税理士の転職先、どこがおすすめ?押さえておきたい3つのポイントも解説

税理士の転職先、どこがおすすめ?押さえておきたい3つのポイントも解説

税理士や科目合格者の転職先は最近、多様化しています。
個性のある会計事務所が増えてきたからです。また、一般企業も税理士を採用するようになりました。
選択肢がたくさんあると、それだけ迷いやすくなります。

今回は、主な転職先候補を紹介しつつ、選ぶときのポイントを解説します。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

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税理士・科目合格者の主な転職先4つ

税理士や税理士試験の科目合格者が転職するとしたら、どんなところが候補になるのでしょうか。
ここで主な転職先を確認しましょう。

Big4

Big4とは、世界4大会計事務所のことです。具体的には、次の4つとなります。

  • ・デロイトトウシュトーマツ(略称:デロイト、DTT)
  • ・プライスウォーターハウスクーパース(略称:PwC)
  • ・アーンスト・アンド・ヤング(略称:EY)
  • ・KPMG

これらの会計事務所は100年以上にわたる長い歴史を持ち、国際的なネットワークで会計・監査・税務・コンサルティングを上場企業などに提供しています。
日本の税務業界でのBig4は、この4つの傘下にある税理士法人です。
次のようになっています。

  • ・デロイトトーマツ税理士法人(デロイトトウシュトーマツ)
  • ・税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(プライスウォーターハウスクーパース)
  • ・EY税理士法人(アーンスト・アンド・ヤング)
  • ・KPMG税理士法人(KPMG)

「国際税務に関わりたい」「上場企業や大企業を相手に仕事をしたい」「大きな仕事でキャリアを積みたい」と考える人は、Big4への転職を考える傾向にあるようです。
また、「Big4出身」という経歴はブランドの一つです。後々の転職や独立開業で大きな強みとなります。

大手・中堅の税理士法人

Big4以外にも、伝統があり、知名度の高い会計事務所が複数あります。
通常の記帳代行や決算業務を含めて幅広く税務案件を請け負っていますが、最近は事業承継や規模の大きい相続案件、国際税務などが増加しているようです。

また、最近は中堅の会計事務所も注目を集めています。特に資産税分野では、開業して10年程度で一気に業務を拡大し、業界から一目を置かれる存在となったところもあります。

こういった会計事務所での経験も、後の転職や開業時の集客で強みとなります。
さらに、会計事務所によっては、他の会計事務所と協業し、相続案件や国際税務案件を行ったりすることもあります。OB同士のつながりも強く、退所後も仕事の依頼や紹介につながったりすることもあるようです。

個人の会計事務所

個人の会計事務所は、さまざまです。
所長の高齢化で後継者問題に悩んでいるところもあれば、新進気鋭の所長がITツールを使いこなして効率化を図り、生産性を上げているところもあります。


また、中堅の会計事務所と同様、特定の分野に特化して専門性を高め、難易度の高い案件を請け負っているところもあります。

個人の事務所への転職は、業務内容以上に所長の考えが重要です。
経験者を好む所長もいれば、「未経験者か、経験の浅い人がいい」という所長もいます。
相性の合うかどうかは難しいところですが、長く勤務できれば、将来の事務所の承継や経営参画への可能性も開けます。

一般企業・金融機関

今や一般企業も税理士の転職先の候補の一つとなりました。
IT企業やコンサル会社、金融機関などで税務の知識が求められているからです。IT企業ならば、税務関連のソフトやプログラムの開発で税務の知識を活かせます。

また、コンサルや金融機関ならば、M&Aや事業承継、融資などのアドバイザリー業務で活躍できます。経営状況を財務や経理から分析し、税務面からも建設的な提案を行えば、会社の信頼や評価を高めることにつながるのです。

こういった企業での経験を積んでいる税理士は、そう多くはありません。他の税理士との差別化や新たな業務の開拓につながります。

税理士の転職で押さえたい3つのポイント

税理士業界での転職は、めずらしくありません。

「これまでとは違う業務をやってみたくなった」「今いる会計事務所では成長が望めない」などといった動機があるかと思います。ただ、一番押さえておきたいのが「自分が将来どんな税理士になりたいのか」です。
会計事務所の規模や年収だけで選ぶと、「こんなはずじゃなかった」という結果になるかもしれません。

転職を考えるときは、次の3つのポイントを念頭に置きましょう。

将来の方向性

1つ目のポイントは、「将来どうしたいか」です。
独立するか、社員税理士となって誰かと一緒に経営するか、所属税理士として働くか、といった選択肢があります。

昔は「税理士になるなら独立開業」が王道でした。
しかし、2001年の税制改正で税理士法人制度が始まって以降、選択肢が増えました。

  • ・勤務先の税理士法人の社員税理士となり、経営メンバーの1人として参画する
  • ・仲間と共に税理士法人を立ち上げる

という方法も選べるようになったのです。

また、経営メンバーではなくスタッフである所属税理士として働くという選択もできるようになりました。
独立開業をするなら、税務だけではなく経営や営業のノウハウを身につける必要があります。「この会計事務所のような経営がしたい!」と思えるところがあるなら、積極的に話を聞きに行った方がよいかもしれません。

一方、「勤務先の社員税理士になる」「所属税理士として働き続ける」なら、腰をすえて会計事務所で経験を積むとともに、事務所の特性に慣れていく必要があります。「長く勤務したいと思えるかどうか」も判断材料にするとよいでしょう。

ライフスタイル

2つ目のポイントは、自分自身のライフスタイルです。

  • ・仕事をバリバリやって稼ぎたい
  • ・たくさん経験を積んで税務の知識を身につけていきたい

という仕事中心型なら、職員にたくさん業務を任せたり、研修を頻繁に行ったりするような会計事務所が合うでしょう。

「税理士試験の勉強時間は確保したい」「9時17時で働き、夜や土日は自分の時間としたい」「友人や家族との時間を大事にしたい」というライフワークバランス型なら、職員の時間を尊重してくれるような会計事務所がいいかもしれません。


ただ、今の会計事務所は多様です。残業が多いからといってレベルの高い税務ができるようになるとは限りません。
逆に、9時17時の就業時間でも、高度な知識と深い税務の理解を求めるようなところもあります。

「仕事中心型か、ワークライフバランス型か」は、あくまで自分に無理のない働き方をするための指標です。
遠い将来をも視野に入れるのなら、次の3つ目のポイントをも踏まえて検討する必要があります。

スペシャリストかゼネラリストか

3つ目は「一つの分野に特化した税理士になるのか、それとも幅広く何でもこなせる税理士になるのか」です。
近年の税制改正で税務は複雑化し、以前よりもはるかに高度な知識が求められるようになりました。

以前は会計事務所が年1~2回引き受ける程度だった相続税申告や資産税案件も、専門的に扱う会計事務所が登場しています。また、グローバルな取引の増加に伴い、国際税務に特化した会計事務所も増えてきました。
中小規模の会計事務所でも、難しい国際税務案件を扱うようになっています。
「税理士だから何でも知ってて対応できる」時代ではなくなったからこその現象です。

スペシャリスト型税理士になれば、深めるべき税務の分野を絞れるだけでなく、他の税理士との差別化も図りやすくなります。ただし、「毎月の顧問料収入に頼れない」「顧客が限定される」「ニーズがなくなる」といったリスクも覚悟しなくてはなりません。

「個人でも法人でも対応可能」「所得税も法人税も消費税も相続税も一通りこなせる」といったゼネラリスト型税理士なら、こういったリスクは抑えられます。
資金的なリスクを避け、なるべく安定して業務をこなしたいならゼネラリスト型はうってつけです。


しかし、まとまった収入を安定して得られるようになるには時間がかかります。
さらに、ゼネラリストだからといって特殊な案件がゼロになるわけではありません。

何を強みにするか」「どんな顧客とつきあいたいか」といった自問自答が求められると同時に、専門性の高い税理士との連携も必要になります。

税理士のおすすめ転職先をタイプ別に解説

ここで税理士のタイプ別に、おすすめの転職先を考えてみましょう。

独立して事業を拡大したいタイプ

「将来独立し、事務所を大きくしてガンガン稼ぎたい」というタイプは、拡大志向の会計事務所に転職するとよいかもしれません。拡大志向のところなら、税務だけでなく、マーケティングを含めた営業手法や採用のノウハウ、仕組み化の方法も学べるはずです。

ただ、事業拡大をするにしても「どんな案件でも対応できるゼネラリスト型か」「特定の分野を扱うスペシャリスト型か」で転職先は分かれます。雰囲気や規模、年収だけでなく、得意分野や事務所の強みにも目を向けてから選んだ方がいいでしょう。

家庭と仕事を両立したいタイプ

家庭と仕事を両立したいタイプは、残業がなく、職員の時間を尊重してくれる会計事務所や一般企業がいいでしょう。

ただ、9時17時であっても勤務時間は「経験を積み、知見を深める時間」です。
この積み重ねが将来の自分の税理士像となります。「どんな業務を行い、何を強みとしているか」「経営理念は何か」などにも着目して転職先を選んだ方がよさそうです。

なお、残業がなく、かつ利益をきちんと出している会計事務所は、生産性を重視し、効率化を図っているケースが少なくありません。


「どんなITツールを使っているのか」「マニュアルはどうなっているか」「研修のしくみはどうなっているか」まで確認してみるとよいでしょう。「将来独立しても家庭と仕事の両方を大事にしたい」と考えるタイプには、重要なヒントとなるはずです。

資産税など専門性をきわめたいタイプ

専門性をきわめたいタイプは、望む分野に特化した会計事務所がおすすめです。


しかし、最近は特定の分野でも、会計事務所ごとに特徴が異なります。低価格で大量に依頼を受けて一気に業務をこなすところもあれば、一人ひとりの顧客に向き合い、オーダーメイド型のサービスを提供するところもあります。

将来どのようなスタイルで仕事をしたいか」をも考えた上で、転職先を選ぶといいでしょう。

まとめ

税理士や科目合格者の転職は、複数の要素を検討しておく必要があります。「どんな会計事務所でどんな時間を過ごすか」が、将来の自分の税理士としてのあり方につながるからです。
高い年収を得られても、望んだ経験を得られなければ、「単に稼ぐだけで時間を浪費しただけ」で終わってしまいます。

開業税理士であれ、社員税理士であれ、所属税理士であれ、「目の前の顧客に誠実に向き合い、専門家としての使命をまっとうする」という点は変わりません。だからこそ、一つ一つの転職をおろそかにせず、真摯に検討したいものです。

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