税理士が気をつけるべき違反行為とは?税理士法に定める義務と懲戒処分を解説
税理士は有償・無償を問わず独占業務が認められています。その一方、自己脱税や不正な申告書等の作成は厳しく取り締まられます。税理士という国家資格への信頼を担保するためです。今回は、税理士が気をつけるべき税理士法上の義務と違反行為、懲戒処分を解説します。
目次
税理士が守るべき使命とは
税理士は、税務申告・税務代理・税務相談について無償独占が認められています。と同時に、使命が与えられています。次の通りです。
(税理士の使命)
第一条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
参照:税理士法|e-gov
税理士は、税務の知識を持つ専門家です。納税者からの依頼によって税理士業務を行うにしても、また、税務署と協議したりすることはあっても、立場はあくまで「独立」「公正」です。そして、納税者支援の最終的な着地点は、納税者が自ら申告・納税できるようにし、適正な納税義務を実現することにあります。「過大でもなく、過少でもなく」です。
こういったことから、税理士法では、税法に違反するような行為や納税者からの信頼を失墜するような行為について、厳しく規制しているのです。
税理士が守るべき主な義務
税理士法では、税理士にさまざまなルールを設けています。主なものは次の通りです。
脱税相談等の禁止
(脱税相談等の禁止)
第三十六条 税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。
参照:税理士法|e-gov
脱税相談等とは「不当に税額を少なくする」「不正に還付を受ける」につき、次のような行為を指します。
- 納税者からの不当に課税額を減らしたり還付を受けたりする相談に応じる
- 脱税等について肯定的な回答をする
- 課税を回避させたり、具体的な指示を出したりする
- 不正な税務書類の作成を行う
- 上記に類似する行為
国税・地方税を問わず、脱税相談等は固く禁じられています。第1条に言う「納税義務の適正な実現」に反する行為だからです。
なお、脱税相談等は、納税者本人が実際に脱税行為をしたかどうか、不正還付を受けたかどうかを問いません。責任追及の対象は税理士です。
信用失墜行為の禁止
(信用失墜行為の禁止)
第三十七条 税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
参照:税理士法|e-gov
税理士は、税務に関する専門家として納税者からの信頼に応えるべき立場にあります。そのため、常に信用を保持し、品位を向上するよう努めなくてはなりません。ここでいう「税理士」は、個々の税理士ではなく、税理士業界全体を指します。
具体的な信用失墜行為として、次のようなものが挙げられます。
・自己脱税
・多額かつ反職業倫理的な自己申告もれ
・調査妨害
・業務停止中の税理士への名義貸し
・業務け怠(税理士として行うべき業務を行わない)
・長期会費滞納など
非税理士に対する名義貸しの禁止
(非税理士に対する名義貸しの禁止)
第三十七条の二 税理士は、第五十二条又は第五十三条第一項から第三項までの規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならない。
参照:税理士法|e-gov
税理士法では、非税理士との提携を禁止しています。ここでの提携は、有償・無償を問いません。非税理士が作成した税務書類に署名押印するなどして適法であるかのように見せかける行為はもちろんのこと、次のような関係を結ぶことが禁じられています。
・税理士の業務を行うための事務所を共同使用し、または賃貸借すること
・業務上のあっせんを受け、または紹介すること
・実質上の使用人となり、または雇用すること
・業務を代理し、又は業務に関与すること
・業務上の便宜を与えること
参照:各税理士会綱紀規則(準則)第24条|日本税理士会連合会
税理士は、税に関する3つの独占業務が認められています。公共的使命を担う重要な資格だからこそです。それなのに、名義貸しでにせ税理士のほう助を行っては、税理士業界全体への信頼が失墜します。それゆえに厳しく禁じられているのです。
秘密を守る義務
(秘密を守る義務)
第三十八条 税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。
参照:税理士法|e-gov
税理士業務において、納税者の個人情報を知ることは避けられません。財産や所得の多寡、家族の状況、資産や負債の状況、資金繰りや取引の内容など、他人に知られたくない情報に触れる場面が多々あります。
このような秘密にかかわる情報を、税理士が自ら外部に漏洩しては、納税者は安心して税理士に業務を依頼できませんし、信頼関係を築くこともできません。また、税理士業界全体の信用問題となります。
こういったことから、税理士業務で知り得た秘密は、正当な理由なくして漏洩させたりすることが禁じられています。この守秘義務は、税理士でなくなった後も守らなくてはなりません。
使用人等に対する監督義務
(使用人等に対する監督義務)
第四十一条の二 税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう当該使用人その他の従業者を監督しなければならない。
参照:税理士法|e-gov
税理士事務所には、税理士自身の家族が専従者となって働くほか、スタッフを雇用したり委託したりすることが多いです。このような使用人等を管理することも、税理士業界全体の信頼を守る上で重要となります。スタッフがにせ税理士行為を行っていたり、依頼者の不正経理に関与していたり、依頼主の個人情報を漏洩したりしていた場合は、使用者である税理士自身が責任を問われることになります。
上記以外
上記のほか、次のような義務が税理士には課されています。
- 助言義務...依頼主が不正に国税や地方税の賦課や徴収を免れていたり還付を受けていたりしたならば、是正するように助言しなくてはならない
- 署名の義務...スタンプなどの記名と押印ではなく、税理士自身が自らの手で署名をしなくてはならない
- 帳簿作成の義務...依頼者別に1件ずつ、税務代理等の内容と結果を記録し、5年間保存しなくてはならない
- 研修受講の義務...日本税理士会連合会と各税理士会が行う研修を1事業年度あたり36時間以上受講しなくてはならない
税理士法違反になる主な行為と処分
税理士法には、さまざまな禁止行為が定められています。具体的には、どのような行為をすると違反になるのでしょうか。ここで主なものを見ていきます。
脱税ほう助・脱税相談・不真正な税務書類の作成
課税を不当に免れる、あるいは不正に還付を受けるといった行為がバレないように納税者を手助けしたり、あるいは相談に応じたり指示したりする行為は税理士法違反です。依頼者に言われるがまま、正しくない納税申告書を作成することも違反行為となります。
戒告、2年以内の税理士業務の停止あるいは禁止となるほか、3年以内の懲役または200万円以下の罰金という刑事罰の対象となります。
非税理士への名義貸し
先述の非税理士への名義貸し行為も、税理士法違反となり、2年以下の懲役か、100万円以下の罰金という刑事罰の対象となります。
守秘義務違反
税理士が無用に依頼主の秘密を外部にもらしたり、あるいは自分の利益のために利用したりすると、税理士法違反となります。この場合、税理士業務の禁止、あるいは2年以内の税理士業務の停止または戒告の対象となります。このほか、2年以下の懲役か100万円以下の罰金が科されます。
使用人監督義務違反
コロナ禍以降、税理士業界ではリモートワークが普及し、2022年度税制改正で2か所事務所禁止規定が改正されました。これと並行して、使用人の監督責任が問題となっているようです。この違反行為は、戒告と1年以下の税理士業務の停止の対象となります。
期限後申告・自己脱税
税理士自身の自己脱税や期限後申告も、税理士法の違反行為となります。「期限後申告なんて申告それ自体はしているんだからいいじゃないか」という人もいそうですが、法定申告期限内に税理士自らが申告しなければ、納税者に対して示しがつきません。そのため、違反行為の1つとされています。
期限後申告は内容によって戒告か2年以内の税理士業務の停止に、自己脱税は2年以内の税理士業務の停止か税理士業務の禁止となります。
違反行為と懲戒処分のまとめ
税理士法の違反行為と懲戒処分の対応関係をまとめると、次のようになります。
まとめ
税理士は、税務申告等に無償独占が認められている分、禁止行為が厳格に決められています。税の専門家として、申告納税制度の維持と発展に尽力する役割が与えられているため、納税者からの信頼を裏切るわけにはいかないからです。税理士制度そのものの維持のために不可欠だと言えます。
なお、以前は現在登録している税理士・税理士法人が対象でしたが、2022年度税制改正により、登録を抹消した元税理士も国税庁による質問検査の対象となりました。
参照:税理士等に対する税理士法に 基づく調査環境が変わります!|国税庁
※上記を一部加工して作成
違反行為の内容が悪質だったり頻度が高かったりすれば、今後も法改正で厳しくなるかもしれません。
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