所得金額調整控除、知らないと怖い?所得控除への影響と2025年度(令和7年度)税制改正の影響、間違えやすい点を解説

所得金額調整控除とは、2020年(令和2年)分の所得税と2021年度(令和3年度)住民税で始まった制度です。給与所得控除(いわゆるサラリーマン経費)のおまけのような控除ですが、細かい要件が災いしているのか、誤解がいまだにあるようです。うっかり間違うと所得控除などにも影響します。今回は所得金額調整控除の概要を確認し、要件や控除額、どのタイミングで控除するのかをお伝えします。
目次
所得金額調整控除とは?概要と趣旨を確認
最初に、所得金額調整控除の概要と趣旨を確認します。
概要
所得金額調整控除を一言で表すと「給与所得控除のおまけ」のようなものです。条文は次のようになっています。
要件に当てはまる場合、給与所得から所得金額調整控除の金額を差し引きます。差し引いた後の金額が、給与所得者のその年の給与所得の額となるのです。これを基に合計所得金額や総所得金額等を計算することとなります。
趣旨
所得金額調整控除の制度創設の目的は「2018年度(平成30年度)税制改正の結果、負担の増えた層の負担を減らすこと」にあります。2018年度税制改正では、個人所得課税において、主に次の改正が行われました。
- 給与所得控除の引き下げ(一律10万円、上限額については210万円から195万円へ)
- 公的年金等控除の引き下げ(原則、一律10万円)
- 基礎控除の引き上げ(38万円から48万円へ)
ここで懸念されたのが、次の2つの層の税負担の増加です。
- 給与年収は高いが、子育て中だったり、重い障害を本人や家族が抱えていたりする世帯
- バイトで給与年収を得ている年金生活者
以下、それぞれを解説します。
1.給与年収は高いが、子育て中だったり、重い障害を本人や家族が抱えていたりする世帯
給与年収が850万円を超える層については10万円引き下げられ、給与所得控除の上限額は195万円とされました。しかし、子育て世帯、所得者自身や家族が特別障害者である世帯においては大きな負担となります。高収入だからといって経済的余裕があるとは言えません。そこでこういった給与所得者については、最大15万円を所得金額調整控除として給与所得額から差し引くこととされました。
2.バイトで給与年収を得ている年金生活者
2018年度税制改正では、給与所得と公的年金等控除額がそれぞれ10万円引き下げられました。基礎控除が同じタイミングで10万円引き上げられたとしても、全体として課税されうる所得額が10万円増えるわけです。これを考慮し「給与所得+年金の雑所得」の層についても、一定額を所得金額調整控除として差し引くこととなりました。
参考:平成30年度税制改正の解説 租税特別措置法等(所得税関係)の改正(P.136)|財務省
所得金額調整控除の要件、控除額、適用時期①給与所得のみ
ここから、具体的な要件や控除額を見ていきます。まずは給与所得のみで所得金額調整控除を受けるケースです。こちらは先ほどの1に当てはまります。
要件
給与所得のみのケースで所得金額調整控除を受けるのは、次の要件をすべて満たしたときです。
1.給与年収850万円超であること
税制改正の結果、給与年収850万円超に適用される給与所得控除は一律「210万円→195万円」に減額されました。所得金額調整控除は、この改正により不利益を被る層の手当が目的なので、対象者はこの高年収の層に限られます。
次のいずれかに当てはまること
次のいずれかの事情を抱えている給与所得者のみが対象です。
●扶養親族23歳未満
「子育て中であるがゆえに高収入でも経済的余裕がない層への手当」が趣旨です。つまり、大学生以下の親族を扶養していることが求められます。
なお、扶養控除においては「扶養親族が年末時点で16歳以上であること」が求められますが、ここではその要件はありません。つまり、扶養している子が0歳でも所得金額調整控除の対象になるのです。
●特別障害者あり
これもまた「高収入だけど経済的余裕がない層への手当」の趣旨に見合う要件です。次のいずれかが特別障害者であることが求められます。
- 所得者本人
- 同一生計配偶者
- 扶養親族
なお、扶養親族については年齢要件がありません。そのため、16歳未満もカウントされます。
控除額の計算方法
控除額は次のように計算します。
{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%
1円未満の端数は切り上げます。この計算に従うと、控除額は最大で15万円となります。
控除の時期
このケースでの控除のタイミングは2つあります。1つは年末調整、もう1つは確定申告です。年末調整では「給与所得者の所得金額調整控除申告書」に、確定申告では確定申告書の第二表「配偶者や親族に関する事項」の「その他」欄に記載が必要です。
所得金額調整控除の要件、控除額、適用時期②給与所得+公的年金等の雑所得
「給与所得+公的年金等の雑所得」で所得金額調整控除の適用を受けるケースです。こちらは先ほどの2に当てはまります。
要件
居住者の「給与所得+公的年金等の雑所得」が10万円を超えることが条件です。このときの「給与所得」とは、給与所得控除後の給与等の金額を言います。
控除額の計算方法
控除額は次のように計算します。
{給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円
なお、1に当てはまるケースでの所得金額調整控除と併用が可能です。
控除の時期
「給与所得+公的年金等の雑所得」での所得金額調整控除は、確定申告のときにのみ適用を受けられます。年末調整はあくまでも給与所得のみを扱うためです。こちらは、所得金額調整控除を適用後の金額を給与所得として申告書に記載する必要があります。
注意点
所得金額調整控除については以下の注意点があります。
控除ミスで所得控除が受けられなくなることも
所得金額調整控除は「給与所得控除(いわゆるサラリーマン経費)のおまけ」のような存在です。そのため、この控除額を適用した後が、その年の「給与所得」となります。つまり、所得要件としてよく用いられる「合計所得金額」「総所得金額等」を構成するわけです。この2つは、配偶者(特別)控除やひとり親控除などの所得控除のほか、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置などにも影響します。
言い換えると、所得金額調整控除の適用もれで、受けられるはずの所得控除や贈与税の優遇措置を受けられなくなるおそれがあるのです。適用可能かどうか、きちんと確認する必要があります。
2025年度(令和7年度)税制改正に注意
2025年分以降の年末調整と確定申告では、2025年度(令和7年度)税制改正の影響に注意しなくてはなりません。なぜなら、基礎控除の引き上げや上乗せ、給与所得控除の最低保障額の引き上げとともに、次の所得要件も「48万円→58万円」となったからです。
- 同一生計配偶者(所法2①三十三)
- 扶養親族(所法2①三十四)
- ひとり親控除の子(所法2①三十一イ、所令11の2②)
- 雑損控除の「生計を一にする配偶者その他の親族」(所法七十二①、所令205①)
所得金額調整控除の要件にも「同一生計配偶者」「扶養親族」が登場します。つまり、これまでと同じように「合計所得金額48万円(給与年収で103万円)」ではなく「合計所得金額58万円(給与年収で123万円)」で要件に当てはまるかどうかを確認していかなくてはならないのです。
2025年分の年末調整と確定申告は、ほかの面でもこれまで以上にかなり複雑となっています。一つ一つていねいに、じっくり確認していった方がよさそうです。
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