税理士試験の受験生や税理士が転職で意識しておくべき点は?
税理士試験は特徴である「科目合格制度」によって、社会人でも仕事をしながら試験勉強を続けられます。社会人で税理士を目指して勉強している、あるいはこれから税理士を目指そう考えている方には、試験勉強しやすい環境を求めて転職を考えているケースも少なくないでしょう。
税理士試験の勉強を始めると、平日の夜や土日に講義を受けたり勉強したりしなければいけません。そのため、勉強しやすい職場環境は大切です。また、すでに税理士になった方も、これから理想の税理士像に向けてさまざまな選択があります。
ただし、転職すればそれで良いわけではなく、どんな転職先に進むかを真剣に考える必要があるでしょう。ここでは税理士試験の受験生、そして税理士の方々が転職を考えるにあたりポイントとなる内容を、実体験なども踏まえて解説します。
転職先を決めるときのポイント
キャリアプランを明確に
税理士試験は、合格までに5年から10年かかると言われています。実感では、5年以内に受かった人はほぼいません。優秀な人なら2~3年で合格し、20代中盤で税理士というケースもあるでしょう。しかし税理士に合格する頃には、20代後半から40代になることが多いはずです。
税理士試験は合格までに時間やお金、ときには人間関係なども犠牲となるタフな試験。しかし苦労した分だけ、税理士になれば転職先の選択肢が広がります。BIG4や大手、中堅の税理士法人で大きなクライアントの業務を任されるほか、一般的な事務所で幹部を目指すことも可能です。あるいは、独立も一つの選択肢となるでしょう。
税理士を目指すなら、できれば試験勉強中から税理士になった後のキャリアを考え、就職・転職先を検討することをおすすめします。望むキャリアに応じて、働き方や経験したい業務が変わってくるはずです。
とはいえ長い人生の途中、どこかで考えが変わることがあるかもしれません。独立を目指していたものの、これまで就業していた事務所でパートナーとして頑張りたいと感じ始めた。あるいは、ずっと同じ事務所にいるつもりが、税理士合格が現実的になってきたタイミングで独立を意識し始めることもよくあります。それでも「自分が将来どうなりたいのか」を意識していれば、日々の仕事への取り組み方や会社選びの意識が違ってくるはずです。
ライフプランに応じて決める
税理士試験の勉強中、税理士合格後を問わず転職する際には、ご自身で譲れない条件やポイントを明確にしておきましょう。
例えばどんなに忙しくても構わない代わり、給与が高い仕事を望む方がいるかもしれません。あるいはプライベートを優先し、土日祝日はちゃんと休めて残業がほとんどない職場を望む方もいるはずです。特に税理士試験の勉強中は、勉強に集中できる環境を優先して転職先を選ぶのが良いでしょう。
未経験から税理士事務所の転職するときの注意点
これまで一般企業で働き、税理士試験を機に税理士事務所への転職を考えている方に向けて、税理士事務所で働くメリットと未経験で転職する際の注意点を解説します。
試験勉強と実務がリンクする点がメリット
税理士事務所では、試験勉強の内容と実務がリンクします。覚えた条文や何となく計算していた税金の計算過程に実務で触れることになるため、勉強と仕事それぞれの理解度が増すことがあるでしょう。また、試験勉強することで実務の勉強にもなります。
ただし税理士試験の勉強内容は、税金の規定の細かいところまでが範囲です。そのため、実務で触れない論点も少なくありません。逆にテキストに載っていないものの、実務で頻出するようなこともあるでしょう。そのため、あまり大きな期待はしないようにしてください。
未経験なら条件は特に注意する
当たり前のことですが、転職では面接時や入社前に、労働条件や職場の雰囲気をしっかり確認しておいてください。
まず税理士業界で未経験の方が転職する場合、そもそも「未経験」であることがネックになることが少なくありません。これについては、「はじめて税理士業界で働くのだから未経験なのは当然だ」と思う方もいるでしょう。しかしこの業界は、未経験者を敬遠する傾向があります。なぜなら、未経験者に1から教えることに積極的でない事務所が多く、未経験であるだけで門前払いということもあるのです。
とはいえ、もちろん未経験者を受け入れている事務所もたくさんあります。未経験者を受け入れる体制ができており、組織的に仕事を教えてくれる事務所を選ぶことが大切です。
ただし、未経験可の事務所ならどこでも良いというわけではありません。例えば離職者が多く、未経験者でも構わないからとにかく人がほしいという事務所もあります。そういった事務所は何かしら問題があり、入社しても自分にとってプラスにならない可能性が高いでしょう。
面接時点で、事務所の雰囲気や定着率を確認しておいてください。例えば20年以上勤務が大半、残りは入社1年から半年くらいの人が占めている在籍期間の層がいびつな事務所は、新人が何かの理由でどんどん辞めている可能性があります。
勉強しやすい環境をめざす
税理士になるとそれなりの待遇が必要なため、従業員が税理士になることに後ろ向きである事務所があります。求人では「受験中の方歓迎」「将来のパートナー候補募集」と書かれていても、実際には誰も受験に向けて勉強していない、試験勉強に対して後ろ向きということがあるでしょう。
面接時に現在受験している人、あるいは過去に勤務しながら科目合格した人がいるかなどを質問し、反応を見るなど対策してください。これから税理士試験の合格を目指すなら、まずはとにかく勉強に集中するのが第一です。転職したことで試験勉強に集中できないのでは本末転倒でので、焦らず慎重に転職先を選びましょう。
大手や専門分野に特化した事務所の注意点
税理士事務所の規模は5名以内が多いと言われており、100人以上いれば大手になります。大手になるとお客様の規模も大きくなり、特殊な案件に携われる機会も少なくありません。
また、最近は相続税や国際税務など、専務分野に特化した事務所があります。それぞれの事務所について、簡単な特徴と注意点をまとめました。
一般的な事務所の担当業務
法人や個人業事業主の顧問となるのがメイン業務です。相続税や特殊な案件が入ることもありますが、一般的な事務所では顧問として顧問先の会計データの入力やチェック、税務相談、確定申告書の作成が中心となります。
なお、一般的な事務所では、担当する業務の範囲について大きく二つのパターンに分けられるでしょう。一つ目は、ご自身が法人や個人事業主のお客様の担当者となり、そのお客様をすべて自分で担当するパターン。
これは、前述のとおり会計データ入力から確定申告まですべて自分が窓口となって行います。常に自分がお客様と接するので、自然と関係性を築くこことができ、頼りにされることにやりがいも感じられるはずです。将来独立を目指している、あるいは直接お客様を担当したいと考えている方は、このような事務所を選ぶのが良いでしょう。
ただし不明点や特殊な相談、クレーム対応も自分で対応しなくてはいけません。適時文献を調べる、上司や所長に相談するなどしながら進めていくことになります。
二つ目は、業務分担がされているパターンです。例えば会計データを入力する部署、法人税の申告書を作成する部署というように事務所のお客様の業務を細分化し、特定の業務だけに専念します。
このような事務所では、担当になった業務について短い期間で圧倒的な経験値を積むことができるでしょう。その反面、担当しない業務の経験ができません。そのため、例えば数年会計事務所に勤めたにもかかわらず、法人税の申告書を作ったことがないなどの可能性があります。経験上、規模が大きくなればなるほど、二つ目はパターンになる傾向が強いでしょう。
専門分野特化型の事務所は実は諸刃の剣
一般的な事務所ではなく、専門分野に特化した事務所を経験したいという方もいるはず。特化した事務所ではその分野の経験は積めますが、独立や再転職を考えると必ずしもプラスになるとは言えません。
税理士業界には「相続税専門」「国際税務に特化」など、特定分野に特化した事務所があります。専門分野の案件は税理士でも苦手にする人が多く、一般的な事務所では一生触れることがないような案件に継続的に携われることもあるでしょう。そのため、特化型の事務所で勤務することは非常に貴重な経験になります。
ただし専門分野に特化しているがゆえに、逆にオーソドックスな税理士業務の経験ができないことがあります。その結果、一般的な事務所に改めて転職したいとき、不利になるかもしれません。なぜなら、転職においては即戦力が求められるから。業界経験が長く年齢が高いほど、知っていて当然と思われます。そんなとき、これまで経験してきた分野の仕事がない事務所では、戦力として見られない恐れがあるでしょう。
また、独立した場合においては、自分が経験してきた専門分野の仕事が来ないかもしれません。それこそ、前職のような特化した大手事務所がライバルになります。相続が得意でも自分に依頼してくれるとは限りませんし、小規模の事務所に国際税務の案件がくることは稀でしょう。せっかく独立を見据えて専門分野の経験を積んでも、それを活かす機会が訪れない可能性があります。
会計事務所での業務経験は事業会社でも活きる
税理士事務所から転職する際、事業会社へ転職するのも一つの選択肢です。私自身も、税理士事務所から事業会社のバックオフィス業務に転職しました。
税理士事務所での経験は、事業会社のバックオフィス業務でも活きます。なぜなら、事業をしていて必要な手続きを一年間通して理解しているからです。
例えば決算申告や各種納税、年末調整などは、税理士事務所で何度も経験します。その他に社会保険の手続きや、従業員の入退社したときの手続きを理解している方も多いでしょう。お客様と一年間お付き合いする中で、これだけの経験ができます。
事業会社のバックオフィス業務の求人が出ると、「経理だけはできる」「人事労務は経験してきた」という方も多く応募するでしょう。しかしバックオフィス業務全般を網羅的に、かつ横のつながりを理解している人は貴重です。
また、これまでお客様側だった事業会社に入り、今度は顧問税理士とやり取りをすることになります。会社と税理士、両方の立場を理解したうえで仕事するため、それぞれから非常にありがたい存在になれるでしょう。
試験で結果を出すことは転職にも有利
せっかく税理士試験の勉強を始めたのであれば、ぜひ本気で税理士を目指して資格を取り切ってください。もちろん、大学院免除でも良いでしょう。まずは科目合格でも、目に見える結果を出すことが大切。そうすれば税理士を取る前でも後でも、必ずご自身のプラスになります。なぜなら、合格したこと自体が評価の対象になるからです。
税理士は難易度が高い資格です。5科目合格はもちろんのこと、大学院免除でも現在は会計科目と税法に1科目ずつ合格しないといけません。税理士受験を突破したことは、それだけで一定以上の能力を有しており、努力できる人物であることの証明になります。どんな仕事でも、知らないことを自分で考え調べなければいけない場面があるもの。一定の能力と努力できることが担保されている人物は、採用する側にとって合否の決め手の一つとなるはずです。
私自身、転職で入社した事業会社で選考の過程を聞く機会がありました。最終的に私ともう一人、採用候補がいたそうです。その方は、東大卒で経理をしてきたとのこと。スペックを比較したとき、私が採用される可能性はゼロに等しいでしょう。しかし、実際に採用されたのは私でした。さまざまな要素を総合判断しての採用でしたが、「社会人になって働きながら勉強を続けて成果を出した」ことを評価してくれたのです。
長い人生、この先何があるかわかりません。もしかすると、税理士試験をあきらめざるを得ない状況が訪れることもあるでしょう。そんなときでも科目合格という結果を出していれば、それだけで選択肢の幅が広がる可能性があります。
まとめ
せっかく税理士を目指し、そのために転職するのなら、ぜひ将来につながる職場を選びましょう。税理士業界は、以前から定着率が低い傾向にあります。これは、業界全体が働きにくい環境であるということです。だからこそ、ご自身でより良い環境を選べるようになることが大切です。そのためにも転職先を慎重に選ぶとともに、選択肢が広がるように試験で結果を出すことが一番ではないでしょうか。
また、すでに税理士試験に合格した方は、数ある選択肢からご自身が将来どうなりたいかを明確にし、実現できる場に身を置くことをおすすめします。自分は何のために転職するのかを改めて意識し、税理士試験の合格、そしてより良い職場選択に繋げてください。
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進路について適切なアドバイスをしてもらえました!自分の進路について明確な答えが出せていなかったものの、どの業種に進んだら良いかなど適切にアドバイスをしてもらえました。どういったキャリアを積んでいけばより市場価値を高められるのか、候補の会社がどう違うのかを具体的に説明していただけました。(30代/税理士)
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求人の提案力と面接のフィードバックが良かった!タイムリーな求人の紹介とフィードバックの提供が良かったです。面接前の情報提供では、自分のアピールしたい強みが、面接先企業のどこに符号しており、今後の展開をどう捉えているかの思考の整理をする際に役立ち、安心して面接を迎えることが出来ました。(30代/税理士)
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