税理士試験の官報合格とは? 税理士になる方法と官報合格の詳細
税理士試験の科目合格についてはご存じの方も多いと思いますが、官報合格と認定合格の違いはご存じでしょうか。どちらも税理士試験の合格であり、実際に税理士として働くうえでの違いはありませんが、受験資格や合格に必要な科目が異なります。難関資格である税理士試験の中でも、より難易度が高いといわれる官報合格の詳細をご紹介します。
税理士試験に合格した後も、適切な情報収集と自己分析が重要です。マイナビ税理士では、転職市場の動向から、企業の選定、面接対策まで、あなたのキャリア形成をサポートいたしますので、キャリアアドバイザーまでお気軽にご相談ください。
監修
マイナビ税理士編集部
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官報合格とは
科目合格と官報合格
税理士試験は、会計学に属する2科目と税法に属する科目から選択した3科目の合計5科目に合格することで、試験の合格が認められる科目合格制となっています。科目ごとに受験することができ、試験合格の基準に達する前の1~4科目に合格した段階は「科目合格」となり、合格した科目は生涯有効です。そして、5科目すべてに合格すると、合格発表の日の官報に受験地・受験番号・氏名が掲載されるため、「官報合格」と呼ばれています。
税理士試験では学識や職歴に応じて試験科目を免除される場合があり、官報合格とは区別されています。
官報合格から税理士になるには
官報合格者も科目免除の合格者と同様に、税理士資格を得るため、通算2年以上の租税または会計に関する事務のうち、所定の業務に従事した実務経験が必要になります。実務経験は受験前の職務経歴からカウントすることができますが、簿記や会計の知識を必要としない単純な事務や入出力作業などは実務経験として認められません。対象となるのは通常の勤務時間のみですので、最低でも2年間の勤務実績が必要になります。
実務に携わっていた事業所から登録申請書および在職証明書を発行してもらい、日本税理士会にその他の書類とともに提出します。日本税理士会では、登録申請書などを元に個別に面接等の調査を行って実務経験に該当するかを判断します。
所属した事業所のすべての在職証明書が必要になりますので、複数の事業所で働いていた場合は書類を揃えるだけでも時間がかかります。
<ココまでのまとめ>
・5科目すべてに合格することを官報合格という。
・官報合格も、税理士登録には2年以上の実務経験が必要。
官報合格と認定合格の違い
認定合格とは
5科目すべてに合格する官報合格に対し、修士または博士の学位を授与された学位免除者、税務署に10年以上勤務した人を対象とする国税免除者は、税理士試験の科目の一部が免除されます。こうした試験科目が免除された合格者を「認定合格」と呼びます。科目免除は「税理士試験等結果通知書」によって通知され、税理士試験科目免除者として官報に掲載されます。認定合格とは意味合いが異なりますが、公認会計士、弁護士とこれらの有資格者は無試験で資格が付与されます。
認定合格と官報合格の違い
税理士試験には受験資格があり、学識、資格、職歴のいずれかの条件を満たしていなければなりませんが、前述のとおり、一定の条件を満たしている場合は試験科目の一部が免除されます。税法や会計学の学位取得者や国税や地方税の実務に携わっていた公務員は、税法や会計学について知見があるとみなされ、科目を免除されます。
そうした条件に該当しない場合は5科目すべてに合格する必要があります。そのぶん、税法や会計学に関する条件が緩やかで、社会人になってから税理士をめざそうとする人でも、受験しやすくなっています。
しかし、5科目合格は非常に難しく、合格までに時間がかかってしまうこともあるため、学位免除をめざして、大学院に社会人入学する人もいるようです。
官報合格の受験資格
・学識条件
大学・短大・専修学校を卒業し、法律学または経済学を1科目以上履修した者、大学3年次以上で法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者、司法試験合格者、公認会計士試験の短答式試験合格者
・資格条件
日商簿記検定1級合格者、全経簿記検定上級合格者 など
・職歴条件
会計事務や資金の貸付け・運用に関する事務、税理士・弁護士・公認会計士等の補助事務の業務に従事した期間が2年以上
認定合格の科目免除の条件
科目免除の条件 | 免除される科目 | |
---|---|---|
学位免除者 | 税法もしくは会計学の修士 | 該当する学問領域のうち1科目 |
税法もしくは会計学の博士、 大学等の教授、准教授、講師職を通算3年以上 |
該当する学問領域の科目 | |
公認会計士試験合格者、 公認会計士補 |
公認会計士試験の論述式による 会計学科目の試験免除者、 会計士補(有資格者を含む) |
会計学科目 |
国税免除者 | 国税職員のうち国税の賦課 または立法に関する事務を通算10年以上、 もしくはそれ以外の国税事務を通算15年以上 |
国税科目 |
地方公務員のうち地方税の賦課 または立法に関する事務を通算10年以上、 もしくはそれ以外の地方税の事務を通算15年以上 |
地方税 | |
地方公務員のうち地方税の賦課 または立法に関する事務を通算15年以上、 もしくはそれ以外の地方税の事務を通算20年以上 |
税法科目 | |
国税職員及び地方公務員 (地方税の賦課または立法に関する事務に限る)として23年以上、 地方公務員(前記以外の地方税に関する事務)として28年以上事務に従事し、 係長以上の職、国税調査官、国税徴収官などに通算5年以上在職し、 指定研修を修了 |
会計学科目 |
<ココまでのまとめ>
・認定合格は、学位免除、国税免除など試験科目の一部が免除される。
・科目免除の条件を満たさない人は5科目すべてに合格しなければならない。
・官報合格は、異業種から税理士をめざす人でも受験しやすい。
官報合格者の割合
官報合格・一部合格、合格者の内訳
令和元年度の税理士試験合格率は18%、官報合格者は合格者の14%足らずで、官報合格者だけの合格率をみても驚くほど低いです。やはり5科目すべてに合格するのは、かなり難易度が高いことがわかります。年齢層で見ると26歳から40歳までの3階層が多くなっています。これは、大学院生の年齢に相当する25歳以下には学位免除者、41歳以上には国税免除者に該当する受験者が多く、科目免除が多いためという推測ができます。官報合格の合格率が、年齢層があがるにつれて高くなっているのも、複数年かけて合格する人が多いからと考えられます。
●令和元年度(第69回)税理士試験の合格者内訳
受験者数 | 官報合格 | 一部科目合格 | 合計 | 合格率 (全体) |
合格率 (官報合格) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
25歳以下 | 3,706 | 63 | 1,149 | 1,212 | 32.7% | 1.7% |
26~30歳 | 4,398 | 112 | 898 | 1,010 | 23.0% | 2.5% |
31~35歳 | 5,360 | 158 | 899 | 1,057 | 19.7% | 2.9% |
36~40歳 | 4,997 | 148 | 661 | 809 | 16.2% | 3.0% |
41歳以上 | 11,318 | 268 | 1,032 | 1,300 | 11.5% | 2.4% |
合計 | 29,779 | 749 | 4,639 | 5,388 | 18.1% | 2.5% |
官報合格の評価
税理士受験の予備校などで、合格者の氏名を掲示する際に、官報合格者には花を飾って栄誉を称えるという話を聞きます。実際に税理士として働きはじめてしまうとあまり関係ないかもしれませんが、転職活動などでは官報合格が評価される場合もあります。
しかし、採用選考では実務経験や年齢なども評価に加味されますので、官報合格だから必ず採用されるとは限りません。税理士試験合格はあくまでも税理士としてのキャリアの出発点ですから、官報合格にこだわって長い時間をかけるより、科目免除を選ぶことが有利になる場合もあります。選択肢をもてる場合は、ご自身の年齢や実務経験とのバランスをふまえて考えることをおすすめいたします。
<ココまでのまとめ>
・官報合格は難易度が高く、合格者の中でも高く評価される。
・就職時に有利となる場合もあるが、実務経験や年齢とのバランスも重要。
まとめ
同じ税理士試験合格でも、難易度が高い官報合格者は認定合格者より高い評価を得られる傾向があります。税理士として登録するためには税理士事務所などで実務経験を積む必要がありますが、税理士としてのキャリアの出発点となる、最初の職場選びは重要です。マイナビ税理士では求人のご紹介だけでなく、将来のキャリアや働き方のご要望など転職にまつわるご相談にのらせていただきます。官報合格後の転職活動なら、業界専門のキャリアアドバイザーが在籍するマイナビ税理士にお任せください。
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