税理士の実務経験「2年」とは?一般企業やバイト・パートはどうカウントすべき?
税理士登録をするなら試験合格以外に「2年以上の実務経験」が必須です。しかし「一般企業の経理は実務経験になる?」「パート・バイトでも実務経験期間としてカウントできる?」と不安になる方は少なくありません。実務経験は、業務内容や働き方によって認定の可否が分かれます。本記事では、税理士法が定める実務経験の意義、一般企業やバイト・パートの期間計算の仕方、そして登録に必要な在職証明書の取得についても解説します。

大原 剛
公認会計士・税理士
2007年、有限責任監査法人トーマツ入所。上場企業および大企業を中心とした会計監査業務に従事。
その後、プライム市場上場企業およびグループ子会社において、経理・税務・会計システム・予算管理など、コーポレート部門全般の実務を経験。
これらの経験を踏まえ、ハルサク会計を設立。現在は、税務申告業務に加え、上場企業水準の開示・内部管理を見据えたバックオフィス業務の仕組み化や、IT企業・スタートアップを中心とした会計・税務・管理体制の構築支援を行っている。
また、日本公認会計士協会東京会において、経営委員会委員およびテクノロジー委員会委員を歴任。
実務と制度の両面から、企業の成長フェーズに応じた実践的な会計・税務支援を強みとしている。
目次
税理士登録に必要な「2年」の実務経験とは
公認会計士または弁護士(これらになる資格を有する者を含む)を除き、税理士登録には、税理士試験の合格と、2年以上の実務経験が必要です。具体的にはどのような内容が規定されているのか詳しく見ていきます。
税理士法第3条に規定する「租税または会計に関する事務」とは
税理士として登録するための要件は、税理士法第3条に書かれています。
「実務経験2年以上」は、この条文のうち赤線の箇所を指します。ここでいう実務経験とは「租税に関する事務又は会計に関する事務として政令で定めるもの」に従事した経験のことです。実務経験の範囲については、税理士法、税理士法施行令および税理士法基本通達において、次のように定められています。
| 税理士法第3条第1項 | 税理士法施行令第1条の3 | 税理士法基本通達 |
|---|---|---|
| 租税に関する事務 | 税務官公署における事務のほか、その他の官公署及び会社等における 税務に関する事務 (3-1) | |
| 会計に関する事務で政令で定めるもの | 貸借対照表勘定及び損益勘定を設けて経理する会計に関する事務(特別な判断を要しない機械的事務を除く) |
簿記の原則に従って会計帳簿等を記録し、その会計記録に基づいて決算を行い、財務諸表等を作成する過程において簿記会計に関する知識を必要とする事務 |
参照:税理士登録の手引(令和8年5月)P2|日本税理士会連合会
なお「会計に関する事務で政令に定めるもの」には「特別な判断を要しない機械的事務」が含まれません。この機械的な事務とは「簿記会計に関する知識がなくともできる単純な事務」を指します。電卓やパソコンを使用してできる単純な計算や会計ソフトへの入力がこれにあたります。
「通算2年以上」とは
「実務経験の期間が通算2年以上」は、通常の勤務時間内で税務または会計に関する事務に従事していた期間が、原則として合計2年以上あることを意味します。ただし、非正規雇用や短時間勤務、他業務との兼務がある場合は、対象となる税務・会計事務への従事時間や業務割合を確認して判断します。
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実務経験にカウントするもの・しないもの
2年間の実務経験として計上可能な業務は、租税に関する事務と会計に関する事務の2種類です。一方で、特別な知識を必要としない単純な業務は実務経験として認められません。ここでは、具体的にどのような業務が該当し、どのようなものが該当しないのかを解説していきます。
実務経験にカウントするもの
実務経験には、租税に関する事務または会計に関する事務がカウントされます。具体的な事務の内容は以下の通りです。
- 税務官公署での事務や、そのほかの官公署や会社などでの税務事務
- 貸借対照表勘定と損益勘定を利用し、会計についての計算などを行う会計事務
- 仕訳帳等から各勘定への転記事務
- 元帳を整理し、日計表または月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
- 決算手続に関する事務
- 財務諸表の作成に関する事務
- 帳簿組織を立案し、原始記録(売上伝票やレジペーパーなど)と帳簿記入の項目を照合点検する事務
実務経験にカウントしないもの
会計事務所などの経理実務に携わっていても、簿記会計の知識を必要としない事務や、データ入力や計算といった単純な事務作業は、実務経験にカウントされません。また、原則として通常の勤務時間内での勤務時間のみが加算されます。時間外勤務(残業時間)は含まれません。
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【働き方別】実務経験のカウントの仕方
実務経験のカウントは、非正規雇用の場合は実働時間、一般企業の経理の場合は実務経験に該当する業務への従事時間の積み上げ計算で行われます。それぞれの働き方別での計算方法を詳しく解説していきます。
バイト・パート・派遣社員の場合
アルバイトやパート、派遣社員など非正規雇用で実務経験を積む場合は、勤務時間数の積み上げ計算が必要です。このときの積み上げ計算は以下を基準として計算します。なお、無報酬で従事した時間は、基本的に実務としてカウントされません。
- 1日の従事時間は7時間を限度とする。
- 1月の従事時間は154時間を限度とする。
- 2年相当の従事時間は3,696時間(154時間×24か月)とする。
従って非正規雇用の場合は、3,696時間以上勤務することで、2年間の実務経験の条件を満たすことができます。登録申請のときは、後述する在職証明書と併せて「積上げ計算書」の提出が必要です。
一般企業の経理の場合
一般企業の経理部門でも、実務経験を積むことは可能です。この場合も積み上げ計算が必要となります。また、従事した内容に実務経験に該当する以外のものが含まれているなら、実務経験にあたる事務に携わった時間を抽出し、積み上げ計算をします。
一般企業勤務の場合、在職証明書と併せて「職務概要説明書」の提出が必要です。これは会計業務とほかの業務を兼任している、またはほかの会社に並行して勤務しているといった場合に、実務経験の期間を判断するために提出を求めるものとされています。税理士事務所と異なり、会計や経理業務を担当していても、そのほかの業務も兼任していることが多いため、職務概要説明書をもとに税理士会が業務内容を確認します。また、職務概要説明書とともに、所属した企業の組織図の提出も必要です。
実務経験のカウントをするときの注意点
実務経験の2年間は、複数の勤務先での実務経験を合わせた計算が可能であるほか、試験に合格前の実務経験も計算が可能です。

勤務先が複数ある場合
2年の実務経験は複数の勤務先での実務経験の合算も可能です。トータルでの在職期間、勤務時間が2年間を満たしていれば問題ありません。ただし、2年間の実務経験に含まれる全ての勤務先での「在職証明書」が必要になります。
税理士試験合格前の実務経験がある場合
実務経験2年以上という期間を積み上げるタイミングは問われないため、税理士試験に合格する前でも後でも構いません。なお、試験に合格した時点で必要な実務経験を満たしていれば税理士登録できるため、実務経験を積みながら試験勉強を進める人も多くいます。
実務経験2年を早く満たすには?
実務経験2年の要件をなるべく早く達成するには、時間の有効活用が欠かせません。実務経験として認められる業務を中心に行える企業を選ぶ、正規雇用で勤務するなど、毎日の限りある時間をうまく使うための工夫が大切です。
実務経験の積める職場を選ぶ
2年の実務経験の条件を早く満たすには、働いている時間がそのまま実務経験になるような職場を選びましょう。会計事務所や税理士法人は実務経験としてカウントされる業務が多いため、実務経験を積むにはおすすめの職場です。また、これらの企業の多くは在職証明書の発行に慣れています。
一般企業の経理で実務経験を積む場合は、在職証明書に加えて職務概要書や企業組織図の提出が必要で、慣れていない企業では対応に時間がかかる可能性があります。また、予算管理や決算補助など、実務経験としてカウントされない業務が中心となるケースもあるため、一般企業で実務経験を積もうと考えている場合は、必ず確認するようにしましょう。
登録申請を見据えている場合は、在職証明書の発行手続きや、提出が必要な書類について、早めに確認しておくと安心です。
正規雇用で働く
アルバイトで実務経験を積もうとすると、実働時間で2年分(約3,696時間)働く必要があります。それに対し正規雇用であれば、対象業務に従事できない場合を除き、在職期間=実務経験の期間となるため、より早く実務経験の要件を達成でき、在職証明書の発行も受けやすくなります。また、アルバイトなどの非正規雇用と比べて、責任のある業務を任される可能性が高く、実務能力の向上も見込めます。
どんな実務経験が有利?転職先別に確認
実務経験を積むなら、会計事務所や税理士法人に勤務することがスムーズです。しかし、将来の転職を見据えた場合、どのような実務経験を積んでおくのがよいのでしょうか。会計事務所、税理士法人の特色別にご紹介します。
一般の会計事務所・税理士法人
「いろいろな業種のお客さまと接したい」「一通りの税務を身につけたい」と思うなら、一般の会計事務所に就職するとよいでしょう。ここでいう「一般の会計事務所」とは、顧問業はもちろんのこと、法人の決算や個人の確定申告、年末調整など、幅広く税務を担う会計事務所を指します。
ただ、「一般の」といっても、特色は会計事務所ごとに異なります。使用する会計ソフトが一般人も利用するクラウド会計か、あるいは会計事務所がメインのものかでも違います。記帳一つにしても、手で入力するか、スキャンやデータ取込をするかの違いがあります。また、社内研修の頻度やスタイル、情報共有のシステム、チェック体制なども異なります。幅広く行うにしても、創業支援特化なのか、飲食業・小売業特化なのかといった違いもあります。
就職する前に、自分が今どういう業務に最も関心があるか、自分の得意分野は何か、将来どういう税理士になりたいかを明確にしておくとよいでしょう。また、いったん就職したら、日常的な税務・会計のスキルはもちろんのこと、積極的に手を挙げて仕事をこなしましょう。多くの案件をこなすことで、業種別の特徴や申告書をミスなくスムーズに作成するコツ、ヒアリングのスキルなどが磨かれていきます。
資産税特化型の会計事務所・税理士法人
資産税とは、相続税・贈与税、固定資産税や譲渡所得など、資産運用や管理、相続・贈与などにかかわる税の総称です。近年、少子高齢化や相続の増加により、資産税に関する税務サービスの需要が高まっています。これに伴い、この分野に特化した会計事務所や税理士法人も増えています。
資産税特化型の会計事務所で経験を積む場合、「いかに抜け漏れを防ぐか」が重要です。業務のフローチャートや面談時のチェック、質問のスキルを磨くとよいでしょう。また、税法や通達への理解を深めるだけでなく、「どのようなプランなら納税額を抑えられるか」を考えることも重要です。
なお、最近は海外不動産に投資する富裕層も増えています。勤務先が資産税特化型なら、海外不動産の不動産所得や譲渡所得、相続税や贈与税の申告案件も出てくるかもしれません。国内だけでなく海外の法体系や税法も勉強しつつ、特殊な案件にチャレンジするとよいでしょう。
国際税特化の会計事務所・税理士法人
ヒト・モノ・カネが国境を越えて行き来するようになった今、国際税務の重要性は高まっています。日本から海外に事業を展開するだけでなく、海外の事業者が日本に進出するケースもめずらしくありません。また、事業者本人が国境をまたいで住居や事業所を移転しないにしても、オンラインで国際的な事業を展開するケースもあります。このような事案にかかわりたいなら、国際税務専門の会計事務所で働くとよいでしょう。
経験を積むにあたっては、語学力はもちろん大事です。ただ、それ以上に異文化や法体系の違いに対する理解も重要です。日本の法律がそのまま外国で適用できることはまずありません。このほか、租税条約やPE課税、移転価格税制がどのような場面で適用されるかの感覚を磨くことも大事です。
コンサルティング中心の会計事務所・税理士法人
一般的な記帳代行や税務顧問よりも、コンサルティングに強い会計事務所もあります。ジャンルは資金調達や事業戦略、マーケティングといった経営コンサルティングやM&Aなどの組織再編や事業承継に関するコンサルティング、不動産経営に関するコンサルティングなどさまざまです。
こういったところで働くなら、事業全体を俯瞰して特徴や傾向を分析し、どういう助言が適切かの目を養うとよいでしょう。節税のアドバイスももちろん求められます。ただし、税理士である以上、クライアントと単発ではなく継続でかかわり、行ったアドバイスや税務申告には責任を取らなくてはなりません。長期的な視点から顧客の利益を考え、リスクにも気を配る姿勢が大事です。また、仕訳や決算書、税務申告の作成といった地道な作業もこなす必要があります。
税理士登録に必要な実務経験をどこで積めばよいかお悩みの方や、現在の職場の業務で実務経験が積めているのか不安という方は、まずプロに相談しましょう。マイナビ転職 税理士は、税理士業界専門のキャリアアドバイザーが、転職のご相談から法人・企業の紹介、給与交渉まで、転職活動を幅広くサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。
実務経験ゼロから税理士を目指す転職のポイント
現時点で実務経験がない方もいるでしょう。そのような方が会計業界への転職を成功させるにはどうしたらよいのでしょうか。ポイントをまとめました。

簿記2級や科目合格を取得する
未経験の場合は、自身の知識やスキルを客観的に示せるものを用意しましょう。おすすめは「日商簿記2級」か「税理士試験の科目合格」です。
会計事務所の多くは、日商簿記2級に合格している人材を必要としています。日商簿記2級は税理士試験の簿記論・財務諸表論に合格できるレベルの会計知識を持つことの証明となる資格です。また、税理士試験の科目に合格していれば、経験がなくても、実務で有用であると見なされます。
転職のタイミングを見極める
転職のタイミングは重要です。会計業界は12月から3月が繁忙期、6月から9月頃が閑散期とされています。転職活動は、会計事務所の業務が比較的落ち着いている時期に行うと、スムーズに進みやすいでしょう。
年齢で自分の棚卸しをする
転職前に、自分の経歴の棚卸しをすることが重要です。また、年齢によって、会計事務所から求められることは異なります。20代ならばポテンシャルで通用しますが、30代半ばになるとそれまでの職歴や経歴も問われるでしょう。「異業種でもこの会計事務所で役立つことは何か」など、少しでも希望先のプラスになるものを見つけておくことが大切です。
まとめ
「早く税理士になりたい」と思っていると「実務経験が積めるならどこでもよい」と考えてしまいがちです。しかし、会計事務所や税理士法人も一般企業と同じく「相性」というものがあります。実務経験を積めれば十分というわけではなく、職場環境や業務内容、自分に合った働き方ができるかどうかも重要です。だからこそ、転職先選びは慎重に行う必要があります。
とはいえ、求人票だけでは分からないことも多く、自分に合った職場を見極めことは簡単ではありません。
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進路について適切なアドバイスをしてもらえました!自分の進路について明確な答えが出せていなかったものの、どの業種に進んだら良いかなど適切にアドバイスをしてもらえました。どういったキャリアを積んでいけばより市場価値を高められるのか、候補の会社がどう違うのかを具体的に説明していただけました。(30代/税理士) -
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