税理士の転職で需要がある就職先はどこ?最新求人動向のポイント

税理士の転職で需要がある就職先はどこ?最新求人動向のポイント

2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大という不測の事態を受けて、各企業の経済活動や転職市場にさまざまな影響が出ています。

そんな中、「売り手市場」といわれていた税理士の転職市場は、影響がまったくないわけではありませんが、概ね好調な状況です。
コロナ禍における採用控えといった傾向はあまり見受けられず、採用活動が比較的高く維持されているのは税理士の転職市場ならではの魅力でしょう。

ここでは、税理士の求人動向を見極めるポイントと、最新の転職市場についてご紹介します。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

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税理士の求人動向を見極める5つのポイント

税理士の求人動向を見極める5つのポイント

現在、税理士の求人がどれくらいあるのか。それを見極めるためには、さまざまな視点で状況を分析する必要があります。
まずは、税理士求人数の動向を見極める5つのポイントを見てみましょう。

1 税理士や科目合格者の増減が人手不足に影響しているか?

まず、求人数の動向とかかわりがあるのが、税理士や科目合格者の数です。
近年の税理士登録者数は微増傾向にありますが、税理士を目指す人、つまり税理士試験の合格者数の推移は、ほぼ横ばいで大きな変化は見られません。

仮に、税理士の需要がこれまでと変わらない状態の中で、税理士や科目合格者の人数が大きく減っていれば、なり手の人数が減少して人手不足になっていることになります。採用ニーズが以前と比較して高まりやすくなるでしょう。

逆に、税理士や科目合格者数が大幅に増加しているのであれば、採用ニーズに対して供給過多となり、競争率が高くなるといえます。

こうした観点から、近年の税理士登録者数と科目合格者数の推移について、もう少し詳しく見てみましょう。
国税庁が公表しているここ数年の税理士登録者数の推移を見ると、2019年度が78,795人、2020年度が79,404人と微増傾向です。

一方、税理士試験の状況を見てみると、2021年度の受験者数は27,299人となっており、2020年度の26,673人に比べて626人若干増加しています。新型コロナウイルス感染症の対策がわかり、受験生に安心感が広がったからこその微増なのかもしれません。しかし、それでも2014年度の受験者数41,031人の6~7割程度にまで落ち込んでいます。

そして、2021年度は合格者数5,139人(内訳は、5科目到達者数585人、一部科目合格者数4,554人)となっており、2020年度の5,402人より若干減っています。ただそれでも、ここ数年は4,000~6,000人台で推移していて、大きな変化はないといえるでしょう。

2 税理士法人は増加しているか?

数年前まで、税理士が売り手市場といわれていた背景のひとつとして、税理士法人の増加による需要がありました。
現在、その動向はどのようになっているのでしょうか。

2001年に設立が認められた税理士法人数を見ると、2008年は1,750人、2013年2,748人、2017年10月には3,646人と増加し、2022年1月現在は4,572人の登録があります。

2017年からの直近4年間でも約900人増え、引き続き税理士法人が増加傾向にあることから、税理士や科目合格者の雇用元が減少していることはなさそうです。

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3 クライアントとなる法人数は増加しているか?

税理士や科目合格者の職場となる税理士法人だけでなく、クライアントとなる法人数の増加も税理士の転職市場に影響します。

過去に、リーマンショックなどの影響による企業倒産で、クライアントとなる法人数が減少傾向だったときもありましたが、近年では景気の上昇に合わせて、増加が続いていました。

しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、これまでのような経済活動がしにくくなりました。
その一方、国税庁の2020年度における法人税等の申告事績を見ると、2021年6月末時点での322法人となっています。
これは前年対比101.7%で、ほぼ横ばいの数字となっています。

このようなことから、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、廃業や休業となった企業があるものの、クライアントとなる法人数が激減しているわけではないことがわかります。

引き続き、景気動向や法人数の推移を見守る必要はありますが、転職市場を考える上での判断材料のひとつとなるでしょう。

4 法令改正などへの対応で需要が高まるか?

一般的に、消費税の改正など、税金に関する大きな法令改正があれば、さまざまな企業が対応を迫られるとともに、税理士の仕事量の増加につながります。

また、仮に新型コロナウイルス感染症のような社会的な影響が大きい事態が起こり、企業の売上が減ったとしても、税務という仕事がなくなるわけではありません。反対に、現在は新型コロナウイルス感染症対策に関連した補助金や給付金の申請など、コロナ禍だからこそ求められる業務もあります。

このように、法令改正などへの対応で需要が高まるのはもちろん、それ以外にも税務にかかわる業務が社会情勢に応じて生まれることで需要が高まることになります。

5 税理士の業務経験者は需要が高い

より良い条件の転職先を目指す場合には、転職時や入社後に求められるスキルや経験が重視される傾向があるでしょう。
税理士の場合は、「経験者」であるか「科目合格者」なのかというところがポイントです。

また、税理士の仕事は労働集約型ですから、経験者であれば1人で業務を遂行することも可能なため、リモートワークで働くこともできます。実際、税理士法人の中には、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークに切り替えた法人もあり、従来どおりの業務を問題なく行っているケースがほとんどです。

もちろん、税理士法人によって職場環境は異なるわけですが、経験者であれば、税理士は働く場所に左右されにくい職種といえるでしょう。

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転職先別・税理士の最新転職市場と転職の注意点

転職先別・税理士の最新転職市場と転職の注意点

前述した税理士の周辺状況を整理すると、現在、税理士の求人動向は減少傾向ではないという見方ができます。

しかし、税理士や科目合格者が転職(就職)をする場合、転職先は税理士法人や会計事務所だけではありません
会計コンサルティングファームや一般事業会社、金融機関などへも幅広く採用されています。

そこで、転職先別の最新の転職市場や、転職する際に注意すべき点を見ていきましょう。

BIG4税理士法人

BIG4税理士法人の転職市場は、2022年2月現在、採用控えの動きも一部では見受けられます。

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、いわゆる「コロナショック」と呼ばれる経済危機が起こり、世界経済は急速に縮小しました。
海外とのつながりが強く、クライアントにグローバル企業が多いBIG4税理士法人は、こうした世界情勢の影響を受けています。

とはいえ、これまで同様、BIG4税理士法人で求められる一定レベル以上のスキルや能力がある経験者であれば、採用されるチャンスはあります。また、経験者だから採用されるというわけではなく、年齢なども選考ポイントになるようです。

年収については、職階や年齢などに応じた給与テーブルが適用され、金額に大きな変化は見られません。

大手税理士法人

大手税理士法人は、未経験者を含めて税理士・科目合格者の転職市場は好調です。
BIG4税理士法人の転職市場が停滞気味のため、転職を希望する税理士や科目合格者の受け皿になっている傾向にあります。

年収については、職階や年齢などに応じた給与テーブルが適用され、金額に大きな変化は見られません。

中小税理士法人・会計事務所

中小税理士法人や会計事務所も、大手税理士法人と同様に税理士の転職市場は好調です。
税理士として大手で経験を積むか、中小でクライアントに寄り添った仕事をするか、自分のキャリアプランや働き方を意識して選ぶといいでしょう。

一般事業会社・金融機関

一般事業会社の転職市場に関しては、業種や企業によっても異なりますが全般的には停滞気味といえるでしょう。

社内に税理士を置きたいという採用ニーズがあればいいですが、管理部門の求人数は減っている傾向があります。
税理士を経理として採用するなど、欠員補充による求人以外は厳しい状況です。

また、金融機関で税理士の募集を活発に行っているといった動きはないようです。

会計コンサルティングファーム

会計コンサルティングファームの転職市場は、業務領域によっては好調です。

例えば事業再生などを担当している、会計コンサルティングファームは、新型コロナウイルス感染症で経営が悪化している企業にとっては必要な存在です。

また、一時、懸念されていたM&A領域に関しても、地域や業種によって違いはありますが、消費構造の変化を受けた事業再編など、活発な動きがあるようです。

税理士の転職事例

税理士の転職事例

続いては、税理士法人や会計コンサルティングファーム、一般事業会社への転職事例をご紹介します。

BIG4税理士法人への転職事例

メーカーの経理部門で働いていた26歳のAさんは、職場での人間関係に悩み、手に職を付けてどこでも働くことができるようになりたいと考えました。
そこで、税理士になることを目指して税理士試験を受験。2科目合格をきっかけに転職活動を開始しました。
転職先を選ぶ際のポイントは、体系立てて税務を学べることや、資格を活かした仕事ができることです。

マイナビ税理士に登録、キャリアアドバイザーへ相談しながら転職活動を進め、希望するBIG4税理士法人への転職を成功させました。税理士業務の経験を積みながら働くことができ、年収は350万円から450万円に上がりました。

会計コンサルティングファームへの転職事例

小規模税理士法人で働いていた29歳のBさんは、担当する業務が記帳代行や申告業務ばかりで、クライアントも零細規模が多いことから、自身が思い描くキャリアプランとのギャップに悩んでいました。

そこで、マイナビ税理士に登録して転職活動を開始。
Bさんが希望したのは、より専門性が高い業務が行えることと、税務だけでなく幅広い分野で経営者への支援ができるような転職先でした。

キャリアアドバイザーと相談する中で転職先の候補に挙がったのは、中堅規模以上の会計コンサルティングファームです。

しかし、税務から会計コンサルティング業務へいきなりシフトするのは難しいため、税務と会計コンサルティングを横断的に取り扱うことができる転職先を検討し、大手会計コンサルティングファームへの転職を成功させました。

年収は450万円から500万円となり、待遇を下げることなく希望する業務にチャレンジできるようになりました。

税理士法人から一般事業会社への転職事例

税理士法人で記帳代行や月次決算、年次決算などの確定申告を行っていた29歳の税理士Cさんは、残業時間が支給されない深夜勤務があり、子供が生まれるのをきっかけに転職を決意しました。

転職活動を始めてみると、面接がうまくいきません。そこで、マイナビ税理士に登録し、キャリアアドバイザーのアドバイスを受けて面接に臨み、一般事業会社の経理として採用されました。

会計業務から経理業務への転職でしたが、同じ会計システムを利用していたこともあり、スムーズにキャリアチェンジができました。

いつ状況が変化するかわからない今こそ転職エージェントに登録しよう

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税理士の転職市場は、2022年2月現在、概ね好調といえます。
また、法人規模で見ると、例えば新型コロナウイルス感染症の影響が出始めた直後は、大手税理士法人の採用は停滞した状態でしたが、現時点では好調という傾向が見られます。

税務にかかわる業務を行う税理士の仕事の性質上、需要がなくなることはないものの、転職市場の動向は社会情勢に応じて変化するものと考えていいでしょう。

こうした転職タイミングを見逃さないためには、転職エージェントに登録して、求人動向をしっかりと把握しておくのもひとつの方法です。最近では、オンラインで一次面接などの選考を行うケースも増えており、転職活動のための時間調整にかかる負担も軽減されています。

まずは、マイナビ税理士の無料転職支援サービスにご登録いただき、求人動向についてキャリアアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか。

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