税理士から一般企業・事業会社への転職
企業運営において税金関連の業務が常に必要となるため、税理士が一般企業へ転職することは十分に可能です。売上から利益を出すことが目的で、その過程で発生する複数の取引を管理し、正確に税金を計算するために税理士のスキルは必要不可欠です。
消費税の申告や所得税の計算、法人税の申告などの税務業務を適切に遂行することで、企業は税法遵守を図り、税務リスクを低減できます。したがって、税理士として得た経験と知識は一般企業で高く評価され、転職を成功させるための大きな武器となります。
一方で、企業には事業の特性により異なる税務ニーズがありますので、転職活動の際には自身のスキルと企業の要件を適切にマッチさせることが求められるでしょう。ここからはより詳しく、税理士から一般企業・事業会社への転職について、下記の3つに分けて紹介します。
一般企業への就職・転職に必要な実務経験
税理士資格の取得には、最低でも2年の実務経験が必要です。この実務経験は、専門的な業務を担当し成果を上げるものでなければなりません。全ての経験が実務経験として認められるわけではなく、専門的な知識を用いて業務を遂行して、その結果を分析・評価することが含まれるからです。
実務経験として認定されるものの例には、クライアントの税務対策の提案や税金の計算・申告業務、税務調査への対応などがあります。一方で、単純な事務や電卓を使った単純な入出力の業務は、実務経験としては認定されません。したがって、実務経験を積む際には、具体的な業務内容とその成果に重きを置くことが求められます。
また、税理士としての実務経験は一般企業でも高く評価され、転職に有利となります。この実務経験は、企業の経営戦略に対して有効な税務対策を提供する能力を示すため、多くの企業にとって価値あるスキルとなるからです。
税務対策の提案や税金の計算などの業務は、一般企業における経理や税務業務にも直接対応できるもので、これらの経験は具体的にアピールする価値があります。実務経験が一般企業における経理や税務業務にどの程度対応できるかを自身で評価し、それをアピールすることも必要でしょう。
科目合格は1科目でも一般企業への転職に有効
税理士の世界では、大手から個人の会計事務所まで、若手人材の確保には苦慮しています。このため、若手に多い税理士試験科目合格者に対するニーズが高まっており、給与も上昇しています。
給与水準を底上げしないと人材確保ができない売り手市場の現状が、このような結果をもたらしています。特に、会計知識を期待される場合や、自社内で決算書類や税務申告書類の作成を行うような会社では、税務知識を重視して採用する傾向が強まるためです。
税理士試験の1科目合格でも、人材が不足している現状から一般企業への転職は十分に有効です。給与の上昇や、税務知識の強化が求められる場所での働き先も増えており、キャリアの選択肢が広がっていると言えるでしょう。
働きながらでも合格は目指せる
税理士試験の制度は進化しており、働きながらでも合格が目指せる時代です。受験者は得意科目を選ぶことで効率よく学べるため、合格への道が近づくでしょう。たとえば、税法を学ぶ際、興味を持つ科目を選ぶと、集中しやすく学習効率が高まります。他にも、会計事務所や一般企業での勤務であれば、実務経験が受験勉強に役立つため、収入を確保しつつ学習の密度を濃くすることが可能です。働きながらの勉強では、集中力の向上など、多くの利点があるため、学習効率を向上させる要素ともなります。
このように、税理士試験の制度の進化や、実務経験と組み合わせながら学ぶことによって、働きながらでも合格は十分に目指せる環境が整っていると言えるでしょう。
税理士が一般企業に転職すると年収はどうなるか
税理士が一般企業への転職において年収はケースバイケースであり、自身の経験とスキルの適切な評価や企業の真意の理解が必要となります。前向きな態度とともに、自分のキャリアと将来の方向性を確認し、それに合った企業を選ぶことが、転職成功の鍵となります。
まず、会計事務所から一般事業会社への転職について具体的な事例を見てみましょう。
転職前 | 会計事務所 | 転職後 | 一般事業会社 |
---|---|---|---|
業種 | 税理士業務 | 業種 | 経理職 |
年収 | 500万円 | 年収 | 500万円 |
A氏は約5年間税務顧問として会計事務所で勤務し、一般事業会社の経理職へ転職した結果、年収は変動しない結果となりました。転職成功のポイントは、 A氏がキャリアアドバイザーと協力してキャリアを棚卸し、自身の経験を経理業務相当と評価する求人を見つけ、自身の貢献できるポイントを強調したことです。
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次に、税理士事務所から一部上場企業への転職についてのケースを考えてみましょう。
転職前 | 中堅税理士法人 | 転職後 | 上場企業 税務室 |
---|---|---|---|
業種 | 税務会計業務全般 | 業種 | 税務・税金計算 |
年収 | 500万円 | 年収 | 600万円 |
Yさんは約8年間税理士法人で働き、税理士の資格取得を経て一部上場企業へ転職した結果、年収は100万円増加しました。転職成功のポイントは、税務室で専門性を維持しつつ新たな業務に挑戦して前向きな態度を持たれていたこと、そしてエージェントでの面接対策も自発的に行っていたことです。
これらの事例から、税理士のキャリアとして一般企業での働き方が可能であり、年収も向上する可能性があることが分かります。
具体的な方向性や適切な企業選びは、転職エージェントなどの支援を受けることも有効でしょう。税理士としてのスキルと経験を活かして、事業会社で新たな一歩を踏み出すことが、キャリアに新しい可能性をもたらすポイントです。
一般企業・事業会社ごとの特徴とキャリアプラン
「株式上場会社」を転職先に選ぶなら
「株式上場会社」はこんな方へオススメ!
- より専門的な業務を行いたい
- 税理士資格を活かしたい
- 大手企業で働きたい
近年は税理士を、積極的に採用している一般企業が増えています。というのも、会計部門に経理の専門家として税理士を必要としているからです。このように税理士を求める声は株式上場会社においても同様で、たとえば有価証券の資料作成といった、会計事務所では行わない専門的な業務があることから需要は高いといえます。
上場会社といえば、証券取引所において売買される株式を発行している会社のことを指します。
なかでもJASDAQやマザーズに上場している企業は、現在成長中の企業が多く、組織が未整備のままであるケースが大いにしてあります。
こういった整備が整っていない会社では、会計部門に専門的な知識を持つ社員が在籍していない場合があり、誰もが知っている有名企業よりもベンチャー企業の方が、税理士を必要といている可能性が高くなります。
「外資系企業」を転職先に選ぶなら
「外資系企業」はこんな方へオススメ!
- 語学力を活かして働きたい
- 市場調査にも携わりたい
- 日本のグローバル化を支えたい
外資系企業で税理士が働く場合、税務に関する知識に加えて語学力が必要となります。イメージ的には、外資系企業をサポートするのは特定の大手税理士法人であると思いがちです。しかし、実際には税理士が必要とされるポジションはいろいろあります。
たとえば、企業内で経営のサポートを行うコンサルタント的な業務と並行して、海外への進出の計画をたてます。そして、経理担当者とすり合わせを行いながら、経営企画を担う働き方をしている税理士もいます。
主に、海外子会社の税務処理などを行いますが、その際必要となるのが、上述したとおり語学力と、企業から求められる言語での資料作成です。語学力があるとなれば、経営に直接携わるマーケティング調査へも積極的にかかわる場面も増えてきます。
また、訪日観光客が毎年増加傾向である近年は、インバウンドによる景気が高まっています。そこには、観光客だけではなく、事業を起こす外国人も増えています。不動産投資などの投資目的で来日する、外資系企業の経営者も語学力のある税理士を必要としています。グローバル化が進む日本においては、語学ができることが仕事の枠を広げていくことへと直結していくでしょう。外資系企業への転職を目指す人は税務の知識に加えて、英語で交渉やプレゼンテーションのトレーニングを行っていくことが実力をつけていくことへとつながります。
「銀行・証券会社」を転職先に選ぶなら
「銀行・証券会社」はこんな方へオススメ!
- より高い年収を得たい
- 税理士として幅広く活躍したい
- 法人税や資産税の分野の知識を活かしたい
銀行・証券会社などの金融機関のバックオフィスの業務は、一般的な事業会社とは異なった税務に関する専門性が必要となります。そのため、金融機関へ一度転職をしてしまうと、特殊な業務がゆえに、他の業界には転職がしにくくなってしまうデメリットがあります。しかし、税理士としての資格と知識があれば、評価に直結していく傾向にあります。年収においても、金融機関の場合は水準が高いことから、大手証券会社の場合は30代で1,000万円以上といった高年収が得られる可能性があります。
税理士が活躍できる金融機関のバックオフィスとして存在するのは、都市・地方銀行、証券会社、リース会社などです。また、資産の管理や運用を代行する業務を行うアセットマネジメント会社、投資金を集めて不動産流通を行い利益の分配をするREITやSPCの税務処理などがあります。
バックオフィス業務以外には、金融専門職やフロント業務もあります。業務内容としては、法人向けの事業承継やコンサルティング、M&Aのアドバイスが挙げられます。個人向けには、資産管理コンサルティングを行うケースがあります。直接的な税務申告書の作成などは行うことがありませんが、コンサルティング業務の中では、法人税や資産税といった専門的な知識を活用することになります。年収については、20代で600~800万円、30代で1,000万円以上といった高収入が見込めます。
「信託銀行」を転職先に選ぶなら
「信託銀行」はこんな方へオススメ!
- コミュニケーション能力に自信がある
- 財産管理の分野の専門的な知識を活かしたい
- 将来的に独立を考えている
同じ金融機関でも、銀行や証券会社などの大手金融機関と信託銀行では業務が異なり、経験できる実務は異なります。信託銀行の顧客は、個人富裕層が多く、業務としては財産の評価や遺産・相続・贈与に関するアドバイスやサポートを行っているケースが大半です。
会計事務所や資産税に特化した税理士法人で、経験を積んだ税理士が評価されやすい部門となります。信託銀行は、金融機関という特性があるためアドバイスにおいても堅実的に話ができる人柄が好まれます。また、外部で提携している税理士との連携も必要な役目となるため、コミュニケーション能力や一つひとつ確実に仕事をこなしていけるスキルも求められます。
信託銀行の顧客数は莫大な数となるため、取得した税務コンサルティングなどの実務経験は比較的、後のキャリアアップにもつながりやすいのが特徴です。キャリアプランの立て方によっては、開業独立への道も切り開ける可能性が高まります。税務コンサルティングという専門分野を自分の強みとすることで、新規の契約獲得へとつながっていきます。
「一般企業の経理・財務部門」を転職先に選ぶなら
「一般企業の経理・財務部門」はこんな方へオススメ!
- 有価証券報告書などの書類作成に携わりたい
- 仕事とプライベートを両立させたい
- 社内コンサルタントとしても経験を積みたい
税理士が一般企業の経理や財務部門で働く場合、企業の決算業務や有価証券報告書などの作成がメイン業務となります。資格を生かした税務のみの業務担当ではなく、幅広い分野でさまざまなスキルを身につけたいと考えている人は、一般企業を選択する人が多くいます。税務以外でも得意な分野があれば、重ね合わせたスキルで活躍することができるのが一般企業で働く魅力でもあります。福利厚生やプライベートとの両立を考えたときには、繁忙期に多忙になる税理士法人ではなく、一般企業への転職を考える人もいるようです。
収入面においては、どの企業も同じというわけではなく業種や規模によって異なります。
ベンチャー企業など、経理部門が整備されておらず節税対策をおこなっていない場合などは、税金に関するノウハウを助言することで、ありがたい存在となり得ます。企業が外部顧問と契約をしている場合でも、組織内で税理士がいることで経営者の代弁をしながら財務部門を取り仕切る役目を担うこともできます。そのため、社内コンサルタント的な実力も積み重ねていくことができます。
一般企業・事業会社の公開求人検索
税務に関する専門的な知識と、実務経験をさらに活かすことができる経理職から財務グループの主任クラス、チームリーダー候補など幅広い求人をご案内しています。
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一般企業・事業会社の転職成功事例
税理士の資格と知識を活かすことができる、事業会社への転職。新しい一歩を踏み出すための転職は、キャリアプランが描けていることが重要です。これまでの経験を活かしながらさらにスキルアップが望める事例を紹介しています。
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税理士事務所から一部上場企業へキャリアチェンジ
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経理・財務・税務
満足いく転職活動ができました
Q1転職前の職務内容をお教えください
毎月中小企業を訪問して、月次決算のチェックを行い、正しい月次決算に訂正、指導を行う事を基本サービスとしていました。税理士法人監査担当者法人 記帳代行月次決算年次決算確定申告個人不動産投資家向け相談外国人不動産投資家確定申告代行 -
年収
転職前500万円
転職後500万円
事業会社(一般企業)
会計事務所から一般事業会社へのご転職
【現職】税理士のA氏は会計事務所に約5年間勤務されており、複数のクライアントに対して、税務顧問として会計アドバイス、税務申告業務を行いながら、時には経営についてのご相談にもご対応されていました。
一般企業・事業会社の転職に
よくある悩みランキング
事業会社は、業種や規模もさまざまであるため転職希望者の悩みも多様です。また、キャリアプランが明確でないと、実際に転職をしてみると「希望していた職務ではなかった」「福利厚生が条件と違った」というパターンも考えられます。
事業会社への転職においては、これまでの社会人経験の棚卸から始められるとよいでしょう。あらかじめ、転職を考えている企業の理念や企業体質など入念にリサーチを行っておくことが転職を成功させるためのカギとなります。
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