【令和8年度(2026年度)税制改正】貸付用不動産と小口化商品の評価方法の見直し内容と注意点を解説
令和7年12月に公表された令和8年度(2026年度)税制改正大綱で、不動産の相続税評価に改正が入りました。1つは貸付用不動産の評価方法、もう1つは不動産の小口化商品の評価方法です。これまで総則6項頼みだった評価方法が通達に取り込まれることとなりました。今回は、改正内容の概要と適用時期、今後の実務上の注意点を分かりやすく解説します。
目次
令和8年度(2026年度)税制改正における不動産評価見直しの背景
最初に「なぜ不動産評価が今回、税制改正で見直されたのか」を振り返ってみましょう。
市場価格と相続税評価額の差を利用した節税策が増加
これまで、相続税対策として用いられていたのが「賃貸不動産を購入して相続税を下げる」という手法でした。
税理士事務所に勤める方の多くがご存じの通り、賃貸不動産については以下の理由により相続税評価額が下がります。
- 土地は路線価方式あるいは倍率方式で評価、建物は固定資産税評価額で評価
- 賃貸物件は借地権割合、借家権割合で評価額が下がる

参照:財産評価を巡る諸問題(令和7年11月13日)|国税庁(内閣府ホームページより)
相続税評価額が下がるということは、相続税や贈与税も下がるということです。そのため「現預金で財産を持っていると相続税が高くなります。賃貸不動産を購入すれば相続税を抑えられます」というセールストークを信じ、相続税対策として賃貸不動産を購入するケースが増加しました。つまり「節税目的での賃貸不動産の購入」が急増したのです。
「相続税を納める」という一時点だけに着目するならよさそうに見えます。しかし、この手法は最後、相続人に負荷がかかります。
まず不動産そのものにまつわる問題です。購入目的が節税であるがゆえ「賃貸業」という事業に意欲を燃やしているわけではありません。一方、賃貸業は家賃収入や物件・入居者の管理、固定資産税などの支払などの事務作業が継続します。
次に相続そのものの問題です、不動産は現預金と違って分けにくい財産です。遺産分割で揉めかねません。このほか、物件購入にあたっては借金をするのが一般的です。借金という負債も相続財産として相続人に引き継がれます。
まとめると「相続税を節税」という一点だけに着目した不動産購入は、のちのち相続人にとって負の遺産となって残る、というわけです。

参照:財産評価を巡る諸問題(令和7年11月13日)|国税庁(内閣府ホームページより)
総則6項から通達評価に組み込まれた
かつて、賃貸不動産の購入を通じての相続税対策は、総則6項、つまり国税庁長官の判断により、その都度封じられてきました。「課税の公平性と富の再分配という観点から問題がある」という理由により、です。しかしこの総則6項による封じ込めは「予測可能性がなく、主権者である国民にとって不利益である」と、批判されてきました。
そこで2026年度(令和8年度)税制改正により、賃貸不動産に関連する通達評価そのものが変更されました。一定の基準を設け、その基準をクリアしなければ実勢価格で評価する、となったのです。
改正1:取得後5年以内の「貸付用不動産」の評価見直し
今回、不動産に関連する大きな税制改正は2つあります。1つ目が、貸付用不動産の評価方法の見直しです。
内容
先ほどお伝えした通り、貸付用不動産については相続税財産評価通達で評価すると、低めの評価額となりました。「土地は路線価方式・倍率方式による評価、建物は固定資産税評価額による評価」「借地権、借家権も考慮した評価」によってです。

参照:財産評価を巡る諸問題(令和7年11月13日)|国税庁(内閣府ホームページより)
こちらは次のように変わります。
原則
被相続人や贈与者が、課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得や新築をした貸付用不動産については、原則、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価されます。
この「通常の取引価額」とは、基本的に取得価額を基に算定することとなります。
特例
課税上の弊害がない限り、特例的な評価方法も認められます。
具体的には、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができます。
例外
今回の改正を通達に定める日までに、被相続人等が同日の5年前から所有している土地の上に新築をした家屋については、本改正は適用されません。この例外には、通達に定める日において建築中である家屋も含まれます。
適用時期
この改正は、2027年(令和9年)1月1日以後に開始する相続、遺贈又は贈与により取得した貸付用不動産の評価に適用されます。
改正2:不動産小口化商品の評価見直し
不動産の大きな改正2つ目は「不動産小口化商品の評価方法の見直し」です。こちらも節税効果のある投資商品として人気がありました。しかしこちらも問題視されていました。

参照:財産評価を巡る諸問題(令和7年11月13日)|国税庁(内閣府ホームページより)
こちらも、今回の税制改正で通達評価が変わることととなりました。
内容
対象となるのは、商品として小口化された貸付用不動産です。具体的には「不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約などの権利の目的となっている貸付用不動産」を言います。
これらの不動産小口化商品については、その取得の時期に関わらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとされました。
ただし、課税上の弊害がない限り、以下のいずれかの金額によって評価することができます。
- 出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等
- 事業者等が把握している適正な売買実例価額
- 定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額
ただし、これらに該当するものがないと認められる場合には、取得時期や評価の安全性を考慮し、貸付用不動産の評価方法に準じて評価を行います。
適用時期
貸付用不動産の見直しと同様、2027年(令和9年)1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。
今後の注意点
今回の不動産についての税制改正は、次の点に注意が必要です。
貸付用不動産は「早めの検討を」
元々の財産の持ち主が取得したり新築した時期が相続・贈与からさかのぼって5年以内ならば、相続税対策としては悪手となります。現預金の生前贈与と同様、早めに対策を検討することが必要です。
また、不動産投資は一時的なものではありません。そもそも「賃貸業という事業をやりたいか」という点からも考えることが求められます。
なお、実際に通達改正されるのは来年です。改正時は、次の点に注意しましょう。
- 「貸付用不動産」の具体的な範囲に、建物と同時に取得する構築物が含まれるか。また、貸付先による適用の違いはあるか
- 地価の変動等の考慮方法を含めた、具体的な評価額の計算方法がどう定められるか。
- 貸宅地、貸家建付地、貸家の評価減の適用が受けられるかどうか。
- 本改正を通達に定める日(通達の発遣日)がいつになるか。
不動産小口化商品は「すべて節税に使えない」
不動産小口化商品は、「『取得の時期に関わらず』通常の取引価額に相当する金額で評価される」という点を意識しましょう。言い換えると、過去に節税目的で不動産小口化商品を購入したのなら、当初の節税効果は得られないこととなります。
今年中、しかも早めにクライアントに改正について伝え、もし不動産小口化商品を持っているのならば、処分の時期などを一緒に考える必要があります。
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