経理への転職で役立つ資格は?未経験や資格なしでも目指せるか解説
経理への転職において資格の有無がキャリアにどれほど影響するかは、判断が難しく意見も分かれるところです。
確かに、経理の資格はキャリアアップや転職における競争力を高めるものです。しかし、資格の取得は必須ではなく、実際には実務経験を積むことに価値があることも少なくありません。
一方で、資格なしでは有資格者に比べてアプローチできるポイントが減ってしまい、また就職後に担当できる業務範囲が限定されることがあるのも事実です。
そこで、この記事では、経理への転職における資格のメリットとデメリット、そして資格がなくても成功する方法を解説します。
実際に求人で見られる資格の例や、求められる知識・スキルにも触れるため、未経験から経理職に挑む方や、キャリアアップを目指す方は、ぜひ最後までご一読ください。
監修
マイナビ税理士編集部
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目次
経理への転職で資格は必要?
先に触れたように、経理への転職を考える際に、「資格は必要なのだろうか?」と思いつく方が多くいます。先にお伝えしておくと、資格取得の有無は求人内容や該当企業の採用基準によりますが、必須ではありません。
ここからは、経理への転職に役立つ資格について、以下に分けて解説します。あなたがどのように経理職を目指すべきか、明確な方向性を見つける参考にしてください。
- 経理への転職で資格を取得しておくメリット
- 経理への転職で資格を取得しないデメリット
- 経理は未経験・資格なしでも目指せる?
資格を取得しておくメリット
まず、経理への転職を考えている方が資格を取得するメリットは、以下が挙げられます。特に経理の実務経験がない場合や、キャリアアップを目指す場合には、資格が大きなアドバンテージとなります。
- 経理の知識やスキルを証明できる
- 転職市場での競争力を高める
- 年収アップやキャリアアップにつながる
- 熱意や学習意欲をアピールできる
本記事の後半で詳述しますが、経理に関する資格には日商簿記やファイナンシャルプランナー(FP)などが挙げられます。もちろん、資格を取得するには相応の勉強時間と費用を必要とします。
しかし、第三者が認定するという性質上、第三者による検証を通じて、その持ち主の能力や知識を証明できる方法の1つです。このことから、志望動機でもアピールしやすく、経理への転職においては資格があると有利だと言われやすい状況に身を置けるわけです。
資格を取得しないデメリット
次に、経理への転職で資格を取得しないデメリットとしては、以下が挙げられます。あくまでも、可能性があるもので、取得しないことが必ず不利になるというものではありません。
- 有資格者と比較されて不利になる可能性がある
- 客観的に知識・技術を証明できず評価を正しく受けられないことがある
- 任せてもらえる業務範囲が狭くなることもある
経理の領域では、業務効率の改善やDXへの取り組みにおける新システムの導入、グローバル展開に伴うIFRS(国際会計基準)への対応などが課題となりやすいです。そのため、経理の求人では簿記資格やFPなどの資格を持つ即戦力を好む傾向にあります。
もちろん、こうしたデメリットは資格を取得しなくても実務経験でカバーできるものです。「百聞は一見に如かず」という言葉もあるように、体験して得られる事実に勝るものはありません。そう考えると、デメリットはあくまでも想定されるものであり、経理への転職において、資格が必ずしも大きな障壁にはならないと言えます。
経理は未経験・資格なしでも目指せる?
経理は、資格を取得するメリット、デメリットを踏まえても、未経験や資格なしの状態からでも十分に目指せる職種です。先に触れたように、経理では資格がなくても実務経験からアピールでき、また志望動機から自身の意欲や適性を伝えるアプローチも有効です。
経理の仕事は、単に数字を追う作業にとどまらず、企業の経営戦略を形作る上で中核となる役割を果たすこともあります。そのため、資格で証明できるスキル・知識以外にも、コミュニケーション能力や事務を含む細かい作業の経験など、多岐にわたる能力を求められます。
このことから、経理への転職は有資格者だけに限らず、多様な背景を持つ人に開かれているものです。資格の有無よりも、ポテンシャル採用を見込んでいる求人を探したり、実際の経験やスキルを重視した志望動機を書いて熱意や適性を伝えたりするなどの工夫を行うと良いでしょう。
経理への転職における志望動機の書き方などは、詳述した下記ページをぜひご覧ください。
経理への転職で仕事に役立つ資格12選
ここからは、経理への転職を検討されている方に向けて、仕事にお役立ていただける以下13種類の資格を紹介します。経理を目指す前に資格を取得したい、キャリアアップを実現したい、とお考えの際はぜひチェックしてください。
- 日商簿記
- 公認会計士
- 税理士
- FASS検定
- ビジネス会計検定
- 経理事務パスポート検定(PASS)
- 給与計算実務能力検定
- ファイナンシャル・プランナー(FP)検定
- MOS検定
- 電子会計実務検定
- 消費税法能力検定
- 財務報告実務検定
- その他の業界別資格
日商簿記
「日商簿記」は、企業の経営活動を記録、計算、整理し、企業の経営成績と財政状態を明らかにする技能の習得度を測る試験です。同資格は、キャリアアップに役立ち、会計知識や財務諸表を読む力、基礎的な経営管理や分析力が身につきます。
日商簿記は、多くの企業が採用や人事制度、自己啓発に取り入れている代表的な資格です。また、求人でも日商簿記1〜2級または同程度の技術・知識などのように、条件として取り入れられているケースも多くあります。そのため、一般企業の経理部門、会計事務所への転職を考えている方が、まず目指すべき資格の1つとして挙げられるでしょう。
公認会計士
「公認会計士」は、会計や税務に関する専門的な知識と技能を持つことを証明する国家資格です。会計や税務に関する専門的な知識と技能を持ち、企業や個人の財務諸表の監査や税務相談などを行うことができます。そのため、企業の財務情報の信頼性を保証する重要な役割を担えます。
経理とは仕事内容が大きく異なるものの、公認会計士も簿記や会計に関する知識が必要です。また、正確かつ効率的に仕事を進める点においても共通しています。そのため、公認会計士の資格取得に向けて学習中であっても、アピールポイントとなり得ます。もちろん、経理への転職を果たしてから、会計監査、財務アドバイザリー、コンサルティングを見据えて取得を目指したい資格ともなるでしょう。
税理士
「税理士」は、税務に関する専門的な知識と技能を証明する、税理士法に基づいて認定される国家資格です。主な業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談などで、独立して開業したり、会計事務所や企業の経理部門で働いたりするなども可能です。
税理士を取得する際に必修科目となっている会計2科目、および法人税・消費税などの知識は、経理の業務でも必要となります。また、日常業務に加えて、研究開発やオープンイノベーション促進税制などの高度な業務にも対応できます。税務相談、税務申告業務の領域で昇進・キャリアアップも目指しやすく、経理にも有効でしょう。
FASS検定
「FASS検定」は、経済産業省が開発した経理・財務サービス・スキルスタンダードを基に、経理・財務分野の実務知識・スキルの習得度を測る検定試験です。資産分野、決算分野、税務分野、資金分野から構成され、定型業務として標準化された業務が対象となります。
同検定では、経理・財務部門での実務に直結した内容が出題されるため、実務に役立つ知識・スキルを身につけることができます。試験結果は合否ではなく、総合点から5段階のレベルでスキル評価されます。そのため、経理・財務分野の実務知識・スキルの習得度を証明しやすく、国際会計、グローバル企業の経理への転職を考えている方にとって有用な資格です。
ビジネス会計検定
「ビジネス会計検定」は大阪商工会議所が主催し、認定は商工会議所が行っている資格です。主に、財務諸表の理解力を養うことを目的としており、決算書の作成と分析の両面から技術・技能を問われます。また、簿記の知識がなくても受験可能で、1〜3級の3段階での認定を受けることができます。
同検定は、会計基準や法令の理解、財務諸表の理解と分析などを学ぶものです。そのため、企業の財務状況を正確に把握したり、リスク管理や資金調達戦略を策定したりして、上流工程の業務へも貢献できます。経営者、マネージャー、経理・財務部門をこれから目指す方も、視野に入れることのできる資格です。
経理事務パスポート検定(PASS)
「経理事務パスポート検定(PASS)」は、日本CFO協会とパソナが共同で開発した資格です。経済産業省の経理・財務サービススキルスタンダードに準拠し、経理・財務業務の基礎知識をカバーしています。また、学習から資格取得までe-ラーニングで完結するのも特徴です。
同検定は3段階のレベルがあり、3級の対象は現預金管理や経費管理業務などの経理の初心者向け、2級以上では経理手続きから外貨取引処理、売買取引における決算について学べます。そのため、一般企業の経理事務にも適用可能です。
また、現場レベルで必要となる実務知識に限定され、3級であれば完全無料で受講できることを踏まえると、経理への転職に不安がある方はぜひ取得しておきたい資格と言えます。
給与計算実務能力検定
「給与計算実務能力検定」は、一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会が実施している資格です。給与計算業務に関連する知識と実務能力を客観的に判定し、給与計算業務のエキスパートとして認定されることから、スキルアップやキャリアアップに役立ちます。
主に、給与計算業務に関連する知識と実務能力を身につけるもので、2級と1級の2つのレベルがあります。2級では経理の基本業務に含まれる給与計算の計算から明細の作成までを踏襲し、1級では労働法令・税務、年末調整から社会保険に至るまで学ぶことが可能です。
2年ごとの更新によって、常に都度最新の法制度情報の知識を身につけられる点からも、人事・総務部門、給与計算業務においても非常に有用な資格と言えます。
ファイナンシャル・プランナー(FP)検定
「ファイナンシャル・プランナー(FP)検定」は、日本FP協会が認定する資格です。主に、将来の収支の見通しを立て、最適な資産設計・資金計画を提案、アドバイスを行い、その実行をサポートします。基本となるFP技能士(1〜3級)の他に、CFP®資格、AFP資格という2つの上位資格を加えた3種類があります。
FP検定そのものは、自身がお金に関する知識を有する証明となるものです。そのため、企業向けにアピールするためにも、個人を対象とした3級ではなく、中小事業者の資産相談業務まで学べる2級を持っていたほうが良いでしょう。
FP資格も、先に触れた給与計算実務能力検定と同様に更新制度があるほか、企業の資産管理や財務計画の立案に役立つため、財務計画アドバイザリー、個人向け金融サービスでも活用できます。
MOS検定
「MOS検定」は、マイクロソフト社が主催する資格試験です。のべ500万人以上が受験している世界で通じる国際資格としても知られており、Excel、Word、PowerPointなどのMicrosoft Office製品の知識と操作スキルを証明できます。
ExcelやWordなどのOffice製品を使う機会が多い経理業務において、MOS検定は業務の効率化に役立ちます。また、実際にパソコンを操作する実技形式の試験も含まれているため、実際に使えるレベルのパソコンスキルを客観的に証明でき、就職・転職時のアピール材料になります。
事務職全般、データ分析においても、ExcelやWordなどのOffice製品を使う機会が多いため、非常に役立つ資格と言えます。
電子会計実務検定
「電子会計実務検定」は、日本商工会議所が認定している資格です。簿記の理論と知識のほか、会計ソフトの情報を分析・活用しつつ、経営に役立てる能力を証明します。同検定は、2005年に開始された比較的新しい資格で、デジタル化が進む会計業界での電子会計の知識が求められるようになっています。
電子会計実務検定は1〜3級に分けられており、3級の時点から実際の会計実務と同様に弥生会計や勘定奉行などの電子会計システム・ソフトを用いて試験が行われるのが大きな特徴です。
昨今ではDXや業務効率化を目指してIT化が行われていることから、ITと会計の知識を組み合わせた同資格は現代のビジネスシーンで活躍します。経理部門、会計事務所で働く際には、有用な資格となるでしょう。
消費税法能力検定
「消費税法能力検定」は、公益社団法人全国経理教育協会(ZENKEI)が認定している資格です。主に、消費税に関する基本的な理解から、会計処理時での取り扱い、税務署への書類作成などの税務処理ができる知識、および実務での応用的な税務処理に関する知識が問われます。
同検定は、消費税における基本的な理解を深めることができるほか、実務でも求められる書類作成に関する知識も学べることで、経理業務に直接活かせます。また、類似検定には、所得税・法人税・相続税などもあり、税務相談のキャリアを目指す方にも向いている資格と言えるでしょう。
財務報告実務検定
「財務報告実務検定」は、一般社団法人日本IPO実務検定協会が実施している資格です。Basic、Standard、Advancedの3つに分けられており、上場企業のディスクロージャー責務(金融商品取引法、会社法、証券取引所)を果たすための専門知識を証明できます。
通常、上場企業では財務報告書書類(有価証券報告、連結計算書類など)を定期的に作成、開示しなければなりません。こうした、企業の業績動向の把握や、状況を適切に開示書類に落とし込む能力が求められる経理業務において、財務報告のスキルアップに役立つでしょう。このことから、経理でも上級経理職、財務分析のスペシャリストを目指す方は目指したい資格です。
その他の業界別資格
業界別の資格は、特定の業界での知識やスキルを証明するためのもので、以下が挙げられます。
- ITパスポート
- 銀行業務検定試験
- 建設業経理検定
- 農業簿記検定
- 社会福祉会計簿記認定試験
例えば、ITパスポートは、ITの基本的な知識を証明する資格です。ITに関する基本的な知識を有していることをアピールできるため、ITに関心がある方や、経理業務におけるITの活用を考えている方におすすめです。
また、社会福祉会計簿記認定試験は、社会福祉に特化した経理知識を証明する資格で、社会福祉業界での経理職への転職を考えている方におすすめできるでしょう。このように、各業界別に資格を取得することも、経理への転職を考えている方にとって、自身のスキルをアピールするために有効です。
マイナビ税理士では、未経験や資格なしの状態からでも経理を目指せる方法をご提案いたします。不安がある場合には、ぜひエージェントとスキルや経験を棚卸しして、納得のできる転職を目指しましょう。
外資系の経理への転職で役立つ資格5選
ここからは、外資系の経理への転職を考えている方にとって役立つ以下の資格を紹介します。経験がない方でも受験可能なものもあるため、ぜひ参考にしてください。
- TOEIC
- 米国公認会計士(USCPA)
- 国際会計検定(BATIC)
- 米国税理士(USEA)
- 米国公認管理会計士(USCMA)
TOEIC
「TOEIC」は、Test of English for International Communicationの略称で、国際コミュニケーション英語能力テストを指します。日本では一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が運営し、合格不合格ではなく規定のスコアで評価されます。
TOEICは、国際的なビジネスコミュニケーションのスコアが英語力を証明する証拠となります。特に、経理の仕事では、財務報告や会計監査など英語でのコミュニケーションが必要な場面も少なくありません。そのため、会話でも十分に英語力を示せる700〜800点のラインを目指すと良いでしょう。
米国公認会計士(USCPA)
「米国公認会計士(USCPA)」は、United States Certified Public Accountantの略称で、米国各州が認定する公認会計士資格のことです。USCPAの取得は、米国の会計基準や税法、ビジネス環境に関する深い知識を証明できます。
国際的な会計基準にも精通している必要があり、グローバル企業での監査や財務コンサルティング、経理職において高い評価を受けます。そのため、経理から会計監査、財務コンサルティング、国際会計などのキャリアを検討している方が取得したい資格です。
国際会計検定(BATIC)
「国際会計検定(BATIC)」は、東京商工会議所が認定する資格です。主に、英文簿記やIFRS(国際財務報告基準)に関する知識を、スコア制(1000点満点)の4段階のランクで評価します。BATICは2022年度をもって終了しており、新たに取得することはできません。
そのため、すでに取得している場合に限りますが、英語での会計業務に対する理解度を証明できるため、外資系企業での経理職においては大きなアピールポイントとなります。もし、新たに同程度の資格を取得したいと考えた場合には、先述した米国公認会計士を目指すと良いでしょう。
米国税理士(USEA)
「米国税理士(USEA)」は、米国内国歳入庁が認定する資格です。米国の税法に関する専門的な知識と実務能力を証明でき、経理の経験がない方でも18歳以上なら受験できます。米国内に在住している方に向けて税務申告をサポートする資格ですが、住む場所を問わず支援できることが強みです。
そのため、税理士や税理士学習経験者にもおすすめで、日米の税務理解により業務の幅を広げられます。同資格を取得できると、英語力と税務知識を持つ人材として国際税務アドバイザリー、税務申告、でのアピールに有効です。
米国公認管理会計士(USCMA)
「米国公認管理会計士(USCMA)」は、IMA®が認定する資格です。米国公認会計士と並ぶ二大会計資格の1つで、経営に関する幅広い知識を学べます。主に、企業の内部での管理会計や財務分析、戦略的な意思決定支援に関する専門知識を証明できます。
同資格は、受験資格として4年制大学卒業の学位が必要ですが、学部は問われません。経理の分野でも、より経営に近い分野の学びと証明を得られることから、コンサルティング業務や企業内の会計・財務・企画部門で活躍したい方におすすめの資格です。
経理の転職・求人で実際に見られる資格の例
ここまで、経理に関連する資格を紹介しました。資格は経理への転職において必須ではありませんが、持っていると有利に働くことが多いです。では、本当にそう言えるのか、マイナビ税理士で掲載している経理の転職・求人を調査し、実際に見られる資格の一例を下記にまとめました。
資格名 | 内容 |
---|---|
公認会計士 | 企業の財務状況を評価・監査する専門家 |
米国公認会計士 | 米国の企業の財務状況を評価・監査する専門家 |
証券アナリスト | 企業の財務状況や業績を分析し、投資判断を下す専門家 |
CFA(米国証券アナリスト資格) | 世界的に認知された投資分析の専門資格 |
TOEIC | 英語のビジネスコミュニケーション能力を証明する資格 |
簿記2級 | 企業の日常的な会計業務を理解するための資格 |
簿記1級 | 企業の会計全般を理解し、実務に活用するための資格 |
それぞれの資格は、経理の職務に直接関連するものに限らず、ビジネススキルを証明するものも含まれます。また、それぞれの資格を持っていなくても、同程度の実務経験があれば応募可能なケースも多く見られました。重ねてとはなりますが、資格が必須となっているわけではないということを覚えておいてください。
マイナビ税理士では、以下のリンクから経理の求人一覧をご覧いただけます。資格にこだわらず、まずは希望の求人がないかをぜひチェックしてみてください。
資格以外に経理への転職で求められる知識・スキル
経理職への転職においては、資格以外にも以下のような重要とされる知識・スキルがあります。実務経験に加えて、それぞれの知識・スキルを有している場合には、前向きに検討しましょう。
- コミュニケーション
- 数字の確認・処理・分析
- 事務等の細かな作業の経験
- 基本的なPCの操作
コミュニケーション
まず経理では、コミュニケーションが業務の効率化と正確性を保つために不可欠です。ただ黙々と事務作業を行うだけとはならず、社内外の多様なステークホルダーとのやりとりは頻繁に行われます。
例えば、予算編成の際には各部署の要望を聞き、経理の観点から評価して適切な予算を提案するためには、各部署との良好なコミュニケーションが必要です。また、経営陣への財務報告では、経理の専門知識をわかりやすく伝えるための能力を求められます。
数字の確認・処理・分析
次に、経理への転職を考えている方にとって数字の確認・処理・分析能力は、資格と同じくらい重要なスキルです。経理業務は、日々の取引の記録、財務報告書の作成、予算の管理など、数字に関わる業務が中心となります。
例えば、日々の取引の記録では、売上や経費の数字を正確に記録し、それらを適切な勘定科目に分類する能力が求められます。また、月次・年次決算の作成では、これまでの取引記録をもとに財務報告書を作成するための処理能力を問われるなどです。
もちろん、基本的な会計知識を身につけるだけでなく、WordやExcelなどのツールを使いこなして実際に行えるかどうかも大きなポイントとなります。
事務等の細かな作業の経験
経理への転職を考えている方で、事務等の細かな作業の経験がある場合は積極的にアピールしたいポイントとなります。経理業務は、データ入力、文書管理、スケジュール管理など、細かな作業が多く含まれます。
それぞれの作業は、注意深さ、正確性、効率性を必要とするものです。例えば、取引の記録では売上や経費のデータを正確に入力し、それらを適切な勘定科目に分類する能力、財務報告書の作成では、これまでの取引記録をもとに財務報告書を作成するための文書管理能力、それぞれが必要となります。
このように、事務等の経験はいわゆる業務の効率化や、チーム内のコミュニケーションの円滑化に貢献できる経験とも言い換えられるため、積極的に採用担当へ伝えましょう。
基本的なPCの操作
経理への転職でスキルとしてよく挙げられるのが、基本的なPC操作です。例えば、文書作成では、Wordの基本操作(文書作成や文字サイズ、色、太字、フォントなどの基本的な書式設定)やExcelの基本操作(数値や文字の入力、四則計算、基本的な関数『SUM、AVERAGE』など)の使用)が必要となります。
さらに、スケジュール管理では、メールの作成、送信、受信、返信などの基本操作を行う能力が求められます。PCの操作のスキルは、業務の効率化や正確性を保つため、ひいては、迅速な連絡によるチーム内のコミュニケーションの円滑化にも貢献します。
経理では、ITツールの活用も増えているため、ITリテラシーの向上も一種のPCスキルと言えるでしょう。なお、経理の仕事内容や能力、スキルについては下記ページでも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
経理から目指せるキャリアパス・転職先
経理から目指せるキャリアパスは、以下のように多岐にわたります。
キャリアパス | 必要なスキルや知識 | 可能性のある役職 |
---|---|---|
財務 | 財務分析、予算作成、投資評価 | 財務マネージャー、CFO |
予算管理 | 予算作成、財務分析、コスト管理 | 予算管理マネージャー |
監査 | 内部統制、リスク管理、法規制の理解 | 内部監査員、監査マネージャー |
税務 | 税法の理解、税務申告、税務計画 | 税務マネージャー、税務コンサルタント |
経営企画 | 戦略立案、ビジネスモデルの理解、財務分析 | 経営企画マネージャー、経営企画室長 |
コンサルティング | ビジネス戦略、業界知識、問題解決能力 | 経営コンサルタント、戦略コンサルタント |
ビジネスアナリスト | データ分析、ビジネス戦略、コミュニケーション | ビジネスアナリスト、データアナリスト |
そして、それぞれのキャリアパスは経理の基本的なスキルを活用しつつ、それぞれ異なる専門知識やスキルを必要とします。言い換えれば、経理のスキルと経験は多くのビジネス領域で活用できるものだということです。
経理の基本的なスキルを活用しつつ、自分の興味や強みに合わせてキャリアを選択しましょう。経理担当者のスキルアップやキャリアパスについては、下記ページもご覧ください。
経理の資格と転職に関するFAQ
最後に、経理の資格と転職に関するFAQへ回答します。
- 経理に関する資格は独学で取得できる?
- 経理として働きながら資格を取得するには?
- 経理資格の最高峰は何ですか?
- 経理で1人前になるのは何年くらいですか?
経理に関する資格は独学で取得できる?
経理に関する資格は、基本的に独学で取得可能です。ただし、公認会計士や税理士の高度な資格は、専門的な知識や技術が求められるため、独学だけでは取得が難しい場合もあります。
例えば、日商簿記検定3級は約100〜150時間の学習時間が必要となる見込みです。一方で、公認会計士となると平均して2~4年程度が必要とされます。資格の取得はあくまで1つの手段であるため、実務経験やスキルの向上にも注力しましょう。
経理として働きながら資格を取得するには?
経理として働きながら資格を取得するためには、隙間時間を活用したり、通信講座を利用したりすることが有効です。例えば、通勤時間や休憩時間などを利用して、短時間でも集中して勉強することが有効です。
また、通信講座やオンライン講座の利用によって、自宅や移動中でも勉強できます。ただし、資格取得にはコストもかかります。そのため、企業の資格取得支援制度があればうまく活用しましょう。
経理資格の最高峰は何ですか?
経理資格の最高峰は、難易度だけで言えば公認会計士や税理士が挙げられます。実際に令和5年度の合格率を比較すると、以下の差があります。
- 公認会計士:7.6%
- 税理士:21.7%
どちらの資格も専門性が高く、取得するためには高度な知識と実務経験が必要です。相応の努力と時間も必要となるため、自身のキャリアプランに合わせて適切な資格を選びましょう。
参照:令和5年公認会計士試験の合格発表について|公認会計士・監査審査会
参照:令和5年度(第73回)税理士試験結果表(試験地別)|国税庁
経理で1人前になるのは何年くらいですか?
経理で1人前になるまでの期間は、一般的にはおおよそ3年と言われています。例えば、会計知識の習得に日商簿記を取得する場合、働きながら約1〜1.5時間の勉強を30日継続しても3級で3か月、2級では6か月かかります。勉強の休みや急なトラブルを想定して、1年あたりの確保が必要です。
その後、現場での経験を積むことで、会計原則の実際の適用や、企業の財務状況を理解する力等を磨く必要があります。この期間に、1〜2年程度かかるとしたら、先ほどの勉強期間と合わせておおよそ3年です。
ただし、あくまでも資格を踏まえた計算上であること、また個々の能力や経験、具体的な職務内容によることにご留意ください。
まとめ
経理への転職に際し、資格は必ずしも必要とされません。ただ、資格を取得しておくと経理の知識やスキルを証明しやすく、採用の際に強みになることは確かです。もちろん、資格以外にも数値処理能力やコミュニケーション能力などのスキルも求められ、アピールポイントは豊富にあります。
そして、経理には様々なキャリアパスがあり、自身のスキルや経験、さらには取得する資格によっても目指せる進路は広がるものです。あくまでも資格取得は1つの手段として捉え、これまでの知識や経験を活かした転職を目指しましょう。
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