して、確定申告、青色申告の承認申請などの税務を代行する業務です。e-Taxを利用して申告書を代理送信することができ、その場合には、クライアントの電子証明書は不要になります。
また、税務調査が入る際に立会いをしたり、税務署の更正・決定に不服がある場合には代理人として申立てをしたりすることもできます。
法人や自営業、個人事業主などが顧問契約のような形で継続的に委託する場合と、遺産相続や不動産売買などが発生したときに単発で依頼する場合があります。
税務書類の作成
税務申告では、確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申請書ほか、さまざまな書類が必要になります。これらの税務署などに提出する税務書類を作成します。独占業務である税務書類の作成を、有資格者以外が業務として請け負うと罰則にあたります。
ただし、税理士法人などの従業員が、税理士の指示のもとで行うことは問題ありません。その場合、従業員が作成した税務書類の当事者責任は税理士にあります。
税務相談
税金に関する相談を受け、助言するサービスです。税理士に委託すべきかを決める際の事前相談だけでなく、その案件に対する助言だけをもらう方法もあります。
独占業務以外の仕事
・記帳代行
会計帳簿の記帳代行、財務書類の作成、給与計算などの経理・財務に関連する業務全般を行います。・コンサルティング、アドバイザリー業務
税務に限らず、経営全般に関する助言やコンサルティング、M&Aなどのアドバイザリー業務などを行います。資金調達の助言だけでなく、金融機関との折衝を行う場合もあります。・会計参与
主に中小企業において取締役と共同して計算関係書類を作成し、会社の株主・債権者の求めに応じて開示するなどの職務も税理士の仕事のひとつです。・補佐人
税務訴訟において訴訟代理人である弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述します。・行政、司法の支援
国税審判官(国税不服審判所)、監査委員(地方公共団体)、民事・家事調停員(家庭裁判所)、法テラス(日本司法支援センター)、成年後見支援センター(各地域の税理士会)など、税務の専門家として行政や司法を支援しています。<ココまでのまとめ>
・税理士の独占業務は「税務代行」「税務書類の作成」「税務相談」。
・税務と会計の専門家として知識を活かした幅広い業務がある。
税理士業務の流れ
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個人顧客の場合
個人を顧客とする場合、自営業者や年金生活者、不動産オーナーなどの確定申告が仕事の中心になります。
確定申告は収入や経費を計算して税務署に申告する作業ですが、給与所得以外に収入がある場合は義務となります。確定申告によって1年間の納税額が決定します。直前の課税期間の確定消費税額によっては、消費税の中間申告も必要になります。
確定申告以外にも遺産相続税、登録免許税、不動産取得税の申告が不定期に発生する業務があります。
●個人の顧客の定例業務(中間申告がない場合)
時期 発生する業務 12月 年末調整 1月 源泉納付、給与支払報告、償却資産税申告 2~3月 確定申告(所得税、消費税) 法人顧客の場合
法人顧客の仕事は、顧客の決算期によってスケジュールが決まります。決算期は企業によって異なりますが、日本では3月、次に12月を決算とする企業が多く、年末調整の12月から決算後の確定申告が終了する4~5月までの期間が繁忙期となる税理士が多いようです。下表のほかに法人税、消費税の納税額によって中間納税が必要になります。
法人の顧客では、月次の試算表作成から決算内容をとりまとめる手順が月末などの締日ごとに行われ、中間決算、決算期に備えるといった流れが一般的です。
たとえば、例年にないほど大きな利益が出ると納税額が急増し、資金繰りが困難になる可能性があります。そうした場合に顧客の経営状況や財務内容を勘案し、正しい納税と経営を両立させる提案をすることが税理士の役割です。
●3月決算期の一年の流れ(中間納税がない場合)
時期 発生する業務 12月 年末調整 1月 源泉納付、給与支払報告、償却資産税申告 3月 決算 4月 財務書類の作成、確定申告(法人税、法人事業税、消費税など) 5月 <ココまでのまとめ>
・個人の顧客は法定の申告時期にあわせて業務が発生する。
・法人の顧客は法定の申告時期と決算期にあわせて業務が発生する。
・年末調整の12月から決算後の4~5月が繁忙期となる場合が多い。
まとめ
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ひと口に税理士といっても、所属先や専門性によって仕事の内容やワークスタイルは変わってきます。税理士をめざす段階で、自分なりに将来像をイメージしておけると、より良い形でキャリアをスタートすることができるでしょう。
そのためには、税理士の独占業務や業務の流れをしっかり把握して、税理士としての働き方を自分なりに考えておく必要があります。もちろん、働きながら別の目標を見つけることもあるでしょう。
税理士として就職・転職を考えるときには、業界の情報や市場動向に詳しいマイナビ税理士がご相談に応じます。

監修
マイナビ税理士編集部
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