【2025年1月開始】税務署の収受印廃止とは?トラブル防止策も解説
2025年1月から税務署で収受印の押なつが廃止されます。紙の申告書や申請書・届出書などがいつ収受されたかの証として重要な役割を果たしていたのですが、なぜ廃止されるのでしょうか。また、収受印廃止はどう影響するのでしょう。今回、収受印廃止の背景や起こり得るリスク、そして対策について解説します。
目次
2024年7月から税務署の収受印が廃止に
収受印(収受日付印)とは、税務署が申告書等の提出を受けた際に税務署側が受領の証として押す印を言います。受領した税務署名と収受した年月日が表示されます。これにより、申告書等がいつ受領されたかが示され、期限内提出かどうかの判断ができます。
これまで紙の申告書や申請書、届出書などは収受印が押されました。しかし2025年1月から、この収受印の押なつがなくなります。国税庁のWebサイトでも、この押なつ廃止のお知らせが掲載されました。
参照:令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて|国税庁
窓口提出でも郵送でも原則「提出用のみ」
紙の申告書等の提出は従来、窓口提出と郵送提出の2つがありました。提出用と控用の2つに収受印を押なつしてもらい、控用のみを手元で保管しておくのです。郵送については、切手を貼った返信用封筒を同封しておけば、後日、収受印を押した控が返送されました。
2025年1月以降、この対応が基本的になくなります。提出するのは提出用のみです。提出日については、提出した側が自ら提出日等を記録・管理しなくてはなりません。
e-Taxは記録が残る
現在、紙での提出以外に電子申告(e-Tax)があります。e-Taxでの申告等に収受印はありません。しかし送信完了後、メッセージボックスに格納される受信通知には提出先税務署・受付日時・受付番号・申告した税目等が記載されます。この2つが収受印と同様、受領の証となるのです。
ただし、時間経過とともにメッセージボックスから削除されるため、PDFなどで保管した方が無難です。
参照:e-Taxを利用して申告等データを送信した場合、税務署の受付日時等はどのように確認できますか。|国税庁
当面はリーフレットに日付等を入れるなどで対応
収受印の押なつ廃止後、提出するのは原本1部のみとされています。ただし、2025年1月以降でもしばらくは、現場での混乱を避けるべく、日付や税務署名を記載したリーフレットを窓口で交付するとしています。郵送提出については、返信用封筒を同封すると、このリーフレットが返送される模様です。
税務署での収受印廃止の背景
なぜ税務署で収受印の押なつが廃止されたのでしょうか。背景には次のような事情があります。
税務行政のDX化
2023年6月、政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を公表しました。国全体でデジタル化を推進することで、国民にとってより利便性の高い社会を実現しようというものです。このデジタル化の中には行政手続きのオンライン化も含まれています。税務行政ならば、申告手続などのオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直しなどです。こういったことを行うことで、税務行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとしています。
e-Taxの浸透
個人・法人の確定申告を中心に、e-Taxが浸透しています。2022年度(令和4年度)、e-Tax利用率は法人税の申告で91.1%、所得税の申告で65.7%となりました。
参照:令和4年度におけるオンライン(e-Tax)⼿続の利⽤状況等について(令和5年10月)|国税庁
法人税と所得税については、今後、e-Tax利用率の割合を引き上げていきたい模様です。その推進の一環として、今回、紙の申告書等への収受印の押なつが廃止されたものと見られます。
税務署の収受印廃止によるリスク
収受印の廃止により、気になるのがリスクです。相続税のように、申告等の手続の中にはe-Taxにあまりなじまないものがあります。今後、紙での申告等を続けた場合、次のようなリスクが考えられます。
期限内の提出かどうかでトラブルになるおそれ
もっとも懸念されるのが「期限内に手続きされたかどうか」です。消費税の課税事業者選択届出書や適格請求書発行事業者の登録申請書・登録の取消しを求める旨の届出書、青色申告の承認申請書といった申請・届出の手続きの多くは「いつまでに提出したか」でいつから適用になるかが変わります。
これまでは紙の申告書等の控に押されている収受印で提出日を確認できました。今後は、収受印での確認ができないため、税務署と日付で争いになるおそれが懸念されます。
「期限内申告」を要件とする税制優遇に影響
税制優遇の一部には、期限内申告を条件としているものがあります。次の2つです。
相続時精算課税制度の特別控除2500万円の適用...期限後申告だと一律20%で贈与税がかかる
所得税の事業所得・不動産所得などの青色申告の特別控除(65万円・55万円)...期限後申告だと一律10万円控除になる
紙の申告書に収受印が押されなくなると、こういった優遇措置を受けられるかどうかで税務署と揉める可能性が生じます。
このほか、期限後申告や修正申告においても、加算税や延滞税の計算でトラブルになるおそれがあります。
税務署の収受印廃止によるリスク対策
税務署の収受印の押なつに伴う混乱や不利益をできるだけ減らすには、どうしたらいいのでしょうか。e-Taxですべて申告等の手続ができればよいのでしょうけれど、中にはそれが難しい納税者もいます。このような場合、次のような対応が考えられます。
書留による郵送
1つ目は書留やゆうパックなど、記録の残る郵便で提出する方法です。申告書など提出する書類の一部は「いつ出したか」が問われる発信主義を採用しており「提出の日付は郵便物か信書便の通信日付印により表示された日付とみなす」としています(国通法22)。
ただし、何を提出したかは郵便で証明されるわけではありません。書留発送の際「書留・特定記録郵便物等差出票」に宛先は書くけれども中身については記載しません。また、記載しても第三者による確認等がなければ本当にその書類を提出したかまで確証は取れないこととなります。
なお、発信主義か到達主義かについては、次のWebサイトに一覧があります。そちらをご覧ください。
参照:税務手続に関する主な書類の提出時期の一覧|国税庁
申告書等情報取得サービス
e-Taxソフト(Web版)にログインすることで過去の申告書などのPDFデータを取得できるというものです。e-Taxで取得した申告書などだけでなく、紙の申告書などの情報も取得できます。手数料はかかりません。
ただし、次のような欠点があります。
- 直近3年分しか取得できない
- 相続人や代理人による取得は不可
- 申請からPDFの取得までに数日を要する
- PDFファイルのダウンロード可能期間は180日間のみ
- 個人はマイナンバーカードが必要
また、取得がe-Taxによることから「『e-Taxが苦手』などの理由でe-Taxを使っていない」層にとってはハードルの高い方法となります。
保有個人情報の開示請求
個人情報の保護に関する法律に基づいた行政への情報開示請求です。代理人による申請も可能となっていますが、手数料がかかります。また、身分証など、本人確認書類の提示も必要です。請求して認められれば開示されますが、時間がかかります。
参照:開示請求等の手続|国税庁
申告書等の閲覧サービス
申告書等の閲覧サービスとは、提出済みの申告書や申請書、届出書などの閲覧ができるという行政サービスです。紙やPDFなどの交付はありません。条件を守ればスマートフォンなどのカメラでの撮影が可能ですが、それができなければ自ら閲覧内容の情報を紙などに書き写すこととなります。代理人の閲覧も可能です。
ただし本人確認書類は必要となります。また、コピーは禁じられています。書き写しの内容が真正であることの証明を税務署が行ってくれるものではありません。
参照:申告書等閲覧サービスの実施について|国税庁
申告書等閲覧サービスの実施について(事務運営指針)|国税庁
上記のほか、納税証明書の交付請求もありますが、あくまで課税標準額や納税額、滞納の有無などを証明するものであり、申告書などの提出状況を表すものではありません。
まとめ
収受印の押なつ廃止は、相続税申告を中心に波紋を呼んでいます。相続税の申告をする人の中には確定申告には縁がなく、税務署への申告は相続税のみというケースがあるためです。こういった場合、一生に1度か2度行う申告のためにe-Taxで申告をしようとはなりづらいものです。
ただ、e-Taxの浸透率は先ほどのグラフで見た通り、かなり上がっています。税務署側も紙での申告書よりも管理がしやすく、調査選定で有効活用できるというメリットがあります。
今、参議院で収受印の押なつ廃止に異論を唱える声が一部あるようですが、税務署の人手不足や時代の流れを考えると、e-Taxでの対処を積極的に検討した方が無難かもしれません。
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