経理の基本!年次決算の基礎知識
企業は1年単位で事業を総括し、確定申告と納税を行わなければなりません。年次決算はそのために行われます。年次決算は、企業の経理担当者にとって1年間の仕事の集大成といっても過言ではないでしょう。年次決算の業務を理解できれば、経理の仕事の全体像がつかめます。年次決算は経理の基本でもあり、1年間のゴールでもあります。
監修
マイナビ税理士編集部
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年次決算とは?
年次決算とは
年次決算とは、期末に1年間の事業実績を集計し、財務諸表を作成する業務をさします。
企業
株式会社にとって、年次決算は会社法で定められた義務です。株主総会で承認された財務諸表を公告しなければなりません。
また、法人税の申告・納付の期限が事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内と定められていますので、企業は期末の翌日から2ヵ月以内に年次決算を行い、確定申告と納税を行う必要があります。年次決算により納税額が決定し、次年度の経営戦略や資金繰りの指標となります。また、外部のステークホルダーにとっては投資や取引の判断材料になります。ですから、財務諸表には誤りや不正があってはならないのです。
経理
年次決算は、経理担当者にとっては1年間の集大成の重要な業務です。わずか2ヵ月で、通常業務と並行して、1年間の事業実績の取りまとめから納税まで行わなければなりませんので、期末の前後はもっとも忙しくなる時期です。
納税額の決定や経営分析の根拠となる財務諸表は、けっして間違いがあってはいけない資料です。年次決算の作業には、厳密な正確さが求められます。原則、1年間分の記帳すべてをチェックする作業になりますが、月次決算を行っていればある程度は作業の負担が軽減されます。
年次決算と月次決算の違い
1ヵ月単位で行う決算を「月次決算」と呼びます。企業の任意で行われ、実施しない企業もあります。また、年次決算で作成した財務諸表は開示する義務がありますが、月次決算には開示義務はありません。
年次決算の資料は業績と財務状況を対外的に開示する目的があり、貸借対照表が注目されます。月次決算は社内で経営状況を把握し、経営判断を行うための情報収集の意味合いが強く、損益計算書を重視する傾向があります。
月次決算が正確に行われていれば、年次決算の作業負担やミスを軽減できます。
<ココまでのまとめ>
・年次決算は会社法で定められた義務であり、遅れや間違いがあってはならない。
・経理担当者にとっては1年間の集大成の業務。
・年次決算は外部に開示するが、月次決算は内部資料の意味合いが強い。
年次決算の主な業務
年次決算の仕事内容
年次決算のゴールは、財務諸表の作成と税金の申告・納税です。1年間の処理を精査し、正確な財務諸表を作成するだけでなく、節税への配慮も必要です。納税額が大きくなる場合には、納税方法や資金繰りなども検討する必要があります。
また、財務諸表は単なる集計表ではなく、適法の範囲内で会社の価値がより高まるよう、経営判断で勘定を修正する場合もあります。経営者とコミュニケーションをとりながら、選択肢を提示していくのも重要な役割です。
年次決算の流れ
税金の申告・納税まで含めた、一般的な年次決算の流れを解説します。
①勘定の整理・確認
試算表を作成し、未処理(未確定勘定)、仕訳の誤りなどがないかを確認し、正しい残高になるよう修正します。事業規模の大きい会社はこれだけで膨大な作業量になります。月単位でこの工程を進めておくのが月次決算の目的のひとつです。
②財務諸表の作成
すべての勘定が正しく処理されてから財務諸表を作成します。財務諸表の書式は法令で定められており、各項目の残高を記載します。会計ソフトでは自動的に作成されます。財務諸表のうち、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は、最長10年間の保存が義務づけられています。
③決算報告
取締役会の承認、監査役監査、外部監査などを経た財務諸表を、定時株主総会に提出し、株主の承認を受けます。株主の承認によって決算が確定となりますので、法人税の申告期限内に承認を得る必要があります。
④税金の計算と納税準備
決算が確定したら納税額(消費税・法人税・法人住民税・法人事業税)を計算し、納税の準備を行います。資金繰りを確認して、必要に応じて資金調達を検討します。
⑤申告・納税
納税額を確定申告書に記載し、管轄税務署に提出します。上場会社など特定の要件を満たしている場合は1ヵ月間、延長できます。
年次決算の注意点やポイント
日々の経理業務がミスなく処理されていれば、年次決算は効率よく行えます。月次決算で残高の差異や記帳のミスなどをしっかりチェックし、財務諸表を作成しておくことで、年次決算の際に必要な記録の確認作業を軽減できます。
年次決算が大変とはいっても、基本的には毎年同じ手順で行う作業ですから、事前準備やスケジュール管理次第で効率をあげることができます。
提出書類や納税の期限などから逆算してスケジュールを立て、必要な資料や情報を入手できるよう準備しておきましょう。
また、新年度と旧年度の処理が同時に発生するため、混乱しないよう注意が必要です。
<ココまでのまとめ>
・年次決算のゴールは、財務諸表の作成と税金の申告・納税。
・月次決算でしっかりチェックしておくことで確認作業を軽減できる。
・事前準備やスケジュール管理次第で効率をあげることができる。
年次決算の資格やキャリア
年次決算の主な資格
年次決算業務は通常の経理業務と同じく、特定の資格が必要な仕事ではありません。税務書類の作成代行や申告は税理士の独占業務ですが、経営者や従業員が自社の税務書類を作成、申告を行う場合には税理士資格は必要ありません。ただし、経理職として独力で仕事ができるレベルといわれる、簿記2級以上の知識は求められると考えてよいでしょう。
年次決算業務に必要なキャリア・経験
年次決算には膨大な作業があり、入力・集計などの補助的な業務から高度な知識や判断力を要する責任者のポジションまで、さまざまな役割があります。経理として2~3年程度、月次決算業務の経験があれば、年次決算の補助的な役割は果たせるでしょう。
たとえば、経理部門に配属された新入社員は補助的な作業から始まり、スキルアップに応じて、財務諸表作成、連結決算、申告書作成などへ任される範囲を広げていきます。未経験からでも、年次決算に携われる可能性はあります。
年次決算経験者のキャリアプラン
年次決算を経て、会社の経営に関わる管理会計へとステップアップできる可能性もあります。一般的に年次決算の最終責任者は財務・会計部門の責任者であり、役員待遇となっている会社もあります。年次決算にどのような形で関わるかによりますが、財務・会計部門の管理職、役員というキャリアもあります。
<ココまでのまとめ>
・年次決算に資格は必須ではないが、簿記2級以上の知識は求められる。
・月次決算の経験があれば、年次決算の補助的な役割は果たせる。
・財務・会計部門の管理職、役員というキャリアもあり。
まとめ
年次決算の先には、確定申告と納税があります。万が一、年次決算に誤りがあれば修正申告が必要になり、重大事案の場合は税務署の監査を受ける可能性もあります。経理という仕事は、日々コツコツと数字を積み上げているイメージを持たれますが、それらの作業はすべて年次決算のために行われています。年次決算を理解すると、ひとつひとつの経理処理の意味や必要性にも納得できるでしょう。年次決算をこなせる知識とスキルが身につけば、税理士や税理士補助など、税務や会計のスペシャリストへの道も開けます。
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