経理は将来性がない職種なのか?これからの時代を生き抜くために必要なスキルとキャリアアップのポイント

経理は将来性がない職種なのか?これからの時代を生き抜くために必要なスキルとキャリアアップのポイント

近年、AIやRPAの進化や経理業務の外注化の広がりなどを背景に、「経理は将来性がないのではないか」という不安の声が聞かれます。しかし、テクノロジーの普及によって定型業務が自動化されても、経理の本質的な業務や高度な判断を要する役割がなくなるわけではありません。

これからの時代を生き抜くためには、作業者から「管理・分析・指示を行う者」へのシフトが必要です。本記事では経理職の現状と将来性を紐解きながら、市場価値を高めるために身につけるべき必須スキルや、AI時代におけるキャリアアップ・転職のポイントを詳しく解説します。

内山 智絵

内山 智絵

公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナー

大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した後、出産・育児をきっかけに退職。2021年春に個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。

目次

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経理に「将来性がない」と言われる背景

経理職への転職や経理職におけるキャリア形成を考える際、「経理は将来性がない」という言説を耳にして不安を感じる方もいるのではないでしょうか。経理の将来性が不安視される背景には、主に以下の3つの要因が挙げられます。

まず1つ目は、AIやRPAの進化です。これにより、従来人間が手作業で行っていたデータ入力や仕訳、経費精算に関する問い合わせ対応といった定型業務が自動化され、人間の作業領域が縮小していることが挙げられます。

2つ目は、経理業務のアウトソーシング(外注)化の拡大です。コスト削減や業務効率化を目的に、記帳や証憑の保管といったノンコア業務を外部の専門業者へ委託する企業が増加しており、社内での単純作業のニーズが減少しつつあります。

3つ目は、生成AIによる相談業務の代替です。会計や税務に関する基本的な疑問であれば、生成AIが瞬時に回答できる時代になり、社内での簡単な問い合わせ対応の必要性が薄れています。

このように、テクノロジーの進化やノンコア業務の外注化によって、これまで経理職が行ってきた業務が少しずつ減少していることが、経理職の将来性が危ぶまれている大きな理由です。 

経理業務はなくなる可能性もある?

テクノロジーの進化や業務の外注化によって将来性が危惧される経理職ですが、すべての経理業務が消滅してしまうわけではありません。経理業務を「①ルーティンワーク」と「②会計税務に関する専門的知識を要する業務や指示・管理を行う業務」の2つに大別して考えると、①の業務はAIに代替される可能性もあります。

一方で②の業務、たとえば企業グループの組織再編やM&Aに伴う会計税務論点の検討や、経営陣の意思決定を支える管理会計の構築・運用といった業務は、高度な専門的知識を必要とする非定型的な業務であることから、AIや外注化による代替が困難です。特にグローバル展開を進める大手企業や、新規事業を積極的に展開するベンチャー企業といった変化の激しい環境にある企業ほど、こうした高度な判断を伴う非定型業務のニーズは高まる傾向にあります。そのため、自身のキャリアをどこに置くかによって、経理パーソンとしての将来性は大きく二極化していくと言えるでしょう。

さらに、AIに正しく処理をさせるためのロジック構築や、AIが作成した成果物を人間の目でチェック・改善していく「Human in the Loop」のプロセスを回す役割も、人間にしか担うことができません。

このことから、経理業務そのものがなくなるのではなく、経理職に求められる役割が作業者から管理・分析・指示を行う者へとシフトしていくのだと言えます

これからの時代を生き抜くために経理が身につけるべき必須スキル

AIの普及によって経理の役割が「作業」から「管理・分析・指示」へと変化するなか、市場価値の高い人材であり続けるためには、次のスキルを身につけることをおすすめします。

・AI活用スキル
・AIが出したアウトプットの正確性を判断できるだけの会計税務の専門スキル
・他部署や社外の関係者(監査法人、税理士法人など)とのコミュニケーションスキル

まず、AIから精度の高いアウトプットを引き出すためには、AIに適切な情報とプロンプトを与えることが重要です。求める結果や業務の目的に応じて入力するデータや指示の仕方を柔軟に選択・コントロールするスキルが、これからの経理パーソンには求められます。

ただし、AIによるアウトプットは誤りを含むこともあります。たとえば、実際には存在しない税法を根拠法令として提示してくるケース(ハルシネーション)もしばしば見られるようです。AIは過去の膨大なデータから「それらしい回答」を導き出すのを得意としますが、最新の税制や自社の固有事情を汲み取った高度な税務判断まではカバーしきれません。そのため、AIの出力した回答が会計基準や税法に従っているのかをチェックしたり、重要な見落としの存在に気づいたりできるスキルは、これからの時代において現在よりも更に重要視されます

また、AIがどれだけ進歩しても、社内外の関係者と円滑に業務を進めるためのコミュニケーションスキルは代替されません。会計基準や税法を経理部門以外の人に分かりやすく伝える能力や、監査法人や税理士法人といった専門家に対して自社の会計処理の妥当性を論理的に説明するスキルは、テクノロジーがどのように進化しようとも需要があります。

AI時代における経理のキャリアアップのポイント

AIによる自動化が急速に進む時代において、単に仕訳や書類作成をこなすだけの作業者としての経験は、転職市場で評価されにくくなることが想定されます。今後、経理としてキャリアアップを果たしていくために重要なのは、実務を代替するAIを使いこなすAI活用スキルと、AIが出した数字や結果を正しく解釈する会計税務の専門知識です。

専門知識を深めるアプローチとしては、税理士や公認会計士といった難関資格の取得に向けた勉強が有効です。体系的な法知識や会計基準の理解は、AI時代でも決して揺らがない強力な武器になります。

AI活用スキルは机上の知識だけでなく、実際の業務でツールに触れ、試行錯誤を繰り返すなかで磨かれていくスキルです。もし現職がAIの導入に消極的で、実務でAIツールを使うことが難しい場合は、AIの活用に積極的な企業へ転職することも有力な選択肢でしょう。ただし、対外的にはAIツールの活用を謳いながら、実際は活用に消極的という企業も少なくありません。そのため、求人票だけでは見えにくい「実際のAI活用度合い」など、企業の内部事情に精通した業界特化型の転職エージェントを頼ることで、AI活用に関するミスマッチを防いで自身の成長につながる最適な環境を見つけやすくなるでしょう。

まとめ

AIの急速な普及は、経理職から仕事を奪うものではありません。むしろ、単純な作業から解放し、より付加価値の高い業務へ集中させるためのチャンスと言えます。

これからの時代、経理職に求められるのは、AI活用スキル(AIから高精度なアウトプットを引き出すプロンプトの選択・使い分けのスキル)と、その回答に誤りや見落としがないかを会計基準や税法を参照してチェックできる専門知識です。

「現職では手作業が多く、AI活用スキルを磨く環境がない」
「AIを積極的に活用している企業で市場価値を高めたい」

と考えている方は、企業のリアルな実情に精通している転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。新しい環境でAIを活用し、業務の効率性と自身の市場価値を高めていきましょう。

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