税理士登録をしない理由とは? 試験合格後の登録について
晴れて税理士試験5科目に合格しても、「書類提出などの手続きが面倒」「登録費用が負担」などの理由から、税理士登録をしないで転職をする人もいます。実際、税理士登録をしていない方が転職先で税理士の指示の下、税務書類の作成をするケースもあり、税理士登録をしていなくても、転職活動に支障はありません。
しかし、税理士の独占業務に携わったり、独立開業ができたりするのは、税理士登録をした税理士だけです。そこで、税理士登録のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
税理士としてのキャリアを考える際には、専門性を活かせる業種や職場の選択が大切です。マイナビ税理士では、業界専任のキャリアアドバイザーがあなたの希望やキャリアビジョンに合わせた転職先をご紹介いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
監修
マイナビ税理士編集部
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税理士登録しない人が増えている理由
独立志向の薄まり
ご存じのとおり、税理士試験5科目の合格もしくは試験免除された有資格者は、税理士登録をしてはじめて、税理士を名乗ることができるようになります。税理士登録には2年以上の実務経験が必要ですから、それを満たさない有資格者が登録できないのは当然ですが、実務経験の要件を満たしても税理士登録をしないという人が増えているようです。
税理士登録をしない理由として考えられるものはいくつかありますが、大きな理由のひとつとして「独立志向の薄まり」が挙げられます。
従来のように、税理士としての独立開業を前提として税理士試験を受ける人が少なくなり、税理士資格をキャリア形成の一手段と考える人が主流になりつつあるといえます。これには、長きにわたって企業の倒産や不景気感が定着しているため、若い世代を中心に独立志向が薄くなっていることも影響しているでしょう。税理士業界もその例にもれず、独立を視野に入れていないために、税理士登録の必要性を感じない人が増えていると考えられます。
税理士登録のメリットが希薄
税理士登録のメリットが希薄になったことには、大規模化する税理士法人や会計事務所が増えていることも関係していると考えられます。大規模な税理士法人や会計事務所ではチーム単位の体制が整っていることが多いため、全員が税理士である必要はなく、税理士資格をそれほど重視しない傾向があります。独立志向を持たず、税理士法人や会計事務所の従業員として働きたい人にとっては、税理士登録の必要性はあまり感じられないでしょう。
税理士有資格者の意識の変化により、税理士登録のメリットは希薄になっています。こうした状況で、多数の提出書類の用意や面接などの手続き、登録料や年会費などをあわせると20万円前後になる費用が負担となり、税理士登録のハードルを高くしています。
日本税理士連合会の統計では、現在の税理士登録者50%以上は60代以上で、それに対して20代、30代の税理士は全体の11%にも満たないことがわかっています。このことから、近い将来、60代以上の税理士が引退して税理士が不足するようになると、登録するメリットが生じてくる可能性はあります。
<ココまでのまとめ>
・若い世代を中心に独立志向が薄くなっている。
・大規模化した税理士法人や会計事務所は、税理士資格を重視しない傾向がある。
・書類提出や面接などの煩雑な手続きや登録費用などが負担となっている。
税理士登録しないとできないこと
税理士の独占業務
税理士には3つの独占業務があります。また、税理士業務には無償独占権が与えられていますので、有償・無償を問わず、税理士以外の人が独占業務を行うことはできません。税理士試験合格者であっても、未登録であればこれらの独占業務を行ってはいけないのです。たとえば、無償で知人の申告書類を作成する、納税書類を代理で送信する、SNSやブログで税金に関する質問に答えるなどの行為も、独占業務の侵害にあたります。
・税務の代行
確定申告、青色申告の承認申請などの税務を代行する業務です。e-Taxを利用した申告書の代理送信、税務調査の立会い、代理人として税務署への不服申立てなどを行います。
・税務書類の作成
確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申請書などの税務書類を作成します。
・税務相談
税金に関する相談を受け、助言するサービスです。顧問契約などの形で継続的に対応する場合と、特定の案件への助言を行う場合があります。
税理士としての独立開業
税理士として独立開業するためには、税理士登録が必要です。
独立開業すれば、何もかも自分の裁量で仕事を進められるようになり、自分の努力次第で収入を何倍にもアップできる可能性があります。また、定年もありませんので、好きなだけ働くことができます。自分の得意分野や興味がある仕事を選べ、自分のアイデアを活かして、ほかの税理士に参入されない新規ビジネスを開拓できる可能性などもあります。
その半面、仕事は自分の力で獲得しなければなりませんし、会社員とは違って仕事量の増減が収入に直結します。経営が軌道に乗るまでは、不安定な状況が続く可能性もあり、従業員を雇用した場合には従業員の生活を守る責任も生じます。成功も失敗も自分の責任になり、被雇用者として働く場合とは比べて、メリット、リスクともに各段に大きくなります。
<ココまでのまとめ>
・税理士有資格者でも、未登録であれば独占業務に携わることはできない。
・独立開業すれば収入が何倍にもなる可能性がある半面、軌道に乗るまでは不安定。
就職に不利になるか
税理士資格なしでも支障がない
前述のとおり、税理士の独占業務である税務書類の作成を、税理士以外の人が行うと独占業務の侵害にあたります。
しかし、税理士法人などの従業員が税理士の指示の下で税務書類を作成するのは問題がなく、従業員が作成した税務書類の当事者責任は指示をしている税理士にあります。そのほかにも記帳業務やコンサルティングなど、税理士登録をせずにできる業務は多く、税理士資格なしでも支障がなく仕事ができます。そのため、税理士法人や会計士事務所、事業会社などに就職する場合は、必ずしも税理士登録が必須とはならない場合が多いのです。
税理士登録なしでも就職する際に不利になることが少ないため、登録手続きにかかる労力や費用のわりに必要性が薄いと考えられるのでしょう。
税理士試験の合格に有効期限はなく、税理士登録はいつでもできます。実務経験を積み、税理士のポジションで働く必要が生じたときに、登録することができます。手当などの形で登録費用の一部を負担する制度を用意している法人もあるようです。
能力評価は試験合格で充分
就職や転職活動で履歴書の資格欄に「税理士」と書けないことが不利になるのではないかと懸念される方もいらっしゃると思います。もちろん、求人企業の方針によりますが、ほとんどの企業では、税理士試験の合格だけでも充分に能力評価の対象となります。税理士試験に合格して間もない若手などの場合は特に、税理士登録の有無によって能力評価に大きな差がつくことは少ないでしょう。入社後に必要に応じて登録する旨を伝えられれば、問題はないと思われます。
<ココまでのまとめ>
・記帳業務やコンサルティングなど、税理士登録をしなくてもできる業務はある。
・必要が生じたときに、税理士登録すればよい。
・志望企業の条件にあわせて、税理士登録を検討するのもあり。
・税理士試験の合格だけでも充分に能力評価の対象となる。
まとめ
従業員が自社の税務申告を行う場合、税理士の資格は必要なく、就職して働く場合は税理士資格の必要性はあまり高くありません。税理士登録にかかる手間や費用と比較すると、就職を希望している人には登録するメリットがない場合も多いようです。もちろん、資格が必要になったタイミングで登録することができますので、志望企業や仕事内容に応じて登録が必要かを検討してもよいでしょう。マイナビ税理士では税理士優遇の求人のほかにも、税理士未登録の方もご応募が可能な求人など、多数の求人を保有していますので、転職を検討している方はぜひご相談ください。
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