国税徴収法
税理士試験の選択科目の1つであり、他科目と比較して簡単に合格することが出来ると言われている国税徴収法。税理士試験の5科目合格を目指す受験生にとり、選択科目をどう選ぶかは非常に悩ましい問題でしょう。本記事では「国税徴収法って本当に簡単なの?」「国税徴収法ってどんな風に勉強したらいいの?」などの疑問について、初学者にもわかりやすく解説します。
税理士試験の国税徴収法について詳しく知りたいという方は、是非とも本記事をご一読ください。
国税徴収法は、国税を滞納した人に対する処分や手続の執行について定めた法律です。国税とは所得税、法人税、関税等、国が課税主体となって徴収する税金のこと。国家の財政収入の大部分を占める重要な税金です。
国税徴収法は、特定の税を扱う科目ではなく手続法ですので、税務調査や国税の滞納が起こったあらゆる場面で用いられる汎用性の高い法律です。
学習に際しては、国税通則法(国税についての基本的事項及び共通事項について定めた法律)や民法(私債権について定めた法律)についても同時に学ぶ必要があります。民法を学ぶ理由は、国税は民法上の債権(私債権)に優先して徴収されるため、私債権との利害調整を学ぶ際に必要となるからです。
税理士試験における国税徴収法は、選択科目の1つ。酒税法、消費税法、事業税、住民税、固定資産税と並んでミニ税法とも呼ばれることもあり、比較的ボリュームが少ない科目です。ミニ税法の中では人気のあり、受験者数が比較的多い科目となっています。
試験では他の科目と異なり計算問題がほとんど出題されず、理論問題がメインです。そのため、理論を暗記することが得意な方や国語力に自信がある方にはお勧めの科目と言えるでしょう。
また、他の科目と比較して問題文が短いため、試験時間に余裕があると言われています。そのため、ミスによる失点が起こりにくく、受験者の実力が直接反映される試験です。
合格に必要な学習時間は、全科目の中でトップクラスに短い150時間程度と言われています。このことから、短期合格を目指す人にもお勧めの科目です。
理論問題では、国税徴収法の制度趣旨や説明、国税徴収法上の措置の具体的な要件や手続等について問われます。国税徴収法の理論・制度趣旨の正確な理解や文章による解答力が必要となるため、テキストの正確な暗記が非常に重要です。
また、国税徴収法は国税の徴収の方法について定めた手続法であるため、ほぼ全ての問題が理論問題となっています。ただ、年度によっては計算問題が出題される場合があるので注意してください。計算問題の内容は、問題文で与えられた状況において国税債権や私債権に対する配当額の計算を行い、その結果を根拠と共に解答するものです。
合格するためには理論を中心に学習する等、学習時間の配分に工夫が必要です。問題を解くにあたって簿記や会計などの知識は不要ですが、代わりに民法の知識が求められます。
令和3年度(第71回)試験における出題範囲は以下のとおりです。
・国税徴収法に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
関連する他の法令の中に民法が入っているのが特徴です。民法は1,000条を超えるため、条文数はある程度多いですが、ミニ税法と呼ばれるだけあって学習に必要な時間は比較的短いとされています。理由としては、出題される重要な論点はある程度限られていて、全ての条文・論点を覚える必要は無いため。重要論点の例としては、私債権の調整、滞納処分、第二次納税義務、徴収緩和制度等が挙げられます。
国税徴収法は、試験時間2時間、合計100点(第1問/50点 第2問/50点)の試験です。第1問、第2問共に理論問題で、各大問に付記された注意事項や資料に基づいて複数の問題を解く形式となっています。
令和2年、令和元年の合格率は12%程度です。平成25年以降の合格率の最高値は平成27年の14.2%、最低値は平成30年の10.7%でした。10%~14%台の合格率ですので、他の科目と比べて同程度となっています。
国税徴収法はミニ税法の中で消費税法に次いで受験者数が多く、事業税、固定資産税等が受験者数1,000人を下回る中で1,000人超をキープしています。また、税理士試験全体の受験者数の減少と比較して、受験者数の減少の割合が小さい科目です。
後述するように、国税徴収法はあまり改正が行われないため、失敗した次の年に再チャレンジしやすい科目です。
国税徴収法 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
---|---|---|---|
令和2年度 | 1,629 | 198 | 12.2% |
令和元年度 | 1,677 | 213 | 12.7% |
平成30年度 | 1,703 | 182 | 10.7% |
平成29年度 | 1,643 | 191 | 11.6% |
平成28年度 | 1,481 | 171 | 11.5% |
平成27年度 | 1,496 | 212 | 14.2% |
平成26年度 | 1,482 | 195 | 13.2% |
平成25年度 | 1423 | 184 | 12.9% |
税理士試験には合格基準点があり、全科目共通で60点です。合格基準点を超えることが科目合格の前提ですが、それだけで合格できるということではありません。税理士試験は、全体のうち決められた数の受験生しか合格することができない、相対評価の試験といわれています。つまり受験生全体の内、上記の合格率に含まれる上位得点者のみが合格することが可能です。国税徴収法では合格基準点の60点を超えるだけでなく、全受験者の中で上位10%~14%の得点を取ってはじめて合格できることになります。
国税徴収法はミニ税法とも呼ばれ、比較的短い勉強時間で合格が可能とされています。しかし、だからこそ合格レベルに達している受験生が多く、その中で安定して上位の成績を取ることはそう簡単ではありません。
税理士試験の中で相対的な難易度が高くないとしても、一般的に見れば非常に難易度が高い試験です。過去には合格確実ラインが8割程度となった年もありましたので、十分な学習なしには合格できないでしょう。
その反面、国税徴収法は試験での問題数が少ないため、時間に余裕をもって解答することが可能であり、受験生の実力が出やすい試験と言われています。十分な実力をつけて望めば、決して合格できない試験ではないでしょう。
後述しますが、国税徴収法の合格には150時間程度かかると言われています。条文数は多いですが、出題される分野がある程度決まっていて、学習する範囲が絞りやすいようです。他の科目が400時間から600時間程度かかるとされていることと比較すると、かなり短い時間での合格が可能だとわかります。
学習にあたっては、論点を一つずつ学習していく手順がおすすめです。
まずは資格予備校のテキストなどを用いて、1つ論点を学習します。この段階では深い理解は必要なく、概要の理解で十分です。その後、その論点の例題を解いてみて自身の理解が正しいか、知識の抜け漏れが無いかを確認します。できればその後、その論点についての問題を本試験と同じ形式で解いてみて、問題の構造や必要な理解の程度を確認しておくと良いでしょう。
上記の学習を、各論点について終わらせたら復習に入ります。具体的には練習問題を再度解き、理解度が足りないようであればもう一度理論を学び直します。
復習が終わったら、時間を計りながら過去問を解いてみましょう。これにより、自分の実力が確認できます。採点をする際は、1問ずつどこを間違えたか、なぜ間違えたかを確認するようにしてください。繰り返し問題を解くことで、理論への理解を深めるのと同時に解答力を上げていくのが国税徴収法合格までの道のりです。
ちなみに、国税徴収法は改正が少ない法律なので、不合格でも来年度以降再度受験するにあたり新しい論点を学ぶ必要が少ない科目です。税理士を目指し、長期的な挑戦をする方にとってはありがたい点でしょう。
国税徴収法合格に必要な勉強時間は、150時間程度とされることが多いようです。税理士試験科目の中でもボリュームが少ない科目であるため、簿記論や財務諸表論と比較して3分の1程度の勉強時間が確保できれば、合格することが可能と言われています。
学習期間としては、3ヵ月から4ヵ月程度が合格の目安となるでしょう。8月の税理士試験受験を目指して、4月頃から準備を始めなくてはいけない人にとっては手を付けやすい科目と言えます。
ただし、上記はあくまでも目安です。中には300時間から400時間程度の勉強で、はじめて合格したという声もあります。勉強時間を過信せず、自分の理解を深める学習を行うと良いでしょう。
理論問題では理論への体系的理解を深めること、そして問題を解いて解答力を上げることを同時に行う必要があります。この科目は既に挙げた通り、改正が少ないことが特徴です。そのため、過去問を解くことが有効な勉強方法となるでしょう。演習では過去問を使うようにして、過去問を解いたのちは必ず分析を行ってください。計算問題は必ずしも出題されるわけではないため、あまり学習時間を費やさないことが多いようです。
また、勉強に向けては資格予備校を受講すると良いでしょう。テキストを手に入れるだけでなく、最新の頻出論点が知れることもメリットです。そもそも、税理士試験は独学が難しいと言われています。他の受験生がどのようなレベルにあるかを念頭に置きながら勉強することで、合格する確率が高くなるでしょう。
国税徴収法の合格得点は8割以上になることもあるため、高得点を狙うことが必要です。試験自体は短い勉強時間で合格できると言われています。しかし、時間に余裕があり理論が主体なのでミスで点を落とす可能性が低く、実力がはっきり出る試験となるでしょう。
また、運が絡む要素が一定程度あります。例えば国税徴収法は問題文が短いため、出題者の意図を絞りにくい問題が出題されることがあります。この場合、想定される複数の解答候補の中から選択した解答が合っているかどうかわからないため複数の解答候補を全て記載するという方法もあるようです。念のため頭の片隅に入れておいて損は無いでしょう。
実務において、国税徴収法が必要とされる場面はそれほど多くありません。所得税法や法人税法のように中核的な業務において必要とされるというよりは、税理士として多種多様な顧客にさまざまな税金に関するサービスを提供している中で、スポット的に知識が必要になる場合があるという程度になります。
ただし、国税徴収法は税法を体系的に理解するのに役立つ科目です。税理士として知識を持っておくことは決して無駄ではありません。
国税徴収法が関わる具体的な職種としては、会計事務所等の国内税務が中心となります。一般的な税理士業務以外で、一般事業会社の税務部門のような職種では国税徴収法の知識が活躍する場面があるでしょう。
国税徴収法は条文数が多いですが、暗記が必要な範囲が絞られているため勉強時間が抑えられています。合格に必要な学習時間は150時間程度と、他科目と比較して短時間で合格できる可能性があるでしょう。一般の税務業務を行う上で、知識を活かす場面は少ないかもしれません。しかし、税務を体系的に理解する上では有用です。
国税徴収法の試験は、ほとんどが理論問題です。理論と制度趣旨を理解・暗記し、反復練習をして文章での解答力を向上させることで合格に近づくことができます。
国税徴収法はミニ税法の中でも、消費税法に次いで2番目に人気の科目です。その特徴から、短期合格を目指したい人におすすめの科目です。
まずはキャリアアドバイザーに
ご相談ください
まずはキャリアアドバイザーに
ご相談ください