住民税
税理士試験の選択科目の1つであり、他科目と比較して簡単に合格することが出来ると言われている住民税。税理士試験の5科目合格を目指す受験生にとり、選択科目をどう選ぶかは非常に悩ましい問題でしょう。本記事では、「住民税って本当に簡単なの?」「住民税ってどのように勉強したらいいの?」などの疑問点について、初学者にもわかりやすく解説します。
税理士試験で住民税を選択しようと考えていて、科目について詳しく知りたいという方は、是非とも本記事をご一読ください。
住民税は日本国に居住し所得を得ている、個人や法人に対して課される税金です。
住民税は地方自治体により課税が行われる地方税です。税理士試験の科目の中では固定資産税と住民税、そして事業税の3種が地方税です。これらは地方税法の中に規定されている税金で、個々の法律が存在しません。そのため、国税とは異なり「~税法」ではなく、「~税」という科目名が付けられています。
住民税は個人であれば所得、法人であれば法人税の税額をベースに課税されるため、所得税法及び法人税法と密接な関連があります。住民税の内容を理解するにあたっては、所得税法や法人税法の知識があると有利になるでしょう。
税理士試験における住民税は、選択科目の一つです。酒税法、消費税法、国税徴収法、固定資産税、事業税と並んでミニ税法とも呼ばれることもあるなど、学習のボリュームが比較的少なく受験生に人気の科目。なお、住民税と事業税は、いずれか1科目のみしか選択できません。
試験では大問が2問出題され、理論問題が1問、計算問題が1問です。得点比率は理論が5割で計算が5割。住民税は大別して個人住民税と法人住民税がありますが、試験では9割程度の確率で理論・計算共に個人住民税に関する問題が出題されています。
合格に必要な学習時間は、主要科目と比較して短く200時間程度と言われています。これは、固定資産税や事業税と同程度の長さです。なお、同じミニ税法の酒税法や国税徴収法と比較すると、若干多めの勉強量が必要になります。
所得税法の試験範囲と重複する部分が多いので、所得税法の学習を進めている人、あるいは既に合格している人なら効率的に勉強を進めることが可能でしょう。
住民税はボリュームが少ないことから、他のミニ税法と同様に試験全体で8割以上の高得点を求められることが多いです。理論・計算とも所得税法と試験範囲が重複しますので、所得税法の計算が得意な人には向いている試験です。
住民税の理論問題では、個人住民税に関する複数の個別理論の横のつながりを問う問題が多く出題されています。個別理論の中の必要部分を素早く抽出して組み合わせ、解答を作成する必要があるでしょう。理論の範囲が少なく、出題されるのは基本的な理論が多いという点も住民税のポイントです。
また、住民税の計算問題は基礎的な問題が多いものの、解答のボリュームが非常に多いため注意してください。
令和3年度(第71回)試験における出題範囲は以下のとおりです。
・住民税に係る地方税法、同施行令、施行規則に関する事項のほか、地方税法総則に定める関係事項及び当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
ミニ税法とも言われるように住民税のボリュームは小さい傾向にあり、出題範囲も比較的狭いと言えるでしょう。また、個人住民税は所得税法、法人住民税は法人税法とそれぞれリンクしています。試験では個人住民税が出題されることがほとんどのため、所得税法の学習も重要です。
住民税は試験時間2時間、100点満点の試験です。大問1が理論問題で配点は50点、大問2が計算問題で配点は50点となっています。
理論問題では、規定の趣旨が問われる問題が出題されることがあります。計算問題では基礎的な問題が出題される傾向にあるものの、分量が多い点は注意です。
令和2年の合格率は、過去の合格率でもトップクラスに高い18.1%でした。平成25年以降の合格率の最高値は令和元年度の19.0%、最低値は平成26年度の8.7%です。近年の合格率は、他の科目と比較してかなり高い傾向にあります。。
住民税は酒税法や事業税と並んでトップクラスに受験者数が少ない科目です。近年は、いずれも受験者数は500人未満となっています。さらに住民税の受験者数は、税理士試験受験者数の減少割合以上に減っている傾向にあります。
住民税 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
---|---|---|---|
令和2年度 | 381 | 69 | 18.1% |
令和元年度 | 410 | 78 | 19.0% |
平成30年度 | 460 | 62 | 13.5% |
平成29年度 | 456 | 65 | 14.3% |
平成28年度 | 549 | 64 | 11.7% |
平成27年度 | 626 | 60 | 9.6% |
平成26年度 | 682 | 59 | 8.7% |
平成25年度 | 744 | 91 | 12.2% |
税理士試験には合格基準点があり、全科目共通で60点となっています。合格基準点を超えることが科目合格の前提ですが、それだけで合格できるということではありません。税理士試験は全体のうち一定数の受験生しか合格することができない、相対評価の試験になっています。そのため受験生全体の内、一定以上の点数を取った上位の得点者しか合格することができません。
住民税では合格基準点の60点を超えるだけでなく、全受験者の中で上位10%~19%の得点を取ってはじめて合格できることになります。具体的な点数としては、例年100点満点の中で80点程度の得点が必要です。
住民税はミニ税法とも呼ばれ、比較的短い勉強時間で合格が可能とされています。だからこそ合格レベルに達している受験生が多く、その中で安定して上位の成績を取ることはそう簡単ではありません。また、住民税は既に4科目を合格した受験生が5科目目に取ることもあるため周囲のレベルが高い分、合格の難易度が上がるでしょう。
さらに、税理士試験の中で相対的な難易度が高くないとしても、一般的に見れば非常に難易度が高い試験です。特に住民税は8割近く得点しないと合格できないと言われていて、十分な学習なしには合格できないでしょう。
住民税の合格には200時間程度かかると言われています。酒税法や国税徴収法と比較すると長時間の学習が必要ですが、法人税法等が400時間から600時間程度かかることと比較すると、半分以下での時間での合格が可能であることがわかります。
理論問題の学習では、範囲を個人住民税のみに絞るのも1つの方法です。これは法人住民税が必ず出ないとは言い切れませんが、過去問を見ると9割程度の確率で個人住民税の問題が出題されているためです。また、理論は計算について一通り理解した後で取り組むと、理解がしやすいと言われています。計算問題でしっかり土台を作ってから、基礎理論、応用理論へと進むのが王道の勉強方法です。
計算問題では満点近くの得点を狙う必要があります。上記の通り、学習を始めてすぐの段階から計算問題に取り組むことで、その後の理論の学習がしやすいでしょう。試験に向けては早く正確に解くための学習が不可欠です。計算問題は一度問題が解けるようになると実力が落ちにくい上、復習に要する時間が短くなります。そのため、早めに合格レベルまで完成させておくことがおすすめです。
住民税合格に必要な勉強時間は、200時間程度とされています。税理士試験科目の中ではボリュームが少ない科目のため、簿記論や財務諸表論と比較して半分程度の勉強時間が確保できれば合格することが可能と言われています。なお、同じミニ税法と比較すると、酒税法や国税徴収法より若干長時間の学習が必要で、固定資産税や事業税と同程度の学習時間が必要となっています。
学習期間としては、4ヵ月から6ヵ月程度で合格が可能と言われています。受験者の状況にもよりますが、8月の税理士試験受験を目指すのであれば、遅くとも1月~3月頃には準備を始めたいところでしょう。
もちろん上記の勉強時間はあくまでも目安です。中には、300時間から400時間程度勉強して初めて合格したという声もあります。勉強時間を過信せず、自分の理解を深める学習を行うと良いでしょう。
理論問題では必要な学習量は少ないと言われますが、とにかく条文を暗記することが重要です。所得税法と重複する内容も多く、実際に出題されるので、所得税法を選択する人には効率の良い学習ができます。計算問題では満点付近を狙わなければいけないため、問題を解く正確性を意識して学習してください。
理論・計算共に過去問と類似の問題が出ることがよくあるため、過去問をしっかり学習しておくと良いでしょう。また、どちらも問題のボリュームが毎年変わります。問題を見た際の判断でどちらに力を入れるかを決め、自分の得意分野が活かせるようにしてください。
また、テキストを手に入れる、あるいは最新の頻出論点を知るといった面からも、資格予備校や通信教育を受講することをおすすめします。税理士試験は独学は難しいと言われている試験です。他の受験生がどのようなレベルにあるかを念頭に置きながら勉強することで、合格する確率が上がります。
理論問題と計算問題はボリュームが毎年変わります。そのため問題を見たら、その場で自分の得意分野でより多く点数を取れるよう時間配分を決めることが重要です。計算問題はボリュームの多い年もあるため、正確に素早く問題を解くことが合格への近道となるでしょう。
住民税の合格得点は8割程度と高得点の争いです。科目内容はボリュームが小さく、比較的短い勉強時間で合格できると言われています。特に計算問題では1問のミスが不合格に繋がることもあり、運の要素も入ることもありますが、しっかりとした実力を付けていれば、安定して点数をとることが出来るはずです。
実務においては法人税法や所得税法の確定申告書とセットの仕事となり、住民税単体で依頼を受けることは少ないでしょう。
富裕層の申告など住民税の影響が無視できないほど大きい場合には、住民税の知識を持つ税理士が重宝されます。従って、ウェルス・マネジメントやプライベート・バンキングに関わる税理士法人、会計事務所、コンサルティング会社等の実務では住民税の知識が役立つと考えられます。なお、一般事業会社の税務部門等で、法人住民税の知識が活躍する場面は少ないながらも無いとまでは言い切れないようです。
住民税は学習内容のボリュームこそ少なく、合格に必要な学習時間は200時間程度と、他の主要科目と比較すると短時間で合格できる可能性があります。また、所得税法の知識がアドバンテージになるため、所得税法が得意な人にはおすすめの科目です。所得税法とともに、個人課税をしっかり学びたい人にとっても良い科目と言えるでしょう。
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