税理士試験「簿記論」独学で合格できる?必要な勉強時間や勉強法・転職事情まで解説

税理士試験「簿記論」独学で合格できる?必要な勉強時間や勉強法・転職事情まで解説

税理士試験の必須科目である「簿記論」。独学での合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、簿記論の独学合格は可能です。しかし簡単ではありません。専門学校に通う以上に綿密な戦略と継続的な努力、そして自己管理が求められます。
本記事では、簿記論に独学で合格するのに必要な勉強時間や合格率、具体的な勉強のコツを解説します。働きながら合格を目指す方に向けて転職先の探し方もお伝えします。

鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。税金の正しい知識を広めるべく、WEBを中心に多数の記事執筆・税務監修を行う。分かりやすい解説に定評がある。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

目次

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税理士試験「簿記論」に独学で合格するには

簿記論は税理士試験の必須科目です。多くの受験生が最初に挑戦する科目ですが、これを独学で突破するにはどうしたらいいのでしょうか。

可能だが難易度は高い

結論から言うと、専門学校に通わずとも、テキストや問題集、過去問や模試だけで独学し、簿記論に合格することは可能です。実際に独学で一発合格を果たしている受験生もいます。

ただし、その難易度は非常に高いと言わざるを得ません。独学で簿記論に合格するには、次のような要素が求められるからです。

  • 勉強が苦痛ではない、一人で学ぶことに慣れている
  • 分からない、覚えられないからと言って投げ出さない
  • 地道な問題の解きなおしを何度でもできる
  • 点数がどうであっても冷静に受け止められる
  • 自分で情報を積極的に取りに行く姿勢がある
  • 試験で要領よく点数を取るのに長けている

専門学校に通えば講師のかみくだいた解説や質問の即時解決、励ましが得られます。独学ではそういったものが一切得られません。つまり、お金を節約できる代わりに、そういった目に見えないツールがない状態で自己管理していかなくてはならないのです。

そして税理士試験は難関試験です。簿記論も例外ではありません。「120分という時間で要領よく解いて点数を稼ぐにはどうすべきか」のスキルも含め、自己研鑽していかなくてはなりません。

このほか「疑問点が出たときに誰かに質問できない」「税制改正などに自ら対応しなければならない」といった独学ならではの壁もあります。

日商簿記2級は必須、1級がベター

簿記論に独学で合格するには、簿記の知識が不可欠です。初学者がいきなり税理士試験の簿記論テキストを開いても、たいてい途中で挫折します。「仕訳って何?」「精算表とは?」という最初の段階でつまずくからです。

簿記論に受かるなら、日商簿記2級の理解は必要です。ただし理想は、日商簿記1級取得レベルです。簿記1級を取得していれば、簿記論の出題内容を理解しやすくなります。独学で簿記論に合格するなら、日商簿記1級の方が可能性は高まります。

勉強慣れしていることも重要

独学で合格する人に共通しているのは「勉強慣れしている」点です。過去に大学受験や資格試験でコツコツ勉強をして合格した経験のある人は、自分なりの勉強法や合格のためのノウハウを身につけています。

税理士試験は長丁場です。勉強のつらさに負けず、余暇の誘惑に打ち克ち、坦々とテキストと問題集に向き合えるかどうかが、独学合格のカギとなります。

簿記論に独学で合格するのに必要な勉強時間と合格率

独学に挑戦する前に、試験の全体像と合格に必要な勉強量を確認しましょう。

目安となる勉強時間

簿記論の合格に必要な勉強時間の目安は「約450時間」と言われます。ただ、これは専門学校に通って効率よく学んだ場合の話です。

独学だと、わからないところを自分で調べるなど、遠回りな学習をするケースがあります。そのため実際には、800時間から1000時間程度かかると見ておくとよいでしょう。働きながらだと、1日3時間の勉強を毎日続けても約1年はかかります。

簿記論の合格率

近年の簿記論の合格率は、次のようになっています。

年度 2025年度 2024年度 2023年度 2022年度 2021年度 2020年度
合格率(%) 11.1 17.4 17.4 23.0 16.5 22.6

参照:税理士試験 過去の試験結果等|国税庁

おおむね10%〜20%前後で推移しています。税理士試験は、国家資格の中でも狭き門ですが、税法科目に比べると若干合格しやすいと言えるでしょう。

また、税理士試験は絶対評価ではありません。解答の内容を総合的に見て配点調整を行います。そのため、相対評価の色合いが強いのです。

独学であっても「どうしたら合格するのか」といった合格のためのノウハウも意識しながら勉強を進める必要があります。

独学で簿記論に合格するためのコツ

独学で簿記論を突破するには、以下がポイントとなります。

自分の立ち位置の確認

独学で怖いのは「自分の立ち位置がわからない」という状態です。具体的には次のような点です。

  • 自分の勉強方法は合っているのか
  • 効率のよい点数の取り方はできているか
  • 同じ受験生たちの中で自分は何位くらいなのか

試験勉強には、常に自分の状況の客観視が求められます。そして独学だと、他の受験生との比較で焦らされない反面、ライバルがいないので客観視できない状況を強いられます。定期的に過去問や総合問題を解き、出題傾向のみならず自分の置かれた状況を見つめ直し、その都度対策を立て直すことが必要です。

戦略と自己管理力

簿記論は計算問題のみで構成されます。2時間という制限時間でボリュームのある問題を解かなくてはなりません。そのため「難問を捨てて確実に点数を拾えるところを拾い、点数を積み上げる」という戦略が必要となります。

このほか、コツコツ勉強を進めるために、1日単位・1週間単位での勉強計画を立て、自己管理をしていくことも求められます。

同じテキスト・問題を反復練習

多くの問題集に手を出すのは望ましくありません。あれこれ手を出してしまうと、理解が深まらなくなります。一つのテキスト、一つの問題集、一つの過去問、過去受けた模試...と手をつけるものを絞った方が得策です。

同じ問題を繰り返し解くことで、仕訳のパターンや解答手順が体に染み込みます。結果、本試験で効率よく点数を稼ぐことができます。また、自信を失いやすい直前期にメンタルを回復させる効果も期待できます。使い古したテキストや問題集を見れば「これだけやったのだから合格できる」と自信を回復しやすくなるのです。

専門学校の模試は受けるべし

普段は独学でも、直前期になったら大手専門学校の模試は受けましょう。本番特有の緊張感や時間配分の感覚をつかめます。また、全国の受験生の中での自分の順位の確認もできます。
自分の実力を正確に測り、本試験に向けた最終調整を行うなら模試の活用は必須です。

試験勉強と両立できる転職先の探し方

社会人が働きながら簿記論の独学合格を目指すなら、職場の理解も重要なカギとなります。今の職場で勉強時間が確保できないなら、試験勉強と両立できる環境への転職を検討しましょう。主に次の選択肢があります。

会計事務所

税理士試験の受験生にとって、王道の転職先は個人の会計事務所・税理士法人です。次のメリットを期待できます。

  • 実務を通じて税務・会計の知識が深まる
  • 試験前にまとまった休暇(試験休み)が取れる
  • 専門学校の通学日は定時退社しやすい

会計事務所の所長や税理士法人の代表には税理士試験で苦労してきた人が多いため、後輩たちのバックアップに協力的なところが多いのです。

ただ、すべてが必ず協力的だとは言い切れません。面接の段階で、繁忙期の残業や試験勉強のサポート体制について確認しておきましょう。

事業会社

一般企業の経理・財務部門への転職も有力な選択肢です。業務の面では、会計事務所や税理士法人ほど税務全般の実務経験は積みにくいです。反面、特定の企業活動の税務・経理の経験を深掘りできます。税務・経理以外の自社の活動とも結びつけやすいため「企業活動の中での税務・経理」という専門性を身につけることができます。

また、事業会社は、カレンダー通りの休みが取得しやすいのが特徴です。労務管理が徹底されていることが背景にあります。会計事務所ならではの「繁忙期は残業だらけ」にはなりにくいと言えるでしょう。勉強時間を確保したい人には向いています。

このほか、税理士試験の科目合格は企業の経理採用でも高く評価される傾向にあります。

まとめ

税理士試験の「簿記論」は独学でも合格可能です。ただ、簿記の知識は必要ですし、膨大な勉強時間が必要です。根気よく勉強をするだけでなく、効率よく点数を稼ぐスキルも求められます。そして、勉強に専念できる環境づくりも欠かせません。

「今の職場では残業が多くて勉強できない」
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