令和6年度(2024年度)税制改正を一気に解説①個人向け:定額減税、子育て向け住宅ローン控除など

令和6年度(2024年度)税制改正を一気に解説①個人向け:定額減税、子育て向け住宅ローン控除など

昨年12月14日に令和6年度(2024年度)税制改正大綱が発表されました。「定額減税」「子育て世帯向け住宅ローン控除」など、子育て支援を中心とした改正内容となった模様です。1回目の今回は、個人一般向けの税制改正を中心に主なものをピックアップして解説します。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

目次

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個人向け税制改正1:定額減税の実施

2024年度(令和6年度)税制改正でもっとも注目を集めたのは「定額減税」です。デフレから脱却し、構造的に賃上げを実現するための一環として創設されました。ただし、恒久的な措置ではなく、所得税・個人住民税ともに1年限りとなります。

1人あたり「所得税で3万円、住民税で1万円」が基本の減税

原則、次の金額が所得税と個人住民税(所得割)から差し引かれます。

  • 2024年分(令和6年分)所得税...1人あたり3万円
  • 2024年度(令和6年度)個人住民税(所得割)...1人あたり1万円

ここで言う「1人あたり」とは納税者だけでなく、同一生計配偶者と扶養親族を含みます

つまり納税者本人だけなら「所得税3万円、個人住民税1万円」がそれぞれの税額から差し引かれます。しかし専業主婦の妻と高校生の子が1人いたら「所得税3万円×3人=9万円、個人住民税1万円×3人=3万円」が税額控除となるのです。

なお「同一生計配偶者」「扶養親族」の要件は、次のようになっています。

同一生計配偶者(所法2①)
  • 居住者の配偶者
  • 居住者と生計を一にする
  • 合計所得金額が48万円以下
  • 青色事業専従者として給与の支払いを受けた人、白色事業専従者となっている人を除く
※納税者本人の合計所得金額は要件となっていない
扶養親族
  • 居住者の親族(民法第725条に定める親族を言い、配偶者を除く)と里子、養護受託者に委託された老人
  • 居住者と生計を一にする
  • 合計所得金額が48万円以下
  • 青色事業専従者として給与の支払いを受けた人、白色事業専従者となっている人を除く
※納税者本人の合計所得金額は要件となっていない
※16歳未満の親族を含む

合計所得金額1805万円以下が対象

定額減税は、納税者本人の合計所得金額が1805円以下である場合のみ対象となります。
給与所得のみの場合、この基準を給与年収に引き直すと次のようになります。

  • 所得金額調整控除の適用なし...給与年収2000万円以下
  • 所得金額調整控除の適用あり...給与年収2015万円以下

このほか、特定支出控除に適用があるなら、給与年収基準はもう少し上がることとなります。実際には、合計所得金額はさまざまな所得を合計したものです。正確に計算する必要があります。

参照:専門用語集|国税庁

源泉徴収税額と予定納税で徴収し、年末調整と確定申告で調整

定額減税の控除のしかたは、かなり複雑です。給与所得者、公的年金等の受給者、事業者等に分けて、所得税は次のように3万円控除を行います。

対象者 控除の時期 最終的な調整
給与所得者
  1. 2024年6月1日以後最初に支払いを受ける給与等(甲欄のみ)
  2. 1で控除しきれない金額は2024年中に支払われる給与等で控除(年の最後に支給される給与等は対象外)

2024年分の年末調整
公的年金等の受給者
  1. 2024年6月1日以後最初に支払われる公的年金等
  2. 1で控除しきれない金額は2024年中に支払われる公的年金等で控除
2024年分の確定申告
事業所得者等
  1. 2024年の第1期分予定納税
  2. 2024年の第2期分予定納税
2024年分の確定申告

個人住民税(所得割)での1万円控除は、次のようになります。

対象者 控除の時期
給与所得者(特別徴収)
  1. 20246月は特別徴収をしない
  2. 20247月から20255月まで「個人住民税額-特別控除」×1/11を毎月徴収
公的年金等の受給者
  1. 2024101日以後支払われる公的年金等で順次控除
事業所得者等(普通徴収)
  1. 2024年度第1期分の納付額から順次控除

注意点

定額減税については、次のような注意点があります。

  • 同一生計配偶者と扶養親族は居住者のみ対象(国外在住だと控除されない)
  • 個人住民税からの1万円控除について、同一生計配偶者の控除分は次のように扱う
    1.控除対象配偶者...2024年度分の個人住民税(所得割)が対象
    2.1以外の同一生計配偶者...2025年度分の個人住民税(所得割)が対象

なお、2024年1月19日、国税庁から源泉徴収義務者にあてて、次のようなお知らせが出ました。こちらもご確認いただいた方がよいかと存じます。

参照:令和6年分所得税の定額減税の給与収入に係る源泉徴収税額からの控除について|国税庁

個人向け税制改正2:子育て特例の住宅借入金等特別控除

定額減税の次に注目されたのが「子育て世帯向けの住宅借入金等特別控除」です。少子高齢化対策の一環として、新たに設けられました。本来、住宅借入金等特別控除の限度額は2024年分以降から引き下げられるのですが、一定要件を満たす子育て世帯が住宅ローンを組むと2023年までの2年間の水準に上乗せされます。

子育て世帯向けの優遇措置ではありますが、住宅借入金等特別控除であることには変わりありません。そのため、本稿でお伝えする以外の要件は、ほかの住宅借入金等特別控除と同じです。なお、子育て特例の住宅借入金等特別控除の制度は「一般」「東日本大震災」「リフォーム」の3つに分かれます。

共通:40歳未満か40歳以上かで要件が変わる

注目したいのが「年齢や家族状況による要件」です。従来の住宅借入金等特別控除の制度で問われるのは、合計所得金額や床面積等でした。今回創設された子育て世帯向け(以下「子育て特例対象個人」)の住宅借入金等特別控除では、40歳未満か40歳以上かで次のように家族の状況が問われます

  • 40歳未満...配偶者を有する者
  • 40歳以上...年齢40歳未満の配偶者を有するか、年齢19歳未満の扶養親族を有する者

上記のどちらかに当てはまり、かつ購入した家に2024年中に入居すれば、限度額上乗せで住宅借入金等特別控除の適用が受けられるのです。

共通:2024年中の入居が対象

この措置も定額減税と同じく、1年限りです。2024年1月1日から12月31日までに入居することが求められます。

共通:対象となる住宅

対象となる住宅は次の通りです

  1. 新築の認定住宅等
  2. 建築後使用されたことのない認定住宅等
  3. 宅地建物取引業者が一定の増改築をした既存の認定住宅等

いずれも認定住宅等、つまり認定住宅(長期優良住宅・認定低炭素住宅)・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅に限られます。子育て特例対象個人向けであっても一般住宅は対象となりません

子育て特例(一般向け)

子育て特例対象個人の住宅借入金等特別控除は通常、借入限度額が次のように引き上げとなります。

2402_776_1.png

参照:令和4年度税制改正の大綱(1/8)|財務省
※上記リンクの図を加工して作成

また本来、床面積要件は50㎡以上です。しかし新築住宅については、子育て特例対象個人の合計所得金額が1000万円以下なら床面積要件は40㎡以上に緩和されます。

子育て特例(東日本大震災向け)

子育て特例対象個人が東日本大震災の被災者である場合、借入限度額の引き上げは次のようになります。

2402_776_2.png

参照:令和4年度税制改正の大綱(1/8)|財務省
※上記リンクの図を加工して作成

上記限度額と子育て特例対象個人の定義、対象住宅、入居年以外は通常の住宅借入金等特別控除と同じ要件となっています。

また新築住宅については、子育て特例対象個人の合計所得金額が1000万円以下なら床面積要件は40㎡以上に緩和されます。

子育て特例(自宅リフォーム)

子育て特例対象個人が自宅をリフォームして2024年中に入居した場合、次の金額が所得税額から控除されます。

リフォームにかかった金額のうち標準的な工事費用相当額(上限250万円)×10%

ただし、合計所得金額が2000万円を超えるのなら、この税額控除はできません。また、リフォーム工事は「子育てに対応するもの」として、次の要件をすべて満たさなくてはなりません。

1. 工事内容が次のいずれかであること

  • 家の中での子供の事故を防止するための工事
  • 対面式キッチンへの交換工事
  • 開口部の防犯性を高める小路
  • 収納設備の増設工事
  • 開口部・界壁・床の防音工事
  • 一定の間取り変更工事

2. 標準的な工事費用相当額が50万円を超えるもの
※補助金をもらっているなら補助金部分を差し引いて判定

上記以外

上記のほか、住宅取得等資金の非課税措置の3年延長などが行われました。また、税制改正大綱が公表される前「扶養控除がなくなるかもしれない」という報道が流れましたが、実際の検討は2025年度(令和7年度)税制改正で結論を得ることとなりました。

くわしい内容は、下記リンクにてご確認下さい。

参照:令和6年度(2024年度)税制改正大綱|自由民主党・公明党

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