2026年度(令和8年度)税制改正大綱①「年収の壁178万円」を分析!所得要件の変更も解説

2026年度(令和8年度)税制改正大綱①「年収の壁178万円」を分析!所得要件の変更も解説

2025年12月19日、2026年度(令和8年度)税制改正大綱が公表されました。今回は経済を活性化させるという与党の強い方針もあり、改正項目が例年より多くなっています。1回目の今回は国民の生活にかかわりの深い「年収の壁178万円」を中心に解説します。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

目次

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2026年度(令和8年度)税制改正大綱の全体像

最初に、今回の税制改正が何に焦点を当てたものなのかを確認しましょう。

経済活性化への意欲が強い

経済活性化への意欲の強さがうかがえます。これは、研究開発税制の拡充や成長投資拡大に向けた環境整備のほか、住宅ローン控除の拡充などに現れています。

中・低所得者層への支援が手厚い

昨今の円安と物価高で国民生活はひっ迫しています。特に影響を受けるのが中・低所得者層です。前回の改正では低所得者層中心の減税となっていました。しかし今回は、より幅の広い層に対しての手厚い減税措置となっています。特に給与収入が一定以下の層に対しては、所得税負担が発生しないラインが「年収178万円」と大きく引き上げられました。

高所得者・大企業に厳しい

一方で、超富裕層や大企業に対しては課税強化の方向性が示されました。極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の厳格化やふるさと納税の高所得者向けの制限のほか、賃上げ促進税制についても大企業向けの廃止といった措置が講じられました。

今回の税制改正には以上3つの特徴がありますが、今回はその中でも「年収の壁のさらなる引き上げ」に焦点をあてて解説します。

税制改正1:基礎控除の引き上げ

年収の壁の引き上げの1つ目は基礎控除の引き上げです。前回の改正で所得税法規定の基礎控除は「48万円→58万円」となりました。これが今回の改正で「58万円→62万円」と、プラス4万円となりました。合計所得金額と照らし合わせると次のようになります。黄色いマーカーの部分のみ変更です。

合計所得金額 基礎控除(所得税法)
2350万円以下 62万円
2350万円超2400万円以下 48万円
2400万円超2450万円以下 32万円
2450万円超2500万円以下 16万円
2500万円超 0円

なお、適用時期は2026年分の所得税からです。ただし給与等や公的年金等の源泉徴収税額については2027年1月1日以降の適用となります。

税制改正2:基礎控除の上乗せの改正

前回の税制改正で、それまでになかった「基礎控除の上乗せ」措置が設けられました。租税特別措置法の規定です。こちらも今回、さらに引き上げられました。適用時期も含め、次のようになります。

合計所得金額 基礎控除(所得税法)
2025年分 2026年・2027年分 2028年分以降
132万円以下 37万円 42万円 37万円
132万円超336万円以下 30万円 0円
336万円超489万円以下 10万円
489万円超655万円以下 5万円 5万円
655万円超 0円

なお、この引き上げは、公的年金等の源泉徴収税額にも影響しますが、適用時期は2027年1月1日以後の支払い分からとなります。

税制改正3:給与所得控除の引き上げ

前回の税制改正で給与所得控除の最低保障額が引き上げられましたが、今回も引き上げとなりました。適用時期を合わせると次の通りです。

【最低保障額の引き上げ】

2025年分の所得税:65万円  → 2026年分以降の所得税:69万円

つまり2026年12月以降の年末調整では、この最低保障額で計算することとなります。なお、この変更に伴う給与所得の源泉徴収税額表の改正については、2027年1月1日以降の支払い分からとなります。

また、この給与所得控除の最低保障額は住民税でも適用されます。こちらは2027年度分の住民税からとなります。

税制改正4:給与所得控除のさらなる引き上げ(2年間限定)

今回は所得税法に定める給与所得控除が引き上げになっただけではありません。やや分かりにくいのですが「給与所得控除の最低保障額の2年間限定の引き上げ」というのも講じられました。2026年分・2027年分の2年間のみ給与所得控除の最低保障額をプラス5万円にする、というものです。先ほどの「65万円→69万円」とまとめて図にすると次のようになります。

適用年分(所得税) 2025年分 2026年分・2027年分 2028年分以降
給与所得控除の最低保障額 65万円 74万円 65万円

この「2年間限定のプラス5万円」という措置も、2026年分の年末調整から適用されます。また、住民税では2027年度分・2028年度分の住民税でプラス5万円の上乗せが適用されます。

税制改正5:控除関連の所得要件変更

所得控除の所得要件も変更となりました。こちらは所得税法の基礎控除の引き上げと合わせる形となっています。具体的には次の通りです。

  • 同一生計配偶者・扶養親族の定義における合計所得金額:58万円以下→62万円以下
  • ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等:58万円以下→62万円以下
  • 勤労学生控除の合計所得金額:85万円以下→89万円以下

このほか、家内労働者等の必要経費の特例の最低保障額も65万円から69万円に引き上げられました。

以上は2026年分の所得税(2027年度分の住民税)から適用されます。

税制改正6:ひとり親控除の控除額引き上げ

今回、所得税・住民税ともにひとり親控除の控除額の引き上げがありました。子育て支援の観点から、ひとり親控除の控除額は次のようになりました。

所得税での控除額...35万円→38万円
住民税での控除額...30万円→33万円

なお適用時期は所得税が2027年(令和9年)分以降、住民税は2028年度(令和10年度)分以降となります。

税制改正のポイントまとめ

今回の年収の壁の引き上げをまとめると、次のようになります。

所得税は引き上げ、住民税は給与所得控除のみ

年収の壁が前回の改正で132万円に、今回の改正で178万円になりました。つまりバイト・パートで稼いでも年収178万円までは課税されません。ただしこれは所得税のみの話です。住民税は給与所得控除以外、引き上げになっていません。

そのため「所得税は0円だけど住民税だけかかる」という現象が今後生じる可能性があります。余談ですが、社会保険料の負担にも注意が必要です。

なお、住民税で基礎控除が引き上げとならなかったのは、前回と同様「地方自治体の行政サービスを維持するため」だと思われます。

国税と異なり、地方税は住民税を含め、教育や医療など地域の行政サービスと直結しています。国税と同じように基礎控除を引き上げてしまうと、その分だけ行政サービスの財源が減ってしまうことになります。そのため、今回も住民税における基礎控除の引き上げや上乗せなどは見送られたものと思われます。

所得控除の所得要件の変更は所得税・住民税ともにある

所得控除の所得要件も今回から変更となりました。こちらは所得税だけでなく住民税も適用されます。混乱しやすい点なので注意しましょう。

所得要件の変更がどこまで及ぶかに注意

所得要件の変更は、かなり広範囲に影響します。障害者控除や寡婦控除といった所得控除だけでなく、所得金額調整控除といった給与所得控除のおまけのような部分にもかかわります。前回の改正とあわせてあらためて確認するといいでしょう。

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