税理士試験選択必須科目

所得税法

法人税法と並び、税理士試験で最難関の科目とされているのが所得税法です。所得税法は試験範囲が広いうえ、問題の難易度も高いことで知られており、多くの勉強時間を確保しないと試験に対応できないでしょう。それでも所得税法の知識を求めている人は多く、需要のある科目でもあります。本記事では所得税法の試験範囲や難易度、対策について解説します。

所得税法とは?

所得税法とは

個人が労働などによって得た所得には税金が課されます。所得税に関する計算方法や源泉徴収、納税のルールなどを定めた法律が所得税法です。所得税法は税理士試験の科目のひとつでもあり、法人税法と並んで最難関とみなされてきました。

税理士が個人を相手にすることもあるので、所得税法は欠かせません。個人の依頼を受ける税理士になりたいなら、所得税法を押さえておいて損にはならないはずです。

所得税法の特徴

所得税法が難しいとされる理由は、出題範囲が広いからです。所得税法は個人が税金を払うために必要な、ほぼすべての知識をカバーしています。それだけに出題範囲を予測して絞り込むことは困難であり、多くの受験生が所得税で躓いてきました。
また、税理士試験においては、法人税法か所得税法のいずれか合格が必須です。どちらも最難関なので一方だけを選択する受験生が多いです。「税理士や公認会計士として稼ぐには、法人を相手にしたい」と考える人も多く、実際、税理士としての業務に大きくかかわってくるのは法人税法のため、どちらか一方を選ぶ場合、法人税法を選択する受験生が多く、所得税法を選んで勉強する受験生は比較的少ないといえます。

また、所得税法は消費税や国税徴収法と比べても、受験者は少数です。法人税法以外の科目はできるだけボリュームが少ないものが選ばれることが多いようです。

所得税法の試験概要

所得税法の内容とポイント

広範囲から出題される所得税法は、いわゆる「山を張る」勉強方法がしにくいといえます。さらに所得税法だけでなく所得税法施行令や所得税法施行規則などからも出題されますので、所得税法とあわせて押さえておきましょう。所得税法だけでもボリュームはかなりのものです。条文は200を越え、しかもどれが出題されるかは分かりません。結局はすべての条文を読み込むしか対策がないので、とにかく復習が勉強の中心となります。

また、条文をしっかり理解したうえで発展させていく応用力が重要です。さらに、条文が制定された背景も勉強しておきましょう。そのほか、所得税法は改正の多いことでも有名です。頻繁に条文が変わったり付け加えられたりするので、新しい動きにも注意しておく必要があります。

所得税法の出題範囲例および試験内容

試験範囲は「所得税法に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連するほかの法令に定める関係事項を含む。」とされています。

所得税法の出題形式

所得税法は計算問題50点、理論問題50点の合計100点満点で構成されています。このうち、より難易度が高いのが理論問題です。
理論問題では、基礎的な法律の知識や実務的な内容も出てきます。税理士としてふさわしい実力があるかチェックされているという点で、基礎だけでなく応用力も身につけておかなくてはなりません。
計算問題では、納付税額や課税所得額を問われます。理論問題よりは基礎的な内容であり、出題パターンを押さえておけば十分に対応可能です。

なお、理論問題と計算問題の細かい配点までは年度によって変わってきます。どのような出題形式になっても対応できるよう、しっかり準備を進めておきましょう。

所得税法の難易度・合格率

所得税法の合格率

例年、所得税法の合格率は10~14%ほどです。なお、所得税と同じく難易度の高い法人税法の合格率はおよそ13%です。両者の合格率を比較してどちらが受かりやすいか議論になることがありますが、所得税法は法人税法よりも受験生が少ないので、合格率だけを見て簡単にどちらが合格しやすいということは言えません。相対評価で上位10%程度が合格する試験ですので、受験者数が多ければ、上位の人数も多いですし、反対に受験者数が少ないと上位10%程度に入れる人数も少なくなります。税理士試験では、合格ラインが100点中60点前後ですが、相対的に合格者が選ばれていく仕組みです。60点を取れば必ず合格できるというわけではありません。

合格率
平成28年度 13.4%
平成29年度 13.0%
平成30年度 12.3%
令和元年度 12.8%
令和2年度 12.0%

所得税法の難易度

税理士試験の全科目で、所得税法は極めて難易度が高い部類に入ります。
特に理論については、出題範囲が広いうえに条文を体系的に覚えていくことが求められます。そのため、機械的にたくさんの条文を覚えれば合格できるわけではありません。条文同士の関連性を踏まえつつ、段階的に理解を深めていくことが大事です。しかも、広い出題範囲から何が出題されるか分からない以上、大半を理解できていても苦手分野が出題されたために不合格になってしまうこともあります。出題範囲全体を満遍なく押さえておくことが大切です。

所得税法合格までの道のり

独学で合格を目指す人もいるでしょう。特に社会人ですと予備校に通いながら勉強するのが難しい方もいるかもしれません。しかし、税理士試験は試験範囲が広く試験の難易度も高いため勉強の計画を立ててくれて、試験当日まで正しく導いてくれる予備校や通信講座を受けるのが良いでしょう。大手の予備校では、社会人向けに夜間や土日に講義がありますし、通信講座であれば細切れの空いた時間に講義を受けることができます。

所得税法の勉強は覚える量が多いので、「新しいことを覚えれば昔のことを忘れていく」という状態を繰り返していきます。短時間の勉強を毎日続けるというよりも、空き時間をすべて所得税法習得に費やすくらいの気概が求められます。また、勉強が難しいとモチベーション維持が大変ですが、通信講座や予備校は相談できたり励ましてくれる講師がいたりするのでおすすめです。

所得税法の勉強時間・勉強方法

所得税法の勉強時間

目安として、所得税法に合格するには「600時間」の勉強が必要だとされています。ただし、これは「600時間勉強すれば必ず合格できる」というわけではありません。そもそも、どれだけ勉強しても理解度が低ければ合格には近づけないまま。それに加え、ライバルたちも600時間という目安は頭に入っています。多くの受験生は6~7ヵ月ほど前からテキストや問題集を買い、試験の準備を始めているはずです。それでも、8割以上の受験生は不合格になっているのです。600時間とは、合格を目指すうえで最低限の勉強時間だと思っておきましょう。

勉強時間については、社会人受験生よりも受検に専念している人や学生が圧倒的に有利です。勉強を優先できるので、時間を勉強に充てられます。日によっては、10時間以上勉強している人も少なくありません。社会人や家庭を持っている人が、同じようなペースで勉強するのは難しいでしょう。ですので、余裕をもって勉強を始め1年ほどの長期計画で着実に理解度を深めていくのもひとつの方法です。

所得税法の勉強方法

所得税法の出題傾向は、大きく分けて「個別問題」と「応用問題」、「事例問題」があります。個別問題は条文や計算など、知識単体の理解度を確認される問題です。所得税法では、過去の傾向から応用問題や事例問題の配点が高いと考えられています。つまり所得税法合格には、事例問題や応用問題の対応が欠かせません。過去問をできるだけ多く解き、実力を身につけましょう。もちろん、過去問と同じ内容はそのまま出題されません。それでも、本番の問題形式に慣れる訓練になるはずです。本番と同程度の時間をとって、時間配分の感覚を磨いておくことも重要になります。

所得税法の攻略法

例年の所得税法の試験で共通しているのは、「確定申告の流れに沿っている」ということです。個別問題にせよ事例問題にせよ、税理士が確定申告を依頼されたという前提で進んでいきます。そして、依頼人の要望に応えるために必要な知識と能力を試されます。問題の内容を予測できなくても、出題形式を理解していれば準備ができます。過去問を通じて、試験の出題傾向把握しておきましょう。

また、「深く」よりも「広く」勉強することを意識しましょう。所得税法の応用問題では、特に試験範囲全般の知識を満遍なく問われます。知識が偏っていていると苦手分野が出題されたときに対応できません。苦手分野を後回しにするようなことはせず、分からない部分はすぐ克服する勉強方法が良いでしょう。そして、試験では「確実に正解できる部分だけを先に解く」ようにします。税理士試験は、多くの人が正解する箇所に配点がきて、逆に正答率が低い箇所は配点がなく正解しなくても合否に影響しない傾向があります。難易度が高く正答率が低そうな問題は思い切って捨てる勇気も必要です。そのかわり、正答率が高そうな問題をしっかり獲得できるよう、問題文すべてに目を通してから解く順番を決めましょう。

所得税法は実際にどう役立つ?

所得税法の実務との関連性について

確定申告で困っている個人はたくさんいます。個人は、税務や会計について専門的な知識を持っていないことが少なくないため、個人のほうが法人よりも税理士を求めているといえます。個人の確定申告の内容が十人十色で本人だけでは申告が難しいケースもあるので専門家に頼るケースは少なくありません。

また、法人相手でも所得税法の知識が求められるケースはあります。例えば顧問先の会社の社長が自身の確定申告で悩んでいる場合もあります。

まとめ

所得税法は、税理士試験の中でも最難関レベルの科目ですので受験科目として選択されないことが多いですが、所得税法の知識は、税理士の仕事の幅を広げてくれます。個人事業主やフリーランス、経営層の個人的な相談に乗れるという点で、とても役に立つ知識です。税理士を目指すなら、深く勉強しても損にはなりません。

執筆・編集

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ikesaka(ペンネーム)

税理士

税理士。大学時代に簿記と出会い、税理士を志す。大学卒業後、税理士事務所に入社し顧問先の税務顧問や法人設立、税務調査などに従事。ベンチャー系事務所や中堅規模の事務所を経験し、税理士資格取得後、事業会社に転職しバックオフィス全般に携わる。税理士としても独立し、特にスモールビジネスや若手、女性の起業家の支援に注力している。

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