税理士業界の法律、政令(施行令)、省令(施行規則)、通達の違いとは?わかりやすく解説

税理士業界の法律、政令(施行令)、省令(施行規則)、通達の違いとは?わかりやすく解説

税理士業界では、税務六法に当たるのが日常業務の一つとなっています。主に法律・政令・省令・通達を目にするのですが、これらはどう違うのでしょうか。今回は、税理士試験の合格組に向け、それぞれの特徴や意味、違いをわかりやすく解説します。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

目次

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なぜ税理士業では法令や通達を確認するのか

税理士の業務では、頻繁に法令や通達を確認します。この背景には次の2つがあります。

租税法律主義であるため

日本の税金は、法律を根拠としています。日本国憲法第84条に次のような規定があるからです。

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参照:日本国憲法|e-gov

「租税の種類や課税根拠だけでなく、具体的な課税要件や徴税手続きも法律によって明確に定めなくてはならない」ということです。一方、国民は日本国憲法第30条により、法律に定められた範囲で納税の義務を負うこととなります。

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参照:日本国憲法|e-gov

税法は国民に対し強制力を持つわけです。そのため、税務の現場では、税法とその実施に欠かせない政令・省令を確認することになります。

税理士業務を潤滑に行うため

税理士業務では税法だけでなく、通達も確認します。ただ、通達は法律ではありません。国家行政組織法第14条に定める通り、上位の行政機関が下位機関や職員に対して発する指示や命令です。

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参照:国家行政組織法|e-gov

通達は行政機関内でのみ強制力を持ちます。国民は通達を無視した処理をしてもいいのです。しかし、それは余計な手間と負担を増やす可能性があります。税務調査で指摘されたら、修正申告や追加納税をすることになるでしょう。潤滑に、かつスピーディに税務を行いたいのなら、通達の確認をした方が合理的です。

法令の範囲

ここで、法令の範囲と内容を確認しましょう。法令とは、法律と政令・省令を併せたものです。この3つは一体となって法的効果を生じます。日本国憲法を含めると、関係性は次のようになります。

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法律とは何か

法律とは、国民の代表者である国会議員の集まる国会で制定される法規範のことです。法律の成立については、日本国憲法で次のように定められています。

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参照:日本国憲法|e-gov

法律は、一般的・抽象的な規定が中心です。税の法律は、課税要件や税の徴収について定めています。日本国憲法に反した内容を定めることはできません。

政令(施行令)とは何か

政令とは、憲法や法律の規定を実施するために内閣が制定する命令のことです。施行令とも言います。日本国憲法第73条第6項で次のように定められています。

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参照:日本国憲法|e-gov

命令といっても「誰かに対する命令」ではありません。内閣が「政令(施行令)」という形式で行う立法を意味します。

政令には、法律の規定を実施するためのものと法律の特別な委任によるものの2つがあります。法律で一般的な事項を定め、政令で細則的な内容を規定することが多いです。ただし、政令には法律の委任の範囲を超えた規定を定められません。憲法や法律に違反した内容は無効となります。

省令(施行規則)とは何か

省令とは、各省の大臣が発する命令のことです。「施行規則」「施行細則」とも言います。国家行政組織法第12条に規定されています。

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参照:国家行政組織法|e-gov

省令も政令と同じく、法律や政令を実施するためのものと法律や政令の特別な委任によるものとがあります。法律や政令の委任の範囲内で立法を行うことができますが、この2つに反する内容は定められません。

通達とは何か

通達とは、先述の通り、上位の行政機関が下位の行政機関に対して行う命令・指令を言います。税に関する通達には、次の2つがあります。

  • 基本通達...税の法律についての基本的な事項や重要事項についての解釈や運用方針について定めたもの
  • 個別通達...上記以外の事項や新たな事項について、個別に法律の解釈や運用方針を示すもの

通達は法律や政令・省令の根拠なく、新たな課税要件を定めたり、納税の義務を減免したりすることはできません。本来、行政機関内でのみ効力を発するものであるため、法源とは言い難いのですが、税務を行う上では無視できないほど重要な存在となっています。

それぞれの違いを事例で確認

法律や政令・省令、通達が具体的にどう違うのかを見てみましょう。今回は、法律と省令の違いについて考えます。

電子帳簿保存法の施行延期ができたわけ

2021年度税制改正で電子帳簿保存法が大幅に変更されました。申告書や帳簿のデジタル保存が容易となった一方、事業者にとって苦痛な改正もありました。「電子取引データ保存」です。メールの請求書など、元からデジタルデータの請求書や領収書はそのまま保存するのが原則とされました。

ただしこれは、単に「とっておけばいい」というものではありません。取引年月日・取引先名・取引金額を書いたファイルごとにデータを保存しなければならないとされていたのです。守らなければ青色申告の承認が取り消されるリスクがありました。

批判が多かったため、2021年12月に発表された2022年度税制改正では「2年施行延期」とされました。施行日の2022年1月1日が目前だったにもかかわらず、です。

なぜ施行直前で延期できたのでしょうか。それは実質延期を電池帳簿保存法施行規則の附則で定めたからです。省令は財務大臣の裁量権で発することができます。法律と違い、国会を通過する必要がありません。だから直前でも対応できたのです。

インボイス制度の施行を延期できないわけ

インボイス制度を定めた新消費税法が2023年10月1日に施行されます。この制度は反対の声が多く、2023年9月10日現在、中止・延期を求める声が止みません。しかしほぼ間違いなく、予定通りインボイス制度はスタートするはずです。

なぜなら、インボイス制度は開始時期を含めて消費税法という法律で定められているからです。法律を変えるには国会での可決が必要ですが、改正のプロセスには時間がかかります。実際、毎年の税法の改正は半年以上かかっています。内容の検討や議論、ヒアリングから大綱の発表、法律案の作成を経てやっと国会で成立するのです。短期間で法改正は行えません。

条文を見よう

このほか、法源と呼べるものに告示・条約などがあります。今回は国税を中心にお伝えしましたが、地方税だと地方税法のほか、条例と規則を確認することになります。税務をわかりやすく解説する記事や本、セミナーはたくさんありますが、税務は法令などの根拠に基づくものです。条文を確認する習慣をつけておいた方が安心かもしれません。

【参考書籍】
基本行政法(中原茂樹・著、日本評論社)
租税法 第24版(金子宏・著、弘文堂)

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