米国税理士(EA)とは?難易度や費用、メリット・デメリットを解説

米国税理士(EA)が注目されています。背景には、ヒト・モノ・カネのグローバル化により、国際税務の重要性が高まっているからです。今回は、米国税理士の業務内容や試験内容、資格を取得することによるメリット・デメリットを解説します。
目次
米国税理士(EA)とは?大まかな内容を確認
米国税理士とは、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)に対して税務代理業務を行う人を言います。英語での正式な名称はEnrolled Agent(略称EA)です。直訳すると「登録代理人」ですが、日本では米国税理士と呼ばれます。
米国税理士になるには、IRSが実施する国家試験に合格することが必要です。ただし、登録するにあたり、日本のように実務経験が問われることはありません。米国税理士向けの協会はありますが、加入が強制されることはありません。登録更新が3年ごとに必要で、同時に一定時間以上の研修受講も求められます。
米国税理士の業務内容は?USCPAとの違いも確認
米国税理士の業務内容とUSCPA(米国公認会計士)との違いは、次の通りです。
業務内容
米国税理士は、IRSに対する税務申告書の作成業務を行うほか、IRSの規定に従い、税務代理や節税対策を含めた税務相談も行います。ただし、日本の税理士資格と異なり、無償独占とはなっていません。つまり、米国税理士以外の人でも、規定に定められた条件をクリアすれば、米国税理士に登録せずとも税務を行うことができます。
日本にいる米国税理士の業務として多いのは、主に次のようなものです。
- 米国税法に基づく法人・個人の申告書作成業務
- 米国税務の相談
- 日本企業の米国における投資および米国進出に伴う税務
- 米国企業の日本における投資および日本進出に伴う税務
- 上記に伴うコンサルティング業務
米国公認会計士(USCPA)との違い
米国税理士と一見似ている資格として、米国公認会計士(USCPA)があります。米国公認会計士も米国税理士と同様、税務に関する業務を行うことができます。
しかし米国公認会計士の主な業務は、監査業務や内部統制業務が中心です。また、試験それ自体は米国税理士より難易度が高くなっています。そして、米国公認会計士は登録した州でないと活動できませんが、米国税理士は州に関係なく米国のどこでも業務ができます。
米国税理士の試験内容
米国税理士の試験は、米国公認会計士ほど難易度が高くないと言われています。ここで具体的な内容を確認しましょう。
受験の条件
学歴や国籍などによる制限はありません。18歳以上なら誰でも受験できます。米国税理士の試験を受けるなら、事前にIRSからPTIN(Prepare Tax Identification Number、申告書作成者番号)を取得する必要があります。
試験内容
米国税理士の試験科目は、次の3つから構成されます。
- Part1:Individuals(連邦個人所得税法および連邦贈与税法・相続税法)
- Part2:Businesses(事業関連の連邦税法)
- Part3:Representation, Practices and Procedures(税務代理業務および諸手続き)
いずれの科目も4肢択一問題です。問題数は各科目100問で、1科目あたりの試験時間は3.5時間となっています。ただし、日本の税理士試験のように合格者数による縛りはありません。配点調整はありますが、各科目とも合格ラインは105ポイント以上となっています。また、合格科目については2年間有効となっています。
合格率だけで見るならば、60~80%と、かなり高い確率となっています。
合格までの時間
米国税理士の試験の合格に必要な時間は200~300時間と言われます。初学者でも取り組みやすく、6~8ヵ月で合格することが可能です。ただし、試験は英語で行われます。TOEIC700~800程度の英語力があった方がいいでしょう。
勉強にかかる費用
受験料は1科目あたり206ドルです(2024年2月時点)。このほか、PTIN登録に19.75ドル、米国大使館などでのパスポート公証に50ドルかかります。さらに、現地で受験をするなら、航空機代やホテル代なども考えないといけません。
このほか、資格試験の学校に通うなら15~20万円程度が必要となります。
米国税理士のメリット
米国税理士のメリットとして、次のようなものがあります。
国際税務を任される可能性が高まる
米国での税務業務が可能であるため、国際税務を任されたり依頼されたりする可能性が高まります。現地での税法を理解している、とみられるからです。また「米国に事業を展開したい」「米国にある財産の相続の手続きを相談したい」などで頼りにされる可能性があります。
英語で仕事ができる
米国税理士の試験や業務自体、英語が必要です。そのため、英語で仕事がしたい人にはぴったりだと言えます。また、英語を通じて海外の人脈を広げやすく、新規案件も受注しやすくなります。
転職時にプラス評価される可能性がある
昨今の会計事務所の現場では、国際税務が課題となる場面が増えています。国際税務に特化している会計事務所でなくても、海外が絡む税務の相談は舞い込んできます。そして多くの会計事務所では、英語になかなかうまく対処できません。
このような状況下、米国税理士の資格を持っていると、転職の場面で高く評価される可能性があります。米国税理士の資格を生かせるのは米国に限定されますが、英語での決算書の読み解きや現地スタッフとのコミュニケーションで活躍することが期待されるからです。
米国税理士のデメリット
米国税理士の資格はメリットがある一方、デメリットもあります。次のような点です。
日本国内では税理士の独占業務ができない
米国税理士の資格では、日本の税理士業務を行うことはできません。日本で税理士業務を行うなら、日本の税理士の資格を取得し、登録する必要があります。
また、日本の多くの会計事務所の業務の要は、日本での税務申告や税務相談、税務代理です。米国の税務を中心に行っているところはきわめて稀だと言った方がいいでしょう。
こういったことから、米国税理士だけで採用されるのは厳しいと言えます。なぜなら、日本の会計事務所は日本の税務ができる有資格者を望んでいるからです。転職を有利に運びたいのなら、米国税理士だけではなく、日本の税理士資格を取得した方が望ましいと言えます。
更新が必要
米国税理士の資格は、3年ごとに登録更新が必要です。72時間の継続研修と最低16時間の研修が必要とされています。具体的には、次のようになっています。
1.1987年2月1日から1990年1月31日の間に最低72時間の継続教育クレジットを消化していなければならない。以後3年毎にも適用される。3年の期間とは登録の期間である。
2.登録期間中の1年ごとに最低16時間の継続教育クレジットが必要である。
参照:Ⅱ.米国における税務業務|東京税理士会
日本の税理士資格でも、毎年、36時間以上の研修受講が義務付けられています。しかし、仮に定められた時間が未達成であったとしても、それで税理士資格が無効になるわけではありません。そう考えると、米国税理士は、維持するのも大変であると言えます。
実務では現地の専門家とのつながりが必要
米国税理士の資格があれば、米国での税務申告は行えます。ただ、実際は税務申告だけを依頼されるとは限りません。「米国と日本の両方に財産がある人が相続を相談してくる」「日本の居住者が米国に新たに事業展開を希望している」といったこともあります。
こういった場合、税務だけをこなせばいいわけではありません。現地での法的な手続きも必要です。そして、この手続きは日本とはまた違うしくみです。そのため、現地の弁護士など、専門家に依頼せざるを得ないのです。
こういったことから、日本と米国の両方の業務をこなすなら、米国現地の専門家とつながりを持っておくことが必要となります。資格さえあれば十分、というわけではありません。
まとめ
経済のグローバル化が進んだことで、国際税務のできる人の需要が高まっています。その中で注目されている資格の1つが、米国税理士です。取得そのものは日本の税理士ほど大変ではありません。また、取得することによって仕事の幅が広がる可能性があります。ただし、日本での税理士業務は行えない点に注意が必要です。
「日本と米国の両方で税理士として活躍したい」という方は、まず日本の税理士資格を取り、それから米国税理士を検討するとよいかもしれません。
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