上場株式の配当等の課税方式が変わる?2022年度税制改正の影響とは
「貯蓄から投資へ」を合言葉に、ここ20年ほど投資への課税が優遇されてきました。
中でも上場株式等の配当益は、節税しやすくなっています。
しかし、このメリットも2022年度税制改正でストップがかかりました。どういうことなのでしょうか。
上場株式等の配当等の課税の状況を確認しつつ、税制改正の内容を見ていきましょう。
上場株式の配当所得等の課税方式の選択とは
上場株式の配当金や上場投資信託の分配金などをまとめて「上場株式の配当等」と言います。
この配当等の課税が現在どうなっているのか、確認しましょう。
所得税と個人住民税で課税方式を別々にできる
現在、上場株式の配当金や上場投資信託の分配金は、次のいずれかの口座で運用します。
注目したいのが、特定口座です。証券会社などの金融機関に特定口座を開設し、上場株式などをそこで運用すると、金融機関から年間取引報告書が交付されます。これを使えば、確定申告を簡単に行えます。
特に「源泉徴収ありの特定口座」だと、次のようなメリットがあります。
1.確定申告は原則不要(金融機関が譲渡益や配当益から源泉徴収して納税するため)
2.運用益が合計所得金額や総所得金額等に含まれない
3.所得税と住民税で課税方式を別々にできる
もっともメリットが大きいのが3です。源泉徴収ありの特定口座では、所得税と住民税それぞれで、「申告不要か確定申告するか」「確定申告するなら分離課税か総合課税か」を選べます。
譲渡益は「申告不要」「分離課税で確定申告」からのみの選択です。
一方、配当益は「申告不要」「分離課税で確定申告」「総合課税で確定申告」から選べます。配当益の課税は、譲渡益の課税よりも柔軟性が高いのです。
課税所得額900万以下は節税しやすい
「所得税と住民税それぞれで課税方式を選べる」しくみを上手に活用すれば、配当益の税金を抑えられます。
特に課税所得金額が900万円以下の方は「所得税は総合課税で確定申告、住民税は申告不要」にすると、節税効果が高まります。理由は「税率の差」です。
「申告不要」「分離課税で確定申告」「総合課税で確定申告」の税率は、次のようになっています。
赤線より上を見てみましょう。
課税所得が900万円以下だと、所得税は総合課税の方が税率は低くなっています。一方、住民税はその逆です。
こういったことから、節税に敏感な投資家は、配当金課税を「所得税は総合課税で確定申告、住民税は申告不要」としています。
住民税の申告不要で公的負担が軽減
「申告不要にしても分離課税で申告にしても『所得税率15.315%、住民税5%』という税率は変わらない。ならば、住民税は分離課税で確定申告してもいいのでは?」と感じるかもしれません。
申告不要を選ぶのには理由があります。それは「合計所得金額や総所得金額等に影響させないため」です。
合計所得金額や総所得金額等は、次のように、各種控除や国民健康保険税などの公的負担の計算の基礎となっています。
基準となる所得の合計 | 影響を受ける控除・公的負担 |
---|---|
合計所得金額 | 配偶者(特別)控除(納税者本人と配偶者) ひとり親控除(親)・寡婦控除 扶養控除(扶養親族) 基礎控除 均等割の非課税限度額 障がい者、未成年者、寡婦、ひとり親の非課税限度額 |
総所得金額等 | 雑損控除 医療費控除 ひとり親控除(子) 寄附金控除 所得割の非課税限度額 国民健康保険税 |
こういった所得の合計は、課税所得額や住民税の所得割額にも反映されます。
そのため、後期高齢者の医療費の自己負担額や保育料の算定、就学支援金の判定などにも影響します。
分離課税で配当益を確定申告してしまうと、こういった所得の合計額に配当益が加算されます。
結果、住民税での配偶者控除や扶養控除が受けられなくなったり、国民健康保険税が高くなったりするかもしれません。
しかし、申告不要を選べば、控除や公的サービスへの影響を避けられます。
とりわけ市区町村の公的サービスは、こういった所得の合計に左右されます。
公的負担を減らしつつ、地域サービスを受けたいのなら「住民税は申告不要」がよいのです。
2022年度税制改正で配当所得の課税方式は「所得税・住民税は同じ」
源泉徴収ありの特定口座で上場株式の配当等を受け取り、所得税と住民税で別々の課税方式を選べば、節税できるだけでなく、公的負担も抑えられます。
いいこと尽くしの制度でしたが、2022年度税制改正でメスが入りました。
上場株式の配当等の課税方式は、所得税・住民税で同じにしなくてはならなくなったのです。
【引用元】令和4年度税制改正の大綱(財務省)
所得税で「総合課税で確定申告」を選んだら住民税でも「総合課税で確定申告」しなくてはなりません。住民税を申告不要としたいなら、所得税も申告不要のままにしておくことが求められます。
この改正は、2024年6月から納める住民税に適用されます。
課税方式を別々にすることによるメリットは、2023年度の住民税、つまり2022年分の確定申告で終了するのです。
税制改正による配当金の注意点
会計事務所のクライアントが上場株式の配当等収入の多い方なら、事前にこの税制改正を告知しておく必要があります。
また、今後は次の2つも留意しておいた方がいいでしょう。
申告するなら公的負担への影響を考慮
今回は上場株式の配当等をテーマにお伝えしました。しかし、実際は配当等以外に、株式の売買も生じます。
売買で譲渡損失が生じていたら、配当等も一緒に分離課税で確定申告をし、住民税はあえて申告不要とすることもあったかもしれません。
2024年度分の住民税から、つまり2023年から受け取る配当等については、この自由な選択ができなくなります。
譲渡損失との通算をどうするかを検討する際、公的負担への影響も考慮しながらシミュレーションすることになるかと思われます。
申告で節税するなら他の控除も検討を
配当等を含めて確定申告をすることになったのなら、他の控除での節税を検討した方がいいでしょう。
特にふるさと納税は、クライアントの了解も得やすいですし、節税額の調整が効きやすくなります。課税所得額そのものが下がれば、後期高齢者の医療費の自己負担額など一部の公的負担は下がります。
クライアントのメリットが薄くなる税制改正は伝えにくいものです。
ただ、代替案を一緒に考えて提示するなど工夫すれば、クライアントの心理的負担は少し軽くなるかもしれません。
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