今の時代、女性税理士が注目を浴び、その働きやすさが増しているといえます。事務所でのパート勤務や年収の向上、男女共同参画社会の進展など、多岐にわたる改善が進んでいるためです。
ここからは、下記の3つに分けて働きやすくなった女性税理士の現状をお伝えします。

女性税理士の年収

女性税理士の年収は、企業の規模によって異なりますが、平均して約600万円が目安です。具体的には以下の表のようになります。

企業規模	年収（万円）
10人以上	588
10〜99人	560
1,000人以上	649

出典元：令和４年賃金構造基本統計調査「職種（特掲）、性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額（産業計）」

女性税理士の年収は、男性と比較しても遜色ない水準になりつつあります。これは働きやすさが増すことで、男女関係なく収入が得られる環境が整ってきているものだと考えましょう。
なお、この数字は会計士を含む年収の目安であるため、多少の前後があるものだということに留意してください。

税理士の女性割合は約14.4％

女性税理士の割合は年々高まっており、日本税理士会連合会（2016年の調査）によると男女比率は約14.4％となっています。また、最新の令和4年の合格者のうちの女性割合は約3割ほどです。男女共同参画社会が進展し、下記のように女性が働きやすい環境が整っていることが、この変化の大きな理由として挙げられるでしょう。

• 育児と仕事の両立サポート
• 女性向けの求人やキャリア支援
• 時短勤務やテレワークの導入

これらの改善によって、女性税理士としての働きやすさが向上しており、今後の業界の活性化につながっていると考えられます。

令和5年から受験資格要件の緩和

令和4年の税理士法改正により、令和5年4月1日以降の税理士試験から受験資格要件が大幅に緩和されます。これによって、高校生や大学1・2年生でも受験が可能になりますし、文学部や理工学部の大学生・卒業生の受験可能性が拡がることになります。

項目	緩和の内容
会計学科目の受験資格要件の撤廃	高校生や大学1・2年生でも受験可能
税法科目の受験資格要件の緩和	文学部や理工学部の大学生・卒業生の受験可能性拡大

このような変更により、多岐にわたるバックグラウンドを持つ人々が税理士の道へと進む道が開かれることになります。女性が税理士として働く機会を増やし、キャリア形成の柔軟性を高める一助となるでしょう。

現代社会での女性税理士の転職は、下記のように生活の多岐にわたる部分で大きなメリットをもたらします。

今まで考えていなかった方向性や可能性を考える一助としてください。

結婚・出産後の社会復帰がしやすくなる

生涯を通じて、女性たちはさまざまなライフイベントを迎えます。結婚、出産、子育てといった重要なステージを経験する中で、キャリアを続けることは必ずしも容易ではありません。しかし、税理士として働くことは、育児や家庭生活とのバランスを保ちながらキャリアを続ける大きなメリットとなります。

• 柔軟な勤務形態で家庭との両立が可能
• 一度身につけた専門知識が活かせる
• 高いスキルが評価されやすくキャリアアップが見込める

税理士の仕事は専門性が高く、そのスキルは多くの企業にとって重要なものです。また、税理士事務所に限らず、一般企業においても柔軟な勤務体制や時短勤務を導入している場所も増えており、女性が働きやすい環境が整ってきています。こうした取り組みの積み重ねが、結婚や出産後の社会復帰をよりスムーズにする一助となります。

年収アップが期待できる

女性税理士が転職すると、税理士の専門知識とスキルが高く評価され、年収アップも期待できることが一般的です。これは、税理士を必要とする企業が多く存在し、その中で経験豊富な税理士は重宝されるからです。

• 企業が税理士を必要とすることで求人の選択肢が広がる
• 税理士資格は転職市場で競争力が高められる

また、一般的に税理士の年収は、非専門職の年収よりも高い傾向にあることも現状です。そのため、経験と共に拡がるクライアント層や業務範囲が、収益向上に直結するケースも十分に想定されます。転職による年収の向上は、スキルと経験を活かし自己価値を高める手段であると言えるでしょう。

新たなチャレンジと成長の機会を得られる

税理士としての専門性を活かし、新しい職場や業界で経験を積むことで、自身の視野を広げて新たな知識や経験を得ることが可能なこともメリットのひとつです。

• 異業種での経験を積むことで視野が広がる
• 新たな業務やクライアントとの関わりから新しい知識やスキルを身につける
• 転職先での経験が自身の成長につながる

新しい業種やクライアントと関わることで、税理士としてのスキルだけでなく、ビジネス全体の理解や他業種とのコミュニケーション能力も深まります。こうした新たなチャレンジと成長による経験は、自分自身のキャリアや人生に新たな色彩を加え、未来への一歩を踏み出す勇気ともなるでしょう。

女性として税理士というキャリアを選ぶ際、独自の悩みや希望があるのは当然です。そこでここからは、女性税理士としての多岐にわたる働き方の中でも代表的な下記の3つを詳しく解説します。

科目合格取得・キャリアアップ

• 「今、税理士として活躍していて、さらに上を目指したい！」
• 「全科目合格を目指して勉強したいので、通いやすく働きやすい事務所に移りたい」
• 「いくつかの科目合格はしたけれども、実務経験がないので、事務所で経験を積みたい」

など、科目合格を目指している女性からの相談が多い一方で、その選択肢は多岐にわたります。それぞれのケースにおいて、「何をやりたいか」「どんな税理士を目指すのか」「独立を目指すのか」という視点から、適切な事務所の選択が重要となります。

• 通いやすく働きやすい事務所を求める
• 実務経験を積むための事務所を探す
• 中小の事務所を視野に入れる

などは、選択肢を絞り込む上でよく挙げられるものです。働きやすいように勤務時間への配慮が行われていたり、中小の事務所では所長のスタイルや意向が強く反映され、資格取得を助ける制度が用意されていたりすることがあります。
しかし、資格取得に対する事務所の姿勢を最優先しなければ、「資格も取れず、時間ばかりを無駄にした」という結果を招く可能性もあります。そのため、科目合格取得・キャリアアップを目指す場合は「具体的な目標」から逆算した働き方を目指しましょう。

経理として一般企業のキャリア形成

税理士試験の科目合格を目指す道を諦め、一般企業への転職を考える女性もいます。一般企業における経理の仕事では、税理士の資格の有無は年収などの条件に大きな差を生むことは少なく、税理士としてのキャリアをあきらめて経理への転職となることが多いでしょう。たとえば、下記のような状態でよく選択肢として挙げられます。

• 日々の業務に忙殺されて勉強が進まない
• 試験に通らずに時間ばかりが経過する

試験に通らないまま時間が過ぎる状態ならば、一般企業の経理などに転職したほうが新たな展望も開けることがあるでしょう。また、前述したように働きながら科目合格を目指すこともできるはずです。つまり、環境を変えて企業内で経験を積みながら積み上げていくアプローチができる選択でもあるということです。
経理として一般企業のキャリア形成する場合であっても、これまでの経験と知識を活かして働けるため、新しい道への挑戦も怖れずに進んでください。

ブランク明けからキャリアを見直す

ブランク明けからキャリアを見直す場合は、働きやすい環境を重視しましょう。たとえば、中小事務所なら、社風や制度に経営者である所長の考え方が反映されやすく、女性にとって働きやすい場所も多いです。

• 産休・育休明けの働きやすい環境
• 早退や欠勤への対応
• サポート体制の整った職場

家庭の事情で急な欠勤や早退が必要な場合でも、仕事がなくなる・働きにくくなるという心配がない環境は、ブランク明けの女性にとって安心できるおすすめの転職先です。このように、女性税理士としてのキャリアは多岐にわたります。これからの道を選ぶには、自分に合った働き方を見つけることが大切です。

女性税理士の転職タイミングやポイントを、下記に挙げた4つの視点から解説します。

【全般】転職が必要か考える

自身のキャリアを真剣に考えるとき、「これからどうなりたいのか」が一番の鍵となります。その希望が現在の環境で叶うかどうかは重要な問いとなるためです。現に、「特定の仕事に就きたい」と思い、転職エージェントに相談を開始したものの、よく見てみれば、現在の職場でその希望が実現できることに気づくことがあります。このような場合、転職する必要はありません。
実際の転職を考える前に、まずは社内で意見を共有したり、関連部署の意見を聞いたりすることが重要です。なぜなら、社内で希望を叶えられるなら、それが最善の策となるからです。

• 現在の職場で取り扱いのない業務に挑戦したい
• 現状の報酬に不満がある
• 勤務環境（働く場所や働く時間）を変えたい

などのような状況がよく挙げられます。この場合、まずは自身の希望や悩みを社内で伝え、解決策を模索することが最初の一歩となるでしょう。

条件を見極める

税理士として働く場合、転職先の選び方が非常に重要になります。たとえば、科目合格者が転職を考える際は、資格取得を最優先に考えるべきです。そのため、自身がどうなりたいのか、必要な条件は何かを明確にして、それに適した職場を選ぶことが大切です。

• 資格試験のための時間がとれる職場
• 特定業務に特化した事務所
• 年収よりも残業のないところ

などの要素が挙げられます。また、選択肢を増やすためにも、数だけでなく多岐にわたる業務に触れる機会が多い中小の事務所も視野に入れられるでしょう。このように、それぞれの要素を踏まえて、最適な職場を見つけることが求められます。不安な場合は、条件を明確にした上で、転職エージェントにご相談いただくと、より具体的なアドバイスが得られるでしょう。

経験と知識を活かす経理のキャリアパス

一般的に、経理の年収には資格の有無による大きな違いはありません。しかし、経験と知識を活かすことで、多様なキャリアパスが開けます。経理の仕事は「金銭」にかかわる業務であり、毎日の金融取引を管理して各種の書類を作成します。この業務を通じて、経営計画や事業計画の資料となるデータを作り出すことから、企業の経営に影響を与える存在とも言えます。

• 毎日の金融取引を一元管理し、会社の現状を把握
• 経営陣に対する提案を通じて、企業の経営戦略に影響
• 経理・会計と連携して予算や決算業務を行い、経営陣に提案

など、経験と知識を活かす経理のキャリアパスは、多くの機会と可能性を秘めています。特に女性税理士にとって、仕事とプライベートのバランスを取りながらキャリアを進めていくための有効な選択肢と言えるでしょう。

ブランク明けの再就職に社内見学を活用

転職活動においては、候補の企業を見学することをおすすめします。年収や制度だけではなく、「心地良く働ける場所かどうか」を直感的に感じ取るためにも、自分の目で会社の内部を確認することが有効です。面接の際にも可能ですが、リラックスして社内を見て回れる時間を設けることで、より深い理解が得られます。

• 雰囲気を感じるためのオフィスツアー
• 社員の様子を観察する時間
• 社内の設備や環境をチェックする時間

こうした機会を設けることで、自身が求める働き方と企業の文化がマッチしているかを評価することができます。また、安心して働ける場所を自分の目で確かめることができるため、ブランク明けでもスムーズに職場に馴染むことができるでしょう。自分自身が心地よく働ける環境を見つけることは、長期的なキャリアの発展にもつながります。