税理士試験選択科目

事業税

税理士試験の選択科目の1つであり、他科目と比較して簡単に合格することが出来ると言われている事業税。税理士試験の5科目合格を目指す受験生にとり、選択科目をどう選ぶかは非常に悩ましい問題でしょう。本記事では、「事業税って本当に簡単なの?」「事業税ってどのように勉強したらいいの?」などの疑問点について、初学者にもわかりやすく解説します。

税理士試験で事業税を選択しようと考えていて、科目について詳しく知りたいという方は、是非とも本記事をご一読ください。

事業税とは?

事業税とは

事業税とは個人または法人が営む事業そのものについて課される税金です。事業を営む場合、事業者は地方自治体の提供する設備やサービスを利用します。そのため、その利用に対する対価として設定されているものです。この点、利益に対して課税する所得税や法人税とは異なった概念を持っています。

税理士試験においては、固定資産税、住民税、事業税の3種は地方税です。これらは地方税法の中に規定されており、個々の法律が存在しないので、国税とは異なり、「~税法」ではなく「~税」という科目名が付けられています。

個人の事業者に対して課される事業税は個人事業税と呼ばれ、個人の所得に対して課される所得税と非常に密接な関係があります。具体的には、個人事業税の課税の基本となる所得は政策上や課税上の例外はありますが、原則として所得税の考え方で計算することになっています。そのため、個人事業税の内容を理解するにあたっては、所得税の知識が必要です。

法人に課される事業税は法人事業税と呼ばれます。法人事業税は法人税の課税所得を基本として計算されますので、法人事業税を理解するためには法人税の知識が必要です。

事業税の特徴

税理士試験における事業税は、選択科目の1つ。酒税法、消費税法、国税徴収法、事業税、住民税と並んでミニ税法とも呼ばれることもあります。学習のボリュームが比較的少ない人気の科目です。なお、事業税と住民税は、いずれか1科目のみしか選択できません。

試験では大問が2~3問出題され、理論問題が1~2問、計算問題が1問です。得点割合は年によって異なりますが、理論が5割~7割、計算が3割~5割となっています。基本的には理論問題の割合が多く、計算問題は難問というよりオーソドックスな問題が多いでしょう。

合格に必要な学習時間は、主要科目と比較して短く200時間程度だと言われています。ただし、同じミニ税法の酒税法や国税徴収法と比較すると、多めの勉強量が必要です。基本的に理論の配点が多い試験です。

事業税の試験概要

事業税の内容とポイント

事業税は合格のために7割から8割程度の高得点を求められます。特に計算問題では、高得点が求められることが多いです。試験本番では理論問題、計算問題とも、書く量が多いことが特徴と言えるでしょう。さらに得点の配分も毎年変わるため、暗記力・速記能力・時間配分が重要な試験になります。

配点の多い理論問題では、事業税に関するトータルな理解を問う内容が出題されています。応用論点と言うよりも基礎論点が多く出題されていますので、基礎力をしっかりつけることが必要です。

計算問題では個人や法人の事業税額を計算する問題、特に外形標準課税に関する問題が毎年出題されています。税率、分割基準、課税標準額の算定等の論点が頻出ですので抑えておく必要があるでしょう。

事業税の出題範囲例および試験内容

令和3年度(第71回)試験における出題範囲は以下のとおりです。

・事業税に係る地方税法、同施行令、施行規則に関する事項のほか、地方税法総則に定める関係事項及び当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。

ミニ税法とも言われるように、事業税のボリュームは小さい傾向にあり、出題範囲も比較的狭いと言えるでしょう。また、個人の事業税と所得税法、法人の事業税と法人税法がそれぞれリンクしていますので、それぞれの税法の知識があると学習しやすいでしょう。

事業税の出題形式

事業税は試験時間2時間、100点満点の試験です。大問は2問から3問程度で、理論問題が1問から2問、計算問題が1問出題されます。配点は毎年変わりますが、理論問題の比率が高い傾向にあるようです。

理論問題では、個別論点のべた書きが求められることが多いでしょう。一方、計算問題では大問中で与えられた条件に基づいて、個人事業税額や法人事業税額を計算する形式が多く出題されます。理論問題と計算問題のいずれも書く分量が多くなっています。

事業税の難易度・合格率

事業税の合格率

令和2年の合格率は、過去の合格率の平均より若干高い13.1%でした。平成25年以降の合格率の最高値は令和元年度の14.8%、最低値は平成30年度の11.0%となっています。11%~14%台の合格率と他の科目と同程度ではありますが、若干バラツキがあります。

事業税は酒税法や住民税と並んでトップクラスに受験者数が少ない科目で近年は、いずれも受験者数500人未満となっています。さらに最近では、税理士試験受験者数の減少割合以上に受験者数が減っています。

事業税 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率
令和2年度 335 44 13.1%
令和元年度 392 58 14.8%
平成30年度 418 46 11.0%
平成29年度 496 59 11.9%
平成28年度 566 73 12.9%
平成27年度 638 87 13.6%
平成26年度 771 104 13.5%
平成25年度 872 105 12.0%

事業税の難易度

税理士試験には合格基準点があり、全科目共通で60点となっています。合格基準点を超えることが科目合格の前提ですが、それだけで合格できるということではありません。税理士試験は全体のうち一定数の受験生しか合格することができない、相対評価の試験になっています。そのため受験生全体の中で一定以上の点数を取った上位の得点者のみが合格できます。

事業税では合格基準点の60点を超えるだけでなく、全受験者の中で上位11%~14%の得点を取ってはじめて合格できることになります。具体的には、100点満点の中で70点から80点程度得点することが必要です。

事業税はミニ税法とも呼ばれ、比較的短い勉強時間で合格が可能とされています。だからこそ合格レベルに達している受験生が多く、その中で安定して上位の成績を取ることはそう簡単ではありません。

税理士試験の中で相対的な難易度が高くないとしても、一般的に見れば非常に難易度が高い試験です。特に、事業税は満点近く取らなければ合格できないと言われていて、1つのミスが命取りになりかねません。十分な学習なしには合格できないでしょう。

事業税合格までの道のり

事業税の合格には200時間程度かかると言われています。酒税法や国税徴収法と比較すると、長時間の学習が必要です。しかし、法人税法等が400時間から600時間程度かかることと比較すると、半分以下の時間での合格が可能であることがわかります。

理論問題の学習では個別理論の暗記が基本です。とにかく解答の量が多いことが特徴です。また、応用論点よりも基礎論点をしっかりと抑えることが重要となるでしょう。なぜなら、基礎論点の組み合わせで応用論点が解ける場合が多いからです。事業税の計算問題は比較的高得点を取りやすく合否を決めるのは理論問題の出来と言えるでしょう。

計算問題では早く正確に解くための学習が不可欠です。何度も演習を行い、計算過程を考えなくても手が動くレベルにまで持っていくことが出来れば合格に近づきます。

事業税の勉強時間・勉強方法

事業税の勉強時間

事業税合格に必要な勉強時間は、200時間程度とされることが多いようです。税理士試験科目の中ではボリュームが少ない科目であるため、簿記論や財務諸表論と比較して半分程度の勉強時間が確保できれば、合格することが可能と言われています。なお、他のミニ税法と比較すると、酒税法や国税徴収法より若干長時間の学習が必要です。固定資産税や住民税と同程度の学習時間が求められます。

また、学習期間は4ヵ月から6ヵ月程度で合格が可能と言われています。受験者の状況にもよりますが、8月の税理士試験受験を目指すのであれば、遅くとも1月~3月頃には準備を始めたいところです。

上記の勉強時間はあくまでも目安です。中には、300時間から400時間程度勉強して初めて合格したという声もあります。自分の理解を深める学習を行うと良いでしょう。

事業税の勉強方法

理論問題対策で必要な学習量は少ないと言われますが、条文を暗記することが重要です。また、解答の量が多いので、普段から紙に書く練習をしておくことが有効です。計算問題を完璧にこなせることが前提だとすると、理論問題こそ差がつくポイントになります。根気強く一つ一つ暗記していってください。応用論点は基礎論点の組み合わせで解ける場合もあるので、基礎を積み重ねることが合格への近道です。

計算問題はパターンが少ないため、各種練習問題を解けばすぐに合格ラインまでもっていくことが出来ます。ただし理論問題と同様、本番の解答のボリュームが多いので、書く練習をしておくことがお勧めです。

また、勉強に向けては資格予備校に通ったり、通信教育を受講したりすると良いでしょう。テキストを手に入れられるほか、最新の頻出論点の情報を得られるなどのメリットがあります。税理士試験は独学が難しいと言われている試験ですので他の受験生がどのようなレベルにあるかを念頭に置きながら勉強することで、合格する確率が上がります。

事業税の攻略法

理論問題と計算問題の点数配分は毎年変わります。そのため、問題を見てから時間配分を決めることが必要です。理論問題では論点のべた書きが多く、最終的な答案用紙の枚数も多い傾向にあります。また、計算問題もボリュームが多いので、理論を早く書き上げできるだけ計算問題に解答時間を充てられるようにしましょう。

計算問題は合格には8割以上の得点が求められることが多いです。また、理論問題も基礎問題を落とさず着実に得点することが必要です。試験本番では配点を見つつ、理論問題と計算問題のバランスを取って答案を作成します。

事業税の合格点は、7割から8割程度と非常に高いです。試験内容はボリュームが小さく、比較的短い勉強時間で合格できると言われています。しかし、特に計算問題では1つのミスが不合格に繋がることもあります。

事業税は実務にどう役立つ?

事業税の実務との関連性について

実務においては法人税または所得税とセットになり、事業税単体で確定申告を請け負うことはあまりありません。ただ、医療法人の申告実務や一定規模以上の企業に課される外形標準課税等は、法人事業税の知識が必要とされます。そういった企業の税務部門では、事業税の知識が求められるでしょう。
また、医療法人や一定規模以上の企業をクライアントに持つ税理士法人や会計事務所等でも役立つ科目となるはずです。

まとめ

事業税は学習内容のボリュームが少なく、合格に必要な学習時間は200時間程度と、他の主要科目と比較すると短時間で合格できる可能性があります。また、理論問題が半分以上を占めていて、解答のボリュームが多いので、暗記や速記が苦手な人には向かない科目でしょう。

一方で、暗記・速記に自信がある人は挑戦してみると良いでしょう。

執筆・編集

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ikesaka(ペンネーム)

税理士

税理士。大学時代に簿記と出会い、税理士を志す。大学卒業後、税理士事務所に入社し顧問先の税務顧問や法人設立、税務調査などに従事。ベンチャー系事務所や中堅規模の事務所を経験し、税理士資格取得後、事業会社に転職しバックオフィス全般に携わる。税理士としても独立し、特にスモールビジネスや若手、女性の起業家の支援に注力している。

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