税理士事務所の求人では、応募要件に実務経験を必須とするものが少なくありません。そうすると、業界未経験でこれから税理士事務所へ就職・転職したい人は門前払いとなってしまいます。確かに、未経験者は育成の手間やコストがかかるため、採用を避ける事務所はあるのでしょう。しかし一方、業界の実務経験を問わない求人も多くありますので安心してください。どのような税理士事務所で未経験を採用しているか、ここで具体的にご紹介します。

税理士事務所の中には、むしろ実務経験のない方が好まれるというケースもあります。新卒や未経験者の場合、業界の経験がないためまっさらな状態です。業界の経験があると、どうしても前の事務所の影響を受けるもので、仕事のやり方などの癖がついていることもあります。「自分たちの事務所の考え方や方針に共感してくれる人と一緒に働きたい」と考える事務所なら、即戦力となる経験者を採用するより、まっさらな状態で事務所のやり方を１から教えて育てることを望むでしょう。

また、１から育てるためには、教育体制が整っていなくてはいけません。それだけ事務所の方針の共感し、将来的に長く事務所で働いてほしいという傾向があるでしょう。

近年、人材不足に悩む業界は少なくなく、これは税理士業界も例外ではありません。人材の確保が難しくなると、採用要件も多少緩やかになるでしょう。そのため、業界未経験の方でも採用される可能性が高まります。

税理士事務所の仕事は、クライアントの税務相談に応じたり税務書類の作成を行ったりという日常的な税理士業務のほか、記帳代行や税務調査の立ち合い、経営コンサルティングなど多岐に渡ります。業務内容によっては、必ずしも税理士資格がなければならない仕事ばかりではありません。スタッフとして、これらの業務を支えるポジションもあります。仕事が多くて業績が好調な税理士事務所ほどさまざまな業務が発生し、それだけ多くの人材が必要です。

仕事が多いほど、事務所としての規模が拡大します。そのため、小規模の事務所より中規模～大規模の税理士事務所のほうが仕事は多く、結果として人材が不足しがちです。業界未経験から税理士事務所へ就職・転職する場合、小規模よりも大規模・中堅の税理士事務所の方が、条件に合う採用に出会える可能性は高いと考えられます。

募集要項に未経験可能となっていても、実際に採用してもらえるかは別です。事務所は何名もいる求職者から誰かを選ぶわけですが、そのときの1つの基準として、会計や税務に理解がある人の方が採用されやすくなります。そのため、ある程度は会計や税務について理解しておくとともに、そのことをアピールすると良いでしょう。

未経験から税理士事務所で働くのなら、簿記の資格を取るのがおすすめです。資格勉強を通じて、会計の基礎知識を学べます。また、資格を取得することで知識だけでなく、自ら進んで新しい知識を取得できる能力があることをアピールできるでしょう。

簿記の資格はいくつかありますが、おすすめは「日商簿記2級」です。広く知られている試験であり、求人の応募条件として日商簿記2級以上を求められることもあります。

税理士事務所での就業を目指すのであれば、税理士試験の科目合格がとても有利になります。日商簿記2級で応募要件を満たせることもありますが、より良い条件を目指すなら、税理士試験の科目合格を求められることは多いでしょう。

税理士試験は難関であるため、科目合格だけでも十分に評価されます。数ある科目の中では、会計科目の簿記論と財務諸表論の2科目が取り組みやすいでしょう。それに加えて、税法1科目に合格して合計3科目合格していれば、就職先の選択肢は広がるはずです。

前述の通り、税理士試験の科目合格があると有利です。そのため、一時的に仕事から離れて、税理士試験の受験に専念するという選択もあります。一方、未経験で税理士事務所への就職を目指すなら、年齢は若い方が有利という点も理解しておきましょう。未経験者には即戦力性ではなく育成に重きが置かれるため、若い方が採用されやすくなるものです。

一般的に、20代前半なら未経験でも採用されやすいですが、40代近くになると採用は難しいとされています。そのため、いくつか科目合格した後は就職し、働きながら勉強を続けることで、仕事を覚えつつ残りの科目合格を目指すのも良いでしょう。

科目合格など勉強するほかにも、業界未経験から税理士事務所への就職・転職を目指すための方法があります。

いくら未経験でも採用のチャンスがあるとはいえ、実務経験がないことに不安を感じる方もいるでしょう。その場合は、まずアルバイトで実務経験を積む方法もあります。たとえアルバイトでも業界で働いて仕事の概要を知っていれば、十分に評価へ繋がるでしょう。学生であればアルバイト就業した事務所へ、そのまま正社員として就職できる可能性もあります。

就職先を探す手段として、就職・転職サイトや転職エージェントを利用することも有効です。自分の力だけで、理想の就職先を探すのは非常に難しいでしょう。こうしたサービスを利用すれば、多数の求人から自分の希望条件からものを探せるため、比較検討しやすくなります。また、転職エージェントを利用すれば就職・転職先の選定だけでなく、業界に精通したキャリアアドバイザーに相談したり、応募書類の添削や面接対策など多様なサポートを受けられたりする点もメリットです。

ここまでご説明した通り、業界未経験であっても税理士事務所へ就職することは十分に可能です。実務経験のある人の方が有利ではありますが、どんな人を採用するかは事務所ごとに違います。就職希望者の多い人気の事務所、あるいは大手税理士法人など一部では競争率が高く、就職は難しいかもしれません。しかし、少し視野を広げて選択肢を広げると、希望に沿う事務所に出会える可能性はあります。

資格を取得したり会計・税務について勉強したりと、自ら努力で選択肢を広げることもできます。長期的なキャリアを考えたうえで、ぜひ理想に合った就職先を選びましょう。