中小企業の社長の平均年齢は高いのが現状ですが、いまの30〜50代の後継者に代替わりすると社長のITへの意識が先代とは変わります。また、若くして事業を起こした人は、普通にITの時代に生きているので、ITに対する意識が高い人が多いです。

税理士はITの専門家ではありませんが、以下のようなひととおりのITツールを使えるようになったほうが良いでしょう。

・メール、チャットワークなどの連絡ツール
・Dropbox、Google Drive などのオンラインストレージ
・ZOOM、Skype などのミーティングツール
・Excel、Word、PowerPoint などのマイクロソフトのツール

もう一歩踏み込んだところまでいくと、業務を効率化するためにExcelマクロはとても有用です。

マクロはExcelの中に組み込まれたプログラミング言語VBAを使って組むことができます。面倒くさいExcelでの手作業を自動化することができるので、さまざまなところで使えて、損はないスキルです。

もう少しするとクラウド化の大きな波が来るといわれています。東京などの大都市ではすでにクラウドがだいぶ普及しているように感じますが、私が住んでいるような地方だとまだそれほど浸透していません。しかし、クラウド化の波が来るとなると都会・地方関係なくクラウドの知識やスキルは必要になります。

クラウド会計ソフトを上手に使えば銀行口座やクレジットカードとの連携により、経理の負担をかなり減らすことができて大きく業務効率化につながるので、たとえいますぐに出番はなくても、準備しておくにこしたことはありません。

非効率なことを面倒だと思えることも大事です。税理士業界にいる人は、自社または顧問先が日頃行っている業務の進め方が本当に妥当か？ 無駄がないか？ そう考えることを習慣にするとよいでしょう。

また、異業種からの転職を考えている方は、自分がいまいる環境と転職後の税理士業界をよく比較し、税務・会計業務の非効率なところを直していこう、というくらいの気持ちを持っていただきたいです。

ITを使ってどのようなサポートができるか、実例をあげてお話しします。

ITを活用したくてもどのように使えば良いかわからないという企業もありますので、IT環境を整える手助けで貢献できる場合があります。

たとえば、ある会社において2拠点間でデータを共有したい場合に、これまでずっとリムーバブルディスク（USBメモリ）を使っていた会社があったのですが、オンラインストレージの Dropbox の設定を行うことで移動の無駄を省くことに貢献できました。自分では当たり前にできることでも、他人からしたらそうではない場合も多いものです。

これから利用者が増えるクラウド会計ソフトの導入支援も、税理士の仕事のひとつといえます。私はまだ顧問先でクラウド会計ソフトを使うところがない時期からひととおりの操作をできるようにしておいたので、実際にニーズがあったときには、すばやく導入支援をすることができました。

また、新規で顧問先になっていただく方には、会計ソフトは最初からクラウド会計をすすめるようにしています。記帳の量が減ることでより付加価値がある仕事に時間を使っていただきたいからです。

顧問先の要望に応じたExcelシートを作成して提供することで、業務効率化に大きく貢献できます。これまで紙に手書きで行っていた作業をExcelに入力するようにすることで入力速度が大きくアップし時間短縮につながるケースや、もともとExcelを使っていたけれども面倒な手作業を行って時間がかかっていたものをマクロ（Excel VBA）を使うことで大幅に短縮できる場合があります。Excelで作った振替伝票や現金出納帳、請求書などは一定のニーズがあるのです。

Excel VBAでプログラミングできるようになるためにはそれなりに時間がかかりますが、使えることで間違いなく大きなアドバンテージを得られます。Excelは会計事務所そしてすべての会社にとって最も身近なソフトだからです。

私は会計事務所に転職する前は大手メーカーでエンジニアの仕事に就いていましたので、IT（特にプログラミング）の基礎は前職で培ったものが転職後もそのまま活きています。また、エンジニア時代の仕事内容と経理の仕事を比較して、客観的に見ると経理業務は非効率なことが多く行われていることがよくわかりました。

現状、異業種にいて、ある程度のITスキルがある人で会計事務所への転職を考えている方は、そのITスキルが評価されて採用してもらえるケースも多いと考えます。また、当時の自分と同じように転職後に経理業務を客観視できる目が必ず活きてくると考えます。簿記・税務の知識がないから会計事務所の仕事ができないと考える方もいるかもしれませんが、それらは転職後に本気で学習すれば十分身に付けることができます。すでに持っているITのスキルと合わせれば、ITと簿記・税務という2つの柱を持った人材として活躍の幅が大きく広がると思います。