消費税法
消費税法は、物品の販売やサービスの提供などの取引に対して課税される消費税に関する法律です。課税対象となる取引、納税義務者、税額の計算方法、申告・納付などについて定められています。税を負担する消費者(担税者)と納税する事業者(納税義務者)が異なるため、間接税に分類されます。
多くの事業者が納税義務者となる消費税法は、税理士の実務において必須となる知識です。2019年の10月の消費増税および軽減税率導入のような税制改革が行われるごとに、クライアントからの相談や対応が増えます。税理士試験の科目としては、実務での必要性と同時に比較的学習範囲が限定されるという勉強しやすさの点でも人気が高く、税法科目の中ではもっとも受験者が多い科目です。令和2年度試験では、会計科目2科目につぐ6,261人が受験しています。
消費税法は条文数が比較的少なく、論点となる項目も少ない科目といえます。
そのため、重点的に学習すべき論点が限られており、対策の立てやすい科目です。その半面、受験者のレベルは相対的に高くなり、落としてはいけない論点がはっきり出る科目ともいえます。
どの科目でもそうですが、丸暗記では対応できないため、制度の意義やその制度の適用範囲といった項目を整理して、知識として定着させることが重要です。
また、近年は大きな改正が続き、そのつど注目されるトピックとなっています。
そのため、改正に関連する項目は、重点的に押さえておくことが必要です。なお税理士として企業を顧客とする場合、消費税の知識は必須となりますが、税理士試験においては、消費税法は選択科目となっているため、必ずしも選択する必要はありません。
税法科目の出題範囲は例年と同じく「当該科目に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。」と規定されています。
つまり、消費税法と租税特別措置法、国税通則法などの消費税に関わる部分から出題されるということです。特に、2019年の消費税法改正に伴い、改正の論点に関する出題が続いています。
出題形式は、理論問題、計算問題の大問が各1問、それぞれ50点の配点となっています。
計算問題では家族構成や財産状況などの事例が与えられ、財産評価や相続税額を問われることが多いです。
消費税の理解度をはかる問題です。消費税法の意義、要件、計算方法などの規定の説明、事例に対して消費税の課否判定を判断するプロセスの説明、事例で必要となる届出書の説明など、記述式で解答します。
納税義務の判定と消費税額の算出により、総合的な理解度を問う問題です。事例に対して納税義務の有無の判定、課税区分の分類、消費税額の算出を行います。
過去10年間の消費税法の合格率は、10~13%台で推移しています。つまり、合格ラインの正答率60%以上をクリアしたうえで、上位10~13%に入る得点がないと合格できないということです。
合格率 | |
---|---|
令和2年度 | 12.5% |
令和元年度 | 11.9% |
平成30年度 | 10.6% |
平成29年度 | 13.3% |
平成28年度 | 13.0% |
平成27年度 | 13.1% |
平成26年度 | 10.3% |
平成25年度 | 11.8% |
平成24年度 | 12.4% |
平成23年度 | 13.7% |
消費税法は、出題範囲や内容の面において理解に苦しむような難解さではないといわれます。しかし、受験者数が多いぶん、確実に合格できる上位10%に入るのは狭き門です。試験内容の難易度がそれほど高くなく、人気科目であるがために、合格の難易度が高くなっているとも考えられます。
得点がとりやすい試験では、計算ミスなどのわずかな失点でも大きく順位が下がる可能性があります。出題範囲の理解を深めるのと同時に、より早く正確に、完成度の高い解答を作成するテクニックが求められます。
税理士試験は、2~3年で合格できれば早いほうといわれます。消費税法に限らず、限られた時間内で広い範囲を勉強しなければなりません。そのためには効率よく、勉強を進めることが大切です。やるべきことを洗い出し、学習計画にもとづいて管理していくとムラなく勉強できます。確保できる勉強時間によっては2年、3年の計画が必要になる場合もあります。
税理士試験が実施される8月から逆算して、1~4月頃までに合格ラインをクリアし、精度を向上させる段階に入れるのが理想です。直前3ヵ月の時期は解答力アップと弱点の克服を優先するのが望ましいです。段階に応じて、予備校の模試や答案練習会などを活用すると、学習した知識をアウトプットする訓練と受験者全体の中で自分がどの程度のレベルにいるのかを確認できます。さらに逆算して、受験する前年の年末を目安に過去問や模試で合格ライン60%以上がとれるようになっておくという目標設定が考えられます。
このように目標設定の形で合格までの道のりをイメージすると、勉強方法の工夫がしやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。
合格までに必要な勉強時間は、一般的には450~500時間程度といわれ、合格ラインに達するまでに400時間という意見が多いようです。しかし、基礎知識や理解度には個人差があり、500時間を超えたからといって必ず合格できる保証はありません。理解度を確認しながら、勉強方法を見直していく工夫も必要です。
消費税を含む税法科目には、税法をそのまま暗記する「理論暗記」という勉強方法があります。税法科目の理論問題では、法令をふまえた解答が求められるため、税法を理解する基盤として、暗記が必要になります。消費税法を英文法や数学の定理にあてはめてみれば、理論暗記の必要性は理解できるでしょう。一言一句まで記憶する必要はないので、そのままでは覚えにくい法令の文言をわかりやすく書きかえた教材なども出ています。
理論の勉強が進んで概要を理解できたら、問題を解いて知識を定着させる方法があります。問題集のレベルを理解度に合わせて段階的に上げていく方法がよいといわれています。
設問としては分かれていますが、理論と計算で問われる内容は連動しています。理論の理解が深まれば、計算の解答スピードも向上していきます。逆に、計算問題で多くの事例を解くことで、理論への理解も深まります。また、税理士補助などの実務が知識の定着に役立つ場合もあります。
消費税法への理解が合格の大前提ですが、同時に記述解答の組み立てや計算のスピード、正確さといった、解答力がポイントになります。
解答力を養うためには、多くの問題を解き、税理士試験の設問に慣れること、出題傾向や頻出する問題を把握して重点的に勉強することが重要です。
ほかの科目にも共通しますが、消費税法の問題は解答量が多く、制限時間の2時間を使いきっても解ききれない問題があるといわれるほどです。上位10%をめざすためには、解けない問題の見きわめなどのテクニックが必要になります。
消費税については、税理士をめざしている人でなくても、ほぼ知っている税目だと思われます。いまさら説明するまでもないことですが、一般的に日本国内において商品やサービスを購入した場合に課される税金です。消費税は、1989年(平成元)に導入され、それ以前は物品税という税金が存在していました。消費税の導入とともに、物品税は廃止されています。
消費税は区分としては、国税として取り扱われていますが、実際は国税分と地方税分が混在しており、まず国がすべてを徴収し、その後、国から地方へ地方税分を配分するという形になっています。
税理士の実務としては、法人向けに確定申告書作成という形で関与することとなります。
消費税は、前述のとおり商品やサービスを購入した場合に課される税金ですが、分類としては間接税です。間接税とは、税金を負担する者と税金を納める者が異なっている税金です。日本の消費税の場合は、最終的には消費者が負担することとなりますが、製造や流通の段階でも支払・受取が発生しており、仕組みとしては、多段階累積控除方式というものを採用しています。
そのため、製造や流通を行っている各事業者は、最終的な消費者が負担する税金を一時的に預かっているという状態にあり、一定の要件を満たしていれば、課税事業者として預かった消費税の納付をすることとなります。
この消費税の税金計算や確定申告書は、法人税の確定申告書作成とセットで依頼されることが多く、実務における使用頻度は非常に高いといえます。
また、近年はインターネットの発達により、個人事業主が輸出入に関わるケースが増えており、そのような業務に対応する場合にも消費税の知識が必要となります。
消費税法が関わる具体的な職種としては、会計事務所などでの国内税務のような基本的な職種から国際税務などのコンサルティングサービスといった職種があり、消費税法の知識は幅広く役立ちます。
近年は大企業のみならず中小企業においても海外進出が珍しくなくなり、国際取引関連で消費税法の知識が必要とされる場面はますます増加しています。
税理士業務以外の一般事業会社などの業務では、たとえば一般事業会社における経理、財務、税務部門や財務・会計・税務コンサルティングのような職種・業種に役立ちます。
消費税は日々の会計処理と密接に関わっているため、消費税法について専門的な知識を持つことで、特に経理や税務といった職種では大きな強みを持つことができます。
また、財務・会計・税務コンサルタントとして、会計システムなどのコンサルティングを行う際も、消費税の専門的な知識があれば、大きな強みとなります。そのため、消費税法の学習内容を活かし、将来的にこれらのフィールドで活躍することができます。
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