管理不全の空き家も固定資産税が6倍に?特定空き家の現在と空き家対策特別措置法の改正の影響を解説
現行の空き家対策特別措置法では、特定空き家の固定資産税を最大6倍にするとしています。今後、同法の改正で「管理不全の空き家」も固定資産税が高くなるかもしれません。なぜ改正されるのでしょうか。また、改正されたらどういう影響が生じるのでしょうか。今回は、現行の法制度を確認しつつ、改正後の影響と対策について考えます。
特定空き家とは何か?空き家対策特別措置法を確認
特定空き家とは、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空き家対策特別措置法」)によって指定を受けた空き家のことです。ここでいう空き家とは、建物や附属の工作物のうち、居住などの使用がされていないものを指します。法律上、空き家は「空家等」、特定空き家は「特定空家等」とされています。次のいずれかの状態にあると認められるものが特定空き家となります。
・倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・上記のほか、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
参照:「空家等対策の推進に関する特別措置法」第2条第1項|e-gov
特定空き家に認定されると、市町村から直接関与されるほか、税優遇がなくなることがあります。
背景には「空き家問題の深刻化」
特定空き家を規定するのは、空き家対策特別措置法です。なぜこの法律が設けられたのでしょうか。背景には、年々深刻化する空き家問題があります。少子高齢化が進んだ今、誰も住まない空き家が急激に増えているのです。
「遠方に住んでいる」「すでに持ち家がある」などの理由で、親の家を相続しても入居しない人が増えていることが一因です。空き家が放置されれば、次のような問題につながる可能性が高くなります。
・建物の倒壊や崩壊、屋根や外壁の落下、火災など
・犯罪の誘発
・ごみの不法投棄、悪臭の発生、衛生環境の悪化
・風景・景観の悪化など
こういった事態になれば、地域住民の生活が脅かされます。そうならないよう、空き家を規制する空き家対策特別措置法が2014年11月国会を通過、2015年2月に施行されました。
特定空き家に認定されるとどうなるか
立ち入り調査等で空き家が特定空き家として認定されると、所有者等に対して市区町村長から次のような措置が行われます。
助言・指導・勧告は、いずれも行政指導です。法的拘束力はないものの、周辺の生活環境を保全するための措置です。建物等の除却や修繕など必要な措置を取るよう、所有者に求めます。改善が見られないと、命令が行われます。所有者等が命令を聞かなかったり、したがっても十分でなかったり期限までに完了しなかったりすると、市町村長が除却や修繕など、本来所有者が行うべき対処を行います(行政代執行、略式代執行)。また、所有者等が命令に違反すると50万円以下の過料が科されます。
特定空き家で固定資産税が6倍になるしくみ
「特定空き家になると、固定資産税が最大6倍になる」と言われています。なぜ6倍になるのでしょうか。それは住宅用地の特例の適用がなくなるからです。
住宅用地の特例とは、居住用の建物が建っている土地の固定資産税の負担を軽減する措置のことです。固定資産税は「課税標準額×税率」で計算しますが、住宅用地は特例により固定資産税の課税標準額が軽減されています。
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 一般住宅用地(200㎡超の部分) | |
---|---|---|
固定資産税の課税標準額 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
特定空き家となり、修繕などの適切な対処を助言や指導をしても所有者自身が自主的に対策も講じないと、次は勧告がされます。勧告を受け、固定資産税の賦課期日である翌年1月1日までに改善措置を行わないと、特例の適用がなくなります。結果、固定資産税が最大6倍になるのです。
空き家対策特別措置法がより厳格に?
現時点でこういった対策が講じられていますが、空き家問題の解決はなかなか進みません。特定空き家として対処されるのは、空き家の中でもごく一部です。また、特定空き家に認定されて以降の対処では、地域への悪影響を防ぎきれません。そこで2023年3月、空き家対策特別措置法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。
管理不全の空き家も固定資産税が最大6倍に
空き家対策特別措置法の改正案には、住宅用地の特例を解除する対象を広げる内容も盛り込まれています。具体的には「特定空き家だけでなく、管理不全の空き家も住宅用地特例の対象から外そう」というものです。
管理不全の空き家とは「放置すれば特定空き家になる空き家」を言います。改正法案では、管理不全の空き家でも、除却や修繕などの指導・勧告の対象にすると見られます。勧告されて改善をしなければ、管理不全の状態でも住宅用地の特例の適用が外れる模様です。特定空き家に指定されていない状態でも、指導の段階で所有者等が改善しなければ固定資産税が最大6倍になるわけです。
「空き家問題のさらなる解決」が目的
改正法案が国会で成立し、施行されれば、空き家問題の解決がよりスピーディに図られると見られます。特定空き家に指定され、現行法にもとづいて除却や修繕がされた空家は約2万件に過ぎません。しかし、特定空き家を含めた管理不全の空き家で市町村が把握したものは約50万件あります。
「規制の対象を広げ、指導の段階で改善させるようなしくみにすれば、地域への悪影響をもっと減らせるはずだ」と期待されているのです。
空き家対策特別措置法の厳格化によるリスク
気になるのは、空き家対策特別措置法がより厳しくなった後の影響です。次のような影響が懸念されます。
固定資産税が6倍になる
特定空き家の前段階の「管理不全の空き家」でも、固定資産税が6倍になるおそれがあります。相続などで取得した家を放置していた結果、市町村から指導があるかもしれません。もしこれに応じず、何もしなければ、次年度に納める固定資産税が高くなる可能性があります。
管理コストがかさむ
固定資産税の値上がりリスクを避ける対策の一つは「空き家でもきちんとメンテナンスすること」です。立木の選定や家の修繕、清掃などをきちんと行えば、地域への悪影響を防げます。状況によっては、売却や賃貸などの利活用をしやすくなるかもしれません。ただし、このメンテナンスには経済面でも労力面でもコストがかかります。
売却が難しい
固定資産税の値上がりを避けるなら、早めに売却するのも一つの手です。現在、空き家の3000万円特別控除という制度があります。相続した空き家を期限内に売却し、条件に当てはまれば、譲渡所得から3000万円をさしひけるのです。
ただし、利用するには条件があります。また、売却しようにも売れるとは限りません。少子高齢化が進んでいる今、処分は以前より難しくなっています。
なお、売却できた場合、条件に合えば3000万円の特別控除が使えます。ただ、2023年中に売却するか、2024年以降に売却するかで条件が異なります。2024年以降の売却については2023年度税制改正の内容が反映されるのです。また、2024年以降の売却の場合、空き家の建物と敷地を取得した相続人が3人以上だと特別控除額が2000万円に下がる点も留意しなくてはなりません。
空き家対策特別措置法の厳格化への対応
上記のほか、空き家対策特別措置法の改正が行われた場合の対応として、共通して注意しておきたいことが一つあります。「市町村から管理不全の空き家として指導の通知が来たら無視しないこと」です。
相続した家が市町村の調査の結果、管理不全の空き家だとされれば、修繕や除却などといった改善を求める文書が空き家を相続した人宛に届きます。これを無視すれば勧告となり、改善をしなければ固定資産が高くなるというわけです。
ただ、指導に応じてただちに修繕や除却をしなかったからといって、すぐに勧告にいたるとは限りません。総務省のレポートを見る限り、現在の法制度でも勧告を躊躇する自治体が多く見られます。再指導という形で数回、指導の文書を所有者等に送付する自治体も見受けられます。
参考:空き家対策に関する実態調査結果報告書(平成31年1月)|総務省
とはいえ、無視や放置がよいわけではありません。関与先が空き家を相続し、指導の文書を受け取った旨を聞いたら、市町村へ連絡するよう勧めましょう。その際、関与先の状況を確認し、改善に応じるのが難しいなら市町村へその旨を正直に伝え、話し合いの場を持つよう助言するとよいかもしれません。
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