経理担当者のためのスキルアップ方法とおすすめのキャリアパス

経理担当者のためのスキルアップ方法とおすすめのキャリアパス

会社のお金の流れを管理する経理の仕事は、どんな会社でも必要になる大切な仕事です。一方で、華やかな仕事ではないため、会社で経理職に就くことになった方の中には、その将来性やスキルアップの方法に不安を覚える方も少なくありません。
本記事では、経理担当者が目指すべきスキルアップの方法として、必要な実務経験や取得すべき資格、さらに基本的なスキルを身につけた後のキャリアパスについてご紹介します。

佐山 和也(ペンネーム)

税理士、中小企業診断士、社会保険労務士

金融機関系シンクタンクに勤務し、会計・税務を中心とした企業からの経営相談やコンサルティング業務等に10年超にわたり従事。また、その傍らで開業税理士・中小企業診断士として執筆活動などを行っている。難解な税法や会計基準等の規定を分かりやすく伝えることがモットー。

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実務経験は何より大切なスキルアップ手段

経理担当者のスキルアップの王道は、当然ながら実務経験をたくさん積むことです。経理の日常業務は学びの宝庫でもあり、日常業務で基本的な実務遂行能力を身につけておくことは、その後のスキルアップの礎となります。

経理の日常業務には出納、起票、記帳、集計などがあり、これらの業務には簿記の知識が欠かせません。会社の活動を簿記の知識を活かして記録することを「仕訳」といいますが、この仕訳を適切に行えることは経理担当者としてとても大切です。この仕訳は市販の会計ソフトを使って入力するのが一般的ですが、規模の大きい会社では独自の専用システムを使っている場合もあるでしょう。経理担当者には、早めにこれらの仕様に慣れていくことが求められます。また、数字を扱う経理の仕事では、必然的にExcelなどの表計算ソフトを使う場面が多くなります。そのため、表計算ソフトを使いこなせるようになっていくことも、スキルアップの手段として大切です。

日常業務のほか、経理の中核をなす重要な仕事に決算業務があります。会社は年に1度は必ず決算を行う必要がありますが、この年次決算のほか、月次や四半期などのタイミングで決算を行っている会社もあります。決算時には日常業務と別の決算特有の業務があるため、経理担当者にはこれらのプロセスを熟知しておくことが必要です。

また、中には経理担当者に簿記や財務会計だけでなく、管理会計に関する業務を期待している会社もあります。財務会計が決算書など主に外部報告用のデータ作成を目的にしているのに対して、管理会計は会社内部での経営判断のためのデータ作成を目的にしているといえます。こういった管理会計などのスキルを身につけておくことも、経理のキャリアを伸ばしていくことに繋がるでしょう。

さらに、今後経理担当者には、消費税インボイス制度や電子帳簿保存法に関する知識の習得も求められます。そして、経理業務はAIとの親和性が高いといわれており、今後の経理実務には続々とAIが活用されていくことになるでしょう。そのため、今後はAIを使いこなすスキルも経理担当者には求められていく可能性が考えられます。経理のプロフェッショナルとして成長するためには、日々の実務経験を通してスキルを磨き続けていくことが何よりも大切です

経理担当者のスキルアップにおすすめの資格

経理の世界でスキルを伸ばすためには、実務経験に加えて資格取得が有効です。もちろん、資格がないと経理の仕事ができないというわけではありません。しかし、客観的に自身の能力を示せる資格を取得することは、昇進や転職にも有利に働くことでしょう。ここでは、経理担当者のスキルアップにおすすめの資格をいくつかご紹介します。

①日商簿記検定

簿記や会計の基礎知識を幅広く学ぶことができ、経理担当者にとって鉄板ともいえる資格です。初級、3級、2級、1級と4段階あり、難易度が高くなるにつれて、財務諸表の分析力や原価計算などより高度な知識が求められます。1人前の経理担当者を目指すなら、できれば2級までは取得しておきたいところです。

②FASS検定(経理・財務スキル検定)

簿記検定ほどの知名度はありませんが、経理・財務の技能試験としての位置づけのFASS検定もおすすめです。FASS検定は合否ではなく、A~Eの5段階で評価が行われる仕組みとなっています。資産、決算、税務、資金という4つの分野ごとに問題が出題され、簿記検定とは異なるスキルを身につけることができます。

③財務諸表論

企業会計基準に準拠した決算書を作成しなければならない中堅・大企業勤めの経理担当者であれば、税理士試験の財務諸表論(または公認会計士試験の財務会計論)も学んでおくとよいでしょう。会計処理の理屈や背景が学べるため、経理のエキスパートを目指す方は是非とも学んでおきたいところです。

④税理士試験・公認会計士試験

会計のプロを目指すなら、税理士試験や公認会計士試験へのチャレンジも考えられます。ただし、どちらも合格までには非常に多くの勉強時間を要するため、これらの試験の合格を目指すのであれば勉強漬けとなる覚悟が必要です。

⑤米国公認会計士、IFRS検定

外資系の会社やグローバル展開している会社では、米国公認会計士(USCPA)やIFRS(国際会計基準)検定も評価が高い資格です。

⑥ITパスポート、ビジネス実務法務検定など

経理業務はITや法律、人事労務などの分野との関連性が高いため、これらの分野の資格を取得しておくこともスキルアップに有効です。例として、ITパスポートやMOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)試験、ビジネス実務法務検定、給与計算実務能力検定などが挙げられます。

さらなるスキルアップにおすすめのキャリアパス

経理担当者としての基本的なスキルを身につけた後は、さらなるスキルアップのためのキャリアパスを考えていく必要があります。本記事の最後に、経理担当者におすすめの5つのキャリアパスをご紹介しましょう。

①経理部でスキルを磨き続ける

経理部で働くことで、経理の基本業務から決算業務、税務業務、財務分析など、幅広いスキルを身につけることが可能です。マネジメント能力を身につければ、経理部長に抜擢される可能性もあるでしょう。また、経営や財務などの高い見識も有していれば、最終的に監査役やCFO(最高財務責任者)など役員となる道もあります。

②経営企画部など他部署に異動して活躍する

経理で培った数字や会計の知識を活かして、他部署で新たな挑戦をすることも考えられます。例えば、経営企画部では会社の戦略や事業計画を立案したり、予算管理や業績分析を行ったりすることが可能です。大企業であれば、IR部門への異動も有力な選択肢となるでしょう。

③他の事業会社に転職して経理業務を続ける経営企画部など他部署に異動して活躍する

どんな事業会社でも経理職は必要です。自分の経験やスキルを評価してもらえる企業に転職することで、待遇や環境の改善を図ることができます。異なる業界や規模の企業に転職することで、新しい知識やノウハウを学ぶことも可能です。転職先で経理部以外への異動を考えるのも選択肢と言えるでしょう。

会計事務所や税理士法人、監査法人に転職する

会計事務所や税理士法人、監査法人では、さまざまなクライアントの会計や税務に関する相談や会計監査を行うことができます。必ずしも試験に合格していなくても転職できる可能性はあります。ノウハウを身につければ、専門家として独立することも可能です。

会計系のコンサルティングファームに転職する

会計系のコンサルティングファームでは、経理で培った数字や会計の知識を活かしてクライアントの課題解決や改善提案を行うことができます。さまざまな業界や分野のプロジェクトに参加することができ、自身の幅を広げられるでしょう。

まとめ

経理担当者のスキルアップには、何よりもまず実務経験を積んでいくことが必要です。経理の実務では、簿記の知識を活かして会計ソフトなどに日々の取引を正確に記帳していくことが求められます。その他、月次や年次の決算業務も滞りなくこなせるよう、少なくとも3~5年程度は同一の職場で経験を積むべきといえるでしょう。ここで管理会計や財務・税務などの知識やスキルも身につけておくと、その後のキャリアパスにも幅を持たせることができるはずです。

実務経験と並行して取り組んでいきたいのが、客観的に知識の証明ができる資格の取得です。一人前の経理担当者を目指すのであれば、簿記2級までは取得しておきたいところです。その後は、自分の目指すキャリアパスを実現するために必要と思われる資格を取得していくとよいでしょう。

経理業務やその関連資格の取得を通じて身につけたスキルは、その後も経理職を続けるにしても別のキャリアパスを目指すにしても活かせる"つぶしのきく"スキルです。是非、実務経験と資格取得を通じて経理担当者としてのスキルアップに励み、自身の望むキャリアパスをつかみ取ってください。

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