どのような税理士事務所をめざすか!?

どのような税理士事務所をめざすか!?

全国に税理士は8万人弱いますので、税理士事務所の数も街なかを歩いていれば普通に見かけるくらいに、多くあります。多拠点で展開している税理士法人であれば社風や業務内容、仕組みがある程度統一されていると考えられますが、それ以外の事務所は個人事業である場合が多く、一つひとつに違いがあるわけです。
若手の税理士同士で話している際に、税理士事務所の今後について話すことはよくありますし、SNSを見ていても多くの人がテーマにしていると感じています。この記事では、現在のような税理士業界において、どのような事務所をめざすか!? ということについて自分自身の考えをお話しさせていただきます。

松井 元

松井 元

税理士

静岡県三島市の松井会計事務所に勤務する税理士。大学院で工学専攻を卒業後、自動車部品メーカーでエンジニアとして8年間働く。自分の頑張りが成果として見える環境で働きたいと考え税理士事務所に転職。34歳から税理士を目指して、働きながら税理士試験・大学院での税法論文作成を経て税理士登録。税務・会計と IT を使った経理効率化の両面でお客様をサポートすべく奮闘している。

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税理士事務所の多様性

税理士事務所の方向性を検討するうえで、まず考えるべきことはお客さまに提供できるサービス内容であり、それによって事務所内の業務が決まってきます。
最もオーソドックスなサービスは顧問契約で、多くの事務所が法人・個人の確定申告業務のほか税務会計・経営に関する雑多な相談に対応しております。また、顧問先の記帳を代行している事務所もありますし、顧問先に相続案件が生じた場合には相続税の申告も行ったりもします。経営者の身近な存在として、継続的に接することで信頼関係を築きやすく、お客さまとしては税務・会計のプロにいつでも相談できるという安心感を得ることができますし、事務所としても安定的な収入につながるので、今後もサービスの主流として残りつづけるでしょう。
1時間10,000円のように単価を決めて、単発の相談を受け付けている事務所もあります。人口が多い都会だと、少し相談したいことがある場合にネットで税理士を探して単発の相談をするケースが多く見受けられます。一方で人口が少ない地方であればあるほど、単発相談はサービスとして成り立ちにくいといえます。
また、法人専門、個人専門、相続専門のように分野に特化した事務所もあります。都会ほど他社との差別化が大事なので、分野に特化した税理士事務所の割合も高いです。一方で、地方だと人口が少ないので、特化型では逆に顧客を獲得しにくい傾向があるといえるでしょう。
税理士業のかたわら、ほかのサービスを提供している事務所もあります。社会保険労務士、司法書士のような国家資格を取得してダブルライセンスで活動している場合や、会計ソフトの導入やほかのITを絡めたサービスを提供している場合などもあります。私がいる事務所も、税理士業務以外でIT化の支援や税理士をめざしている人の大学院入試サポートなどを行っております。

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考えるべきニーズ

税理士事務所の方向性を考える際、自分が提供できるサービスと、さらにそのニーズをよく考える必要があります。マーケティングの面では当たり前ですが、どんなサービスでも適切な需要がなければ意味がないからです。
税理士を探している人は、基本的には自分が住んでいる地域を対象に探していますので、税理士側からすれば地域のニーズを把握してサービスを提供することが大事です。
そして、都会と地方ではニーズが大きく違うと感じています。SNSで多くの都会の人がサービスについて発信していますが、私が住んでいるような地方では需要がないものも多いですし、逆もあります。
たとえば都会では単発相談や有料セミナーで収入の大部分を作っている人もいますが、地方では成り立ちにくく、やはり顧問契約が主流です。また、記帳代行は時代遅れという風潮が感じられますが、地方ではまだ普通に需要がある業務です。
ネットでの発信で仕事を獲るのであれば、ある意味全国を対象にしてサービスを展開できますが、ネット上はライバルも多いので自分にしかできなくて、かつニーズがあるサービスを作り上げなければなりません。

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どのような事務所をめざすか?

上記の内容を前提として、今後どのような事務所をめざすか、多くの税理士の方は考えていると思います。
私が住んでいる地域は、自分も含め二代目・三代目も多いですが、従来の業務内容で今後もやっていけるのか? どのように新しいサービスをはじめるべきか? 皆、頭を悩ませています。
地方だとIT化が遅れている点は否めず、いまでも紙の文化が根強く残っていますが、それでもやはり今後は経営者の若返りが進むので、ITの需要も増えてくると予想されます。それに備えてITに強くなっておくのは有効だと考えます。いま都会では当たり前のことでも、地方ではそうではないのですが、地方にもいずれは都会の文化が浸透してくる前提で考えるのがよいと思っています。
また、多くの人が言うように AIが税理士の一部の仕事を奪う可能性もあるでしょう。取引のデータ化が進み、そこにAIが加われば、現在のような記帳代行の業務はどんどん減っていくと考えられるわけです。もっともそれでも当面はAIの活用方法がわからないというニーズが出てきて、そこに税理士が介入する余地が残されているかも知れませんが、いずれ記帳はすべて自動化されて顧問先のみで完結するようになるでしょう。地方だと都会よりも浸透は遅くなるとはいえ、このように税理士が作業を行う必要がなくなる時代が遅かれ早かれ来ると考えられますので、そうなるとコンサル型の業務に移行していくべきだと思います。
帳簿を作るということに対する価値は現在よりも下がるので、出てきた数値を見てどのような助言ができるか、ということが重要になってきます。数字を見て、どのような経営面でのアドバイスができるかということに、より重点を置いていくべきでしょう。
私の事務所でも新規の顧問先は記帳代行の業務は受けないようにしています。いずれ需要が少なくなると考えられる業務ですので、そこに重点を置かず、ほかの価値を提供できるように日々チャレンジしております。

まとめ

どのような税理士事務所をめざすか!? ということについてお話ししました。地域によっても異なることで、絶対的な正解はないテーマではありますが、一つの考えとして参考にしていただければ幸いです。

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