開業税理士の年収や業務内容は?所属税理士とどう違うの?
現在、社員税理士や所属税理士として働いている、あるいは税理士試験の勉強中の方なら、「将来的には自分の事務所を持ちたいと思っているが、今よりも年収が減る可能性を危惧している」「開業に向けた意思決定をする前に開業税理士の年収や業務内容を知っておきたい」と考えているかもしれません。この記事では開業税理士を目指す方に向けて、開業税理士の年収や業務内容を、社員税理士や所属税理士と比較しながら解説します。
監修
マイナビ税理士編集部
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目次
開業税理士・社員税理士・所属税理士の違いは?
まずは、税理士法で定められている税理士の登録区分について解説します。
税理士の登録区分
税理士となる資格を有する者が税理士の登録を受けるためには、開業税理士、社員税理士、所属税理士のいずれかとして登録しなくてはいけません(税理士法基本通達18-1)。そのため、すべての税理士はこれら3つの登録区分のいずれかに該当します。以下、各登録区分について簡単に見ていきましょう。
開業税理士とは?
「開業税理士」は自身の税理士事務所を設けている税理士のことで、税理士法基本通達では「社員税理士及び所属税理士以外の税理士をいう」と定義されています。開業税理士は社員ではなく、個人事業主として税理士事務所の経営を行う自営業者です。この点が、次に挙げる社員税理士や所属税理士との違いとなります。
社員税理士とは?
「社員税理士」は税理士法人の社員である税理士のことで、税理士法基本通達では「税理士法人の社員である税理士をいう」と定義されています。ここでいう「社員」は、その税理士法人に所属しているメンバーを意味するのではありません。税理士法人の出資者兼経営者である者を指し、その対義語は「使用人」です。社員はすべて業務を執行する権利を有し、義務を負う(税理士法48条の11)とされていることから、株式会社における取締役と似たような役割を担う(会社法348条)と考えるとわかりやすいでしょう。
所属税理士とは?
「所属税理士」とは、税理士法人または税理士事務所に所属する税理士のことです。税理士法施行令では、「税理士法2条3項の規定により税理士または税理士法人の補助者として当該税理士の税理士事務所に勤務し、または当該税理士法人に所属し、同項に規定する業務に従事する者」と定義されています(税理士法施行令8条2号ロ)。所属税理士はいわゆる使用人(サラリーマン)であり、税理士事務所の所長または税理士法人の社員からの指示に従って職務を遂行します。
なお、以前まで所属税理士はあくまでも補助者という立場であることから、自ら税理士業務の委嘱を受けることはできないとされてきました。しかし、2014年の税理士法改正後、使用者である税理士または税理士法人の承諾があれば所属税理士でも他人の求めに応じ、自らが委嘱を受けて税理士業務を行うことができるようになっています。
税理士の年収は?
公的統計データをもとに、登録区分ごとの税理士の平均年収についてご紹介します。
開業税理士の平均年収
まずは、開業税理士の平均年収について、経済センサス活動調査のデータをもとに見ていきましょう。経済センサスは総務省と経済産業省が5年に一度行う調査で、直近の経済センサス活動調査は令和3年(2021年)に実施されました。経済センサスは、「全産業分野の売上(収入)金額や、費用などの経理項目を同一時点で網羅的に把握し、我が国における事業所・企業の経済活動を全国的及び地域的に明らかにするとともに、事業所及び企業を対象とした各種統計調査の母集団情報を得ることを目的とした統計法に基づく基幹統計調査」とされています。
経済センサスの結果によると、税理士事務所1事業所あたりの売上高は4,926万円でした。従業者規模ごとの売上高は次のとおりです。
従業者規模 | 事業所数 | 1事業所当たり売上(収入)金額 |
---|---|---|
1人~4人 | 17,543 | 2,087万円 |
5人~9人 | 7,356 | 5,553万円 |
10人~19人 | 2,534 | 13,008万円 |
20人~29人 | 473 | 22,353万円 |
30人~49人 | 239 | データなし |
50人以上 | 87 | 118,935万円 |
また、個人が経営する税理士事務所の売上と費用は次のとおりです。
項目 | 合計 | 1事業所当たりの金額 |
---|---|---|
事業所数 | 23,723事業所 | - |
従業者数 | 93,078人 | 3.92人 |
売上 | 789,569百万円 | 3,328.28万円 |
費用 | 550,541百万円 | 2,320.71万円 |
売上 - 費用 | 239,028百万円 | 1,007.57万円 |
売上から費用を引いた金額が開業税理士の事業所得の金額と考えると、開業税理士の平均年収(売上高)は約3,300万円で、事業所得の金額は約1,000万円という結果となります。
社員税理士の平均年収
次に、社員税理士の平均年収について、賃金構造基本統計調査のデータをもとにご紹介します。賃金構造基本統計調査は厚生労働省が毎年実施している調査で、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにすることを目的に実施されています。
賃金構造基本統計調査の結果によると、企業規模が10人以上の事務所に所属する公認会計士・税理士の平均給与額は746.73万円でした(平均年齢は39.4歳)。内訳は残業代等含む月給が50.64万円/月(年換算すると607.68万円)で、特別給与等を含む年間賞与額が139.05万円です。
また、企業規模ごとの平均年収額と平均年齢は次のとおりです。
企業規模 | 年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
10人~99人 | 706.33万円 | 40.8歳 |
100人~999人 | 718.62万円 | 39.6歳 |
1,000人以上 | 922.29万円 | 34.3歳 |
以上から、公認会計士・税理士の平均給与額は746.73万円で、平均年収は企業規模が大きくなるほど増える傾向にあることがわかるでしょう。なお、これらの金額は社員税理士と所属税理士を含みます。そのため、税理士法人の経営を担う社員税理士の年収は、平均年収である746.73万円よりも高いことが想定されます。
なお、税理士法人の社員は、税理士法人に対して利益の配当を請求することができます(会社法621条、税理士法48条の21第1項)。税理士法人に利益が発生した場合は、社員税理士として勤務をした報酬の他に、利益の配当を受け取ることも可能です。
所属税理士の平均年収
所属税理士の平均年収のデータ元は、社員税理士と同じく賃金構造基本統計調査のデータです。所属税理士は社員税理士よりも平均年収が低いと考えられるため、公認会計士・税理士の平均給与額である746.73万円よりも平均年収は低くなることが想定されます。
なお、所属税理士であっても、勤務先の税理士法人または税理士事務所長の承諾があれば税理士業務を受任することが可能です。そのため、勤務先から受け取る給与以外の収入を持つ所属税理士も存在します。この場合は、給与に税理士収入を加えた額がその税理士の年収となります。
開業税理士の業務内容と開業のメリットデメリット
開業税理士の業務内容を踏まえ、他の2つの登録区分と比べたときのメリットデメリットについてご紹介します。
開業税理士の業務内容
開業税理士の業務内容には、税理士としての業務(申告書作成、税務相談対応など)の他に、事務所経営者としての業務(運営に関する意思決定、営業活動、従業員の採用やマネジメントなど)があります。従業員数が増えるほど、税理士としての業務よりも事務所経営者としての比率が増えることが一般的です。
開業税理士になるメリット
開業税理士になるメリットとしては次の3点が挙げられます。
・収入額が自分の努力次第で青天井である
・自分の裁量で業務を行うことができる
・組織規模が大きくなると、税理士法で定められた業務以外の業務を従業員に任せることができる
まず、開業税理士は個人事業主であるため、自分の努力次第で収入をどれだけでも伸ばすことができます。これは、自分がどれだけ頑張っても勤務先の経営状況や給与規程など次第で給与の額が左右される、社員税理士や所属税理士との大きな違いです。また、開業税理士は経営者であるため、受任する仕事を自分で選ぶことができます。やりたくない仕事、あるいは関係性構築が難しそうなクライアントなどからの依頼を、自らの意思で断ることが可能です。
そして、事務所の規模が大きくなれば一定の業務を従業員に任せ、自分は事務所経営者としての業務や税理士しかできない税務業務等に専念することもできます。この点は、税務業務に集中したいと考える方にとってメリットの一つといえるでしょう。
開業税理士になるデメリット
開業税理士になるデメリットは、次の3点が挙げられます。
・収入額が不安定になる
・自分を管理監督してくれる人がいなくなる
・営業活動や従業員のマネジメントを行う必要がある
まず、開業税理士は毎月決まった給与が振り込まれるわけではないので、収入額は不安定になりがちです。安定した収入を求めるなら、社員税理士や所属税理士でいる方がよいでしょう。また、開業税理士になると自分の上司がいなくなるため、自分を管理監督できるのは自分しかいなくなります。「誰かに監督されていないとつい怠けてしまう」という人は、上司の指揮命令の元で勤務する所属税理士の方が向いているかもしれません。
さらに、開業税理士になると税理士としての業務以外にも、経営者としての業務(営業活動や従業員のマネジメント)を行わなくてはいけません。ある程度の規模になれば従業員に業務を任せることもできますが、開業初期は難しい可能性が高いでしょう。
まとめ
開業税理士を目指す方に向けて、開業税理士の年収や業務内容を、社員税理士や所属税理士と比較しながら解説しました。統計を調べた結果、開業税理士の平均年収や事業所得の金額は、社員税理士や所属税理士と比べて高いという結果となっています。なお、開業税理士になるメリットもありますが、いくつかのデメリットもある点を覚えておいてください。開業をお考えの方は、メリットとデメリットの双方を十分に理解し、自分に合った働き方といえるのか検討しましょう。
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進路について適切なアドバイスをしてもらえました!自分の進路について明確な答えが出せていなかったものの、どの業種に進んだら良いかなど適切にアドバイスをしてもらえました。どういったキャリアを積んでいけばより市場価値を高められるのか、候補の会社がどう違うのかを具体的に説明していただけました。(30代/税理士)
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求人の提案力と面接のフィードバックが良かった!タイムリーな求人の紹介とフィードバックの提供が良かったです。面接前の情報提供では、自分のアピールしたい強みが、面接先企業のどこに符号しており、今後の展開をどう捉えているかの思考の整理をする際に役立ち、安心して面接を迎えることが出来ました。(30代/税理士)
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