税理士試験の科目のおすすめは?科目選びのポイントを税理士が解説

税理士試験を受けるにあたり、悩むのが科目選びです。特に税法受験が初めての方は、迷いやすいのではないでしょうか。「どの科目を選ぶか」は、試験の合否や将来の活躍に影響するからです。今回は、税理士試験の科目の選び方のポイントやおすすめを税理士目線で解説します。
目次
税理士試験とは?合格の要件を確認
最初に税理士試験のしくみと合格の条件を確認しましょう。
会計科目と税法科目がある
税理士試験の内容を大別すると、会計学に属する科目(以下「会計科目」)と税法に属する科目(以下「税法科目」)に分かれます。それぞれの内容は次の通りです。
会計科目
会計科目には、簿記論と財務諸表論の2科目があります。内容は似ていますが、簿記論は複式簿記のしくみに重点を置いているのに対し、財務諸表論は貸借対照表や損益計算書などの作成にあたってのルールを問うものが中心となっています。
なお、いずれも必修科目です。つまり簿記論も財務諸表論も合格しなくてはなりません。
税法科目
税法科目は、国税または地方税の法令に関する知識を問うものです。3科目に合格することが必要とされます。科目の内容、受験のしくみは次の通りです。
国税 | 法人税法 | 選択必修科目(2つのうち最低1科目は受験しないといけない) |
---|---|---|
所得税法 | ||
相続税法 | 選択科目 ※ただし、次の組み合わせはどちらか一方しか受験できない。 ・消費税法または酒税法 ・住民税または事業税 |
|
消費税法 | ||
国税徴収法 | ||
酒税法 | ||
地方税 | 固定資産税 | |
住民税 | ||
事業税 |
参照:税理士試験の概要|国税庁
国税の受験科目は税法ごととなっています。一方、地方税は地方税法に規定されている税目が受験科目となります。
税法科目は理論と計算がある
税法科目は基本的に理論と計算があります。それぞれの内容は次の通りです。
理論
出題された問に対して適切な回答を書き、税の法令などを根拠として挙げていきます。税理士は税法の専門家であり、日本の税は法律を根拠としているため、税法への理解が重視されるのです。
ただし、本試験で税の法令を書く際、税務六法などを参照することはできません。そのため、税に関する法令を事前に暗記する必要があります。
計算
与えられた問に対し、税法を根拠に税額計算などを行います。ここでは根拠条文などは問われず、数字や計算の流れが正しいかどうかが重要となります。
一度合格したら永久に有効
税理士試験は、ほかの資格試験と異なり、一度合格した科目は永久に有効となっています。15年前に合格した簿記論は、資格取得にあたり、そのまま合格科目として認められます。そのため、10年かけて1科目ずつ受け、合格することも可能です。
税理士試験の税法科目の選び方のポイント
税理士試験を受けるにあたり、悩ましいのが税法科目です。合格の難易度については、どの科目もあまり違いがありません。どの科目も合格率は10~20%ですが、20%を超えることもあれば、10%を下回ることもあります。
「合格しやすいかどうか」で税法科目を選ぶことは、あまり重要とは言えません。むしろ、次の点が選び方のポイントとなります。
相性が合うか
税法科目には、それぞれ特徴があります。法人税は法人のみが対象となるため、理論も計算も比較的シンプルです。一方、相続税法は、税額控除ごとに趣旨が異なるため条文が少しずつ異なります。また、相続税の計算過程も法人税に比べるとやや複雑です。また、酒税法はボリュームが少ない分だけ、深い理解が求められます。
このように、税法や税目によって特性が異なります。そのため、科目選びにあたっては相性が合うかどうかが大事なポイントとなります。「おもしろい」「楽しい」「覚えるのが苦ではない」__こういったモチベーションがなければ、試験勉強そのものが苦痛となってしまうからです。また、モチベーションが高まれば、短期間での合格もしやすくなります。
勉強のモチベーションを高めるには、自分と相性の合う科目を選ぶことが大切です。
関連性のある組み合わせか
科目同士に関連性があると、勉強がしやすくなります。内容が似ていれば、税法や税目への理解や暗記にかかる時間を短縮できるからです。たとえば、次のような組み合わせは、相互に関連性があると言えます。
- 所得税法・住民税...個人の所得に課税される
- 相続税法・固定資産税...個人の保有する資産に課税される
- 法人税法・消費税法...事業活動に課税される
このような組み合わせで税法科目を選ぶと、勉強の効率が上がる可能性があります。
実務で使うか
税理士事務所での税理士補助や会社の経理をしているのなら、実務で必要な科目を選ぶとよいかもしれません。日常の業務でよくかかわる税目だと、試験勉強でも理解が深まりやすくなるからです。また、試験勉強で得た知識や理解が、実務で役立つかもしれません。さらに、仕事の中でも調べたりするので、少ない勉強時間で効率よく合格できる可能性が高まります。
【状況別】税理士試験でのおすすめ税法科目
ここから、受験生の状況別に、税理士試験でのおすすめ科目を具体的に見ていきましょう。
短期間で合格したい人向け
短期間で合格をしたいなら、ボリュームで選ぶのも一つの方法です。次の科目は「ミニ税法」と呼ばれ、理論暗記などのボリュームが少ないとされています。
- 酒税法
- 固定資産税
- 住民税
- 事業税
- 国税徴収法
ボリュームが少ないため、暗記の負担は確かに少ないです。しかし、その分、試験では深い理解が求められます。また、理論は完璧に暗記し、計算もミスしないようにする必要があります。ボリュームが少ないということは、受験生の多くが全範囲を完璧に押さえてくる可能性が高いということだからです。
「ミニ税法はミニ税法ならではの合格の難しさがある」と意識して検討するとよいでしょう。
資産税分野で活躍したい人向け
資産税とは、資産の取得や保有、売却の際に課される税金の総称です。主に相続税・贈与税、固定資産税、譲渡所得税(所得税および住民税)を指します。少子高齢化や投資への関心の高まりから、資産税に強い税理士の需要は高まっています。また、税理士として資産税分野で活躍したい人も増えています。
資産税に強い税理士として活躍したい人は、所得税法、相続税法、固定資産税を受験科目に選ぶとよさそうです。ただ、不動産の売却には消費税がかかります。さらに、クライアントがオーナー企業の社長である場合、法人税法の知識も必要となります。
法人顧問を中心に活躍したい人向け
多くの税理士と同様、法人の顧問を生業としたいのなら、法人税法と消費税法は受験科目として選択するとよいでしょう。ほかの科目については、将来の実務に備えた勉強をしたいなら相続税か所得税、理論暗記などの負担を減らしたいなら固定資産税などのミニ税法を選ぶとよさそうです。
なお、消費税は現在、税理士職業賠償責任保険(以下「税賠」)の請求事由でもっとも多い税目です。実際、毎年の税制改正で複雑化しており、税理士でも理解するのが難しい税法となっています。事業活動に欠かせない税目でもあるため、筆者としては受験時代に勉強しておくことをおすすめします。
科目選びと転職で悩んだらプロに相談を
今回は、税理士試験における税法科目の選び方のポイントをお伝えしました。「受験科目として選ばなくても、合格した後で勉強するので十分」という考え方もあります。ですが「資産税特化型の税理士になりたい」「法人顧問として社長の伴走者になりたい」という思いがすでにあるのなら、科目選びはていねいに行った方がいいでしょう。
また、科目選びは税理士業界での転職活動でも重要です。「合格科目がある」だけでなく「どの科目に合格したのか」を、税理士事務所や税理士法人などの採用担当者が確認することもあるからです。
とはいえ、一人で悩んでもなかなか解決策は見つからないものです。科目選びを含めて転職に悩んだら、転職のプロであるマイナビ税理士にご相談ください。
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