「税理士事務所をどこにするか」で、その後キャリアは大きく変わります。これは単に専門にしたい分野や将来なりたい税理士像だけを言っているのではありません。所長やほかのスタッフとの相性、職場環境、勤務時間なども含めます。どう働き、どんな経験や知識を身につけたかで、税理士としてのキャリアは変わるのです。

ここで押さえておきたいのが、税理士事務所の職場としての特徴です。専門職として働く以上、一般企業とは違う点がいくつかあります。

税理士事務所で働く以上、専門知識が必要です。会計だけでなく、所得税法や法人税法、消費税法や相続税法の知識が必要となります。一般企業の経理や総務でも税務や会計の知識は求められますが、税理士事務所で働く以上、深く広く学ばなくてはなりません。また、最近はクラウド会計や電子申告を行っている事務所が多いため、ITに関する知識や好奇心も必要となります。

税理士事務所で働くスタッフには少なからず、税理士を目指す人がいます。税理士試験の勉強をしていたり、大学院に通っていたりする人が多いのです。そのため、職場での会話が仕事だけでなく、勉強に関する情報や経験に関するものになることがあります。

組織はトップのありように左右されます。これは一般企業だけでなく、税理士事務所も同じです。所長が勉強熱心なタイプなら、職員も必然的に本をたくさん読み、税務に関して考えさせられることが増えるでしょう。また、所長が事業拡大志向であれば、職場の雰囲気も成果や実績を重視する傾向になります。

すべてではありませんが、一般的に会計事務所で働くスタッフの給料はあまり高くありません。一部の科目に合格したり税理士資格を取得したりすると手当がついて昇給となるケースもあります。けれど残念ながら、高い報酬を望めるケースはそう多くはありません。
しかしその代わり、勉強できる環境が整っていたり、経験をいろいろさせてもらえたりするケースがあります。

税理士事務所は、どのような点に注意して選んだらよいのでしょうか。ポイントを5つにまとめました。

最初に意識したいのが事務所の特徴や専門性です。税理士になる前の段階から「資産税に強い税理士になりたい」「国際税務に特化したい」など、方向性を決めているなら特に注意した方がいいでしょう。また、特化した分野でも最近はいろいろな会計事務所があります。事業拡大に注力するところもあれば、一人ひとりのお客様に対してていねいに接していくことに重きを置いているところもあります。専門分野だけでなく、事業のスタンスにも意識を向けるといいでしょう。

時間や待遇はやはり気になるところです。特に税理士受験のための勉強中だったり大学院に通っていたりすると、就業時間が気になります。普段は9時から17時までの勤務時間であったとしても、繁忙期になると21時まで働くところもめずらしくありません。また、夏の本試験の際、どれくらい試験休みを取れるのかも大事です。就職してから気づいては後の祭りです。きちんと調べておきましょう。

税理士事務所の給料は、スタッフの段階では少ないところが多いものです。ただし、すべてがすべて、というわけではありません。経験や資格によって、高めの給料になることもあります。また、科目合格や資格取得で昇給となったりします。最初は少なくても、どういったしくみで昇給となるのかも調べておきたいところです。

税理士事務所で働けば、専門的な知識や経験は一通り積めます。しかしそれでもできれば気持ちよく働きたいものです。気持ちよく働ければ、その分在籍期間が長くなり、より深い経験を積むことができます。そこで見ておきたいのがスタッフの表情や職場の雰囲気です。気軽に質問できる空気があるかなどを見ておくといいでしょう。

税理士としてのキャリアを積んでいく以上、成長できるかどうかは重要なポイントです。同時に、自分の求めている経験を積めなければ意味がありません。就職してしばらくはどんな業務を任されるのか、経験値が高まったらどんな仕事ができるのかも知っておきたいものです。

面接は、自分に合う税理士事務所なのかどうかを知る最良のタイミングです。「ここで嫌われたら失敗だ」と感じて緊張するかもしれません。しかし、面接は、税理士事務所側と自分自身の相性を見る場面でもあります。次の点は、ぜひ確認しておきましょう。

たいていの会計事務所の繁忙期は12月から3月が一般的です。なぜなら年末調整と確定申告があるからです。ただし、事務所によっては「3月決算が多いから5月も忙しい」「資産税が中心であるため繁忙期がいつになるかが読めない」といったところもあります。
繁忙期は残業時間が増えやすい時期でもあります。ぜひ面接で確認しておきましょう。

勤務時間も気になるところです。閑散期は9時から17時あるいは18時まででも確定申告などで忙しくなると20時、21時まで働くことがままあります。また、先ほどお伝えした通り、繁忙期がいつになるかは事務所ごとに異なります。試験勉強や大学院の授業に支障が出ないよう、ていねいに聞いておきましょう。

たいていの税理士事務所は受験するスタッフのことを考えて7月下旬から8月上旬にかけて試験休みを設けています。ただし、どれくらいの日数で休めるかは事務所ごとに異なります。また、受験生や大学院生にとって勉強時間の確保は死活問題です。先ほどの勤務時間とあわせて確認しておきましょう。

経験や知識の浅いまま、専門業務を行うことはできません。そこで一部の税理士事務所は研修制度を設けています。ただし、しくみは事務所ごとに違います。会計ベンダー主催の研修に参加させるところもあれば、クラウドシステムでいつでも聞ける体制を整えているところもあります。さらに、スタッフ育成に熱心なところだと、事務所のブログや社内研修の講師をさせたりもします。

すでに在籍している先輩にどんな人がいるかも聞いてみましょう。有資格者が多いところなら、困ったときも相談しやすいかもしれません。また、在籍期間の長い人がいるのなら、働きやすいからこそ在している可能性があります。「語学に強い」「金融業界出身」といったキャリアのある先輩がいるなら、税務以外の学びも得られるかもしれません。

今回は、税理士事務所の選び方のポイントについてお伝えしました。何に注意すべきかが分かってホッとする人がいる一方、それでも不安がぬぐいきれない人もいるでしょう。そんなときは転職エージェントのキャリアアドバイザーにご相談ください。転職実績多数のキャリアアドバイザーなら、あなたに適した職場をアドバイスできます。

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