税理士試験は「おかしい」?理不尽と言われる5つの理由とそれでも目指すべきメリット

税理士試験は「おかしい」?理不尽と言われる5つの理由とそれでも目指すべきメリット

税理士を目指して勉強すると「この試験、何かおかしい…」と感じる瞬間があるでしょう。膨大な勉強時間を求められる一方、合格基準が不透明だったりするからです。実際、受験生から「試験制度が時代遅れ、不公平」と言われることがあります。ただ、この特殊な背景や理由がわかれば、正しい対策やキャリア戦略を立てられるはずです。今回は、税理士試験が「おかしい」と言われる理由を深掘りしつつ、それでも挑戦する価値やメリットについて解説します。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

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税理士試験のしくみと概要

最初に、税理士試験のそのもののしくみを確認しましょう。

試験は年に1回

税理士試験は、例年8月上旬から中旬にかけての3日間で実施されます。つまり、チャンスは年に1回です。体調不良や仕事の都合で受験できなければ、翌年まで待たなくてはなりません。

科目合格制

税理士試験は科目合格制です。いったん合格した科目は永久に有効となります。一度に全科目に合格する必要はありません。そのため、必須科目(簿記論・財務諸表論)と選択科目から好きなように選択し、1年に1科目ずつ、あるいは複数科目に合格する方法も取れます。どの科目を選ぼうと、何科目を受験しようと、最終的に5科目に合格さえすれば「税理士試験合格(官報に掲載)」となるわけです。

見方を変えると「合格した科目は生涯有効」という制度であるがゆえ、試験合格までに10年以上かかるケースも出てくると言えます。

試験合格の代わりに院免除も

税理士になるルートは、5科目の試験合格だけではありません。一定の要件を満たす大学院で修士論文を執筆し、認定を受ければ、税法科目や会計科目の試験が一部免除される制度があります。これを一般に「院免除」と言います。

2022年度(令和4年度)税制改正により、2023年度(令和5年度)の税理士試験から受験のハードルが下がったことも影響し、最初から院免除で税理士資格を取得しようと考える受験生は増えているようです。

また、税務署に一定年数以上勤務することにより科目合格や試験合格が免除される制度があります。このほか、弁護士や公認会計士は無試験で税理士登録ができます。こういった「5科目合格」以外のルートでも税理士になれるしくみは、後述する不公平感につながっています。

参照:税理士の資格取得|日本税理士会連合会

税理士試験がおかしいと言われる理由5つ

税理士試験は合格率が低く、難易度の高い国家資格の一つです。ただ、その難しさとは別に、制度自体が「理不尽」「おかしい」と言われることがあります。主に次のようなものです。

配点が公表されない

国税庁のWEBサイトには次のように書かれています。

合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。
合格科目が会計学に属する科目2科目及び税法に属する科目3科目の合計5科目に達したとき合格者となります。

参照:税理士試験の概要|国税庁

しかし実際には配点は公表されません。また、模範解答も示されません。多くの資格試験では配点や模範解答が公表されるにも関わらず、です。

また、合格基準は「満点の60%」とされていますが、実際には合格率を10〜15%程度にすべく配点調整が行われていると言われます。結果、自己採点で60点を超えていても不合格になるケースや、逆に手応えがなくても合格しているケースが生じます。

受験生が自分の結果を正確に把握できないブラックボックス化が「おかしい」と言われる要因です。

社会人受験生が多いが試験開催は平日

税理士試験の受験生の多くは社会人です。働きながら受験する人も少なくありません。

にもかかわらず、試験日程は例年、平日の3日間に設定されています。そのため、受験生が会社員なら有給休暇を取得しなければなりません。業務の都合が優先されるなら休みが取れないこともあります。

公認会計士などに免除あり

先ほどお伝えした通り、公認会計士や弁護士(それぞれになる資格を有する者を含みます)、税務署で一定年数の現場経験を積んだ人は税理士試験を受けることなく登録することができます。

税理士試験の5科目受験にしても、あるいは大学院による一部科目免除にしても、登録までにかなりの時間を費やします。それなのに、こういった試験を受けることなく登録できる制度があることに不公平さを感じる人もいないわけではありません。

理解よりも暗記

税理士試験の税法科目では「理論」「計算」の2つがあります。このうち、理論は税法条文を根拠に問に答えることを言いますが、司法試験と違って税理士試験では税務六法などの持ち込みは許されていません。受験生は条文を暗記した上で、試験に臨まないといけないのです。見方を変えると理解力よりも暗記力が問われるとも言えます。

また、実務では条文を参照しながら業務を行います。一言一句の丸暗記は実務的ではないという批判もあります。

試験合格までに時間がかかりすぎる

税理士試験に合格するためには、3000〜5000時間の勉強時間が必要と言われます。そのため、税理士試験は長丁場になりがちです。中には10年以上かかるケースもあります。

この状況には「一度取った科目は永久に有効」という科目合格制が影響していると見られます。公認会計士試験のようは「一定期間過ぎると合格が無効になる」という制度ではありません。見方を変えれば「税理士登録の可能性をいつまでも期待できるがために、キャリアの選択肢が狭くなりやすく、切り替えがしにくい」しくみだとも言えます。

「おかしい」と言われる税理士資格を取得する4つのメリット

ここまで見てきた通り、税理士試験には不公平感があります。しかしそれを踏まえてもなお、税理士試験は受けるだけの価値があります。次のような利点があるからです。

1.一生働ける資格である

税理士という資格には定年がありません。働こうとすれば60代でも70代でも80代でも働けます。つまり、難易度の高い試験であっても、一度突破して登録をすれば、税理士法違反などをせず、健康である限り、年齢に関係なく働き続けることができるのです。

2.専門性が高く高収入を得やすい

税理士の平均年収は、一般企業の正社員よりも高い傾向にあります。昨今は、「税理士業務はAIにとってかわられる」などと懸念されますが、実際にはそう簡単に代替するのは難しいでしょう。

記帳一つでも「消費税区分をどうするか」など税務判断が必要です。また、税務判断も事案の詳細まで確認しなければ適正に行うことはできません。また税理士法上、税務申告や税務代理、税務相談は現時点で人間である税理士が行うことが定められています。

つまり税理士という業務はデジタル化が進み、AIが進化したとしても、需要の消える職業ではありません。むしろ、税務がますます複雑化して行く今後、高度な判断と思考は人間の税理士しかできないと言えます。

3.世間からの信用・評価が高い

税理士は「税の専門家」としてだけでなく、経営者のパートナーとして信頼される存在です。難関試験を突破したこと自体が、高い実務能力や責任感、粘り強さの証明となり、社会的信用を得ることができます。

4.幅広く活躍できる

税理士資格を持っていれば、勤務だけでなく独立開業という選択肢が生まれます。自分の裁量で働きたい人には大きな魅力です。このほか、一般企業の経理財務部門やコンサルティングファームへの転職でも、その高度な知識は高く評価されます。また、国内だけでなく、国際税務という形で海外とのかかわりを持ったりすることが可能です。

働きながら税理士試験を乗り越える2つのコツ

「おかしい」と言われながらも多くのメリットがある税理士試験。難関試験であるため大変ですが、できれば働きながら合格したいものです。そのためのコツを2つお伝えします。

1.スキマで勉強時間を確保

働きながら勉強をする人は、まとまった勉強時間をなかなか取れません。そこで、スキマ時間を活用しましょう。電車などの移動時間、歯みがきやトイレ、お風呂の時間など、それぞれの時間は30分、5分、3分などとそれほど長くありません。しかしかき集めてコツコツ勉強すれば、膨大な時間となります。また「今しかない」と思えば集中せざるを得ません。結果、知識の定着率が高まります。

2.理解のある環境を選ぶ

重要なのは学習環境です。働きながら勉強する受験生にとっては職場環境がカギとなります。「平日の試験日に休みが取れるか」「繁忙期に勉強時間が削られないか」などが合否を左右します。そのため、試験勉強や大学院通学を応援してくれる会計事務所など、受験に理解のある職場を選ぶことが合格への近道となります。

まとめ

税理士試験にはおかしいと言われる側面が確かにあります。しかし、それを乗り越えて資格を取得すれば、安定したキャリアや高い年収、社会的信用といった大きなリターンが得られます。

そして、働きながら合格を目指すなら職場環境が重要です。「今の職場では試験日に休みが取れない」「勉強時間が確保できない」と悩んでいる方は、合格しやすい職場への転職を検討してみてはいかがでしょうか。

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